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第7回賢明な利用を語る会

宍道湖・中海の恵みの活用について考える

 2007(平成19)年度3回シリーズの第2回目(通算7回目)の「賢明な利用を語る会」を、平成19年11月10日(土)にホテル宍道湖(松江市)にて開催しました。

 今回は、宍道湖・中海で捕れる魚介類や、宍道湖・中海にちなんだお土産、景観など、両湖がもたらしてくれる恵みの活用について、事例の発表や意見交換などを行いましたのでその概要をご報告いたします。

1.主催:島根県、県立自然館ゴビウス、ホシザキグリーン財団

2.日時:平成19年11月10日(土)午前11時00分〜午後2時

3.参加者数:約70名

4.会場:ホテル宍道湖(松江市西嫁島町)

5.次第

(1)開会挨拶島根県環境生活部次長三代広昭

(2)事例発表

日本シジミ研究所所長中村幹雄氏

「山の恵み、川の恵み、大地の恵み、蜆は宍道湖・中海の自然のやさしい恵み」

漁業後継者石倉啓光氏

「宍道湖の豊かな恵み-宍道湖七珍以外のおいしい魚たち-」


島根県東京事務所(にほんばし島根館)課長中島正顕氏

「にほんばし島根館からみた宍道湖・中海」

株式会社リクルート国内旅行カンパニー鳥取・島根エリアリーダー竹本和弘氏

「食を中心とした観光資源の発掘から造成まで宍道湖・中海の魅力とは」

(3)参加者と発表者による意見交換、座談会

座長:越川敏樹(ホシザキグリーン財団事務局長、島根県立宍道湖自然館館長)

6.概要

 平成19年度第2回(通算第7回)目となる「賢明な利用を語る会」は、島根県環境生活部次長の挨拶で開会し、4名の発表者による事例発表をいただいた後、参加者と発表者による座談会(意見交換)を行いました。

以下、内容を抜粋、編集してご報告いたします。

【開会挨拶】島根県環境生活部次長三代広昭開会挨拶

 中海宍道湖もラムサール条約に登録されまして丸2年になります。登録を契機に私ども島根県はホシザキグリーン財団と一体となってこの宍道湖・中海の賢明な利用をどうしたらよいかという語る会を続けて開催しており、今回で7回目を迎えました。

 今回は「宍道湖・中海の恵み」をテーマにしております。宍道湖・中海の豊かな恵みについてみなさんと意見交換をしながらこの宍道湖・中海の賢明な利用について考えていきたいと思っております。

【事例発表】

日本シジミ研究所所長中村幹雄氏

 「山の恵み、川の恵み、大地の恵み、蜆は宍道湖中海の自然の豊かな恵み」

 少し自己紹介をしたいと思います。長い間県職員として研究を続けさせてもらいました。現在はシジミ研究所を設立し、そこで研究を続けています。日本一小さな研究所ですが、日本で一番きれいな夕日をみることができます。漁師さんの協力を得て、毎日宍道湖・中海の研究を行っています。また、これまではシジミの書籍がなかったのですが、シジミの生物学に関する書籍や、宍道湖・中海の魚介類を紹介した書籍を5年かかって発行したところです。

1.賢明な利用とは〜漁業振興とシジミ〜

中村幹雄氏ラムサール条約の理念である賢明な利用とは、この宍道湖・中海においては水産振興のことだと思っています。水産振興のためには何をしなければいけないかというと、シラウオやワカサギなどさまざまな魚介類がおりますが、まずはシジミであると思います。そしてシジミは山、川、大地の恵みを受けて育っております。そのことをまず知っておいていただきたいと思っています。

 そして、シジミは日本には3種類しかいないこと、宍道湖にはヤマトシジミしかいないことを知っておいていただきたい。ひとくちにシジミといってもまったく異なるもので、例えばマシジミはオスとメスの区別がありませんが、ヤマトシジミにはオスとメスがあります。よって精子と卵子の受精によってはじめて繁殖することができます。中国のシジミはマシジミの系統で、韓国のシジミはヤマトシジミの系統であります。

 次に、シジミの雌雄ですが、殻をあけてみるとわかりますが、黒い方がメスで、精子を持っているオスが白っぽく見えます。また、卵については10万から100万あるといわれており、環境がよければ多く産卵することができます。大切なことは、受精・産卵するときに環境が淡水になると浸透圧により卵の中に水分が入って膨張し、卵がだめになることが分かっています。ヤマトシジミが生まれて育つためには淡水と海水が混じっている今ぐらいの濃度の環境がないとだめだということです。

2.シジミの特性

 さて、シジミは肝臓に非常によく、最近はシジミは必須アミノ酸が多いなど食品として体にいいことが分かっています。宍道湖のシジミはほかの産地のものと比べると鉄やマンガンが多く含まれています。これは斐伊川の影響を受けているからだと思います。これらの成分はミネラルだと思っていただければいいです。しかし重金属だととらえられると水質汚染のことを思い出される方もいらっしゃいます。しかしながら体にとってこれらの成分は非常に大切なものであるから重金属と表現するかミネラルと表現するかでは印象が異なります。シジミは食品ですからどのように表現するかは事実に基づいて正しく表現することが大切です。最近の分析技術は小さな単位まではかることができるので、正確に取り扱わないと風評被害などにあうことになってしまいます。

