全国でも報告がなかった。

　二類感染症には、急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群及び鳥インフルエンザ（H5N1）の5疾患が指定されているが、本年は結核のみ報告された。報告数は全国で26,6115名、島根県で167名と全数把握対象疾患のうち最多であった。

　三類感染症には、コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス及びパラチフスの５疾患が指定されている。全国では、コレラ17名、細菌性赤痢178名、腸管出血性大腸菌感染症3,842名、腸チフス29名及びパラチフス26名、中国地区では、コレラ1名、細菌性赤痢8名、腸管出血性大腸菌感染症423名、腸チフス2名及びパラチフス1名、島根県では、細菌性赤痢１名及び腸管出血性大腸菌感染症16名の報告があった。細菌性赤痢は松江圏域から報告されたが、感染経路は不明であった。
　全国の腸管出血性大腸菌感染症の報告数は、2001(平成13）年をピークに数年間減少していたが、2007（平成19）年4,591名、2008（平成20）年4，251名、2009（平成21）年3,842名と近年増加傾向にある。島根県でも2001（平成13）年の94名の報告をピークに減少したが、最近３年間は連続して約20名の報告があった。原因菌の血清型は2008（平成20）年はO103（1名）、O111（2名）及びO157（20名）であったが、2009（平成21）年はO26（12名）及びO157（4名）と血清型O26による報告が増加した。腸管出血性大腸菌感染症の発生は給食施設の改善と衛生思想の普及により、給食等を原因とする集団感染は減少したが、島根県でも、2009(平成21)年の16名中11名は家庭内で発生した3事例の関係者であり、飲食店や家庭での生肉の取り扱いや手洗い等、二次感染防止等の啓発が重要である。

血清型	毒素型	1月	2月	3月	4月	5月	6月	7月	8月	9月	10月	11月	12月	計
O26:H11	VT1+VT2-	-	-	-	-	-	-	(5),1	-	1	-	-	(4)	11
O26:HUT	VT1+VT2-	-	-	-	-	-	-	-	-	-	-	1	-	1
O157:H7	VT1+VT2+	-	-	-	-	-	-	-	2	-	-	-	-	2
O157:HUT	VT1+VT2+	-	-	-	-	-	-	-	-	(2)	-	-	-	2
計		-	-	-	-	-	-	6	2	3	-	1	4	16

()内数字：家族内発生又は二次感染事例を示す

　四類感染症では、つつが虫病5名、日本紅斑熱3名及びレジオネラ症4名の報告があった。ダニ媒介性のつつが虫病は、全国で464名、隣県の鳥取県で3名及び広島県で11名報告され、本県では、松江、隠岐、出雲及び雲南圏域で１月、３月、５月に各1名と12月2名の報告があった。日本紅斑熱は、全国で123名、隣県の広島県で17名報告され、本県では、出雲圏域で6月1名と9月2名の報告があった。
　五類感染症では、アメーバ赤痢2名、ウイルス性肝炎1名、急性脳炎1名、クロイツフェルト・ヤコブ病2名、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2名、梅毒１名、破傷風1名、風しん１名及び麻しん１名が報告された。破傷風は、出雲圏域からの報告であった。風しんは浜田圏域から報告され8か月の幼児であった。麻しんは、松江圏域から報告され、1歳1名であった。

結核の症例定義：当情報センターのホームページで確認できます。

　松江保健所からの58件と全届出の35%を占めたが、58件のうち18件(31%)が無症状病原体保有者で、昨年同様に割合が高い。出雲保健所からの報告は、昨年43件で、2009年は半減程度であったが、益田保健所からの報告は、昨年11件から倍増した。
　

病型	松江	雲南	出雲	県央	浜田	益田	隠岐	全県	2008
肺結核	25	7	18	10	13	12	5	90	88
結核及びその他の結核	3	-	-	1	1	-	-	5	6
その他の結核	12	2	6	4	6	9	2	41	42
無症状病原体保有者	18	2	1	6	4	-	-	31	24
総計	58	11	25	21	24	21	7	167	160

　人口当たりでは、県央保健所、益田保健所管内での発生が多い。

病型	松江	雲南	出雲	県央	浜田	益田	隠岐	全県	2008
罹患率（総数　注１）	23.1	17.6	14.5	35.0	27.8	32.1	32.0	23.2	22.1
罹患率（患者　注２）	15.9	14.4	13.9	25.0	23.2	32.1	32.0	18.9	18.8

（2009年10月１日現在の推計人口により算出　：人口１０万対）
注１：届出総数／推計人口＊100000
注２：（届出総数−無症状病原体保有者）／推計人口＊100000

　性別では、男性が多かった。年齢区分別では、昨年と比べ50歳代の占める割合が増加した。70歳以上が、55%と半数を占めた。

	乳児	1〜9歳	10代	20代	30代	40代	50代	60代	70代	80代	90歳〜	総計
男性	-	1	2	2	2	4	14	9	21	32	4	91
女性	-	3	2	8	8	5	8	7	14	15	6	76
計	-	4	4	10	10	9	22	16	35	47	10	167
割合（％）	-	2.4	2.4	6.0	6.0	5.4	13.2	9.6	21.0	28.1	6.0	100.0
割合(%)：2008	1.0	3.1	3.1	7.5	8.8	7.5	7.5	8.1	18.1	25.6	10.0	100.0

　人口当たりでは、70代で急増していた。また、性別では、40代まで女性の罹患率が高いが、50代で男性が高くなり、70代以降では、男性が女性の２倍以上の罹患率となっている。

	〜9歳	10代	20代	30代	40代	50代	60代	70代	80代	90歳〜	総計
男性	3.2	5.6	6.5	4.7	10.2	27.1	18.2	53.9	158.0	137.9	26.5
女性	10.1	5.9	27.0	19.5	12.5	16.0	13.3	27.2	38.9	59.4	20.2
全体	6.6	11.3	32.4	23.4	23.0	42.6	32.3	89.8	232.1	344.7	23.2

（2009年10月１日現在の推計人口により算出　：人口１０万対）

　年齢区分別では、29歳以下の年齢層で、無症状病原体保有者が72%を占めた。

区分	病型	〜29歳	30代	40代	50代	60代	70代	80歳〜	総計
実数	肺結核	3	6	3	12	7	20	39	90
	肺結核及びその他の結核	1	-	-	-	1	1	2	5
	その他の結核	1	1	1	3	5	14	16	41
	無症状病原体保有者	13	3	5	7	3	-	-	31
	総計	18	10	9	22	16	35	57	167
割合(%)	肺結核	16.7	60.0	33.3	54.5	43.8	57.1	68.4	53.9
	肺結核及びその他の結核	5.6	-	-	-	6.3	2.9	3.5	3.0
	その他結核	5.6	10.0	11.1	13.6	31.3	40.0	28.1	24.6
	無症状病原体保有者	72.2	30.0	55.6	31.8	18.8	-	-	18.6

　自覚症状は、咳(35%)、痰（32%）、次いで発熱(32%)の訴えが多かった。肺結核で、20%(18/90)に、自覚症状がなかった。

	総数	咳	痰	発熱	胸痛	呼吸困難	症状なし	症状なし(%)
肺結核	90	43	40	30	2	6	18	20.0
肺結核及びその他の結核	5	1	1	3	-	2	-	-
その他の結核	41	4	3	10	4	7	9	22.0
総数	136	48	44	43	6	15	27	19.9