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地方分権・行財政改革調査特別委員長報告
地方分権・行財政改革調査特別委員長報告 平成25年2月定例会
地方分権・行財政改革調査特別委員会の調査結果について御報告をいたします。
本委員会では、平成19年度からスタートした第2期地方分権改革の動きを検証しつつ、また、国の動向を注視しながら、本県の実情に即した望ましい分権改革のあり方について議論を行うとともに、必要な対応策を検討すること、並びに厳しい経済情勢を克服するため機動的な財政運営を行いながら、一方で行財政改革を着実に進めるために、本県の行財政改革の進捗状況、効果及び課題等について調査を行うことの2点を目的として、平成23年の6月定例会において設置され、以来、執行部から報告を受け、調査を行ってまいりました。
以下、その調査結果及び本委員会の意見や要望等について御報告をいたします。
始めに、地方分権改革についてであります。
地方分権改革に関する国の動きを見ますと、平成22年6月に民主党政権により「地域主権戦略大綱」が閣議決定され、義務付け・枠付けの見直しや、国と地方の協議の場の法制化、ひも付き補助金の一括交付金化など、諸般の改革が進められてきました。また、「住民に身近な行政はできる限り地方自治体が担い、国は、国が本来果たすべき役割を重点的に担う」との考え方に基づき、国の出先機関の事務を特定広域連合に移譲する法案が閣議決定され、さらに、先の衆議院解散後の平成24年11月30日に、地方との協議が十分に尽くされないまま、今後の改革の取組方針となる「地域主権推進大綱」が閣議決定されたのは、ご案内のとおりであります。
この「地域主権推進大綱」の中で示されている「地域主権改革」の基本理念には、「地域のことは地域に住む住民が責任を持って決められるよう、国と地方が「補完性の原則」に基づき、適切に役割分担し、直面する様々な課題に対応する」とあります。本委員会は、平成22年6月の「地域主権戦略大綱」を踏襲するこの基本理念の方向性について一定の理解はできるものの、個々の地方自治体が真に主体的に行政運営を行うことができる地方分権社会を実現するには、国と地方自治体が、今後それぞれに果たすべき役割を明確にした上で、国の権限と税財源を地方自治体へ適切に移譲することが必要であり、その前提として国と地方が真摯に協議し、十分な議論を尽くすとともに、住民にも、こうした取組みがしっかりと理解されることが必要不可欠であるとの基本的な認識に立っております。
こうした認識のもと、以下、主な事項について個々に御報告を申し上げます。
第1に、義務付け・枠付けの見直しについては、これまで国が法令で規定していた事務の実施方法等を、条例で定める仕組みにするなど、地方の裁量性を高めるものでありますが、平成23年度において2次にわたる一括法の成立により、本県においても施設・公物設置管理の基準について条例制定・改正が行われ、一部には本県の実情を踏まえ独自の基準が定められたところであります。また、今月に入り、第4次の見直しが閣議決定され、廃案となった第3次分の見直し項目も含め、今国会への法案提出が予定されております。
今後、本県において、この取組みをより実効あるものとするためには、県民ニーズを十分踏まえた基準となるよう、現場感覚を持った行政運営に努めるとともに、既に条例で定めた基準については現場の実情を踏まえ、見直しの必要がないか、主体性を持って点検をしていく必要があります。また、地方に裁量権が与えられても、適切に財源が措置されなければ地方の自由度の向上にはつながりません。地方の実情を国に伝え、必要な財源措置がなされるよう国へ要望する必要があります。
第2に、国の出先機関の見直しに関しては、平成24年6月に「国の特定地方行政機関の事務等の移譲に関する法律案」が明らかとなり、衆議院解散前日の平成24年11月15日に、若干の修正を加えた上で同法案が閣議決定されたところであります。また、中国地方知事会では、関係法案が成立し、人員、財源の課題等が解決されることを前提とした上で、平成26年度中に経済産業局の事務の移譲を受けるため、特定広域連合の設立に向けた準備を進めることについて合意がなされました。また、平成24年11月21日の中国地方知事会議においては、今後とも、国の動向を踏まえながら、議論を進めていくとの合意がなされています。
本委員会では、委員から、この法案には、特定広域連合に日常業務を監督する職が移譲対象となった国の出先機関ごとに置かれることや、国から移譲を受けた事務を実施する際、国の関与が強く及ぶ仕組みとなっていることなど、そもそも地方分権のための制度なのかと疑問視する意見が出されております。他方、新政権におけるこの法案の取扱いが、明らかとなっていないことから、本委員会では、この法案や中国地方知事会の合意について調査し、議論を深めることは困難との結論に至ったところです。
