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2008(H20)年 <  2009(H21)年 年報  > 2010(H22)年
目次I.概要II-1.発生状況の解析と評価II-2.定点把握疾患発生状況III.検査情報
全数把握週報(インフルエンザ・小児科・眼科・基幹定点)月報(STD・基幹定点)精度評価疑似症
1.発生状況の解析と評価 |発生状況表5.指数(県)表6.指数(地区)表7.地区表8.月(県)表09-1.月(東)表09-2.月(中)表09-3.月(西)表09-4.月(隠)表10.年齢
3)インフルエンザ定点感染症の流行状況:表5〜10、図1〜4
インフルエンザ報告者の年齢区分割合
 1999(平成11)年4月より内科定点、15施設が加わり、計38の定点となり10シーズン目となった。2009年の報告数は19,040件(定点当り501.1)であり、今年度の数を1999年〜2008年の10年間の年間平均患者数で除した流行指数も3.14と突出して多かった。1〜6月の季節性インフルエンザ期7,689件と7〜12月の新型インフルエンザ期11,351件の2つの流行があった。前者の流行も、1999年以降で第3位の多さで、後者は12月末までの数字としては第1位で、流行は2010年にも続いている。なお、ここ10年で最大の流行は2003(平成15)年の9,764件(同256.9)であった。
 地区別の報告数は東部(隠岐を含む)7,856件(流行指数4.29、定点当り患者数643.5)、中部6,118件(同3.35、509.8)、西部5,066件(同2.14、389.7)で、流行は東部、中部、西部の順に大きかった。
 新型インフルエンザ(2009年7月以降)のみでは、東部(隠岐を含まない)4,298件(定点当り390.7)、中部3,927人(同327.3)、西部2,668件(同205.2)、隠岐229件(同229)であった。2次医療圏域別の定点当り件数は、松江圏域(390.7)、出雲圏域(329.7)、雲南圏域(320)、大田圏域(265.3)、隠岐圏域(229)、益田圏域(202)、浜田圏域(172.4)の順に多かった。
 季節性インフルエンザは、県全体で週の定点当り報告数が1人以上の流行開始は、2008/2009年シーズンでは、2008年11月の第47週とここ10年で異例の早さであり、ピークは2009年2月の第6週 [定点当り19.8] で、1人未満の流行の終息は5月の第20週と流行期間が長かった。しかし、1月、2月、3月の報告件数は11月から5月の間の総件数の83.0%を占めた。Aソ連型を主体にA香港型、B型も流行した。
 新型インフルエンザは2009年7月1日に県内第1例が確認され、8月第33週に定点当り1.8と流行開始、10月第44週に13.3と注意報レベルを超え、11月第47週37.3、第48週48.0、12月第49週37.0と警報レベルを超え、第53週になお16.8である。注意報レベルを最初に超えた週を圏域別にみると、松江圏域第43週、雲南圏域第45週、出雲圏域第44週、大田圏域第45週、浜田圏域第46週、益田圏域第47週、隠岐圏域第48週であった。なお、ピークの大きさは1999年以降では2003年第4週の52.1件に次いでいる。
 年齢別では7歳、8歳の年齢がそれぞれ7%前後を占め最多であったが、例年の4歳から7歳よりやや高い。 新型インフルエンザに限ると、乳児は1.1%、1〜9歳50.0%、10歳代33.7%、20−30歳代10.4%、40−50歳代3.9%、60歳以上0.8%であった。1歳〜10歳代の83.7%は、2008年の75.9%、2007年の68.0%、2006年の71.2%に比し大きい。乳児は例年の2.1〜5.7%より小さい。
4)小児科定点感染症の発生状況
(1)全県的な感染症の流行状況:表5,図2)
流行指数:島根県
 2009年のインフルエンザも含めた総患者数は34,472件と、ここ10年で最多で流行指数も1.69と大きかったが、インフルエンザを除いた件数は15,432件で、2005年以降では最少であった。 ア)患者報告数が特に多かった疾患― ( )内の数値は流行指数。
・A群溶連菌咽頭炎:1,193件(1.28)。2007年の大流行より漸減したが、2006年より4年、最大規模の流行が続いた。全国と同様である。
・感染性胃腸炎:9,098件(1.25)。2006年からの4年、大流行が続いているが、本年は昨年の9割とやや少なかった。前期は2007年11月〜2008年3月と12月〜2009年4月の大流行があったが、今年度末の流行は中部でのみみられた。年度末の流行は全国的に小さい。 イ)患者報告数が例年並みであった疾患― ( )内の数値は流行指数
・ヘルパンギ―ナ:818件(1.02)。ここ11年では毎年372〜1,105件の報告があり、比較的に変動は小さく、ほぼ中位の件数であった。
・突発性発しん:803件(0.95)。「流行」とする疾患ではない。1999年から2003年は681〜815件、2004年以降は803〜1,093件と変動幅は小さい。
・水痘:1,671件(0.93)。ここ11年では毎年1,593〜2,215件の報告があり、変動は小さい。本年はほぼ中位の件数であった。2007/08年冬季より、冬季のピークが小さい傾向が続いている。全国的に本年12月のピークは特に小さい。
・咽頭結膜熱:358件(0.92)。2004年より件数が増し、2006年に全国と同様に特大の流行(1,162件)があったが、以降、漸減している。 ウ)患者報告数が例年より小さかった疾患― ( )内の数値は流行指数
・手足口病:725件(0.85)。ほぼ交互年に増減するが、2008年に続き比較的に少なかった。
・伝染性紅斑;104件(0.42)。2006年の比較的に大きな流行(936件)の後、非流行年が続いている。これまで3年間の非流行年を挟み、1〜3年の流行年になっている。
・流行性耳下腺炎;267件(0.27)。2006年の特大の流行(2,501件)から一転非流行年が続いている。これまで非流行年は普通2年間であった。全国的には夏頃より増加傾向がみられる。
・百日咳:4件(0.25)。昨年は19件と多かった。1999年以降では一桁の年が6年ある。全国的に約4年周期で流行するとされる。 エ)RSウイルス感染症―
2008/2009年シーズン(7月〜6月) 346件(東部164件、中部136件、西部46件)。全県で48週に10件を超え、ピークは51週58件であった。3週には10件未満になり、8週に一時13件となった。なお、2004/2005年32件、2005/2006年149件、2006/2007年250件である。
2009/2010年シーズンは全県で46週に10件を超え、12月までに計170件(東部92件、中部34件、西部44件)になった。