3.シジミを美味しく食べる

 シジミをおいしく食べるということはとても大切なことで、シジミの砂抜きにおいては真水を使うより海水を使った方がよいことが分かっています。これは浸透圧の関係で体よりも環境の方が塩分が低いとからだの中に水が入ってきてしまい、アミノ酸などが流出してしまいます。よって海水で砂出しをすることを薦めています。

4.まとめ

 最後になりましたが、宍道湖でも中海でもさまざまな魚介類が獲れます。しかし現在では地元のものを食べようという機会が少なくなってきて、玉造温泉でもコイの料理などは一軒も出なくなりました。家庭でも奥さんたちも忙しくなってきて魚を買ってきて調理するよりも冷凍などの魚を使う機会が多くなっています。本当は地元の産物を食べることが非常に大切だと思うし、環境を守ることにもつながります。

 シジミは(一定のルールの下に)どんどん獲っていますが、これはシジミが水の中の窒素やリンを吸収しているので、シジミを獲って食べることは湖にとってもいいことです。それはほかの魚にもいえることです。ただ、湖でも川でもそうですが、漁業が続いているところはやはり環境や生物に関心が高いです。例えばアユを漁獲しているところでは川に対する意識がまったくちがいます。そういう意味では、宍道湖・中海での漁業のおける役割は大切ですし、みんなが宍道湖・中海の魚をもっと食べてほしい。無駄になっている魚が多いです。コノシロ、サッパ、ボラなど、食べれば新鮮なものはおいしいのですが、まったく食べないという状況がとても心配です。地元のものを地元で食べるということが環境にとっても大変大切ではないかと思います。


石倉啓光氏

 「宍道湖の豊かな恵みー宍道湖七珍以外のおいしい魚たちー」

 

 私は現役の漁師ではありませんが、漁業後継者として退職後はしっかりと漁をしていきたいと思っております。

 

1.宍道湖の漁業と自然環境石倉啓光氏

 まず、定置網というのが(スクリーンに)出ていましたが、宍道湖をみていただくとポールがたくさんたっていることに気づくと思います。長さがざっと80メートルくらいの網ですが、網に沿って魚たちが奥のますに入っていきます。ますに入るとさらに3方に別れて袋があり、そこにだけは返しがついており、魚が自由に出入りできません。そこに入っている魚を捕ることができます。うちの定置網があるのが長江干拓のあたりで、長江干拓の農地は道路ができるまでは宍道湖の一部でした。そこは子どもの頃は藻の大繁殖地でして、魚がたくさんいたことを覚えています。しかし埋め立てによって藻が激減しましてそれが魚介類の現象の原因ではないかと思っております。

 だんだん宍道湖が自然の形から崩れていくことで魚介類も減少しているように思います。特に減少しているのがこちらではアマサギと呼ばれる魚で、最近では1、2匹程度しかとれません。復活させようという試みを漁協でもやっておりまして、琵琶湖から稚魚を買ってきて育てていますがここ何十年とうまくいっていません。5〜6年前になりますが、稚魚の育成には宍道湖産のDNAを用いることを提案しました。それはやはり環境を守ることや生態系にとってもそのほうがいいと思ったからです。

 誰か協力者がいるだろうということで、呼びかけたところ、数名の方が協力してくださいました。最初は親魚が数百匹しか集まらなかったのですが現在では数千匹が集まるようになりました。それが功を奏したのかどうかは分かりませんが、2、3年前はかなり姿を見かけるようになりまして、いよいよ復活かと喜んだところです。

 しかしながら、増殖させるために産卵する場所を禁漁区にしたのに、その付近に網を仕掛ける人がいて結局減少しているとのことでした。漁師はもちろん生活がかかっていますし、結局環境保全とはこのような堂々巡りなのかな、とも感じています。まあ、もとの生態系に戻すのには何十年もかかる訳ですから、退職してからじっくりと取り組んで、そのなかでワカサギ(アマサギ)が復活してくれれば最高だなあ、と今は考えております。

 

2.“新”宍道湖七珍

 それでは、私なりの「“新”宍道湖七珍」をご紹介したいと思います。まず一番目はハゼの天ぷら。背開きにして天ぷらにするとほくほくさくさくで、たいへんおいしいです。それから二番目はテナガエビ。一番いいのは煮付けにすることです。そのまま煮てしまったのでは生臭いのでまずよく洗い、フライパンで赤くなるまで炒めます。それを鍋に入れて生姜、みりん、醤油で好みに味付けをします。三番目は有名なところですが寒フナのさしみです。ただのさしみにするのではなく、たまごを取り出して塩一つかみと一緒にゆでた後、ガーゼでしぼり水気をとってからさしみにまぶすと大変おいしいです。また島根ではあまり食べませんが、コノシロの酢漬けは江戸前では寿司ネタとして有名です。コノシロは汚い魚だという印象がおありのようですが、実はみなさん一度くらいは召し上がったことがあるのではないでしょうか。酢漬けにしただけでもおいしいです。それからモクズガニ。これも大変おいしいカニです。ぜひ一度ご賞味いただきたいと思います。それから6番目ですがゴリの佃煮と唐揚げ。黒っぽい小さなハゼですが、これを佃煮にするとおいしいです。7番目は佃煮ばかりで申し訳ないのですが、オダエビです。よく東京などの空港で佃煮はお土産として販売されていますが、あれはどうもにおいが気になります。このオダエビはそのようなことはありません。水でよく洗うことが大切です。

