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平成23年6月定例県議会 知事施政方針並びに提案理由説明要旨(平成23年6月14日)

  

 

 定例議会の開会にあたり、提出議案の説明に先立ちまして、知事として2期目の県政に臨む私の基本的な考え方を申し上げ、皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。

 

(県政運営について)

 私は、今後も、県内各地の現場をよく見、県民の方々のご意見をよくお聞きし、そして、議会の皆様と緊密な意見の交換と調整を図りながら、島根の発展のために全力を尽くしてまいりますので、宜しくお願い申し上げます。

 

 以下、具体的な政策運営について順次ご説明申し上げます。

 

(経済・雇用対策の実施)

 県政の当面の大きな課題は、東日本大震災に関連しました経済・雇用対策の実施と安全・安心な県民生活の確保であります。

 あの大震災以降、経済の先行き不安や部品などのサプライ・チェーンの問題などから、県内の製造業、建設業、観光業などにも影響が出てきております。

 このため、既に県の制度融資を拡充して中小企業の資金繰り支援を行っております。

  さらに、安全・安心確保のための社会インフラ整備等を通じて需要の追加を行うとともに、雇用対策につきましては、緊急雇用創出事業などを実施してまいります。

  また、観光に関しましては、観光需要の喚起のため、夏場に向け緊急の誘客対策を講じてまいります。

 

  こうした経済・雇用対策につきましては、後で申し述べますが、6月の補正予算で対応することとしております。

 

(原子力安全・防災対策)

 次に、福島原発の事故に伴う、島根原発の安全対策や地域の防災対策の見直しについて申し上げます。

 

  原子力安全対策につきましては、まず、何よりも、国において福島原発の事故原因の徹底的究明とそれに基づく安全基準の抜本的な見直しが必要であります。

 そして、島根原発において、新たな安全基準に基づいた対策が取られなければなりません。

 県としましては、国や中国電力から情報の提供や説明を受け、県議会、県原子力安全顧問等の専門家、そして、県民の方々などの意見をよくお聞きし、そうした様々な意見、議論等を総合的に勘案して、島根原発のあり方について、県としての方針を決定する考えであります。

  いずれにしましても、県民の方々の安全・安心の確保の観点から、こうした対応は慎重かつ丁寧に行っていく必要があり、県の方針決定までには、なお、一定の時間を要するものと考えております。

 

 また、原子力防災対策につきましては、福島原発の事故を考慮した事故想定の見直しや、それに伴うEPZ(防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲)の拡大など、国の防災指針の抜本的な見直しを求めております。

  しかし、国の防災指針の見直しが行われるのには、まだ時間がかかる情勢でありますので、県としましては、周辺市町や鳥取県も含めた連絡会議を設けるなど、地域の防災対策見直しの準備作業を進めているところであります。

 さらに、今後の大きな課題として、中長期的に日本全体としてエネルギー政策の中で原子力発電をどのように位置づけるのか、責任ある判断を国に求めていかなければなりません。

 

(自然災害対策と危機管理)

 こうした原発問題への対応だけでなく、県内で発生する自然災害につきましても、河川改修やダム建設、土砂災害対策などを計画的に進めてまいります。

  また、今回の震災による被害状況を踏まえた津波対策の強化に取り組んでまいります。

 

 さらに、近年、県内では新型インフルエンザ、鳥インフルエンザ、大雪災害といった事案も発生しました。県民の皆様の安心・安全の暮らしを守るよう、様々な危機管理に全力を挙げて取り組んでまいります。

 

(産業の振興)

 さて、島根では、少子・高齢化が進み、人口が減少傾向にあるなど、多くの課題を抱えております。この問題に対応するためには、産業振興と雇用の確保を粘り強く進めていかなければなりません。

 

 まず、ものづくり産業の振興につきましては、島根県の強みである特殊鋼や鋳物産業、食品産業などを戦略的に強化していくとともに、県内企業の新事業への挑戦などに対して支援してまいります。

 具体的には、県内企業の経営力の強化、技術力の強化、人材の育成などの課題に全力で取り組んでまいります。

 

 新産業創出プロジェクトにつきましては、プラズマ熱処理、情報通信技術、機能性食品の分野での製品化、事業化を一層進めるとともに、熱伝導効率のよい新素材や、太陽電池の早期の事業化に向けて積極的に取り組み、これらを企業誘致に結びつけるよう努力してまいります。

