第6回賢明な利用を語る会
ラムサール条約登録と環境教育について考える
2007(平成19)年度3回シリーズの第1回目(通算6回目)の「賢明な利用を語る会」を、平成19年6月2日(土)にホシザキグリーン財団野生生物研究所(出雲市)にて開催しました。
今回は、様々な立場から宍道湖・中海や身近な環境について、学習活動や教育活動などを行っている方にご発表いただいた後、意見交換などを行いましたのでその概要をご報告いたします。
1.主催:島根県、県立自然館ゴビウス、ホシザキグリーン財団
2.日時:平成19年6月2日(土)午後1時30分〜午後4時
3.参加者数:約40名
4.会場:ホシザキグリーン財団野生生物研究所(出雲市園町1664-2)
5.次第
(1)開会挨拶島根県環境生活部次長三代広昭
(2)事例発表
島根大学付属中学校1年生吾郷諒華氏
「こどもエコクラブさんあーるKIDSでの取組」
しまね環境学習サポートネットワーク青木充之氏
「環境学習サポートネットワークの組織と活動」
財団法人しまね国際センターコーディネーター崔文(チェムンソン)氏
「日韓親善島根少年の翼の取組と環境学習」
島根県環境政策課主任三島幸司氏
「環境教育・学習を推進する行政の取組」
(3)参加者と発表者による意見交換、座談会
座長:越川敏樹(ホシザキグリーン財団事務局長、島根県立宍道湖自然館館長)
6.概要
平成19年度第1回(通算第6回)目となる「賢明な利用を語る会」は、島根県環境生活部次長の挨拶で開会し、4名の発表者による事例発表をいただいた後、参加者と発表者による座談会(意見交換)を行いました。
以下、内容を抜粋、編集してご報告いたします。
【開会挨拶】島根県環境生活部次長三代広昭
この語る会も6回目を迎えました。今回は「環境教育」をテーマに事例発表、意見交換を予定しております。最初に発表していただくのは、小学生時代からエコクラブ活動に取り組んでおられます吾郷さんです。これまでの発表者のなかで初めて中学生にご発表いただきます。また、国際交流の面から環境学習に取り組む島根国際交流センターの崔さん、そして環境学習支援の立場から、しまね環境学習サポートネットワークの青木さん、最後に県の担当から行政の取組みについてご報告いたします。どうか忌憚のないご意見をお寄せください。
【事例発表】
まず最初に、こどもエコクラブ「さんあーるKIDS」のリーダー吾郷諒華(現在中学1年)さんより、小学生時代から続けているこどもエコクラブの活動内容について紹介していただきました。
1.ワイズユース/「賢明な利用」について
まず、ワイズユース・賢明な利用について2つに分けて紹介します。一つ目は水質調査で、調査場所は宍道湖東部、中海湖心、斐伊川の3箇所です。
宍道湖と中海の調査結果からは、深くなるにつれて、水温は低くなり、水の塩分は濃く、また水中の酸素が薄くなることが分かりました。
また、水質調査で学んだことは、海の影響により、夏は水面が高く冬は低いということです。そして、昨年(平成18年)の豪雨の影響で塩分濃度が薄まっていました。これは川の影響です。このことから宍道湖と中海は海と川の両方の影響を受けることが分かりました。
次は斐伊川です。斐伊川は船通山から流れ始める川で、宍道湖中海を通って日本海までそそぐ全長153キロの一級河川です。生活排水が多く入ればアンモニアの値が高くなり、酸素がないと生物は生きていけません。、斐伊川は水の透明度、酸素、アンモニアの値はともにAでしたが、水生生物はBという結果になりました。
二つ目は産物のブランド化です。漁師さんはシジミが減らないようにするために捕る量や時間を決め、小さなシジミを捕らないように「ジョレン」を用いています。シジミはアミノ酸やミネラルが多く、栄養満点です。私はシジミのみそ汁が大好きです。食べた後の貝殻でシジミキーホルダーを作りました。最初は作るのに30分かかっていたけれど、今では15分でできるようになりました。とてもかわいくて、みんなから好評です。
これは、湖岸のゴミ拾いの様子です。空き缶やペットボトルといった人工物がたくさん流れ着いていました。楽しい体験をした宍道湖の自然を壊さないためにもゴミを捨ててはいけないなと思いました。
2.その他の活動
「エコクッキング」、「鳥の巣箱作り」、「タンポポ調査」も行いました。特にタンポポ調査では、壁新聞を作り、去年の夏には霞ヶ関の環境省に掲示してありびっくりしました。また、市民団体の会に参加して、「もったいない風呂敷」の発表と意見交換も行いました。
小学生最大の思い出は小池百合子前環境大臣に会い、地球温暖化について学んだことです。小池大臣はとてもやさしい方で、私も将来はあんなすてきで優しい人になりたいなと思いました。