 

3.活用

 そして、環境を守るためにはやはり食べないとだめですね。食べてみてうまい魚が絶滅してさみしい、という心の底からわいてくる気持ちが大切なのではないでしょうか。それと、観光客を呼んできて街を豊かにすることも大切ではないでしょうか。先般雑誌などで見かけたところ、島根県を訪れる観光客は年間40万人、これは全国ワースト4位だそうです。そして外国人観光客になると宿泊客2,000人でワースト1位です。これでは宍道湖が良いといったところで、ただの自己満足です。もっともっと発信していかなくてはいけないと思います。そしてもう一点大切なことは、環境を良くしていかないと食の安全は守れないのではないかということです。そういうところに目が向かないといけないと思います。そしてやはり環境教育が大切です。小さい頃に環境についての教育を受けることが、大人になってからの行動に結びつくように思います。

 宍道湖は、松江市はもとより周辺住民にとっても大切な観光資源であり財産です。漁師にとっては生活を支える場であり、住民にとっては憩いの場でもあります。しかし残念なことに昔はよく子供が宍道湖で遊んでいましたが今では見かけませんよね。やはりこれだけの湖を持ちながらもっと子供たちが湖で遊べる環境を作っていくことが大切なんじゃないかと思っています。これを機会にみなさんとご一緒に考えて、改めて行動していきたいと思っております。

 

 

島根県東京事務所(にほんばししまね館)課長中島正顕氏

 「にほんばし島根館からみた宍道湖・中海」

 

中島正顕氏「にほんばし島根館」についてご紹介します。平成15年11月21日にオープンし、もうすぐまる4年を迎えるところです。フル装備アンテナショップとして物産販売、観光案内、旅行手配、ふるさと定住相談、飲食コーナーもそろって、アンテナショップとして揃っていたらいいなというものはすべて揃っています。

 物産コーナーの売り上げは年間2億8,000万円(昨年度)で、28ある全国のアンテナショップの中で売り上げ第5位です。島根県というとだいたいワーストで上位に上ることが多いのですが、たまにはこのようないい話もあってもいいかなと思い、ご報告いたします。ちなみにトップは北海道、沖縄で、あとは岩手、青森と続きます。

 

1.にほんばし島根館と宍道湖・中海の恵み

 「にほんばし島根館」と宍道湖・中海の恵みということで、宍道湖・中海の産物と島根館全体の売り上げとを比較してみました。主要商品ということで(宍道湖・中海では)一番が活けシジミ。これは漁師さんから直送してもらったものです。続いて加熱し真空パックにされたシジミ、そして冷凍されたシジミがありました。「にほんばし島根館」の売り上げはだいたい毎年1割上がっていますが、シジミについてはそれ以上のスピードで売り上げが増加しています。活けシジミというのは平成16年は、到着したその日にしか売ることができないので見送っていましたが、翌17年から曜日限定で金曜、土曜日に直送してもらい、販売を始めました。だんだんと完売するようになり、18年度からは火曜日も販売し、送ってもらうシジミの量も増やしてもらっています。毎回10kgが完売するようになり、火曜、金曜、土曜日はシジミの日として定着しつつあります。

 このように「にほんばし島根館」は、宍道湖産のヤマトシジミの情報発信をしていることについて、成果を上げていることをお分かりいただけるかと思います。

 そのほか、「にほんばし島根館」では、松江市にある山陰合同銀行本店の屋上カメラのライブ映像を見ることができます。また、お客様が自由に操作することもできます。ですから、「にほんばし島根館」では宍道湖がとても身近な存在であるということがお分かりいただけると思います。

 

2.にほんばし島根館と賢明な利用

 「にほんばし島根館」における賢明な利用については、宍道湖・中海の資源や恵みについて情報発信を行うことと、やはり商品を通じて行うことが最も重要だと考えています。先ほどの発表でも、「やはり食べてみないと分からない」ということがありますので、商品を通じてお客様と会話をしないといけないと感じています。「にほんばし島根館」での情報発信という点において、当館にはイベントスペースがあります。調理実演や試食会などもできますので、このスペースを活用した情報発信なども有効ではないかと思っています。

 先ほどの真空パックなどのパッケージ商品には、宍道湖のことやラムサール条約のことは書かれていません。そういったことをメーカーさんとタイアップして、環境への取り組みなどもパッケージ上で情報発信することはメーカーさんにとってもメリットのあることではないかと思いますので、今後検討したいと思っています。

 先ほども申し上げましたが、宍道湖の景観は常時ライブカメラを通じて流れておりますので、画面を使いながらラムサール条約のことや環境、資源のことなどについてもプロモーションビデオがありましたら是非当館での上映など、メディアの活用も検討してもらったらいいのではないかと思っております。

 

3.宍道湖・中海の資源活用方法

 最後に、宍道湖・中海の資源を首都圏で販売することのマーケティングについて、私見ですが少しまとめさせていただきました。宍道湖の漁業や生産者の方、それらを加工して販売していらっしゃる方が持続可能なかたちで続けていくことができるために首都圏でも販売するのならば、このように考えてみませんか、ということの意味でご提案いたします。