 

 県が支援を行ってきました情報関連産業につきましては、厳しい経済状況の中、売上高・従業者数ともに着実に伸びてきております。今年度に入りましても、55名の雇用増をもたらす県内企業2社の立地計画を認定したところであります。

 また、島根発のプログラミング言語「Ruby」を活用したソフトウェア開発に取り組む企業は、30社を超えました。

 今後さらに県内に情報関連産業の集積が進むよう政策展開を図ってまいります。

 

 次に、企業誘致につきましては、最近4年間の誘致企業の認定数は61件、総投資額は700億円弱で、新規雇用計画数は1,900人を超えました。

 今後とも、島根の優れた立地環境や誘致企業への様々な優遇制度をPRしていくとともに、生産拠点の全国分散を図る県外企業が島根県内に立地する際の助成を強化することなどにより、今後4年間で2,000人の新規雇用の確保を目指してまいります。

 私自身も、企業訪問、企業への説明会、県出身事業者との接触など、様々なチャンネルを活用し、企業の誘致に積極的に取り組んでまいります。

 

(農林水産業の振興)

 次に、農林水産業の振興について申し上げます。

 

 自然が豊かで、温かい地域社会が残る地方に住みたい、農業をやりたい、林業や漁業に従事したいという若者が増えてきております。平成19年以降、新たに農林水産業に従事した若者の数は900人にのぼります。今後4年間で、1,000人の新規就業を目指してまいります。

 

 そのため、農業と地域の担い手確保に向け、新規学卒者やUIターンの方などの新規就業を促進してまいります。また、市町村、関係団体との連携を強化し、新しい担い手に、きめ細やかな支援を行ってまいります。

 

 次に、所得補償制度について申し上げます。

 県内では、地域の特色を活かした作物振興や集落営農の取組みが行われている中で、農業者戸別所得補償制度が本年度から本格実施となりました。

 県としましては、引き続き、地域の特色ある取組みを支援するとともに、国に対しましては、地方の実情がよく反映された制度となるよう、働きかけてまいります。

 

 次に、有機農業について申し上げます。

 近年、食の安全・安心や環境問題への関心が高まっており、島根の豊かな自然を活かした有機農業を推進することにより、島根の農業・農村が有するクリーンなイメージがさらに浸透するよう努めてまいります。

  このため、農業大学校を有機農業の担い手育成拠点として整備し、有機農業実践者を支援してまいります。

 

 次に、林業について申し上げます。

 県産木材の利用促進につきましては、市町村と連携して学校等の公共建築物で率先して利用するとともに、民間の建築物での利用が進むよう支援してまいります。

 また、木材製品の安定的な供給を図るため、製材加工部門の再編整備などを推進してまいります。

 

 次に、漁業について申し上げます。

 近年の燃油の高騰や魚価の低迷により、県内の漁業は厳しい経営状況に置かれております。

 このため、沖合底びき網漁業などの基幹漁業につきましては、漁船の老朽化に伴う代船確保等の対策を推進し、経営基盤の強化を図ってまいります。

 また、大田地区で進められている市場統合の取組みを支援するなど、流通対策を進めてまいります。

 

 なお、TPP(環太平洋経済連携協定)につきましては、引き続き国に対して慎重な対応を求めるとともに、農林水産業への十分な配慮がなされるよう強く要請してまいります。

 

(観光の振興)

 次に、観光振興につきましては、来年の古事記編纂1300年といった好機を活用し、「神々の国しまね」推進事業を積極的に進めてきております。

 今年3月に、実行委員会を組織し、さらに県庁内に実施本部を設置して、各部局が連携する体制を整備しました。

 本年は、全国の神楽大会や古代出雲歴史博物館での企画展など様々なプレイベントを開催するのをはじめ、来年に向けた旅行商品を企画し、旅行会社へ提案してまいります。

 さらに、幅広い県民の気運醸成を図り、市町村や民間の主体的な取組みが継続・発展していくよう支援してまいります。

 

 また、平成25年の出雲大社の大遷宮に向け、全国から多くの観光客を迎えるため、出雲大社の神門通りを、風格と活気のある道となるよう整備中であります。

 

(社会基盤の整備)

