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中山間地域・離島振興特別委員長報告

 

 中山間地域・離島振興特別委員長報平成27年2月定例会

 

 中山間地域・離島振興特別委員会の調査結果について、御報告申し上げます。

 本委員会は、中山間地域及び離島の振興に関する審査及び調査を行うこととして、平成25年5月臨時会で設置されたところであります。

 調査テーマを「第3期中山間地域活性化計画及び離島振興計画の具体的な施策展開の検証と更なる活性化方策について」とし、調査・検討しましたので報告します。

 

 まず、平成25年6月定例会以降、8回の委員会を開催し、中山間地域対策プロジェクトチーム活動の進捗状況を中心に、過疎債ソフト事業や離島活性化交付金の活用状況など中山間・離島地域振興に関する計画および現状を執行部から報告いただき、検討を進めてまいりました。

 議論を深めるにあたり、プロジェクトチーム活動地区の現状、中山間地域での成功事例、県内外離島の現状を把握する必要がありましたので、県内7カ所、県外3カ所の中山間・離島地域を調査しました。

 

 県内の中山間地域の事例として、中山間地域対策プロジェクトチームによる支援地区から特にモデル性の高い地区や緊急性の高い地区など3カ所を選び、現地において市町村や地域住民など関係者から聞き取り調査を行いました。

 

 雲南市吉田の民谷地区では、地元の方およびUJターンの方の4名が中心となって民谷地域活性化委員会を立ち上げ、住民アンケート、先進事例視察、言いたい放題会、広報誌発行等の活動をとおして地域課題の解決に取り組んでいました。最初は賛否両論ありましたが、現在、住民のみなさんは、「何らかの形で努力し、一歩ずつ進むしかない」との意識に変わりつつあるとのことでした。

 浜田市金城の美又地区では、公民館ごとに「まちづくり委員会」をつくり、住民主体のまちづくりを推進していました。住民自らが考え、行動し、組織をつくることができるよう、行政は資料提供や活動及び組織設立の支援にまわる体制を築いていました。地域のマンパワー不足を補うために「地域マネージャー」を市の嘱託員として配置するほか、市単独の地域提案型チャレンジ事業も実施していました。また、住民が起業し、地域で生産された農作物を使って特産品を開発し、地元の温泉で販売する「地域まるごと6次産業化」のモデル実証にも取り組んでいました。

 邑智郡美郷町の別府地区は、大田市との境にあり、昔から地元以外の方にも寛容な地域とのことです。地区内に若者定住住宅などを整備したことにより、ここ2回の国勢調査とも人口が増えています。今まで受け入れた「地域おこし協力隊員」の活動継承を目的にNPO法人を設立し、法人で雇用ができるよう地域のための事業を実施されていました。また、地区内には農事組合法人が設立され、花き栽培による若者の定住対策にも取り組んでいました。

 

 県外の中山間地域の事例として、新潟県十日町市と長野県上水内郡小川村を調査しました。

 新潟県のNPO法人十日町市地域おこし実行委員会は、新潟中越大震災後の復興ボランティア現地受け入れ組織として設立され、都市住民ボランティアとの協働に取り組むうち、集落の存続に強い思いを抱くようになりました。地域の皆さんが本音で地域の将来を語り合い、地域復興計画を策定しました。地域おこし協力隊を経てこの地にIターンした若者と地域のまとめ役の方が、がっちり手を組んで、この計画実現に向け戦略的に活動を実施されていました。

 長野県の小川村は、高度経済成長に伴い人口が減っていった時期、地域の中心人物が音頭をとって仲間たちと地域生き残り策を検討し、6次産業化を進めていくという結論に達しました。「株式会社小川の庄」を設立し、地域の伝統食であった「おやき」づくりに取り組みました。会社雇用は「60歳以上でも雇い、定年無し」、原材料購入は地域住民の栽培物を優先するなど、地域存続・発展のための活動を会社設立以来30年続けていました。

 

 県内離島の事例として、隠岐郡を調査しました。

 隠岐の島町では、「島の香り隠岐藻塩米」のブランド化に取り組んでいます。このお米の特徴は稲の生育途中に島のイメージを活かした藻塩の水溶液を散布する栽培方法と、特定の卸や関東の有名米穀店と結び付くことによる高級志向ニーズにマッチしたブランド化です。

 ニーズに対応するため、篩い目を大きくした大粒化などにより、品質や食味評価は向上し、産地の取組姿勢も評価され、テレビや雑誌にも大きく取り上げられました。高額となる運賃には、離島活性化交付金を有効に活用していました。

 海士町では、企業の海藻研究所を誘致し、研究成果を島内産業に活かす取り組みを実践されていました。研究発表会開催により本土からの聴講者も来島する効果も認められました。

 知夫村では、放牧推進による肉用牛の振興に取り組んでいました。高齢化の進む中、放牧によって飼料代の大幅な節約や飼育管理の簡素化を実現しています。隠岐の子牛市場価格は、本土の子牛市場価格より低いにも関わらず、収益性の高い繁殖モデルが構築されていました。高齢化による離農対応として、UIターン者の受け入れおよび設備・資本の受け継ぎ体制の構築を課題と捉え、解決に向け努力されていました。

 また、古くから利用されている放牧場は、独自の景観を形成し、観光資源の一つにもなっていました。

 平成26年3月から隠岐航路に就航した超高速船レインボージェットを含め、離島航路状況調査として西ノ島町の別府港および超高速船整備工場、知夫村の来居港を訪れました。

 超高速船レインボー2の後継船として導入されたレインボージェットは、耐波性能が高いこと、また、ドック期間が短いことから年間就航日数が多くなり、離島航路安定化が期待されます。