 まず一つ目が限定商品です。資源には限りがありますし、保護しながら活用していかないといけませんから、数量的、季節的、地域的にも限定商品ということを、逆に価値として売り込んでいくことが大切なのではないかと思います。その際、きちんとした付加価値をつけて首都圏で売り込んでいくことが必要です。例えば、雲南市にある木次乳業はその著書の中で、「田舎は材料提供、原料提供だけで満足していては都会の植民地になってしまう」という文言がありまして、私も同感するところがあります。鮮度を保つことや選別をしっかりするなど、人の手間をかけるといったきちんとした理由が首都圏では付加価値となり、適正な価格をつけることにつながると思います。

 二番目に、安全安心です。今は、世の中が偽装ばやりといった状況になっています。そうしたことがひとつおこってしまうと、何十年かけて培ってきたものが一瞬でだめになってしまいます。従って、宍道湖シジミについても、例えば外国産のものが混ざって宍道湖産などと販売する業者などがありますと大変なことになります。安心安全は大前提であるということを認識する必要があるかと思います。

 三番目に、信頼できるパートナーです。季節的なもので、さらに限定的なものであるが、十分に信頼できる商品であるということを、確実に分かった上でケアしてもらえる販売会社や流通会社とパートナーシップを獲得することが大切です。先日、知事と紀伊国屋書店さんがパートナーシップの調印を行いましたが、紀伊国屋書店さんなどは非常に理解のあるところです。

 以上のように首都圏マーケットでは季節的、限定的な資源に、付加価値をつけ、安心安全を提供し、さらに信頼できる流通などのパートナーを見つけていくことが大切であるといえます。


 

株式会社リクルート国内旅行カンパニー鳥取島根エリアリーダー

 「食を中心とした観光資源の発掘と造成-宍道湖・中海の魅力とは-」竹本和弘氏

 私は鳥取・島根の山陰地方のエリアリーダーとして現在統括しております。職歴はずっとリクルートにいた訳ではなく、一旦ヤフーというインターネット大手の会社で新規事業の立ち上げなどを行った後に、リクルートに戻って国内旅行関係の仕事をするなど、少しかわった経歴を持っております。従って、お客様とは紙だけではなくネットなどどのようなメディアを用いて広告していくかということを一緒に考えています。

1.宍道湖・中海の認知度

 最初に私の周辺の50人にアンケートをとりました。内容は、「まず宍道湖といえばなにが思い浮かぶでしょうか」、「中海といえば何が思い浮かぶでしょうか」、ということを聞きました。その結果、まず宍道湖では「シジミ」。これはエリア関係なく多かったです。二番目は「知らない」という回答。その次が「夕日」、そして「汽水」と続きました。このような回答が出てくるのはまだいい方で、2つ3つの回答がかえってくることは本当に少なかったです。みなさんまず、「鳥取と島根のそこらあたりにあるやつだよね」という意見がほとんどでした。

 続いて「中海といえば?」という設問には、ほとんどの方が「知らない」と回答されました。宍道湖・中海を観光資源としてどうやって活かしていくか、ということについてお話ししたいと思うのですが、まず現状の認識として考えると、近場の中国エリアの方は分かっていらっしゃるのですが、遠方の関東エリアでは認識が薄い、と考えています。

2.島根の印象

 まず旅行において、という話ですが、目的で一番大きな理由としては、美味しいものを食べに行きたいと思っている方が多いです。続いて温泉、歴史・旧跡、宿でのんびり過ごす、というように推移していきます。

 島根県では、一番の目的は温泉や露天風呂、2位が名所・旧跡、3位が美味しいものを食べたいという順番です。

一方、四国のとある県では、一番が美味しいものを食べたい、次に旧所・名跡、そして宿でのんびりする、という順番です。

 また、広島県では、1位が名跡を回るということで、原爆ドームや宮島などが考えられます。食についてはお好み焼きやカキなどがありますが、それでも少し弱いのかもしれません。2位という結果になっています。でも、それでも2位なんです。そこで考えてみますと島根県はちょっと残念な表現になってしまいますが、食に対する期待値はマーケット全般で考えるとそれほど高くはない、と認識しています。

 私も東京から転勤して参りましてもうすぐ1年になりますが、島根は非常に自然の豊かなところなのに、世間一般にはあまり知られていないというのが現状ではないかなと思っています。故に旅行の目的でも食は高く出ずに、出雲大社のような旧所・名跡が高く出てしまうという結果になっているんじゃないかと思います。

3.特産品と地域のエピソード

 では、なぜ知られていないかということですが、例えば食を目的にするというときによく出るのは特産品です。例えば松阪ですと牛肉、魚沼ですとコメ、夕張だとメロン、下関はふぐ、伊勢ですとエビ。これはもう名前になっちゃっている、ということです。

では、こうした特産品はなぜ有名になっているのでしょうか。

 例えば「松阪牛」は、調べたところ正確には「松阪うし」、と呼ぶそうです。例えば1935年に行われた賞を受賞しているといったことがあります。また、トレーサビリティといった安心安全を約束するということが出荷までシステムとして作り上げられています。松阪牛は「子牛を産んでいないメスの牛のことです」という権威が確立していて、質を高く保つためのエピソードが非常にしっかりと確立していることがあげられます。ほかにも、寿司屋などで非常に高く出されている商品である「関サバ」。こちらは人の手で釣り上げたもので、非常に大切に扱っているというところでの質の高さをうたっていらっしゃいますし、質についても荒波にもまれたサバであるから脂がのって身がしまっている、ということをしっかりと表現していらっしゃいます。あとは、一流のシェフや料理長が語る、といったことを使ってさらに権威付けがしっかりなされている。そしてそれが印象として根付き、流通がある意味限られてしまっているところがブランドとして確立されているところではないかと思っています。

