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2003(H15)年 <  2004(H16)年 年報  > 2005(H17)年
目次I.概要II-1.発生状況の解析と評価II-2.定点把握疾患発生状況III.検査情報
全数把握週報(インフルエンザ・小児科・眼科・基幹定点)月報(STD・基幹定点)精度評価
1.発生状況の解析と評価 |精度評価
8)島根県感染症発生動向調査の精度評価:表4〜11、表16、図11〜14
(1)  サーベイランスの精度評価は本県では例年、総報告患者数、報告数が大きくかつ流行規模の変化の大きいインフルエンザを除く患者数(以下患者数とする)および突発性発しんの患者数を目安に行なってきた。突発性発しんは感染機序から年次と季節による変動の少ない疾患であることが立証されており、モニターとして適切である。さらに、出生数、幼児人口(毎年の出生数から計算した0ないし5歳に属する児の数)を考慮に入れた。
 島根県の出生数と幼児人口は1984年にはそれぞれ9,536名と58,964名であったが、1994年にはそれぞれ、7,074名と44,970名となり、それぞれ、25.8%と23.7%減少した。さらに10年後の2004年には、それぞれ6,015名と38,589名となり、この10年間の減少率はそれぞれ15.0%と14.2%で減少の鈍化がみられている。1999年からの最近5年間では減少率はそれぞれ11.9%と5.6%となっている。

(2)  全県の評価:報告患者数には小児人口だけでなく、地域の医療機関数や住民の医療機関の利用の質など種々の因子が加わるので解析は容易ではない。総報告数は1984年より10年間は明らかな漸減傾向を示していたが、ここ10年間は傾斜が緩み横這いに近い。
 全県のインフルエンザを除いた患者数もほぼ同様の傾向がみられるが、むしろ、2004年は急に増え1994年頃とほぼ同様である。幼児10万に対する報告数はここ20年間で最大と最少の比は1.82倍になるが、上位から5位と下位から5位との比は1.34と比較的小さい。2004年は1994年以降で最大であったが、前述の下位から5位との比は1.25と比較的小さいものであった。
 突発性発しんの報告は1994年以降で最大で、下位から5位との比は1.39であった。出生1万に対する報告数はここ10年で最大なだけでなく、過去20年間でも第2位と大きかった。出生10万に対する本疾患数はもともと変動が比較的小さく、ここ20年で見て最大と最少の比は1.76あるものの、上位5位と下位5位の比は1.30と比較的小さい。しかしながら、その下位5年がここ10年間に集中するなかで急な上昇がみられた。
 インフルエンザを除く総報告数と合わせ、定点医療機関の変更により変動があったことが考えられる。今後の推移に注目する必要があるが、本年の状況が続くとすると、最近のデータと比較する場合にはより慎重な解析が必要と考えられる反面、10年以上前のデータとの比較はより正しく行なわれることになると考えられる。

(3)  地区別の評価:1998年に大田圏域が中部より西部に区割り変更がなされ6年が経過し、変更後の動向も把握しやすくなった。2004年の出生数と幼児人口を1999年との比でみると、東部はそれぞれ7.4%と2.9%の減少、中部は6.6%と13.4%の減少、西部は3.0%の減少と1.2%の増加であり、西部での変動が最少であった。
 東部では特に除インフルエンザ患者数、突発性発しん患者数とも急増し、昨年比でそれぞれ72.9%、147.6%増加した。本年を超える報告数はそれぞれ1992年、1993年にまで遡る。中部でも両者とも昨年比でそれぞれ7.5%と24.9%増加したが、この報告はそれぞれ2002年、1996年以来のものでそれほど突出はしていない。西部では前年比でそれぞれ、8.1%と13.8%減少した。
 幼児10万に対する除インフルエンザ患者数は東部が大きく上昇し、東部、中部、西部でそれぞれ、39,501、35,383、35,301ときわめて近似したものとなった。近似する数値は中部、西部では2001年以降続いているが、東部では1991年頃以来である。
 出生1万に対する突発性発しん患者数は昨年比で東部2.63、中部1.30と増加、西部では、0.85と減少し、それぞれの地区で1,998、2,022、1,325となった。
 東部での定点医療機関の変更による変化が示されているが、これは全体とのバランスの点で好ましい方向に変化している。近年の動向をみる点では慎重な解析を要するが、むしろ本年の状態が維持されるよう見守りたい。
島根県感染症情報センター