しまね散歩:雲南・木次編/ステキな出会いを探します
桜、焼き鯖、オロチの神話
愛情を注ぎ、町のシンボルに
石田魚店
海岸部と内陸を結ぶ交通の要衝として発展した雲南市木次(きすき)町。現在は斐伊川堤防の桜並木が美しい「日本さくら名所百選」の町として知られています。
トロッコ列車「奥出雲おろち号」が走るJR木次駅から歩き出した旧道に、ひときわ高い煙突を見つけました。日本酒の蔵元・木次酒造です。店に入ると、ほんのり漂う甘い香り。顔を出してくれた蔵元杜氏の川本康裕さんにお勧めの飲み方を尋ねると「料理が進むような酒です。ぜひ食事しながら楽しんでください」とのこと。木次には、ヤマタノオロチを酒に酔わせて退治した神話も残るだけに、「神話の舞台に伝わる酒造りを、絶やすことはできません」と川本さん。米や水も地元産にこだわって仕込んだ酒は、もうすぐ新酒の季節です。
木次酒造を後にすると、香ばしいにおいがしてきました。石田魚店の店先で、焼き鯖づくりの真っ最中です。「昔は木次が鮮魚の届く限界地だったから、山間部へ運ぶために焼き鯖にしたんですよ」と店主の石田秀樹さん。丸ごと一匹を竹串に刺した焼き鯖はインパクト抜群。いわば町のソウルフードです。
トロ箱のまま並んだブリやタイにも目移りしていると、「これも昔からよく食べるよ」と見せてもらったのは、地元で「ワニ」と呼ばれるアブラツノサメ。「焼いたり煮たり、酢の物でもおいしいよ」と常連客の男性も教えてくれました。
出来たての焼き鯖を買って桜並木を目指すと、明治・大正の面影を残す旅館「天野館」が目に留まりました。お願いして客室に入れてもらうと、窓の外は一面の桜。思わず歓声をあげると、「ひいじいさんの時代に、洪水から町や堤防を守るために桜が植えられたそうです。斐伊川は暴れ川だったから」と4代目の天野裕二さん。美しい景観の意外な誕生秘話に再び驚きです。
斐伊川堤防は全長2キロにわたって桜が植わり、花のトンネルは毎年多くの観光客を魅了します。市民にも愛されている町のシンボルを手入れするのは、市の「さくら守」遠田博さん。「古い木は樹齢100年。病気になったり気象の害を受けたりしたら、手当てや植え替えをしています。桜も生き物ですから」。受け継いだものに注がれる愛情が、町の魅力に磨きをかけていました。
新型コロナウイルス感染防止に配慮して撮影しています。
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