 ちょっと厳しい言い方をしてしまうかもしれませんが、正直、「宍道湖七珍」といっても七珍だけでイメージするのはちょっと厳しいな、ということがあります。「すもうあしこし」というかたちで覚えて7つあることを表していますが、はじめて「宍道湖七珍」と聞いた方が何を連想されるかというと、ほとんど何も出てこないというのが正直なところかと思います。そこに行った時にそれぞれの名前などを正確にはっきりと打ち出すような広報をしないと、正直マーケティングとして根付きにくいと思います。

 この地域は豊富にエピソードがあると思うんですね。例えば汽水湖であるという環境、そしてラムサール条約に登録されているという現状など、お話しすることはたくさんあると思います。ただしその部分がマーケティングの方々や市場にあまり語られてはいないのではないかと思います。まずは地元の方々がそのことを話ができること、それを外へ発信していくことが大切だと思います。

 また、宍道湖は「宍道湖七珍」どころか多種多様な水産物の宝庫であることは、むしろそのようにうたっていったほうがいいのではないかと感じるところです。

 例えばの話ですが、昨今観光で話題になっているのが宮崎県です。東国原知事によりますPR。マンゴや地鶏などの物産の売り上げがPRによってどんどん伸びていますし、観光の入れ込み数も増えています。そこで、例としてマンゴを取り上げますが、マンゴの名前を皆さんご存知ですか。マンゴには「太陽のたまご」という意味があります。宍道湖の夕日というのはとても有名ですし、夕日予報なども出されています。例えばそれを水産物と組み合わせてブランド価値をつけていくということもできるのではないでしょうか。そういった意味でのエピソード作りは必要なのではないかと感じています。

 三重県は県のブランドを作っています。例えば松阪牛、伊勢エビなどをブランド認定して県外に発信し、また地産地消も進めています。地産地消も地域できちんと流通していれば、観光客にも提供することができるんですね。そういうことも三重県はうまく確立させています。先ほど石倉様から観光客を呼ぼうという話がありました。今はちょっと東京に出ると簡単に美味しいものが食べられますが、やはり地産地消は進めていかなくてはいけないと思います。

 また、北海道という響きを聞いて、食材が美味しそうという印象を持つ方は多いと思うのですね。いろんな食べ物が連想されると思うのですが、例えば「雄大な自然に育まれた」といった冠が出てくるかもしれませんし、「豊富な漁場」などもあります。雄大な自然というキーワードから観光を考えるとのんびり観光できるよね、という印象も持たれるかもしれません。

 でも、このキーワードで考えてみると、島根も当てはまらないかな、という気がするのです。雄大な自然、まさに私がもっている印象ですし、豊富な漁場もあります。また、島根に来られた方に感想を聞いてみると、人がいいね、時間がゆっくりしている、という印象を持たれる方が多いように感じます。温泉も豊富ですし、まさに北海道に並び立つ、までいけるかどうかは分かりませんが、島根あるいは山陰、というイメージが確立することで物産や観光が大きく変わっていくのではないかというように感じております。

4.地域の理解と自信

 最後にまとめますと、非常に良い場所であると私個人は思っています。私も東京から来まして、例えば疲れたサラリーマンなどがここにくると自分のリズムなどが取り戻せる場所ではないかと思っております。表現しづらいところもありますが、このようなことをみなさんに知っておいていただければと思っております。

 島根といえば、山陰といえば、宍道湖といえば、ということが言葉でイメージできるようなものが、もっと出てくればいいのではないかと思っています。そのために私もお手伝いさせていただきたいと思っています。

あわせて皆さんにお願いしたいのは、もっと自分の地域に自信を持っていただきたいということです。観光関係の方々がよくおっしゃるのは「島根や山陰は自慢できるものがないな」ということで、高倉健のように不器用ですから、みたいなことをおっしゃる方が多いのが残念です。しかしながら外から来ると、とてもいいものがあるのです。食材もたいへん美味しいです。ですから、こういった勉強会をとおしてもう一度認識し、外から来られた方に対して自慢していただきたいと思います。特に南の県にいくほどその傾向が強いです。私の母の実家は高知ですが、これを食べろというのがどんどん出てくるんですね。とても簡単なものといっては失礼ですが、そういったものでも観光客というのはそうしたコミュニケーションや知識が仕入れられたとか、良くしてもらったなど、ことがらひとつでその県に対する印象ががらっと変わります。また、今ではネットによる口コミで悪いことはすぐに伝わり、良いこともじわじわとですがちゃんと伝わります。ですから観光で一番大切なことは、来ていただいた観光客の方が地元の皆さんからどう対応していただき、満足していただいたかが一番大きなところであると言えます。是非そのあたりを皆さんと一緒に考えていければと思っております。

座談会宍道湖・中海の恵みの活用について考える

座長座談会(座長とパネラー)