 西ノ島島内1港に集約した別府港は、乗客の集中を解消するため第2ターミナルを建設し、利用者に便利な施設運営に官民一体となって取り組んでいました。

 知夫村の来居港は、隠岐4島の港で唯一乗降用通路がなく、また、防波堤事業中止により、港内の静穏性が確保できず抜港率が他港と比べて高いことから、観光客や高齢化の進む村民のための港湾整備を喫緊の課題と捉えていました。

 県外の離島事例として新潟県佐渡島を調査しました。輸送コストが高いことから製造業や大きな法人が少ないこと、離島航路および離島航空路の安定化に苦心されていること、佐渡来訪者は「佐渡島に行くこと」が目的になっておりリピーター率が低いことなど、各種の課題を伺いました。

 

 

 以上の調査結果を踏まえ、本委員会としての総括的な意見、要望を申し述べます。

 中山間地域・離島の地域活性化の促進を図るためには、そこに人が安心して住み続けられる環境を整えることが必要です。そのためには、生活に必要な諸機能の維持に加え、6次産業化など地域資源を生かした取組等により、雇用・収入を創出していくことが重要です。

 本委員会として次の5項目を要望いたします。

 

(1)部局横断による推進体制の構築と市町村との連携

 各分野にまたがる中山間地域の課題に総合的・一体的に対応するため、部局横断体制で中山間地域対策に取り組んでいるところであり、引き続き連携を更に深め、市町村と一緒になって取組んでいくこと。

 また、課題等に対し柔軟かつスピーディーに対応できる予算を確保すること。

 

(2)今後の中山間地域における地域運営のモデルづくり

 人口減少、高齢化が進み各分野で担い手が不足する中山間地域では、各種組織・団体など多様な主体が連携し、可能なものは機能を集約していきながら、複合的に事業を行うことで生活諸機能を維持していく地域運営の仕組みが必要です。

 また、中山間ならではの人とのつながりや子育て支援などにより、実際に人口が増えている事例の要因を分析し、それを生かす工夫も重要です。

 中山間プロジェクトチームの現場支援地区では、こうした地域運営の仕組みづくりを既に行っているところであり、更に取組みを推進し、一つ一つ具現化していくことで、今後の中山間地域における地域運営のモデルとして全県に波及させていくこと。

 

(3)地域資源を生かした産業の振興

 6次産業化など地域の資源を生かした新たな雇用の場を創出するためには、生産活動の前にしっかりとマーケティング(市場調査)を行い、売れる商品づくりに結びつけることが重要です。

 そのためには、専門的な視点が必要であり、地域住民の力だけでは困難な面があるため、地域おこし協力隊や専門家の派遣等について支援していくこと。

 

(4)地域おこし協力隊等の活用

 外からの視点をもって地域に新しい力を吹き込む地域おこし協力隊の活用は、中山間地域の活性化に有効な手段です。しかしながら、地域との付き合い、相談相手の不在、収入の確保等の課題により、任期終了後の定着率が低いことから、市町村の支援体制や情報交換など、定住に繋がるよう支援すること。

 

(5)離島の振興について

 雇用の場の確保や交流人口の拡大など離島の活性化のためには、本土との人・物の移動費用の低廉化や利便性の向上を図ることが必要です。

 そのために、離島活性化交付金の自由度を高め、使いやすい制度とするなど、引き続き本土とのハンディキャップが解消されるよう国に対して働きかけること。

 また、隠岐諸島には、独自の生態系や離島という地理的条件の中で育まれてきた様々な歴史文化など、貴重な資源が豊富にあります。世界ジオパークに認定され1年半が経ちましたが、ジオパークはわかりにくいという声もあるため、その価値をわかりやすく伝え、観光客の増加など地域振興につながる取組みを推進すること。

 併せて、こうした貴重な資源等を、島根の子どもたち自身が知るために、環境教育、ふるさと教育へつながる取組みを図るとともに、離島ならではの良さを、UIターン希望者へアピールする取組みを町村とともに推進すること。

 

 以上、5項目であります。

 

 昨年5月、日本創成会議・人口減少問題検討分科会は、「政令市の行政区を含む全国1,800市区町村の49.8%に当たる896自治体で、子どもを産む人の大多数を占める『20〜39歳の女性人口』が2010年からの30年間で5割以上減る」との推計を発表しました。この報告では、896自治体を『消滅可能性都市』と位置づけており、島根県内の自治体は全19のうち16が該当するという衝撃的な内容でもありました。

 知事はこれまで、「中山間地域・離島の振興は大変重要な課題だ」と言ってこられました。日本全体として人口が減少していくという大きな課題に関心が集まり、政府でも、地方創生に向け、地域の活性化や人口対策に本格的に取り組まれようとしている中、これから地域の生き残りをかけた、まさに正念場を迎えることになります。

中山間地域・離島は、農林水産物の生産の場であるとともに、自然環境や海洋資源、領海の保全など日本全体にとって重要な役割を担っており、維持・活性化していくためには、今に受け継がれる豊かな自然や昔からの伝統・文化を守り、そこに人々が暮らし続けることが重要です。

 国では、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」において、中山間地域等における「小さな拠点」の形成を推進することが掲げられたところではありますが、島根県では、国に先駆けて公民館単位での地域づくりを進めてきています。県内各地で、その地域の特性に応じた様々な取組が生まれています。中には全国表彰される事例も出てきました。

 引き続き、こうした地域の取組をしっかりと支援し、中山間地域・離島における地域運営のモデルとして、島根から全国に向け発信していただきたいと思います。

 最後になりますが、本要望を中山間地域活性化計画、離島振興計画の着実な成果へ結びつけるよう強く求めるとともに、次期計画策定時にも活かしていただきたいと願います。知事をはじめとする執行部の皆さまには、スピード感ある効果的な取組となるようお願いし、委員長報告とさせていただきます。


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