ものづくり・しまねのマイスター
島根には、独自の技術により、国内外で高い評価を得る企業や伝統工芸品があります。携わる人々を通して「島根のものづくり」の魅力を紹介します。
神楽面職人/柿田勝郎さんと兼志さん・柿田勝郎面工房(浜田市)
石見の人々にとって、神楽は生活の一部。地元には多くの神楽団があり、その活動を裏から支えるのは、面職人・柿田勝郎さん、兼志さん親子の作る神楽面です。和紙でできた軽く表情豊かな面は、石見神楽の舞を一層魅力的にしています。
土台の粘土をたたき壊し、和紙の面を取り外す
柿田勝郎さん(左)と兼志さん
柿田さんの面で舞う石見神楽
眉をつり上げた勇ましい鍾馗(しょうき)に、口の裂けた恐ろしい悪狐。柿田さん親子の工房にずらりと並ぶ表情豊かな神楽面には一つとして同じものはなく、基となる設計図もありません。
制作の依頼を受けると、二人はまず舞手の頭の中にあるイメージを丁寧に聞き取ることから始めます。「私らは芸術家ではなく、職人。お客さんの求める表情を形にしていくだけです」と勝郎さん。
面の表情が定まると、粘土で土台となる型を作ります。かつてはデッサンをしてから型作りに取りかかったという息子の兼志さんも、今では熟練。迷わず手が動き、ぎょろりとした目玉や鋭い牙、深いしわも見事に形にしていきます。
粘土が乾くと、石見地方で作られる丈夫な石州和紙を型の上に貼り、へらで押さえつけて細やかな凹凸を作っていきます。粘土の型はそのままでも飾っておきたくなる出来ですが、面になるのは和紙の部分だけ。和紙が乾いたら、型は木づちでたたいて壊してしまいます。
こうしてできた和紙の面は、すっぽりとかぶる大蛇(おろち)の頭でも、せいぜい2kg弱。木彫りの獅子頭なら15kgはあるので、その軽さは驚くほどです。勝郎さんいわく「面が軽いからこそ、ダイナミックでスピーディーな動きができる。それが石見神楽の舞に迫力を生んでいるんです」。
これまでに二人が創り上げてきた神楽面は1000種類以上ありますが、二人とも「作っただけでは完成ではない」といいます。
「神楽面は、舞が入って初めて息が吹き込まれる。我々の手だけでは完成しないんですよ」
石見神楽を裏方として支える二人の言葉に、壁一面の神楽面が今にもうなずきそうです。
先割れの筆でひげを描き、仕上げる
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柿田勝郎面工房(TEL:0855・27・1731)
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