 先ほどから伺っております恵みをどのように広げていくか、そして地域活性に活かしていくかについて議論を進めたいと思います。

 それではまずパネラーの方に感想から伺ってみたいと思います。まず食の方から竹本さんにお願いしたいと思います。

竹本

 私はいろんな方とお話しして思ったのが、ワカサギがまだあまり獲れなくなってきているということで、環境面などで宍道湖の豊かさというものが仮に減少しているということであれば、これは観光面からみても大打撃ではないかと思いました。島根県は出雲大社や石見銀山など、ずっとあるものもありますが、来てみて終わりではなくて、そこに出かけてどう過ごすかということが観光においては大切な部分でもありますので、その点において環境面のよさが減退してきているということであれば少し危機感を覚えるところでございます。その辺りのところについて意見交換の中でどのように改善を進めていくことができるかについて触れることができればちょっとでも前進できるのではと感じております。

座長

 ありがとうございました。環境の話がたくさんでていたようですが、中島さんはどうでしょうか。

中島

 私の立場から言えば、首都圏にどうやってこのような恵みを拡大し、PRしていったら良いのか、ということになるかと思います。今日召し上がったり食べさせていただいたもの(※)は、宍道湖周辺のみなさんは日頃召し上がったりする機会は多いのでしょうか。実は、こういったものを郷土ではよく食べるといったようなことを言ってみても、実際と異なっている場合はすぐに見破られます。やはり地域でよく食べられているとか、このような調理方法で食べているということや、消費量が多いことなどのバックグラウンドがないと首都圏に伝わりません。訴求力が弱くなります。観光資源や環境などさまざまなお話が出ていますが、やはり根は同じところにあるように感じます。両方ともバランスよく持続的に活用されていること、資源が地域でも活用されているし、またその一部が首都圏にも流通できるというかたちにならないといけないと思います。まず地域の方がこのような料理を日常的に食べることが大切なのではないかと思います。

座長

 竹本さんも中島さんも観光と環境は根は同じところにあるというお話でしたが、環境面については石倉さんはどのような印象でしょうか。

石倉

 私は、本日魚を提供させていただきましたが、何が出るかなと楽しみにしていました(※)。私は皆さん方とお話しして思うのですが、これだけの人がみんなで東京に集まって一週間くらいPRを行ったら、1億円くらいすぐに売り上げられるのではないかなと感じました。それくらいの気持ちで取り組んだりパワーを持って活動していきたいと思いました。

座長

では中村さんお願いいたします。

中村

 本日はラムサール条約がテーマということで、非常にユニークな会であると感じました。私が言いたかったのは、長い間水産関係の仕事をしていましたが、水産や漁業というのは自然界の生き物を獲って成り立つものなので、ではその生物は何によって影響されるかというと、暮らす環境にあるということです。例えば、シラウオやワカサギが減少しているということも、その生息環境が変化してきているということです。これは人の手で簡単にかえることはできませんから、ラムサール条約の理念である賢明な利用や環境を守る、あるいは修復していくことが漁業においてはとても大切であると感じています。ここはとても大切なところですので、このような観点でまた漁業などをみていただきたいと思っております。

座長

 環境が大切だとのご意見が出ました。私は安来に暮らしておりますが、かつては行商の方が中海でとれた魚介類を持って売りにこられるということが普通にみられました。それで、今の季節はどんな魚介類が獲れるかということもよくわかったりしたものです。しかし、なかなか今日いただいたもの(※)は日頃食べることはできないようになっています。地域で獲れたものを地域で消費することが大切だ、というお話をもとにみなさんから感想などをお聞きしたいと思います。

会場から座談会の様子

 非常に昼食をおいしくいただきました(※)。久しぶりに郷土の味をいただいたように思います。なぜかというと、日頃私たちは外国産の和食を食べているというのが実態ではないかと思います。日本は食の危機を迎えております。特に、環境の面において島根県では環境農業の面でエコロジー産物などを推進しており、やがて県外にも出荷するようです。しかしながらこれらはコストの面、そして流通の面においてたくさん課題がございます。そして、地域においては地産地消の推進と地域に根ざした食生活と食文化をいかにしていくか、特に松江市においては食文化が豊かなところです。身近なところをもう一度見直すことが大切ではないかと思っています。

 そして、2番目に感じることは食の安心安全です。それはシステムの確立が大切だと思います。というのは、宍道湖をはじめ、堀川など身近な環境が汚れているのではないかという状況があります。水と緑の森づくりという組織やエコロジー推進協議会など、さまざまな団体がございます。しかしながらこれらの組織の横のつながりがない。また、竹本先生がご指摘された観光の面においてもたくさん協議会が産まれていますが、産まれているだけでつながりが見えない。島根県にお見えになったお客様の観光案内をしておりますと、「食べ物がおいしいですね。どのようにして買って帰ったら良いでしょうか。」という話が出たりします。そうすると、とんと困る訳です。「物産館へ行ってください」程度しかご案内できない訳ですが、そこには置いてなかったり、またお客様が遠方から来られていると入手することができない訳です。もうちょっと直売の店を増やすなどの取り組みが欲しいなと思います。私は島根の食はおいしく、安心安全ですとお伝えしています。お客様にもそのように感想をいただきます。今日伺ったお話を私の今後の活動にいかしていきたいと感じました。


座長

 これだけいろいろ取り組みがある中で、もう一歩その動きを進めるにはどのようにしたらよいか、ということについてご指摘をいただいたように感じます。その他にもご意見を伺いたいと思います。