今まで発表したことは小学校時代のまとめとして、昨年行われた「KODOMOラムサール近畿・中国ブロック大会」でも発表しました。
これからは、自然と世界を学び、人と自然について考え,人と自然と仲良くくらすことをできるだけ多くの人に伝えていきたいです。そのために、今自分にできることを実行したいです。
私はたくさんの人からいろんなことを教えてもらい、楽しく活動してきました。このような発表の機会を与えてもらい、これまでの活動が線となってつながってきました。今まで学んだことから自分の生活の中で感じて考えていきたいです。
続いて、財団法人しまね国際センターコーディネーター崔文(チェムンソン)氏から、「日韓親善島根少年の翼の取組と環境学習」についてご発表いただきました。
今日みなさんに発表させていただくのは「島根少年の翼」、正式名称は「日韓親善島根少年の翼」といいます。日韓親善のために貢献する青少年派遣事業です。
今日は環境について国際交流の立場から発表させていただきますが、これは昨年度の取組みがなければ発表することはできませんでした。昨年度は「水はいのちのもと、その恵み」という大きなテーマでした。
1.少年の翼のおいたちについて
少年の翼事業は、平成元年にまず、「島根少年の船」としてスタートし、今年で第19回を迎えます。これまで参加した子どもたちは2,261名にのぼります。
2.少年の翼の活動について
今までの活動の中心は交流と見学でしたが、「共通の課題」をとりあげて、一緒に考えるために、体験学習を取り入れることを始めました。日本や韓国だけでなく、世界が共通に考えられるテーマとして「環境」が一番大きいのではないかと着目し、しかも身近な自然で日常的に考えられるテーマとして、いのちの元となる「水」に注目しました。
もちろん、交流も重要な目的として大切にしなくてはならないと思っています。これまで参加した2000人を越える子どもたちの感想の中で最も多かったものは、「言葉が通じなくても気持ちが通じて友達になれた」ということです。やはり環境という共通のテーマを韓国の子どもたちと一緒に体験すれば、その気持ちがさらに伝わり共有できるいわゆる「シナジー効果」が期待できるのではないかと思い、試みました。
このテーマは1年で終わらせるのではなく、3カ年計画で事業を進めることにしました。はじめの年の2006年は、水の中でも日本から韓国に行くためには日本海という海を越えなくてはならないということで、「海」をテーマにしました。日本と韓国の間にある海というものをとおして友情を育みましょうというねらいです。
次の年は、海からさかのぼりましょうということで「川」をテーマにしました。「川に親しみ楽しむ旅へ」というテーマをつけています。来年はさらにさかのぼり「森」をテーマにしようと計画しています。森は雨や雪などたくさんの自然のものを含んでいるといえますので、森を最後にこの3カ年計画のまとめをする予定です。
(1)第18回(2006年)の活動について
昨年の活動は、海の中でも漂着物に着目しました。私も漂着物について初めて活動したのですが、日本海沿岸にはたくさんの韓国のゴミが漂着していることを初めて知りました。最初は韓国について悪いイメージがつかないかと心配しましたが、まずやってみようという気持ちで取り組んでみました。
漂着物から分かったこととして、ゴミは捨てたところから遠く離れたところで拾われているということです。中国や韓国で捨てられたゴミは日本についており、かなり遠くまで運ばれるということを目の当たりにして、子どもたちには自分たちのゴミがどこかの国に流れ着いているかもしれない、ということに目を向けることになります。これは近隣の国どうしで認識しないといけない問題だと理解することができます。
また、捨てられているゴミの中には何の液体が入っているか分からないビン類や、見るからに危険そうなものも見られ、そのようなものが自然環境に対して計り知れない影響を与えていることも分かります。
そしていつも便利に使っているものもゴミとして落ちていることに気がつきます。リサイクルできるプラスチックやビニル類が多く見られ、これらはリサイクル可能なもので、いわば「資源」を捨てているということがいえます。また、最初からゴミとはいわずに漂着物と言っています。それをゴミというように理解した子どももいましたが、中にはそれらからさまざまなことが分かる「たからもの」だ、と表現した子どももいました。一番多かった感想は、まずゴミをすてないようにして海をきれいにするということで、そこに気づいてくれたことがよかったと思います。
(2)「環境」という言葉に対する認識
続いて、「環境」という言葉に対してどのようなことを連想するかについて、日韓のこどもたちにそれぞれあげてもらいました。