(2)地区・圏域別にみた流行指数:表6、7、9、図3
”流行指数:地区別"
ア)各地区での流行指数の上位疾患(突発性発しんを除く)― ( )内は流行指数
・東部(隠岐を含む):感染性胃腸炎(1.63)、ヘルパンギーナ(1.44)
・中部:A群溶連菌咽頭炎(1.82)、感染性胃腸炎(1.22)
・西部(0.64):(インフルエンザのみ)  イ)定点当りの報告数の地区別、圏域別比較―( )内は定点当りの報告患者数
・咽頭結膜熱:松江圏域(26.6)、出雲圏域(18.6)。西部(6.4)は少なかった。
・A群溶連菌咽頭炎:出雲圏域(126.4)、雲南圏域(74.5)、松江圏域(39.7)で多く、他圏域(14.9)は少なかった。出雲圏域は特大の流行が3年続いた。
・感染性胃腸炎:松江圏域(677.1)、大田圏域(438.0)、中部(395.1)は昨年とほぼ同様であったが、隠岐(220.0)、浜田・益田圏域(82.7)はかなり減った。
・水痘:松江圏域(109.4)、中部(72.1)で多く、雲南圏域(76.5)での増加が目だった。隠岐圏域(36.0)、浜田圏域(33.0)で少なく、後者は2006年より4年連続で最少であった。
・手足口病:松江圏域(51.6)、大田圏域(43.5)、中部(27.9)で多く、他圏域(11.7)は少なかった。
・ヘルパンギーナ:隠岐圏域(90.0)で流行し、松江圏域(49.3)と大田圏域(48.0)でも多かった。
・流行性耳下腺炎:益田圏域(60.7)でのみ流行した。

