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交通網整備促進特別委員長報告

 

   交通網整備促進特別委員長報告     平成25年2月定例会

 

 交通網整備促進特別委員会の調査の経過並びに結果についてご報告申し上げます。

 

 本委員会は、平成23年6月定例会において「社会生活基盤及び観光振興に係る交通網の整備促進に関する審査及び調査」を付託されました。

 

 以来、2年間にわたり本県の交通網、特に「県民生活の利便性や産業振興、また観光振興の側面」から、将来の財源を見据え、本県独自の手法を取り入れた効果的かつ効率的な道路整備のあり方について検討するため、参考人意見聴取、また実地調査を行って参りました。

 その概要と当委員会の見解をご報告申し上げます。

 

 まず、参考人招致でありますが、日本大学経済学部の周藤先生にお話を伺いました。

 先生から、現在、暫定2車線で運用されている高速道路も、その区間の交通量、また流入、流出人口によっては、完成2車線の採用もあり得ること。また、簡易形式のインターチェンジを数多く設置することによる利便性の向上、さらに緊急輸送道路としての機能の他、非常時のバイパス的効用、そして避難場所、防災機能の設置など、地方にとっての高速道路の多大なる効用性を訴え、地方も独自の整備手法を勉強しながら、でき得る限り早い完成を熱望している姿を国にアピールすることが大切であるとのお話を伺いました。

 また、その中でヨーロッパにおけるPFI方式による道路整備手法の問題点についても、言及いただきました。

 

 次に、現地調査についてであります。

 まず、視察を行った鹿児島県の東九州自動車道の一部では、道路規格1種2級の4車線計画の区間を暫定2車線で施工しております。特筆すべきは、一般的な暫定2車線は中央分離帯がポストコーンにより車線分離されているのに対し、コンクリート壁による剛性中央分離帯を採用していることであります。

 これにより、公安委員会が定める規制速度は、設計速度時速80kmが採用されており、利便性、快適性、安全性などにおいて高機能となっております。

本県においても暫定2車線とはいえ、4車線完成まで長い期間を要する区間、また交通量の少ない区間などへの応用の参考になると考えます。

 また、PFIの取り組みについても調査いたしましたが、道路本体のPFIの導入は、本県の民間企業の財政規模等を勘案すれば、かなりハードルが高い印象を持ちました。

 

 次に、沖縄県の状況であります。

 沖縄は、戦後アメリカ統治となって以降、計画的な交通道路網の整備なしに住宅開発が進みました。そして、返還後今日まで40年をかけて整備を進めてきておりますが、那覇市に人口が集中する中、車の増加に道路整備が追いつかず、交通渋滞が常態化しております。現在も、路線バスの定時運行のため、バスレーンの延長による渋滞の軽減や、沖縄自動車道のインターチェンジの追加、那覇空港へのアクセス道の整備など、那覇市周辺の交通網の整備に巨費が投じられております。

 一方、離島交通としては、離島住民や離島出身の高校生などを対象に、航路、空路の運賃を鉄道運賃なみに低減するなどの優遇措置がとられておりました。

 沖縄地方の印象としては、総じて、様々な振興予算により、正に日本の高度成長期を彷彿とさせるものでありました。

 かつて、日本本土は国全体の骨格となる道路網の構想を持ちながら、目先のB/Cにとらわれ、結果、多くのミッシングリンクを残し、「国土の一体化」と「都市と地方の協調」の大きな障害となっております。

 沖縄自動車道においては、沖縄本島の北部地域への延伸計画をもっておらず、日本国における沖縄の存在意義の構築と、将来の沖縄本島全体の振興を考えると、今、この時に沖縄本島の動脈をしっかりと構築すべきではなかろうかと感じた次第であります。

 

 これらの結果を踏まえ、今後検討を求める事項についてご報告致します。

 

 まず、「高速道路の早期整備」についてであります。

 島根県内の高速道路の整備状況は、総延長286km中、供用率は59%であり、全国平均の74%からは大きく遅れています。

 未供用区間のうち3月30日には、中国横断自動車道尾道松江線の吉田掛合ICから中国縦貫道の三次東JCT・ICまでが開通することとなっており、観光、産業の振興に大きな効果が期待されるところであります。

