すまいる
安来節演芸館支配人・増田明美さん
必要とされる幸せが原動力
頭に豆絞りの手ぬぐいを巻き、腰にびく、鼻には一文銭。どじょうすくいの男踊りのいでたちが、安来節演芸館の支配人兼マスコットガール・増田明美さんの“制服”です。来館者を満面の笑みで出迎え、記念撮影を求められるとポーズを決めて気さくに対応。1日4回ある安来節の上演時間になれば、開演前のあいさつへ向かいます。
「この鼻当ては五円玉じゃなくて一文銭。割り箸を挟むのは間違いですよ!それでは“どうじょ”ごゆっくり」
ユーモアたっぷりに口上を述べると、客席から笑い声が響きます。「どじょうすくい踊りの笑顔を見たら、誰もが笑顔になる。こんな民謡って、ほかにないと思うんです」という増田さんの言葉に、安来節愛がにじみます。
もともと日光江戸村劇団で役者をしていた増田さんは2006年、安来節演芸館で常時公演される芝居の出演者として島根に来県。安来で暮らすことになりました。芝居の合間にはどじょうすくいの衣装を着て、進んで子どもたちとどじょうすくい体操やパラパラをして交流。その気さくな人柄を見込まれて、4年後に芝居の廃止が決まると「ここに残って、演芸館のおもてなしをしてほしい」とスカウトされました。
最初は地元埼玉に帰るつもりだった増田さん。ただ、「おもてなし」に喜びや楽しさを感じていたこともあり、誘われるうちに「自分を必要としてくれる場所で自分の花を咲かせたい」と演芸館スタッフに転身しました。
安来節も習い始め、唄は准師範、銭太鼓は師範の腕前です。仕事だけでなくプライベートでも安来節に親しむ増田さんを、親世代の師匠たちは「明美ちゃん、上手になったのよ」と目を細めて自慢します。
「空気も水もお米もおいしくて、人も温かい。数カ月の長期出張のつもりだったのに15年も暮らしてきたのは、島根が大好きだから」。キラキラと輝く中海や宍道湖の景色は、幸せを感じるお気に入りのスポットになっています。
「どうじょ、ごゆっくり」と開演前のあいさつをする増田明美さん
休日は清水寺など地元の名所へ
銭太鼓の師範として出演することも
どじょうすくい体操を教える増田さん
ますだ・あけみ
1981年生まれ、埼玉県出身。高校卒業後、東京都内の専門学校で演劇やミュージカルを学び、日光江戸村劇団(栃木県)へ。2006年の安来節演芸館オープンとともに来県し、同館スタッフを経て2020年1月に支配人に就任。マスコットガールの名前「きゅっきゅちゃん」はどじょうの鳴き声が由来。どじょうすくい体操やパラパラを紹介するインターネット動画に出演するなど、旺盛なサービス精神で活躍中。
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