日本の子どもは漂着物調査をしたせいか、ポイ捨てや漂着ゴミなどというキーワードが多く、一方韓国で特徴的だったのは、環境美化員とグリーンベルトで、これは日本にはない韓国特有のものです。環境美化員とは街の清掃をする人のことです。韓国では日本のように住民がみんなで街をきれいにするのではなく、清掃してくれる職業の人がいるのです。だから、日本の方が街をきれいにするという意識が韓国よりも強いのではないかと思いました。そして、環境を守るためにグリーンベルトというものが設けられています。建物の建築制限をはじめさまざまな制限があるのですが、最近では人間が住むために、どんどん範囲が狭まっていて、それを韓国の子どもたちは心配しているのではないかなと感じました。そして「無関心」ということに危機感を感じました。
4.取組みをとおして学んだこと
国際交流センターでは、国際交流を身近なものとしてみなさんに感じていただくためにどうしたらいいかと考えています。そのなかで「何かを一緒にすること」があります。それをとおして「共通の課題に気づき」、最後に自分にできることを探してみよう、ということではないかと思っています。これはまさに先ほどの吾郷さんの発表にもあった、「今、自分にできることをやる」ということにたどり着いたと感じています。
吾郷さんがずっと続けてきたエコクラブの活動を、私たちは昨年からやっと始めたところで、これからもぜひ一緒に活動しながら連携していきたいと思っています。
3番目は、しまね環境学習サポートネットワークの青木充之氏から、「環境学習サポートネットワークの組織と活動」についてご発表いただきました。
1.ネットワーク設立の経緯
このネットワークは、主に「子々孫々まで豊かな自然と環境を伝えるため、環境教育に関心のあるさまざまな人が協力して、充実した環境学習の推進をはかる」ということや、「環境学習の必要性を感じている人、環境に危機感を抱いている人、子どもたちの健全な育成を願っている人たちに、ネットワークの参加を呼びかける」という趣旨のもとで、2002年に設立しました。
県内で個々に活動をしている人と連携することにより持続可能な活動を行い、学校や地域で行われているさまざまな環境学習を支援するためのネットワークの構築を目指し、個人や団体、企業、学校、行政が情報やノウハウを交換する「交流の場」として環境学習指導者等の研修など「学習の場として役立てる」というところもねらいのひとつです。
2.活動内容
活動内容は、「環境学習手法の研究やグッズの開発、普及」、「学習会や研修会等による会員相互の親睦、合意形成」、「環境学習の必要性の啓発活動」などにより、さまざまな活動をしている指導者を集めて研修会を行って、ノウハウの伝授を行っています。
また、宍道湖グリーンパークに事務局を置いており、企業の方や自然館職員、島根自然保護協会、行政の方、サヒメルやアクアスの職員の方やふれあい環境財団の方など、さまざまな組織の方が連携を組んで活動しています。こうした組織の方に連絡をしてもらえれば、施設を活用した情報などについても教えてもらえるのでぜひ連絡をしていただきたいと思っています。
具体的には、16年度はテーマを「すぐに役立つ環境教育(環境学習)研修会〜よりよき環境学習ティームティーチングをめざして〜」と設定し、3回研修会を開催しました。
1回目は、学校の先生や環境学習の指導者など約30名の方にご参加いただき、学校と地域が共同で作るカリキュラムについて、先進事例をもとに手法について学び、生きもの調査などを実地研修や、環境学習指導者は実際に活動をするときの悩みを解決するために有効な「あなたに足りないものはなにか」というワークショップを行いました。
2回目は、「日帰りフォローアップ研修会情報交換と実践例研修」と設定し、小中学校の先生にたくさんご参加いただき、「NPOと環境をつなぐもの」というテーマでの講演、「子どもに対する環境学習の進め方」という内容のパネルディスカッションなど、さまざまな手法によって意見交換会を行いました。
3回目は、斐川町の西野小学校5年生の10名にも参加してもらい、「春を感じよう!ネイチャーフィーリング宝探し」というテーマで実際に環境学習をみんなで実施し、また見てもらうことで、実施後に討論を行うという手法で実施しました。
例えば、あじさいの落葉根等の写真を拡大した写真を子どもたちに渡して、会場として設定した自然の中で子どもたちに探してもらいます。実際には小さいものを拡大しているのでなかなか簡単には見つかりません。このような問題を10問用意し、何問見つかったかというかたちで進めました。その後答え合わせとして、いくつ見つかったか出し合いました。