これまで進められてきた国の出先機関改革は、平成19年、自民党政権下で設置された地方分権改革推進委員会の勧告の流れを汲むものでありますが、国の最近の動きとしては、「国の出先機関に関しては、今後、地方の声等を踏まえ、そのあり方を検討していきたい」との方向性が示されているようであり、新政権でのこの問題の取扱いを注視していく必要があります。
本委員会としては、今一度、国と地方の役割分担について根本的な議論を始めることが必要との認識に立っており、執行部におかれては、今後具体化するであろう国の動向を迅速に把握し、県民福祉の向上につながる地方分権のあり方について議会とともに精査・検討していくことを求めます。
第3に、ひも付き補助金の一括交付金化に関しては、平成23年度に社会資本整備総合交付金や農山漁村地域整備交付金の一部などが「地域自主戦略交付金」として一括化され、内閣府が地方自治体から提出される事業実施計画をとりまとめ、その後、各関係省庁に予算が移し替えられる仕組みに改められたところです。また、この交付金は、現在、大部分がこれまでの継続事業に対して配分されていますが、今後、道路や河川の延長など客観的指標に基づき配分される部分が増えるとの報告を受けたところです。
しかしながら、現在の制度では、補助金が一括化されたとは言え、省庁をまたぐ国費の融通は事実上困難であること、さらには、内閣府への事業計画の提出に加え、各関係省庁に対しても交付申請しなければならず、交付金を受ける事務手続きが従前よりも煩雑化したのが実態であります。
このひも付き補助金の一括交付金化に関しては、新政権において、地域自主戦略交付金を廃止し、各省庁の交付金等に移行するとともに、各省庁において交付金のメニューを大くくり化するなど、地方の意見を反映したしくみに改めるとの方針が示され、新年度予算案では、そのように措置されたところです。
本委員会は、今後、新政権において、国庫補助負担金の見直しについて、地方分権のさらなる推進の上から、あらためて議論が進展していくことを期待するものであります。
次に、行財政改革についてであります。
本県の行財政改革については、平成23年度末に2つの大きな動きがありました。1つは、平成20年度から平成23年度までの集中改革期間における財政健全化の実績を踏まえ、「今後の財政健全化の取組み方針」が定められたこと。2つ目は、平成24年度から4年間を計画期間とする「島根総合発展計画第2次実施計画」が策定されたことであります。
本委員会では、平成19年10月策定の財政健全化基本方針の取組状況や、今後の財政健全化の取組み方針、また、島根総合発展計画第2次実施計画の策定などについて調査を行いました。
以下、主な事項に関して個々に御報告をいたします。
まず、これまでの財政健全化基本方針の取組と、今後の財政健全化の取組み方針についてであります。
平成20年度から平成23年度までの4年間の集中改革期間に、歳出の見直し、職員給与等の特例減額、歳入の確保に集中的に取り組んできた結果、200億円程度の収支改善目標を達成し、県の財政健全化は概ね基本方針に沿って進んできているとの報告を受けました。また、平成24年3月時点での財政見通しによれば、今後の収支不足額は、75億円から105億円程度となることから、平成29年度での収支均衡を達成するため、平成24年3月に「今後の財政健全化の取組み方針」が策定されたところです。
しかしながら、県財政を取り巻く情勢を見ますと、経済の状況は依然として厳しく、本県財政が大きく依存する国の財政も悪化が続いております。また、今後の県の財政見通しは、歳入・歳出とも、一定の仮定の下に推計したものであり、状況の変化により機動的に見直していかなければならないことは言うまでもありません。執行部におかれては、今後の経済情勢や、国の動向に迅速に対応され、着実に財政健全化を進めていかれることを望むものであります。
次に、定員の管理についてであります。
総人件費の抑制につながる定員管理について、平成14年度以降、一般行政部門を中心に1,500人の定員削減に向けて取り組まれているところであり、平成24年4月1日の時点で、1,000人削減の目標に対し997人の削減実績があり、おおむね予定どおりの削減となっているとの報告を受けました。
今後の定員管理にあたっては、引き続き業務の効率化や事務事業の見直しに努めるとともに、経済対策など新たな行政課題への対応を求められる部署には必要な人員を配置するなど柔軟な姿勢で臨み、人員削減が県民サービスの低下を招かないよう配慮されることを望みます。
次に、外郭団体、公の施設の見直しについてであります。
県が出資する法人等の健全な運営に関する条例に基づいて行われた外郭団体の経営評価について執行部から報告を受けました。
自己資本比率、借入金依存率、流動比率、人件費比率及び県への財政依存度の指標について数値の変動が見られるものの、法人の経営に影響はないとのことでした。また、これまでの経営評価の取組みにより、県の人的・財政的関与の状況も減少傾向となっており、各団体の経営改善の努力が見受けられる状況にありました。
