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2009(H21)年 <  2010(H22)年 年報  > 2011(H23)年
目次I.概要II-1.発生状況の解析と評価II-2.定点把握疾患発生状況III.検査情報
全数把握週報(インフルエンザ・小児科・眼科・基幹定点)月報(STD・基幹定点)精度評価疑似症
1.発生状況の解析と評価 |発生状況表5.指数(県)表6.指数(地区)表7.地区表8.月(県)表09-1.月(東)表09-2.月(中)表09-3.月(西)表09-4.月(隠)表10.年齢
3)インフルエンザ定点感染症の流行状況:表5〜10、図1〜4
図1 インフルエンザ報告者の年齢区分割合(経年)  1999(平成11)年4月より内科定点、15施設が加わり、計38の定点となり11シーズン目となった。2010年のインフルエンザの報告数は2,196件(定点当り57.8)と2000年以降で最少であり、今年度の数を2000(平成12)年〜2009(平成21)年の10年間の年間平均患者数で除した流行指数も0.30と小さかった。昨シーズンの新型インフルエンザは2009年11月下旬にピークがあり、2010年1月には衰退に向かっており、1〜4月の合計は1,976件であった。11月下旬より散発的な報告が漸増し出したが、11〜12月は未だ187件で51週に定点当り1.26/週と1.0を超えた。なお、2001年の2,323件、2002年の2,547件がここ10年のこれまでの最少であった。
 年齢別では、乳児2.6%、1〜4歳19.9%、5〜9歳25.3%、10歳代21.7%、20〜30歳代21.6%、40〜50歳代6.6%、60歳以上2.2%であった。成人例は30.5%を占める(2008年度は22.0%)。
4)小児科定点感染症の発生状況
(1)全県的な感染症の流行状況:表5,図2)
図2 流行指数 〔2009年報告数/(1999〜2008年の平均報告数)〕:全県  2010年のインフルエンザも含めた総患者数は22,271件と、インフルエンザが少数であったにもかかわらずここ11年で5位と中位で、流行指数も1.01であった。特に感染性胃腸炎と流行性耳下腺炎が多かったことによる。
ア)患者報告数が特に多かった疾患― ( )内の数値は流行指数
・流行性耳下腺炎:1,758件(1.97)。東部の流行が特大(指数3.88)で、2006年(2,501件)以来の大流行になった。
・感染性胃腸炎:11,753件(1.55)。2006年から5年、大流行が続いているが、本年は第1位であった。2010年は1〜4月と12月に1,000件を超えた。これまでで最多の2008年度は2007年11月〜2008年3月と12月〜2009年4月に大流行した。
・A群溶連菌咽頭炎:1,359件(1.39)。全国と同様に2006年より大流行が続いたが、2010年はここ11年で第4位に下がった。
イ)患者報告数が例年並みであった疾患― ( )内の数値は流行指数
・水痘:1,909件(1.06)。ここ11年では毎年1,593〜2,215件の報告があり、変動は小さい。本年は第4位の多さであった。全国的に2009年12月〜本年2月の流行は例年より小さかったが、その後は例年並みに戻った。
・手足口病:897件(0.98)ここ11年で年間474〜1,651件と比較的に変動が大きく、本年は第6位と中位であった。
・ヘルパンギ―ナ:688件(0.90)。ここ11年では年間372〜1,105件の報告があり、比較的に変動は小さく、第7位の件数であった。
ウ)患者報告数が例年より小さかった疾患― ( )内の数値は流行指数
・突発性発しん:703件(0.83)。「流行」とする疾患ではない。2000年より681〜1,093件と変動幅は小さく、本年は少ない方から第2位であった。
・咽頭結膜熱:334件(0.80)。2006年に全国と同様に特大の流行(1,162件)があったが、以降、漸減している。2004年以降、件数が増したが、その中で最少であった。
・伝染性紅斑:82件(0.33)。2006年の流行(936件)した後、非流行年が続いている。これまで3年間の非流行年を挟み、1〜3年の流行年になっている。
・百日咳:7件(0.50)。2000年以降では一桁の年が7年、二桁の年が4年ある。
エ)RSウイルス感染症―
2009/2010年シーズン(7月〜6月)は488件(東部264件、中部151件、西部73件)。全県で46週に10件を超え、ピークは4週と5週の37件と36件であった(前シーズンのピークは51週の58件)。13週には10件未満になった。なお、2004/2005年以降2008/2009年まで、32件、149件、250件、238件、346件である。
2010/2011年は全県で47週に10件を超え、12月までに計206件(東部108件、中部71件、西部27件)で前シーズン同期(170件)を上回っている。