17年度は、「中・四国環境教育ミーティング」を島根県のサンレイクで開催しました。これはネットワークで主催し、中四国の指導者が約150名集まり、「未来につなぐ環境教育」をテーマに取り組みました。その中で分科会を行ったのですが、ラムサール条約に関係する分科会としては、ゴビウスが担当した第1分科会「湖とともに未来の宍道湖湖岸のあり方を考える〜生物から見て宍道湖湖岸を考えよう〜」が当てはまるかと思います。この分科会には約20名の方が参加されました。
まず参加者で湖岸のゴミ観察、地引き網を引いての採集、採集物の同定を行いました。
また夜の湖岸で生物の観察やゴビウス見学、宍道湖で漁業をされている方にお話を伺ったりしました。
最後はみんなで未来の宍道湖湖岸についてイメージを絵に表し、「豊かな自然景観を保持するために、交わりの場、営みの場、生きもののためにともに生きよう、ともに暮らそう」というメッセージを最後に発せられました。
18年度は、東アジア環境教育ミーティングを、中国、韓国、日本の環境教育指導者の参加により、三瓶の青少年交流の家で実施しました。
ここでもゴビウスが中心となって第1分科会「宍道湖の生きもの調査隊」を行いました。主として韓国の方が中心となった分科会です。通訳を通した意見交換を行うことができましたが、先ほどの崔さんの発表にもありましたように、一緒に活動することで言葉はあまり問題ではないということを体験いたしました。実際に宍道湖で採集したり、投網を打ったり、地引き網をして採集した生物の同定を行いました。
3.エコツアーガイド養成講座
また、私どもはラムサール条約登録を機に、島根県がされている「ツアー客などに伝える語り部養成」ということに協力しています。そのためには宍道湖についてよく知らなくてはならない、ということで研修会に参加しています。昨年度は4回研修会に参加しまして、1回目は宍道湖と中海に調査船に乗って出かけ、2回目は植物やインタープリテーション、ガイドについて学びました。3回目は日本野鳥の会の指導で鳥について学び、4回目はガンカモティージャーズガイドのレクチャーを受けました。
その後実践として、マガンの「モーニングフライト」やバードウォッチングイベントのガイドを行い、「ふゆみず田んぼ」などについても解説しました。最近では一畑電車に最近お目見えした、宍道湖と中海に暮らす鳥と魚のかわいいイラストでラッピングされた電車「しんじ湖ラムサール号」のお披露目式とあわせて、園駅からグリーンパークまで宍道湖湖岸をガイドいたしました。
4.まとめ
まとめとしては、しまね環境学習サポートネットワークでは「未来を担う子どもたちに環境の大切さを伝えたい」、「宍道湖・中海のワイズユースの周知をはかりたい」、「人と自然が共存できる持続可能な社会の実現に寄与する」ことを目指しており、そのためにはネットワークのフル活用ということが大事だと考えています。個々の力よりは縦横十文字につながった非常に強いつながりを持てば持続可能な活動ができるのではないかと思い、このようなネットワークを作っていますので、われわれのネットワークや個々の会員を活用してもらえればと思っております。
最後に、島根県環境政策課主任三島幸司が、「環境教育・学習を推進する行政の取組」について発表しました。
今日は島根県が環境学習推進のために取り組んでいる事業のうち、「みんなで調べる宍道湖・中海流入河川調査」について説明させていただきます。
1.事業概要
島根県では宍道湖・中海流域の小中学生に身近な河川の水質調査を行ってもらっています。そのねらいは「宍道湖・中海流域の小中学生が、宍道湖・中海流入河川の水質調査を行うことで、水質に関する理解を深め、宍道湖・中海の水質浄化活動のさらなる発展及び環境学習の推進に資することを目的として、各小中学校にお願いをしています。
本事業は宍道湖では平成16年から、中海では平成18年から始まり、本年は両湖で行っています。
参加学校数は、平成16年に12校からはじまり、翌年は宍道湖流域のみで33校、18年からは中海でも始まりましたので57校となりました。19年度は45校となっています。
実際に調査してもらっている項目としては、気温、水温、COD、透視度、全窒素、全リンです。
次に調査回数ですが、年間5回5月、7月、9月、11月、1月で、これは1学期が1回、2学期は2回、3学期が1回というようになっており、その結果をこちらに報告していただいております。
以上が基本の必須調査項目ですが、その他の項目としてこれらについては特にやってはいけないとかやらなくてはならないとかそういった制約はありません。項目として流速、流量、護岸のようす、例えば人工の護岸か自然の護岸かなどです。この他生物調査などがありますが、学校の創意工夫によりさまざまな調査を実施していただいております。