しかしながら、平成23年度実績の総合評価結果では、前年度から評価が引き上げられた団体はなく、逆に評価が下げられたものが2団体ありました。また、依然として多額の借入金を抱えている団体や、基金を取り崩して運営されている団体もあります。今後とも、毎年度の経営評価を通じて団体の状況を点検するとともに、新公益法人制度による新たな法人形態への移行に当たって、団体のあり方を点検するとともに、団体のあるべき姿や効率的・効果的な事業実施の観点からの適切な指導を行っていただく必要があります。
次に、指定管理者制度についてであります。
指定管理者制度の導入施設の業務実績について、平成22年度と平成23年度の比較で見ると、全体的に東日本大震災後の観光控えの影響により、全ての集客施設で入館者数が前年度を下回ったとの報告を受けました。一方で、平成23年度実績に対する業務評価結果では、全ての施設において協定書の内容どおりの適正な管理が行われており、中には優れた管理が行われたと評価される施設もあります。執行部においては、引き続き運営状況の把握に努めるとともに、優れた管理を行った施設の事例を他の施設の参考にしてもらうことにより、業務改善が図られることを望むものであります。
次に、島根総合発展計画第2次実施計画についてであります。
平成24年度から平成27年度までの4年間を計画期間とする島根総合発展計画第2次実施計画が、平成24年3月に策定されました。この計画の策定にあたっては、県内各界の代表者からなる島根県総合開発審議会に諮問されたほか、県民への満足度調査や地域広聴会等を通じて広く県民意見を聴取されていることから、その策定の手順は妥当なものであったと評価します。今後は、この計画に沿って着実に施策を推進されることを望みますが、その実施にあたっては、経済情勢や国の動き、県民ニーズを踏まえ、優先すべき施策を見極めた上で、柔軟な発想で予算や組織を見直し、対応されることを望みます。
以上、本委員会の調査テーマに関する調査結果及び要望について申し上げました。終わりに今後の地方分権・行財政改革に関して本委員会の考えを申し上げます。
平成24年12月16日に実施された衆議院議員総選挙の結果、自公連立政権が国民の大きな信任を得て誕生しました。今月、全閣僚で構成される地方分権改革推進本部が設置されるなどの動きはありましたが、これまでの民主党を中心とした連立政権の下で検討が進められてきた地方分権を今後どう進めていくのか、新政権の下で明らかにしてもらわなければなりません。
あらためて申し上げるまでもなく、地方分権は、住民の福祉の向上につながるものとならなければ無意味であり、国と地方自治体の間の「権限と財源」の割り振りは、あくまでその手段に過ぎません。こうした観点に立ち、本委員会としては、我が国が単一主権国家であることを踏まえた上で、国は何を担い、地方は何を担うのか、今一度原点に立ち返った議論が必要と考えます。その上で、議会と執行部が一緒になって県民に対し十分な情報を提供するとともに、国に対して、地方の実情や意見をしっかりと伝え、地方に配慮した取組みとなるよう、働きかけていく必要があると考えます。
また、昨年末の衆議院選挙では、「道州制」の導入を公約に掲げた政党がいくつかありました。新政権においては、この問題に対し、道州制基本法の早期制定を目指して議論がなされている与党と連携して取り組んでいくとしています。
しかし、一般にイメージされる「道州制」は、都道府県を廃止し、全国を10程度に区分した上で、「道州」という新たな地方自治体を置き、国から広く権限を移譲された事務等を担うというものであり、仮にこうしたことが実現されれば、「国のあり方を根底から見直す大きな改革」であると政府が答弁でも認めるように、単一主権国家である国の統治機構のみならず「この国のかたち」を変えるという一大変革となり、都道府県の存在そのものが問われることとなります。現在、道州制の姿について明確なイメージが共有されていないことなどから、道州制をめぐる様々な意見が交わされており、地方6団体の間でも考えの隔たりがあるところです。
今国会に道州制基本法案を提出する考えとの報道もありますが、「道州制」については、中央のみの議論で進められるべきものではなく、地方分権改革の原点に立ち返った上での国民的議論が必要不可欠であることは論を待ちません。
本県としては、今後の道州制に関する国の動向について十分注視するとともに、議会と執行部が協力して、その是非も含めて道州制に関する県としての意見を整理し、しっかり国へ伝えていく必要があります。
終わりに、新政権において果敢な経済再生対策がとられ、その確かな効果が期待されるところとは言え、近年の激変する為替の動向やデフレ不況は、本県経済に大きな影響を及ぼしており、国の財政状況も悪化する中にあって、本県も当面厳しい財政運営を行っていかざるを得ないと考えます。今後とも県民生活に配慮しつつ、行財政改革を推進し、着実に財政健全化を成し遂げていただきたいと思います。
執行部におかれては、今後とも議会と連携し、県民本位の地方分権・行財政改革を推進していただくことを切に要望し、本委員会の最終報告といたします。
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