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水産技術センター研究報告15号(2023年3月)

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報文

島根県に水揚げされるマアナゴの一般成分と脂質特性(内田浩)(PDF1,185KB)

 島根県に水揚げされるマアナゴの一般成分、その内粗脂肪については脂質組成および脂肪酸組成も分析した.漁獲の大部分を占める雌の粗脂肪の年間変動は,冬季から春季が低く,夏季から秋季が高い傾向を示した.また,成長するにしたがって粗脂肪は増加傾向を示し,全長600 mm以上では冬季を除き10%を超えた.雄については、全長は500 mm未満であり、同じサイズの雌に比べて粗脂肪は非常に高かった.雌雄共に粗脂肪の大部分はトリグリセリドであり,リン脂質やステロール等の割合は低かった.脂肪酸についてはオレイン酸とパルチミン酸の割合が非常に高かった.

 

フレークアイス使用によるアユ鮮度向上試験(岡本満・石原成嗣・曽田一志)(PDF1,293KB)

 刺網で漁獲されるアユの品質向上を図るため,冷却にフレークアイスと呼ばれる細氷を用いた鮮度保持試験を行った.角氷とフレークアイスの併用によって速やかに冷却されるだけでなく,長期間にわたり低温が維持され,角氷のみの従来法に比べてアユの体温を低く保つことができた.角氷とフレークアイスを併用したアユは角氷のみのアユに対して,1日目(致死の翌日)における背中の色調が濃くK値がやや低かった.以上から,フレークアイスと角氷の併用はアユの鮮度向上に資すると考えられた.フレークアイスを使用したアユの筋肉には豊富なイノシン酸が含まれており,内臓のグルタミン酸との相乗効果で食味の向上に寄与できる可能性が示唆された.

資料

浜田地区におけるマナマコApostichopus japonicusの夏眠時期推定(寺戸稔貴)(PDF964KB)

 浜田地区におけるマナマコ(アオ・クロ型)の分布密度(個体/m2)と日平均水温(°C)の関係から夏眠時期を調べた.調査は202126月に計11回,202110月~20225月に計15回実施し,定線上(100 m × 2 m)に分布するマナマコを計数し,分布密度(個体/m2)を算出した.マナマコは14.3°Cから12.9°Cまで低下した時に初めて0.02個体/ m2観察され,17.7°Cから19.2°Cに上昇した時に観察されなくなった.これは既知の夏眠水温と同程度であるため浜田地区におけるマナマコの夏眠は17.7°Cを超えた時に開始すると示唆され,12.9°Cには終了することが分かった.

 

2021年宍道湖におけるシラウオSalangichthysmicrodonの産卵場の底質環境と卵分布(沖真徳・福井克也)(PDF1,900KB)

 宍道湖におけるシラウオ資源の保護を目的として,202115月に宍道湖20点と大橋川1点の底質環境とシラウオの卵分布について調べた.シラウオ卵は15月に確認され,盛期は34月であった.シラウオ卵は本湖の水深14 mで確認された.産卵場の底質と卵分布の関係ついては,極細砂とシルト・粘土の含有量が高くなると卵はほとんど認められなかったのに対し,細砂以上の粒径成分については含有率にかかわらず,多くのシラウオ卵が確認された.これらのことから,宍道湖におけるシラウオの産卵場形成の底質条件の一つとして,シルト・粘土および極細砂がほとんど含まれないことが示唆された.

 

2021年の江の川下流域におけるアユの産卵状況および浜原ダム上流域における産卵の確認(寺門弘悦・谷口祐介・沖野晃)(PDF1,390KB)

 江の川での天然アユ資源の回復を図るための取り組みへの技術支援の一環として,江の川下流域で毎年継続的に実施しているアユの産卵状況調査を行った.202111月にハネノセからセジリの瀬の間の7地点で踏査・潜水目視した結果,ハネノセとボウフラの瀬でアユ産着卵が確認され,産卵面積はそれぞれ74 m2および1,352 m2で合計1,426 m2であった.ボウフラの瀬では卵の埋没深が,良好な産卵環境の目安である10 cmを超えていた.また,毎年実施する調査とは別に,浜原ダムを降下できなかったアユによるダム上流域での産卵状況を調べた.簗瀬において流下するアユ仔魚が採集され,ダム上流域でのアユの産卵が確認された.

 

中海のサルボウガイ垂下養殖試験地における水質環境の季節変動および飼育深度帯の検討(古谷尚大・佐々木正・開内洋・石原成嗣)(PDF4,145KB)

 サルボウガイの養殖試験を行っている地点を中心に中海全域に設けた15定点において,複数年に渡って,水温,塩分,DOおよびクロロフィルa量の水質のモニタリング調査を実施した.夏季の塩分・DO躍層の変動範囲,サルボウガイの生残率に大きな影響を及ぼす塩分とDOの閾値が発生する確率分布および他の付着生物の条件から判定したサルボウガイの養殖に適した深度帯は,概ね,塩分・DO躍層の変動範囲付近となることが示された.また,その深度帯の範囲は,養殖場所の水深に応じて変化し,水深67 mでは1.52.0 m,水深45 mでは1 m程度,水深4 m未満では0.5 m程度と水深が浅い程狭くなる傾向が示された.


お問い合わせ先

水産技術センター

島根県水産技術センター(代表)
〒697-0051 浜田市瀬戸ヶ島町 25-1
TEL.0855-22-1720 FAX.0855-23-2079 E-Mail: suigi@pref.shimane.lg.jp