実際の調査については、依頼があれば事前授業により調査方法などについて説明をします。その後、川に出かけて、基本項目の6つの調査をしてもらいます。実際には全窒素、全リン調査は採水のみとなり2つとなりますので調査は4つです。気温を測定し、水をくんでバケツの中で水温を測定し、その後パックテストを行ってもらっています。次にアクリルパイプを用いた透視度測定です。透明度は川の水の濁り具合と比例しますので、どこから目盛りが読めるかを調べてもらっています。なかなか4年生では重たいバケツで水を入れるのは大変なのですが、みんな一生懸命調査に取り組んでもらいました。その後筒の中の標識盤が見えるかどうかを調べます。
実際に川の水質調査とは、川に興味を持ってもらうためのきっかけにしかなりません。河川調査というのは環境教育や環境学習かと聞かれると、どうかな、という気持ちもします。私も河川調査を教えることはしてきましたが、河川調査で何を伝えていくか、ということはなかなか難しいかなと感じています。
行政としては、河川の水質管理のために子どもたちが自分たちで何ができるかを考えてもらうために、さらに地域で何か行動していただくことを目指しておりますが、具体的な手法については学校の先生に頼っているというのが現状です。
河川調査以外にも、子どもさんたちがどんなものに興味を持っているか、例えば歴史だったり、あるいは調査にすごく興味を持ち、他の川の水質と比較して調査したいとか、水生生物調査をしてみたいといったように、子どもたちは興味を持つ対象が広い上に、地域性、例えば上流と下流の学校が同じことをするという必要もないと思いますので、内容については各学校で考えてもらっています。そのため、思いもよらない報告をいただくこともあります。
2.調査結果の報告について
こちらから学校にお願いしていることは、調査結果の数値をホームページを活用して随時入力をしていただいています。そして年度末には1年間の調査結果をまとめた報告書を出していただいています。基本的に学校にお願いしているのはこれだけなのですが、これに上乗せしてさらにいろいろな報告をいただいているところもあります。
例えば、忌部小学校では、忌部には浄水場がありますので、そちらと調査結果を絡めて自分たちの使っている水は浄水場のものではなく、さらに上流のきれいな佐水と呼ばれるものであることまで学習をひろげています。これもきっかけは水質調査で、そこからひろげていろいろなことをまとめています。
津田小学校からの報告では、「未来の馬橋川」ということで模型での報告がありました。さすがにわたしたちも思いつかず、これはすばらしいなと思ったところです。
また、地域と連携して行っている学校もあります。斐伊川上流部の亀嵩小学校では、亀嵩川をきれいにしようということでポスターを作成されています。ポスター作成だけならばやっている学校は多いのですが、こちらではさらに一歩踏み込んで、作成したものを地域に配布しているということでした。
3.今後の展開
今後の展開については、さらに多くの学校に参加していただきたいと思っています。また、中海は鳥取県からも水が流入しているということもありますので、鳥取県側での事業の展開についてもお願いしていて、こちらについてはすでに受諾していただいています。これからは宍道湖中海両湖の流域河川調査が広がっていくことが期待できます。
座談会ラムサール条約登録を契機とした環境教育のこれからについて
座長
環境学習や環境教育については非常に関心が高まっている一方で、なかなか環境そのものは改善しないという現実もあり、環境が大切なことはたいていの方がおっしゃいますが、行動はまた別だ、という現実もあるようです。
こうしたことから、座談会の冒頭は、まず発表者の方に取組みの手応えや課題について話していただきます。
青木
中四国や東アジアなどミーティングは広範にやっておりますが、ネットワークといたしましてはもっと幅広い分野の方からの参加をいただきたい。その中から深みというか広がりというか,つながりというものが生まれてくるのではないかと思っています。ただその中にも成果を感じていて、このネットワークを作って良かったと思ったのは、いろんな人たちとのネットワークを通じてのつながりによって、私自身がさまざまな人と知り合いになれて、ノウハウも教えていただいたりアイディアをいただけていることです。これからもっとやっていかなければならないと思っています。
三島
皆さんからの報告を受けて審査会も行っていて、環境大臣賞や知事賞などを設けております。そういった評価を受ける学校は、やはりしっかりとした学習が行われており、学習という意味では効果をもたらしていると思います。しかしながら、宍道湖・中海の水質をきれいにしようということについては、子どもたちにもそのような意識は高まってきているのですが、例えば一年間のゴミ拾いの活動を続けたことで目に見えて水質が改善されているということは一朝一夕にはなかなか難しいところで、学習意欲がなかなか続きにくいということがあります。調査1年目は盛り上がるのですが、継続するということになると長期スパンでとらえる必要があるため難しいと感じています。