 次に、社会インフラ整備につきましては、県民生活の安全・安心を確保し、産業振興や観光振興を図る観点から着実に進めてまいります。

 

 尾道松江線は、平成24年度には三次までが、平成26年度には全線が開通する予定であります。

 山陰道は、平成26年度に仁摩・温泉津間と浜田三隅道路の熱田・西村間が開通する予定であります。県としましては、計画どおり整備が進むよう、今後とも国に働きかけてまいります。

 また、残る未着手区間が早期に事業化されるよう、国に強く要望してまいります。

 

 斐伊川・神戸川治水事業につきましては、中流部の斐伊川放水路が平成20年代前半に完成されるよう、引き続き国に求めていくとともに、出雲市内の内水対策としての河川改修を着実に進めてまいります。

 また、下流部の大橋川改修につきましては、事業の着実な推進が図られるよう、関係機関や地元との調整を進めてまいります。

 

 昨年度、重点港湾に指定された浜田港につきましては、港湾機能の強化のため、高速道路ネットワークと直結する臨港道路の整備の早期着手などを国に求めてまいります。

 

 次に、航空路線の利用促進について申し上げます。

 萩・石見空港につきましては、大阪便の通年運航再開及び東京便2便化に向け、利用促進に取り組んでまいります。

 隠岐空港につきましては、将来の東京直行便の開設に向け、大阪夏季ジェット便の利用促進に取り組んでまいります。

 出雲縁結び空港につきましては、東京便における中型機の再運航などを運航会社に求めてまいります。

 

(離島・中山間地域対策等)

 次に、離島・中山間地域対策につきましては、新たに創設された過疎債によるソフト事業への財政支援制度を活用し、集落の活性化、産業振興、高齢者の生活支援などの施策に取り組んでまいります。併せて、このソフト事業関連の過疎債の制度充実を国に要望してまいります。

 

 また、離島振興法が平成24年度末をもって期限切れとなるため、離島の実情に沿った総合的な離島振興施策の展開ができるよう、離島振興法の拡充・延長を国に要望してまいります。

 

 次に、定住対策につきましては、多くの方々に自然が豊かで温かい地域社会が残る島根での暮らしに関心を持ってもらえるよう情報発信を行っていくとともに、最初の相談から定住後の支援まできめ細かく一貫した受入れを行い、多くの方に島根へ定住していただけるよう取り組んでまいります。

 

(地域医療と福祉の充実)

 次に、地域医療と福祉の充実について申し上げます。

 

 離島・中山間地域だけでなく、県西部地域においても医師不足が深刻化しております。地域枠入学や奨学金の貸与を受けた医学生が、医師として確実に県内に定着することが重要であり、若手医師の県内定着に向けた取組みを一層進めてまいります。

 また、県西部の極めて厳しい周産期医療提供体制の問題につきましては、当面の対策として、近隣の病院が連携して分娩体制の維持に取り組んでおりますが、中長期的に医師・看護職員の確保を図るとともに、国に対し地域医療支援の充実を強く求めてまいります。

 

 ドクターヘリにつきましては、昨日から運航を開始したところであります。現場救急による救命率の向上や後遺症の軽減、広範な患者搬送に大きな効果を期待しております。

 

 県立大学短期大学部看護学科の四年制化につきましては、来年4月からの移行に向けて、準備を鋭意進めております。

 

 がん対策につきましては、がん死亡率の低減、がん検診受診者数の増加、がんの薬物療法・放射線療法に精通した医師の確保に向け、取組みをさらに強化してまいります。

 

  また、安心して子どもを生み育てることができる環境づくりを進めるため、地域ニーズに応じた保育サービスを確保するとともに、地域における子育て支援活動を推進してまいります。

 

  障がい者福祉につきましては、自らの適性に応じた企業等での就業が可能となるよう一般就労に向けた支援や、住み慣れた地域で安心して暮らせる環境づくりなどを進め、障がい者の自立を支えてまいります。

 

 また、高齢者ができる限り住み慣れた地域で自立した生活が送れるよう、介護サービスの充実や介護予防の推進など、福祉の充実に努めてまいります。

(教育の充実)

 次に、教育につきましては、子どもたちが、ふるさとに愛着を持ちながら、確かな学力を身につけて心豊かに健やかに育つよう、学校・家庭・地域社会が連携して、子ども読書活動やふるさと教育を推進してまいります。