(3)感染症患者月別発生状況:表8、9、図4〜6
インフルエンザおよび感染性胃腸炎の月別患者数  月別(1か月は4週に換算)にみた県全体の全疾患の患者発生報告数(インフルエンザを含む)は、1月(2,979件)、2月(3,360件)、3月(2,329件)、12月(2,214件)が特に多く、この4か月で年間の54.7%を占めた。2006(平成18)年2月(4,848件)、2007(平成19)年3月(4,975件)のように突出した月はなかった。 ア)流行の季節変動 (月別報告数は1か月4週に換算)―
・咽頭結膜熱:2006年6月(185件)のような流行はなく、最多の2月48件から、最少の9月9件まで変動幅は小さかった。
・A群溶連菌咽頭炎:増減を繰り返した。3月(114件)、5月(118件)、6月(124件)、11月(130件)に多く、中部が59〜76%を占めた。2007年と2008年のピーク月はそれぞれ6月(189件)と5月(144件)であった。
・感染性胃腸炎:1月(1,205件)、3月(1,011件)、4月(1,154件)が突出して多かったが、2006年11月(1,597件)、2007年12月(1,492件)、2008年3月(1,492件)に比較し少なかった。12月には中部のみ流行があった。
・水痘:全県では5月(178件)、6月(163件)、12月(175件)に多かったが、最多月は、東部3、4、5月、中部2、5、12月、西部1、12月とばらついた。少ない月は8月(52件)9月(51件)でほぼ一致した(西部は9、10月)。 
2006/2007年の冬季の流行は12月412件、1月316件と特大で、以降の初夏と冬季の流行は比較的に小さい。
小児科定点の月別患者数その1 小児科定点の月別患者数その2
・手足口病: 県全体で8月(153件)をピークとし、各地で7〜11月に小流行した。1〜6月にも7〜23件の報告が続いた。なお、2007年のピークは9月191件であった。
・伝染性紅斑:東部と中部で一時的に4月(25件)より初夏にやや増えた。
・ヘルパンギーナ:7月(310件)をピークに6〜9月辺に集中し(この4か月間に91.2%)、隠岐圏域の件数が11%を占めた。西部は昨年の流行は特に小さかったが、本年は8月をピークに例年の流行であった。
・流行性耳下腺炎:1月および5月〜12月に19〜32件とやや増したが、大半は益田圏域からの報告である。
・RSウイルス感染症: 前述した。
(4)定点別把握疾患の年齢別患者数の分布:表10
・ RSウイルス感染症(今年度報告分):乳児前半34.4%、乳児後半17.5%、1歳代28.4%、2〜4歳14.0%、成人3.9%であり、乳児が51.9%を占めた。
・突発性発しん:乳児前半2.6%、乳児後半56.9%、1歳代が38.4%と2歳未満が97.9%を占めた。
・1歳代が最多であった疾患: 咽頭結膜熱(1歳代の占める割合42.2%)、感染性胃腸炎(21.8%)、水痘(32.8%)、手足口病(43.4%)、ヘルパンギーナ(32.8%)であり、疾患は昨年と同様であり、割合もよく類似している。いずれも7歳未満の児に広く分布している。
・その他の年齢が最多であった疾患;A群溶連菌咽頭炎(5歳、15.3%)、伝染性紅斑(4歳、18.3%)、流行性耳下腺炎(5歳、21.3%)。前後5年間の年代がそれぞれ62.9%、66.4%、71.5%を占める。
・成人水痘: 2005年21件(1.03%)、2006年24件(1.11%)と近年の増加が危惧されたが、2007年7件(0.37%)、2008年9件(0.59%)、2009年11件(0.7%)と少なかった。流行規模がやや小さかったことと関連するかもしれない。
・成人の流行性耳下腺炎: 2005年17件(1.85%)、2006年53件(2.12%)、2007年13件(2.21%)と多かったが、非流行年になるとともに、2008年3件(3.49%)、本年も3件(1.1%)と少なかった。
・百日咳:4件の内訳は乳児、1歳、3歳、成人が各1件であった。近年、問題の成人の罹患状況の詳細は不明であるが、全国小児科定点からの2008年度の報告では10歳代が12.5%、成人が36.1%を占めた。



