島根PR情報誌「シマネスク」(2022年12月発行)
しまね散歩:西ノ島・浦郷編/ステキな出会いを探します
人がつながる
交流の港町
コミュニティ図書館「いかあ屋」
日本海の小さな島に約2600人が暮らす西ノ島町。カルデラの風景が広がる海沿いのエリアにあるのが、浦郷地区の街並みです。
午前7時半、朝の浦郷漁港が活気づきます。漁師さんが港で手際よく箱詰めしているのはカンパチやイサキ、ブリ。次々と競りに掛けられていきます。
「地元で揚げた魚は新鮮なうちにお客さんに届ける。島の漁師の気概です」。魚を岸に降ろしながら、船長の白野将一さんが話してくれました。
隣にある観光交流センターでは、よろず朝市が開かれます。テーブルの上に並ぶのは、野菜や花、手作りの餅、手芸品。住民同士でつながりを持とうと開かれているマルシェです。
朝市をながめていると、東京都から家族でIターンした今井優佳さんに出会いました。「お店の人に、ザクロをおいしく漬ける方法を教わりました」と嬉しそう。3歳の息子さんはいつの間にか、他の年配のお客さんの手をにぎってお散歩。「この島だと、人見知りせず『おばあちゃん、おばあちゃん』とか言って、すぐ仲良くなっちゃうんです」と笑う今井さん。
お昼時、観光交流センターの中にある小さな鮮魚店に人が集まっています。店を切り盛りするのは、すし職人の扇谷博志さん。浦郷で鮮魚店が閉店し「港町から魚屋がなくなるのは寂しい」と、開業したのだそう。
一番人気は、地元の魚介類をふんだんに使った海鮮丼。「西ノ島で魚を食べてもらうために頑張りたいですね」。忙しそうに働く姿に、島を支えたいという熱意を感じました。
海岸沿いの道をのんびり歩いていると、コミュニティ図書館「いかあ屋」を発見。入ってみると、ジュースやお菓子を持ち込んで、自由に本を読めるスペースがあります。窓のガラス越しに海を見ながら過ごす空間には、他の図書館にはないにぎやかさと景色が広がります。
運営する住民グループ・いかあ屋を育てる会の松浦道仁会長は「これまで島には図書館がなかった。図書館に行ったことがない、いわば素人が、欲しいものをそのまま思い描いたからこそできたんですよ」と誇らしげ。
暗くなってくると、街の高台に立つ専念寺で明かりがともります。地域の人の希望で始まった、月1回の写経の会です。
夜の静けさに包まれた本堂では、参加者たちが筆を握り、経文を書き写します。住職の法話を聞いた後は、楽しい茶話会の時間。常連の清水ゆかりさんは「筆を持つと無心になれます。日々のストレスを忘れますね」と笑顔がこぼれます。
島への愛情や思い入れがにじむ、浦郷で出会った人たち。そこには、人と人がつながる穏やかな生活がありました。
新型コロナウイルス感染防止に配慮して撮影しています。
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