 さらに、近年、子どもの体力や運動能力は低下傾向にあり、子どもの体力向上に向け積極的に取り組んでまいります。

 

 また、離島・中山間地域の高校の活性化は重要な課題であります。そうした高校8校について、平成21年度から積極的に県外からの生徒募集を推進しており、今年度は県外からの入学者数は定員の約6%に相当する約50名に増加しております。

 今後も高校と地元の方々が一体となった取組みを支援してまいります。

 

(文化・芸術、スポーツの振興)

 次に、文化・芸術の振興につきましては、県立美術館や石見美術館などで、今後、古事記1300年に関連した企画展などにより、島根の魅力の発信も行ってまいります。

 スポーツの分野では、全国大会で通用する若者の育成などの競技力向上に取り組んでまいります。

 

(男女共同参画社会の実現)

 次に、男女共同参画は引き続き、重要な政策課題であります。

 本年5月には、新たな計画を策定したところであり、県民一人ひとりが、性別に関わりなく、個性や能力を発揮できる男女共同参画社会を実現するための施策を着実に実行してまいります。

 

(自然環境の保全と活用)

  次に、隠岐地域におきましては、平成24年度の世界ジオパーク認定を目指して、本年4月に隠岐ジオパーク推進協議会から日本ジオパーク委員会に申請書が提出されました。世界認定に向けて地元での取組みが進むよう、積極的に支援してまいります。

  また、ラムサール条約湿地に登録されている宍道湖・中海をはじめ県内の自然環境の保全に積極的に取り組んでまいります。

(治安対策)

 次に、総合的な治安対策につきましては、県民の安全・安心の確保に向けて、「島根行動計画」に基づき、官民連携のもと、継続的かつ根本的な対策を推進してまいります。

 

(竹島問題・国境離島支援)

 次に、竹島問題について申し上げます。

 今後も関係団体等と連携し、政府が韓国と外交交渉を粘り強く行うよう、強く求めてまいります。

 さらに、竹島問題の広報啓発活動を所管する組織を政府部内に設置することや隠岐の島町に広報啓発のための施設を設けることなどを国に強く求めてまいります。

 

 また、隠岐の島をはじめ、国境に位置する離島が果たす重要な役割を踏まえ、これら離島に対する特別の支援を国に求めてまいります。

 

(財政の健全化)

 次に、財政の健全化につきましては、これまでの4年間、歳出の見直し、職員給与の特例減額、定員削減、歳入確保などにより、概ね、財政健全化基本方針に沿った形で進んでまいりました。県民の皆様、県議会、そして県職員のご理解とご協力に対しまして、感謝申し上げます。

 今後につきましては、財政健全化のためこれまでとってきました施策の効果なども踏まえ、また、改革推進会議をはじめ、県内各界の意見などもよくお聞きしながら、引き続き財政健全化が適切に進むよう努めてまいります。

 

(住みやすく活力ある島根を目指して)

 以上、今後の県政における基本的な政策の方向について、私の考えを申し述べました。

 私は知事をしながら感ずることでありますが、島根は、豊かな自然や古き良き文化・歴史、特色ある地域資源、豊かな地域社会、そして真面目で勤勉な県民性など、多くの強みを有しております。

 こうした強みを活かしながら、県民が力を合わせて粘り強く努力していくことにより、「住みやすく活力ある島根」を築くことは可能だと考えております。

 私は、このために全力を尽くしてまいります。議会の皆様を始め、県民の皆様のご理解とご協力のほど、宜しくお願いを申し上げます。

 

(補正予算案など提出議案)

 それでは次に、今回提出致しました一般会計補正予算案などの概要について申し上げます。

  歳出につきましては、今回の補正予算案では、震災の被災地や被災者への支援、地震・原発等の安全・安心対策、そして震災の影響に対応した経済・雇用対策などについて措置することとし、総額62億9,800万円余を増額しております。

 

 この結果、補正後の一般会計予算の規模は、5,385億2,300万円余となっております。

 

  このほか、予算案4件、条例案4件、一般事件案11件を提出しております。

 諸議案の詳細につきましては、この後総務部長に説明させることと致します。

 何とぞ宜しくご審議のほどお願い申し上げます。

 

 


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