会場から

 マーケティングの立場のお話について申し上げたいのですが、実は「宍道湖七珍」といいますが、あれらがすべて一時期に獲れるのは今の11月くらいの時期しかありません。あとはほぼ不可能です。それをワンセットとして提供することは本来無理があるように感じます。今日も試食してみて思ったのですが、やはり魚というのは旬の時期、一番おいしい時期に食べることが一番いいと思います。それを七珍にこだわって無理にそろえてワンセットで食べてしまうということが、他産地のもので補わないといけないという状況につながってしまうと思います。

 それで私が考えるのは、今日味わってみて七珍以外の生き物を地元でも食べてみて、七珍にこだわらずに美味しいと感じたものを観光業社さんや流通業社さんなどに紹介することがいいのかな、と思います。春夏秋冬別に七珍をそろえることなどもいいかと思います。やはりグルメ指向の方というのは、我々地元の人よりも舌も肥えているし情報も持っていらっしゃいます。そのような方に、宍道湖・中海の食を伝えていくということには、やはり地元の人が食べているものや流通しているものを伝える、ということが一番のような気がしますが如何でしょうか。

座長

 さすがに日々宍道湖・中海を研究していらっしゃる方の意見だと感じました。

中村座談会(中村氏)

 七珍の話しはその通りだと思うし、宍道湖七珍の本来の意味を考える必要があると思います。例えば、本庄エビは七珍に入っているが実際はぜんぜん獲れていない。また、ハゼは七珍に入っていないがそれでいいのか。考えなしに七珍と言い続けるのもどうかと思います。今一度見直していく必要があると思います。この際少し考えてみたいですね。もっと美味しいものはたくさんありますよね。

会場から

 今日も通ってきたのですが、中海干拓が中止になり森山堤防が開削されているため、どんどん塩分が濃くなっていきます。中村先生に伺いたいのですが、宍道湖のシジミと開削による塩分濃度の上昇はどのような影響をもたらすのでしょうか。

中村

 今のお話は重要な問題です。国交省も、検討委員会を行うなどさまざまな機関が調査研究しています。個人的にも大変気になる問題です。特に大橋川の浚渫は中海から入ってくる塩分や酸素の変化、そして最も気になるのはシジミの産卵場所の変化という点です。夏場の無酸素状態など心配です。ただ、どうすればいいのか、どうなるのか、ということについてはまだはっきりしたことは分からないので言えないのです。ただ、とても心配をしていますので、今後も引き続き見守っていきたいと思っています。工法もいろんな方法がありますので、よく研究してから一番良い方法を使ってほしいですし、また工事前後でも環境が変わりますから、その調査は継続してほしいです。また、調査をする中でその方法が正しいかどうかの検証も大切なことなので、是非行ってほしいです。そして工事の事後調査も十分にやってほしいと個人的には思っています。

会場から

 私は出身が三重県なのですが、たくさんの産物があります。その点について、宍道湖の産物はほとんど思い浮かばなかったので大変残念でした。また、今日いただいたお料理(※)も私にとっては割と日常食だったんです。もうちょっとおしゃれっぽいように調理法を研究するなどしてほしいと思いました。また、「こいこく」やフナなどはアンテナショップでは販売されるのでしょうか。

中島

 出ておりません。コイやフナなどはやってみたい気もしますが、ただ飲食店の方では扱っていたりしますので、持ち帰って検討したいです。

会場から

 私は広島から来ましたが、フナは広島県やほかの地域では食用というよりは観賞用という印象が強いので、とても食べることができないのです。広島で帰ってフナはおいしいよ、食べてみようと伝えても「そんな残酷なことはできない」と言われたりもします。住んでいる地域によって食文化は違うので、他地域の方にどうやってそのおいしさを伝えていけばよいのか、ということから始めないといけないのではないかと思います。もっともっとPRを宮崎県のように島根県知事にも出ていただいて、進めていったらいいと思います。石見銀山が世界遺産登録された今、ここで出て行くことが必要だと思います。

会場から

 「コイこく」やフナの刺身の話が出たのですが、私は宍道湖・中海のことについてさまざまな地域で聞き取りなどを行っています。フナについては「洗い」ではなく、たまごをまぶして食べるような調理法は、島根ですと出雲の方や津和野、江の川の一部など、とても局所的に点在している状況です。宍道湖・中海でいうと、中海ではぜんぜん食べませんし、米子市でも食べません。このように食する方法は、局所的に食文化が林立しているようです。とてもローカルなエリアで「これはうまい」というものがあるので、もう少しみんなで地域を越えて交流して勉強し、うまいもの探しをする必要もあるかと思います。

会場から

 アンケートを書こうとしたのですが、宍道湖の生き物でよく食べるものは?という質問があり、はたと困りました。シジミ以外思いつかないんですね。石倉さんに伺いたいのですが、漁獲量の面からいって、例えばスーパーなどシジミ以外の魚介類で流通しているものはあるのでしょうか。

石倉

 シラウオですとずいぶん流通していますし、ハゼになるとこれは数が少ないです。


石倉

 私は「宍道湖七珍」というのは響きはとても良いとは思いますが、実際にたべておいしいものこそが本当の七珍だと思っています。自分が食べて自分が勝手にこれはうまいと思うことが本当ではないかなと思っています。