−本年の特徴−
・インフルエンザの非流行月は6月と7月のみの短期であり、特に新型インフルエンザは11月〜12月にかけ1歳〜10代を主体に猛威を振るった。
・A群溶連菌咽頭炎と流行性耳下腺炎の明らかな流行はそれぞれ出雲圏域と益田圏域でみられた。
・感染性胃腸炎の年度末の流行は東部と西部では小さかった。

5)眼科定点感染症の流行状況:表5、6、7、8、9、10、図7,9
(1)急性出血性結膜炎:1件
眼科定点の月別報告数
 1992年には、全県で113件の発症を認めたが、1993年以降は全県で3〜35件の発症で、1998年には13例の発症があって以降は全県で年間2〜4件の報告程度となり、更に2005年からは、報告のない年もしばしばみられるように減少していた。
 2009年は、中部で20歳〜40歳代の1件の報告が7月にあった。

(2)流行性角結膜炎:26件
流行性角結膜炎の年齢別発生状況  1997年までは、全県で年間160〜320件程度の報告が続いていたが、1998年頃からは、100件を少し超える程度の発生となった。1999年から2008年の10年では、1999年120件、2000年112件の年間報告数であったが、2005年の126件(西部で106件の小流行があった)を除いて、2桁台の報告数を推移し、この5年間の報告数は、2006年38件、2007年19件、2008年65件、2009年26件であった。
 季節的には、東部で3〜5月、及び7〜10月に発症の峰があり、西部でも不完全ではあるが、同様の二峰性の報告数を示したが、中部では発生数も少なく明らかな二峰性は認められなかった。
 年齢別では、3歳の幼児2件の他は、10歳代3件、20〜39歳10件、40〜59歳8件、及び60〜79歳3件であった。
6)基幹定点把握疾患の発生状況:表5、6、7、8、9、10、図8
(1)細菌性髄膜炎:中部より5件
基幹定点の月別報告数
 乳児1件、1〜4歳2件、成人2件であった。1999年以降、中部からは毎年、報告がある。東部からは2006年より、西部からは2002年より報告はない。
 1999年以降の11年間で計48件になった。年齢別内訳は、0歳13件、1〜4歳10件、5〜9歳3件、10歳代2件、成人20件である。

(2)無菌性髄膜炎:中部より18件
 2007年の108件の大流行を除くと1999年からの年平均は21.0件である。東部からは2006年より、西部からは2002年より報告はない。本年の年代分布は0歳1件、1〜4歳2件、5〜9歳2件、10歳代5件、成人7件であった。

(3)マイコプラズマ肺炎:55件
1999年以降で第4位の流行であった。昨年の大流行の約1/3になった。昨年に続き雲南圏域で流行し48件(87%)を占め、残る7件は出雲圏域からであった。本年の年代分布は乳児0、1〜4歳30件、5〜9歳10件、10歳代10件、成人5件であり、昨年同様に、最多とされる5〜9歳より低年齢層に多かった。
全国的に通年性に中規模以上に流行しており、報告態勢の向上が望まれる。

(4)クラミジア肺炎:出雲圏域から10歳代の1件の報告があった。

島根県感染症情報センター