吾郷
毎年ずっと続けていることは新聞作りですが、それ以外は毎年一つずつ新しいことをしているので、新しいことが分かってくることが楽しいので続けています。
斐伊川の水質調査をして思ったことは、水質調査はAなのに生物はBだったんです。だから、いくら水がきれいでも生物が大切なんだなということも分かってきて、生物にまだ視点を置いたことがないので、これからは水鳥や魚などあたらしい視点に注目していきたいと思います。
崔
昨年初めて環境をテーマとして行ったときに、私自身も環境にあまり興味がなかったというか関心があまりなかったのですね。毎日のゴミ出しのときに気をつけたりくらいのことなんです。
韓国では環境に関する観察会などはあまり行われていないのです。ラムサール条約への登録により少しは高まってきたようには思うのですが、現実としては「漂着物調査をしています」ということを韓国側に伝えても、「ふーん、そうですか」くらいの反応しか返ってきませんでした。そこで私どもでは、「そちらでもいかがですか」と提案しても「まあ、日本側がするならばこちらでもしてみてもいいかも」というくらいの反応だったため、私も韓国人としてこれは環境について広めていかないといけないなと感じています。今年の交流受け入れ先は、昨年度の交流会が大変勉強になったので、これからは自分たちももっと取り組んでいきたい、といった反応が返ってきて、少しずつですが変わってきているように思います。参加した団員だけでなく、関係者からもこのような声が上がってきたということが一番の成果かなと私は思っています。
座長
では、会場の方からはなにかありませんか。
どうしたら宍道湖や中海に接することができるか
会場から
宍道湖・中海がラムサール条約に登録なったとはいえ、みんな宍道湖を何か遠くから見ているような気がします。そこで、子どもたちをどうやったら宍道湖についてもっと入っていくことができるのか、伺ってみたいのですが。
会場の先生
幼稚園の頃からしっかりと川に入って生物を飼育するなどの体験を続けています。小学校でも継続しており、環境を肌で感じるということをしっかりと行っております。本格的な調査について考えるということは中学校頃から、というかたちになっています。
つまり中海で遊んでいるうちに課題を見つけることができるようになります。例えば、きれいだなと思っていても調査をしてみると案外汚れていることが分かったりします。そのように課題を自分で見つけることになります。最終的には何がじぶんたちにできるかな?ということに行き着いて、例えばゴミを拾ってみようとか、地域に呼びかけようといった活動につながります。小さい頃から体感する、そして課題を持って環境について考え、自分にできることを考えることが大切だと思っています。
三代(県)
宍道湖を見てみますと子どもたちが全然遊んでいないことに気づきます。確かに護岸がやっと整備されつつあるという現状もありますが、遊びの中に「川遊び」というものが選択肢にないことが気になります。学習以前にまず遊ぶということで、湖岸がどうなっているのか、水がどんなようすなのか、ということを肌で感じることがまず必要だと思います。
環境学習という前に、子どもたちが生活の中で遊んだして宍道湖に親しむことがまず必要なのではないかとも思います。
座長
小さい頃から体感するということは大切だと思います。私たちが小さい頃は川や海は遊び場でしたが、最近ではこちらが連れて行ってやらないと遊ぶこともできないという状況ですね。
会場の先生
総合的な学習の中で環境学習を扱っています。ただ、環境学習という看板を全面に出している訳ではないのですが、子どもたちが身近な自然にふれあえるような学習を取り組もうとしています。
ただ、そういった活動をしていくうえで、子どもたちが自然にふれあえる環境が減ってきている、というのがまず1点。そして宍道湖で環境学習といっても、親水護岸などはできていますがさきほどから話にでているような自然体験ができる湖岸がほとんどありません。よくゴズ釣りなどはありますが、本当の自然体験からはかけ離れているような印象を持ちます。
環境学習の大切さと難しさ
三代(県)
環境教育というものが学校教育やカリキュラムの中にきちんと組み込まれていくことがないと、これからの学習にも影響するように感じるのですがいかがでしょうか。
青木