(2)地区・圏域別にみた流行指数:表6、7、9、図3
図3 流行指数 〔2009年報告数/(1999〜2008年の平均報告数)〕:地区別 ア)各地区での流行指数の上位疾患(突発性発しんを除く)― ( )内は流行指数
・東部(隠岐を含む):流行性耳下腺炎(3.88)、A群溶連菌咽頭炎(2.08)、感染性胃腸炎(1.85)
・中部:感染性胃腸炎(1.40)、A群溶連菌咽頭炎(1.30)
・西部:感染性胃腸炎(1.19)
 
イ)定点当りの報告数の地区別、圏域別比較―( )内は定点当りの報告患者数
・咽頭結膜熱:出雲圏域(27.4)、松江圏域(19.0)で多く。西部(7.0)で少なかった。
・A群溶連菌咽頭炎:隠岐(141.0)、中部(89.0)、東部(68.0)、西部(14.9)。隠岐で大流行した。中部で2007年2008年に大流行したが、かなり減った。
・感染性胃腸炎:松江圏域(836.4)、大田圏域(614.5)、出雲圏域(531.4)で多く、いずれも昨年より増加した。
・水痘:松江圏域(103.3)、出雲圏域(100.8)、大田圏域(89.5)で多く、後二者は昨年より増加した。隠岐圏域(43.0)、浜田圏域(27.0)で少なく、後者は2006年より5年連続で最少であった。
・手足口病:松江圏域(58.7)、大田圏域(51.0)、出雲圏域(40.8)で多く、出雲圏域で増加した他は昨年と同様であった。
・ヘルパンギーナ:松江圏域(53.9)で流行した。昨年大流行(90.0)した隠岐圏域(31.0)はかなり減った。
・流行性耳下腺炎:松江圏域(167.9)で全国でも最大規模の流行になった。昨年多かった益田圏域(50.7;昨年60.7)と、雲南圏域(65.5)でもかなりの流行になった。

図4 インフルエンザおよび感染性胃腸炎の月別患者数(全県)、2010年
図5 小児科定点 月別報告患者数(全県-1) 2010年
図6 小児科定点 月別報告患者数(全県-2) 2010年
(3)感染症患者月別発生状況:表8、9、図4〜6
 月別(1か月は4週に換算)にみた県全体の全疾患の患者報告数(インフルエンザを含む)は、1月(3,644件)、2月(2,418件)、12月(2,316件)で特に多く、この3か月で年間の40.6%%を占めた。少なかったのは8月(1,233件)、9月(1,012件)、10月(923件)で、この3か月で年間の15.3%を占めた。 ア)流行の季節変動 (月別報告数は1か月4週に換算)―
・咽頭結膜熱:夏季の流行はなく12月が55件で最多であった。ここ11年では2006年6月に185件と大流行した。
・A群溶連菌咽頭炎:ピークは2月(171件)、最少は9月(53件)で増減を繰り返した。流行の特に大きかった2007年と2008年のピークはそれぞれ6月(189件)と5月(144件)であった。
・感染性胃腸炎:1月(1,582件)、2月(1,460件)、12月(1,314件)で特に多かった。これらは、これまでで多かった2006年11月(1,597件)、2007年12月(1,492件)、2008年3月(1,492件)に比肩する。
・水痘:5月(238件)、6月(210件)、12月(213件)で多く、例年と同様であった。特に大きかった流行は、2006/2007年の冬季の12月412件、1月316件である。
・手足口病:6月(170件)、7月(261件)、8月(116件)と夏に流行した。なお、7月のピークは大流行した2007年の9月のそれ(191件)を超えた。
・伝染性紅斑:非流行年が続いているが、11月と12月はともに13件と微増した。。
・ヘルパンギーナ:7月(145件)、8月(194件)、9月(102件)と流行したが3月(54件)、4月(47件)にも小さい山があった。なお、大流行の2007年7月のピークは447件、昨年7月のピークは310件であり、今年の山は小さかった。
・流行性耳下腺炎:2009年5月頃より益田圏域で流行し出していた。本年5月頃より松江圏域で流行し出し、8月からは月に138件〜222件の特大の流行になり警報が発令された。
・RSウイルス感染症:前述した。