会場から

 そういった魚介類はスーパーにならんだりするのでしょうか。

石倉

 シラウオなどは並びますし、寒フナもそうですね。流通の面において言うと、漁師価格というかそれと、スーパーで売られている価格では大きく違います。漁師さんを知っている方は直接買いに来たりもします。そういった状況を見ると島根の流通の問題点も感じることがあります。だからこそ食べていただけない面もあるのではないかと思います。ただ、漁師は材料をのみ提供するだけですから、それを仕入れて、加工して、販売するとなるとそれだけの人の手が加わっている上に、フナはハマチなどを刺身にする感覚とはちょっと違って難しいです。そういう意味ではできるものとできないものがあるのも事実です。ただ、今日食べていただいたセイゴなど(※)は仲買人さんはとらないんです。ただでもいらないと言うんです。何百キロも獲ったものを返すしかありません。そういったものを食べてもらえればまた違ってくると思います。漁師は、命を獲って生活しているものですから、それを無駄にするようなことはしたくないんです。引き上げて傷ついて死んでしまう生き物を返してしまうことこそ残酷な話です。また、スズキなどは肉食ですから、増え続けるとシラウオなども食べられてしまいます。ある程度食べて調整しないと、なかなか宍道湖の生態系も守れないと思います。ですから、市場に出せるものはたくさんあります。季節によってはテナガエビもハゼも、スズキもセイゴも出せます。地産地消も十分まかなえますし、外にも出すことができるでしょう。もう少し流通をうまくやっていくことが大切だと思います。

座長

 石倉さんのお話にもありましたが、せっかく獲れても食べられていないという現実。そして流通経路などさまざまな問題が出て参りました。このような現状の中、観光の面においてどのように活かしていけばよいか、最後に竹本さんと中島さんから一言ずつアドバイスをいただきたいと思います。

竹本座談会(発言する竹本氏と中島氏)

 食に関して申し上げると、今はテレビやネットなどで情報はたくさん仕入れいることができます。私も東京の築地という美味しいものがたくさん手に入るところに住んでいました。ではなぜ人は美味しいものを求めて旅行するのかというと、その場所でしか食べられないもの、というのがひとつのヒントになるかと思います。例えば流通しないもののひとつの例として、足がはやいものがあります。流通させているとだめになってしまう、地元であれば食べられる、というのは外にはあまり言いたくないことなのかもしれませんが、少しでもそれを外に対して発信していくことができれば人を呼ぶ一つのきっかけになるかと思います。

 また、先ほどから伺っていて大変残念なのは今日の魚介類(※)があまり食べられていないことがあります。旅行に来られた方が「これっておいしいの?」と尋ねたときに、「私も最近食べられないんだよね」なんて返事をされると何の魅力もないというか、むしろそこで訴えかけられる何かがあると観光では有利ではないかなと思います。

 先ほどのお話にありました流通の点においては、漁師の方と流通の方が直接お話をされるとか、調理方法についても新しい紹介などがあれば、それらがノウハウとして蓄積され、外ににじみ出るようなかたちで魅力的な地域になるかと思います。

中島

 東京にいていろいろメディアの方に聞かれることのなかで、「島根の有名な郷土料理はなんですか」というのがあり、私はいつも返答に困るんですね。例えば「出雲そば」というのはありますが、あれは果たして料理なのか素材なのか判断に困ります。また「宍道湖七珍」については、先ほどからのお話にもありますように、一堂に会した形での提供はあり得ない状態です。食材は豊富なんですが、調理は普通に食べてしまっています、という返答しかできないので、地味な県というイメージがついて回ってしまうように感じています。先ほどコイの話が出ましたが、一方でそれは局地的なグルメであって、同じエリアでも評価したりしなかったりということもあるようです。このようないろいろなきっかけを持って、これがいつ頃の宍道湖・中海のおいしい時期なんだ、ということが分かるようなメニューを一品でも多く増やしていただくことが大切ではないかと思いました。

座長

 みなさん、いろいろな思いを語っていただいて時間が参りました。今まで皆さんが、宍道湖中海に対して感じていらっしゃる思いや取り組みを、賢明な利用として自主的に活かしていくためにはどうすればよいのか、そしてそれを環境保全にどうつなげるのか、そして観光振興にどのようにつなげるのかについて、これからも考えていきたいと想いっています。時間が参りましたのでこれで終了いたします。

※当日は「宍道湖・中海ラムサールの恵み展」を同時開催しました。昼食時に宍道湖・中海で捕れた魚介類の料理を試食して頂いたり、お土産などの展示をご覧いただきました。


今回は、宍道湖・中海の恵みの活用について考えると題して事例発表や意見交換を行いました。恵みという観点からみた県内外の期待感や認知度の問題、代表と思われている「宍道湖七珍」以外の魅力的な魚介類、そして流通や地元での消費など、考えるべきことは多いようです。しかしながら、多くの意見に共通することは、環境を大切にし、恵みを地元から自信を持って発信できるようになることが一番重要なことのようです。それが賢明な利用につながっていくことになります。


宍道湖・中海ラムサールの恵み展

 当日、「宍道湖・中海ラムサールの恵み展」を同時開催しました。

事例発表をしていただきました石倉氏から漁で捕れた食材をご提供いただいたほか、宍道湖と中海の旬の魚介類を集めて、ホテル宍道湖において調理していただき、参加者のみなさまに試食していただきました。

 また、宍道湖・中海の産品やお土産物、景観などの活用例なども展示公開いたしました。

宍道湖・中海ラムサールの恵み展

→詳しくはこちらをご覧ください

 

 


お問い合わせ先

環境政策課宍道湖・中海対策推進室

〒690-8501 島根県松江市殿町1番地
TEL:0852-22-6445