環境学習の体験を子どもたちにさせるというのは難しい状況にあります。湖に入ったり川に入ったりするのは大変で、きちんとセキュリティなど事前の打合せや下見をしないとできないんです。でも我々はそれを乗り越えて、少しでも体験をさせないといけない。
会場から
小学校などの活動を実際に見せていただき、非常に地についた継続的な活動をされているところを拝見すると、こういった活動の成果というのは指導者の存在や学校の規模が問題ではないのかと思っています。
また、以前、町中探検と称して(子どもたちを)つれて歩きました。最初はどのくらい子どもが集まるのか不安だったのですが、80名という大変多くのお子さんが参加されました。ただ、取組みの中で感じるのは縦割りということです。統率したり調整する人がいないのです。今までのように課単体で「対策しようよ、そうだな」ということではダメなのではないかと思っています。
会場の先生
環境教育は理科や社会の中で部分的に位置づけられて学習指導要領に組み込まれています。総合学習は基本的に生き方を学ぶとか、課題を見つけて自分で解決する能力を身につけるということがあります。よって環境教育に取り組みなさいとは一言も明記されていません。
学校の規模による指導については、人数が少ないことはいろいろな利点があるということはそのとおりだと思います。大規模校で同じように動かすということは難しいです。
環境教育の私のとらえ方は、便利な生活と自然環境の妥協点をどこに見いだすかということだと思っています。子どもたちには便利な生活から、より自然の方向にベクトルを向けるということが必要だと思って日々指導に当たっています。
会場から
環境学習においては、里山や農業を絡めた環境学習などの分野が遅れているように感じます。エコロジー農業や宍道湖の水質問題などは非常に関係が深いと思います。
環境学習と社会や大人とのギャップ
会場の先生
環境教育というのは自分自身も課題意識を持って取り組んでいるが、子どもたちも環境学習に取り組みゴミ拾いをしようとかいろいろ活動をするのですが、自分の生活に帰ってきたときにはエアコンはがんがんつける、テレビは遅くまで見る、といった生活をしながら川をきれいにしようというギャップがあります。そこをつなげていけるように持っていかなくてはいけないなというように私自身は思っています。
青木
子どもはゴミをポイ捨てしませんよね。結局大人がするんです。問題なのは大人のようです。子どもは学校で環境学習をする訳ですが、それを子どもが家庭で話すことによって、洗濯の回数を減らしたりゴミを捨てないようにするなどの動きにつながるのではないでしょうか。まずは大人の意識を変えていかないと、県行政がやっているだけでは水質は変わらないのではないでしょうか。子どもは子どもでしなければならないですが、私は大人にも必要なのではないかと思っています。
ネットワークの活用
会場の先生
毎日子どもたちと接している中で、横のつながりはなかなか分かりにくいのが現実です。そこで、民間のネットワークさんがどのくらい学校授業の中に入り込んでもらえるのか、といったようなことを教えていただきたいと思います。
青木
私どもでは自然体験施設の情報をまとめた冊子を作っています。その中には提供できるノウハウの他にお弁当が食べられるか、車いすでも対応できるか、道具の貸出ができるか、講師の派遣ができるかなど、さまざまな情報を載せています。これを一昨年度に作成し、全県の小中学校に配布しています。たいがいの施設は含まれているはずですので、どうぞご覧になってみてください。
板倉(県)
自然環境と言っても山から川からとにかくたくさんありますよね。山なら三瓶自然館には自然観察指導員の協会、ラムサールなら我々のところでお受けすることもできますし、フィールドでやるときは、サポートネットワークなどを利用されるといいかと思います。まずは相談していただきたい。
会場の先生
ネットワークのような講師の派遣というものは、子どもたちの学習を支える上で大変ありがたいですね。
こどもエコクラブサポーター
「こどもエコクラブ」に登録すること、これが一番の近道ではないかなと思っています。教材もたくさんありますし、情報も入ってきます。自分で見つけて取り組める課題もたくさんあります。また横のつながりという点においても県内だけではなく全国的なつながりがあります。吾郷さんが小池大臣に会えたのもそのようなつながりがあったからです。
野津(グリーン財団)
やはり「続ける」ことを支援する機関があれば、個人的に進めるよりも助かることが多くあります。サポーターの方がネットワークを幅広く持っていると子どもたちは育っていくと思います。その輪がどんどんひろがり、そして顔を合わせることでネットワークも深くなっていくと思います。
会場から
