島根PR情報誌「シマネスク」(2022年3月発行)
しまね散歩:奥出雲編/ステキな出会いを探します
山あいの町に息づく
こだわりの手仕事
出雲横田駅
斐伊川の上流、豊かな水と森林に恵まれた奥出雲町。たたら製鉄で栄えたこの町では、多彩な食や木工芸品が今に伝えられています。
夜明け前、暗い町並みに真っ白い湯気が上がると、辺りに蒸した大豆の香りが漂います。横田地区にある石田食品の作業場では、店主の石田信雄さんが豆腐づくりの真っ最中。「にがりとうふ3、厚揚げ2」と納品先ごとに1個単位でその日の注文数を壁に張り出し、豆乳の温度やにがりの量を加減しながら顧客ごとの好みの固さに豆腐を仕上げていきます。
「昔ながらの手寄せ製法だからできること。工場で大量生産するのとは違って手間と時間をかけるのが、小さな町で豆腐屋を続けていく僕のやり方」と石田さん。出来たてのおぼろ豆腐はほんのり温かく、濃厚で甘味のある豆の味に素材へのこだわりがにじみます。
厚揚げや湯葉を作るスタッフが集まる頃には、登校する児童の明るい声が響いてきました。店を後にして町を歩くと、太いしめ縄が飾られた神社のような建物を発見。JR木次(きすき)線出雲横田駅の社殿造りの駅舎です。ホームに到着した列車から大勢の中高生が降りてくると、笑顔と活気も町に広がります。
次にのぞいてみたのは、駅の隣にある雲州そろばん伝統産業会館です。受付の内田典子さんは横田育ちで、祖父も夫の文雄さんも雲州そろばんの伝統工芸士。「昔はそろばん工場がそこらじゅうにあって、軸に玉を通すのは子どもの手伝いだったんですよ」と教えてくれました。
昼になり、黄色い建物に目を引かれて「バーガーハウスピコピコ」へ。「僕自身ハンバーガーが大好きで、食事として食べ応えのあるものを作りたかった」という店主・荒金勇吉さんのお勧めは、しまね和牛100%のパティに自家製ソースをかけた一品です。かぶりつくと、どっしりした肉の旨味がたまりません。
妻と切り盛りしていた店には3年前から息子の望夢さんが加わりました。「店を続けられるか不安だったけど、息子が考えた季節商品がお客さんに人気でね」と荒金さんは笑顔を見せます。
店はもともと、そろばん工場の食堂だったといい、隣では今も製造が続いています。「これだけは機械じゃできん」と黙々と仕上げのやすりがけをする職人の姿に、手仕事を大切にする町の誇りを感じました。
新型コロナウイルス感染防止に配慮して撮影しています。
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