 一方、山陰道では、平成24年に新たに3区間が事業化されたことにより、未着手区間は福光・江津間、益田・県境間の2区間24kmとなったところであります。

 引き続き、着手済みの9区間の早期完成と未着手の2区間の早期着手に向け、取り組んでいくことが重要であります。

 また、県内の高速自動車道の規格は、片側2車線の4車線で計画されておりますが、多くの区間において片側1車線の暫定2車線で施工されております。

 これは、当面の課題であるミッシングリンクの解消には理にかなった手法と考えますが、反面、高速道路としての基本機能である走行速度と走行安全性が犠牲となっております。

 4車線計画であっても、現実的にはかなりの長期に渡り、暫定供用が続くことにより、その間の利便性、安全性といった便益が失われる訳であります。

 今、島根に住み、この「ふるさと」をしっかりと次の世代にバトンタッチしたいと頑張っている県民のためにも、冒頭に申し上げた、東九州自動車道で採用されている手法を、本県内の高速道路でも、その区域の実態に即し検討すべきものと考えます。

 

 次に「一般国道、地方道の整備」であります。

 日々の暮らしを支える生活道路の整備は、過疎高齢化が進行する中、特に中山間地域においては死活問題にもなり得る課題であります。

 ただし、県の財政状況と人口減少を鑑みれば、公共交通機関のあり方も含め、取捨選択は避けられず、即ち必要箇所を厳選しつつ、整備すべき箇所は確実に進めるべきと考えます。

 

 次に、「離島航路・航空路の維持」であります。

 離島航路並びに大都市圏を結ぶ空路は、県民はもとより、県外との交流のための重要な交通手段であります。

 観光立県を目指す我が県において、県内3空港と都市圏のハブ空港との接続が重要であることは言うまでもありません。

 特に「萩・石見空港」は県西部の交通の拠点でありますが、全国的に地方空港への航空機乗り入れが厳しい中、「岩国錦帯橋空港」が開港するなど、熾烈な競争にさらされております。

 今後の利用促進については、新たな視点や発想による事業展開の検討が不可欠であります。

 また、隠岐航路については、離島航路として極めて重要であります。

 領土論における国境離島に生きる人々の生活をしっかりと守る上からも、まずは隠岐島民のニーズに合った事業展開が最優先と考えます。

 

 次に、既存インフラの維持管理であります。

 首都高速道路の老朽化や、中央自動車道笹子トンネルの事故以来、維持管理分野に国民の視線が向けられております。

 これまで以上に管理体制の強化と、更新・保全への適正な予算配分も必要と考えます。

 

 考えますれば、我が国は明治以降地方から都市へ、人、物、食料、エネルギーなどを集積し、日本丸の浮力、即ち国際競争力を醸成してまいりました。

 当然、都市部で大きな浮力を醸成しているわけですから、都市部が高く浮き、地方が低くなることは承知の上でありました。

 しかし、そこには約束があったと思います。

 地方から全てのものを都市へ送り込んでいるわけですから、都市で得た利益を地方へも配分する、その動脈となるものが高速道路をはじめとする高速交通網の整備であったと思います。

 国は、四全総で日本国土を圧縮して凝縮して、利用度の高い国土を作るため、全国に高速道路網を整備することを約束しました。

 しかし、都市部は時間が経つに従い、自分たちが多くの金を稼いでいるから、もっともっと都市部に投資すべきだと主張をし、都市部のエゴを代弁する、多数派である都市部選出の国会議員の主張が受け入れられ、現在のミッシングリンクなどの弊害を招いているわけであります。

 先の「東日本大震災」により、交通網は、国民の生命財産を守るための必要不可欠なインフラであること、また都市と地方は、互いに補完し、共生する関係の中で、日本国は成り立っていることを国民は認識させられたと思っております。

 国の四全総が空手形となって、国の国土論は崩壊し、今後どのような国土を作っていくのか示されておりません。

 そういう中ではありますが、地方の中でも過疎高齢化の先進地である島根として、次の世代に、誇りを持って島根に住んでもらうためのナショナルミニマムを担保する上で、必要欠くべからざるインフラの整備を国に求めていかねばならないと思います。

 また、その為にも、島根県は自らの存在意義の構築に向けて、しっかりとした県土論を、県民に示す必要があると思います。

 今後、県民にわかりやすく県土論が示され、その肉付けに更なる活発な議論が展開されますことを願い、委員長報告といたします。

 

 

 


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