(4)定点別把握疾患の年齢別患者数の分布:表10
・RSウイルス感染症(今年度報告分):乳児前半21.2%、乳児後半22.7%、1歳代28.4%、2〜4歳19.40%、5〜9歳2.5%。乳児が43.9%を占めた。本年は成人例の報告はなかった。
・突発性発しん:乳児前半3.3%、乳児後半59.0%、1歳代33.4%、2〜5歳4.3%で、例年と同様であった。
・1歳代が最多であった疾患:咽頭結膜熱(1歳代の占める割合43.4%)、感染性胃腸炎(19.7%)、水痘(25.6%)、手足口病(28.7%)、ヘルパンギーナ(31.3%)であった。疾患は昨年と同様で、割合も手足口病(昨年は43.4%)を除きよく類似した。いずれも7歳未満の児に広く分布している。
・その他の年齢が最多であった疾患:A群溶連菌咽頭炎(4、5歳、各15.7、15.6%)、伝染性紅斑(3、4歳、各13.4%)、流行性耳下腺炎(4歳、19.6%)。前後5年間の年代がそれぞれ63.4%、54.9%、75.0%を占め、疾患、割合とも昨年とほぼ同様であった。
・成人水痘:2005年21件、2006年24件と近年の増加が危惧されたが、2007年7件、2008年9件、2009年11件、2010年7件と少なかった。大学等への進学の際の予防接種が増しているからかもしれない。
・成人の流行性耳下腺炎:2005年17件、2006年53件、2007年13件と多かったが、非流行年になるとともに、2008年3件、2009年3件と少なかった。2010年は14件と増した。
・百日咳:7件の内訳は6か月未満1件、1歳代2件、成人4件(57%)であった。近年、成人の罹患が問題になっているが、全国小児科定点よりの報告では、成人例の割合は、2007年30.9%、2008年36.7%、2009年40.5%、2010年は第19週までで56.0%と、年々増加している。
これら3疾患の内科定点からの報告システムが望まれる。
−本年の特徴−
・インフルエンザの流行のピークはなく、報告件数は非常に少なかった。
・流行性耳下腺炎が東部で警報発令レベルの大流行をみせ、隠岐を除く他地域でも流行した。
・感染性胃腸炎1,2月と12月に大流行し、ここ10年で最多の報告であった。
図7 眼科定点 月別報告患者数(全県) 2010年 5)眼科定点感染症の流行状況:表5、6、7、8、9、10、図7,8
(1)過去の流行の動向
・急性出血性結膜炎:もともと比較的稀な疾患であり、伝染力が強く症状は激しいものの急性期は短期であるため、地域的な小流行をみせるに留まっていた。このような小流行も1992(平成4)年全県で113件の報告があったものの、1995(平成7)年35件、1996年29件の流行があり、各々、前後1〜2年の継続した報告があった。その後、これといった地域的流行もなく、ここ10年程は年間4例以下の報告に留まり、報告の無い年もしばしばみられる状況であった。
・流行性角結膜炎:1980年代には全県で年間報告数が1000件を超えることもあり、1990年代前半では、200件を超える報告が定常的であったが、1997(平成9)年以降は年間200件を超える報告はなく、2000(平成12)年以降の10年では、2000年の112件、2005(平成17)年の126件を除いてはいずれも年間報告数は2桁に留まっていた。


(2)2010年の発生動向
図8 流行性角結膜炎の年齢区分別発生状況(経年) ・急性出血性結膜炎:直近の10年では著減の傾向を示し。2009(平成21)年には全県で1例の報告であったが、本年も西部で8月に4歳の幼児1件の報告があったのみであり、全くの散発例であった。
・流行性角結膜炎:本年の報告数は、昨年の26件よりも更に減少し、全県で8件の報告であった。地域的には、東部(隠岐地区を含む)4件、中部2件、西部2件と特に偏りはない。件数が極めて少なく、散発例であることから、疫学的な分析については困難な状況である。


図9 基幹病院定点 月別報告患者数(全県) 2010年 6)基幹定点把握疾患の発生状況:表5、6、7、8、9、10、図9
(1)細菌性髄膜炎:中部からのみ9件
 乳児4件、10歳代1件、60歳代1件、70歳以上3件であった。1999年以降、中部からは毎年、報告がある。東部からは2006年より、西部からは2002年より報告はない。
 1999年以降の12年間で計57件になった。年齢別内訳は、乳児17件、1〜4歳10件、5〜9歳3件、10歳代3件、成人24件である。

(2)無菌性髄膜炎:中部からのみ28件
 2007年の108件の大流行を除くと2000年からの年平均は19.8件である。東部からは2006年より、西部からは2002年より報告はない。
 本年の年代分布は乳児7件、1〜4歳3件、5〜9歳6件、10歳代1件、成人11件であった。

(3)マイコプラズマ肺炎:14件
 全国的には秋以降、大流行であったが、島根県ではここ11年で10位と少なかった。中部が11件、浜田圏域が3件であったが、疾患の特性からすると相当数の報告漏れが懸念される。本年の年代分布は5歳未満7件、5〜9歳1件、10歳代2件、20〜30歳代4件であった。
(4)クラミジア肺炎:
 6月に出雲圏域から30歳代の1件が報告された。

島根県感染症情報センター