子どもたちに向けての環境学習の場合はエコクラブという有効な手段があると分かりました。松江では「松江市民環境会議」というのを立ち上げたばかりですが、今後大人向けにそのような活動を展開するときに島根県ではなにかそのような組織があるのでしょうか。
三代(県)
県にはNPOの推進部署がありますので、相談していただければご紹介できるかと思います。そこはNPO以外にも任意の団体や活動を把握しております。
国によっての考え方の違い
崔
実は、今日はみなさんにお聞きしたいことがあるのですが、最近日本で話題になっていることで、レジ袋の有料化について東京のある地域では実験的に取組みがなされているということです。私はそれを見たときに「遅い」と思いました。韓国では10年以上前から大手スーパーでは一斉に有料化になっています。
韓国よりずっと環境に厳しそうな日本ではサービスの一環として取り組んでいないということは私にはとても不思議な感じがあるのですが、日本の方はどのように思っておられるのでしょうか。
会場から
日本でなぜ有料化が進まないかということですが、それは市民が怖いからなんだと思います。市民に遠慮があるのかもしれません。一番効果的なことは「ゴミ処分の有料化」というものがあると思います。
会場の先生
崔さんのレジ袋の有料化の話はまったくの同感です。環境教育の私のとらえ方は、便利な生活と自然環境の妥協点をどこに見いだすかということだと思っています。子どもたちには便利な生活からより自然の方向にベクトルを向けるということが必要だと思います。
最後に
青木
環境問題とは非常に幅広いですよね。ゴミに関心があるのならまずゴミの問題から取りかかる。川とか山とかに関心がある人はそこから取り組めばいい。要するに「行動する」ということではないですかね。
座長
先ほど青木さんの話にもありましたがこどもがゴミを捨てたりしない。捨てるのは大人であるというのはもっともな話だと伺いました。では、子どもが環境学習をとおして変わることで大人も変わってくるということはあるのでしょうか。
角(鰐淵小学校校長)
去年から鰐淵小学校に勤務しています。ここではサケに取り組み、猪目分校ではカジカガエルに取り組んでいます。鰐淵小学校ではサケの取組みをとおして命の問題について考えています。しかしながらサケだけでは片付かない問題が出てきます。例えば昨年はサケが帰ってきませんでした。これは水量が少なかったこと、湾内の変化、水道水への流用など、サケだけの問題ではないことに直面します。子どもたちは親御さんとも一緒に清掃活動をする訳ですが、それでも少しながらゴミはあります。まだ誰かが捨てているのでしょうが、それでもずいぶんと減ってきています。そのような状況を見ると効果があるように感じます。猪目分校ではカジカや野鳥、昆虫などについて勉強をするなかで、みんなが自然を大切にしてくれているような感じをうけます。
少し話がそれますが、先ほど遊びの話がありました。こどもたちには、何か楽しさや面白さを感じてほしいと思っています。純粋に遊びが楽しいということもあれば、科学的に面白いということもあるでしょう。面白さを伝えたいですね。学習という大義もありますが、まずはその面白さを地域の人たちとも共有できればいいなと思っています。
座長
それでは時間になりましたので本日はこれまでにしたいと思います。ゴビウスも最近では熟年層の方からのご来館が増えています。その方々をどのようなかたちでつなげていくかが大切になると思います。
今回は、環境学習をテーマに様々な立場から意見交換をしていただきました。学校教育、地域活動、家庭、遊びからのアプローチ、更には国による違いなど、関わり方や見方などの違いにより考え方や思いが大きく違い、また、条件などによっては選択肢や手法が異なったり制限されたりするなかで、応じた手法や考え方によりなされていることがわかります。
「ラムサール条約登録と環境教育を考える」というテーマで開催したこの語る会も、意見交換では環境教育の難しさや国による違いなどにも発展したように、環境問題は地球環境から身近な行動に至るまで、わたしたちの生活全てに関ることであり、本日の発表や意見はそれぞれの背景やアプローチとともに考えると、全ての方に参考になるものではないでしょうか。
直面していることや、できることからはじめ、総合的な見地で学習することが重要なのですが、こうした場でのつながりを大切にし、助言をしあったり連携することを心がけたいと思います。
この日は、環境学習用パンフレットなどの紹介、個別相談「日韓親善少年の翼」の事業紹介ポスターの展示なども行われました。
環境学習用パンフレット等日韓親善少年の翼事業紹介ポスター
環境教育などのポスター
お問い合わせ先
環境政策課宍道湖・中海対策推進室
〒690-8501 島根県松江市殿町1番地 TEL:0852-22-6445