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科学調査

出土資料の科学的分析〜貴鉛の分析〜

 本谷地区の釜屋間歩付近の、表土の下の18世紀の面からやや浮いた状態で出土した貴鉛です。縦3cm、横2cm、厚さ4mmの楕円形で、重さは13グラムあります。
貴鉛は、銀の精錬過程で鉱石から鉛を用いて銀を取り出す目的で作られた鉛銀合金です。これから銀生産を飛躍的に向上させた灰吹法により銀が得られます。
化学分析の結果、表面に鉛銀合金を作るための添加物のマンガンや微量の銅を検出しました。内部は鉛の中に15%の銀が粒子状に散らばっています。これから灰吹きすると2グラムの銀が取れる計算で、「小豆大の銀が取れる」という文献史料と一致します。
この資料が出土したことにより、いままでに出土した鉄鍋炉(石銀藤田地区)や灰吹銀(出土谷地区)とともに、日本で灰吹法を用いて大量に銀を取り出す過程を実証する、極めて貴重な発見となりました。
出土品
1997年に発見された石銀藤田地区出土の鉄鍋炉
本年度、本谷地区釜屋間歩付近の調査で発見された貴鉛
灰吹銀
1997年に発見された石銀藤田地区出土の鉄鍋炉 本谷地区釜屋間歩付近の調査で発見された貴鉛 2000年に発見された出土谷地区出土の

科学調査とシンポジウム参加

 

シンポジウム
科学調査部会では、石見銀山遺跡の特質をより良く知るために、他鉱山遺跡を視察して比較検討したり、同地で行われるシンポジウムや検討会に参加しています。平成16年は、山梨県で開催されたシンポジウム「生産遺跡から探る〈モノづくり〉の歴史(金山・銀山の技術)」に参加し、石見銀山における発掘調査の状況や科学調査の成果などについて事例報告を行いました。また、同所の湯之奥金山博物館や周辺の史跡などを訪れました。

シンポジウムの開催状況。石見銀山をはじめ甲斐や佐渡などの各地の鉱山遺跡の調査研究の状況が報告され、パネルディスカッションが行われました。
湯之奥金山
湯之奥金山博物館 館長の説明

湯之奥金山遺跡について同博物館の谷口館長から詳しい説明を受けました。

ここでも世界遺産を目指して頑張っていらっしゃいます。

 

左の写真は、湯之奥金山博物館の全景

 

発掘調査との連携〜遺構の精査とはぎ取り〜

 出土谷(だしつちだに)地区発掘調査

製錬炉跡科学調査は発掘調査との連携が大変重要です。発掘現場の状況にタイミングを合わせながら進めています。出土谷地区II区で製錬の炉跡をはぎ取りしたときの様子を撮した写真です。はじめに隣接する二つの円形の炉跡について、その構造や切り合い関係を調査しました。その結果、同時併存の可能性があることが分かりました。現在、この炉跡の遺存物を科学的に分析することにより、炉の用途や機能について検討中です。





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文化財課世界遺産室

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島根県教育庁文化財課 世界遺産室
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