島根県水産技術センター研究報告第4号(2012年3月)
全文(PDF,13,924KB)
(タイトルをクリックするとPDF形式の全文がご覧頂けます。)
殺菌冷海水による定置網漁獲物の鮮度保持効果(PDF,1,226KB)
岡本満・石原成嗣・堀玲子・井岡久
(要旨)島根県全域36ヶ所の定置網漁業を対象として,殺菌冷海水の漁獲物に対する鮮度を調査した.殺菌冷海水供給装置によって海水中の細菌数を低減できること,殺菌冷海水での洗浄によって漁獲物体表の細菌数を低減できることが分かった.各定置網で漁獲されたマアジの鮮度は殺菌冷海水供給装置導入前に比べて導入後において全体的に向上していた.以上から,殺菌冷海水の使用によって漁獲物の鮮度を向上できることが明らかとなった.しかし,殺菌冷海水の使用にもかかわらず鮮度向上が認められない定置網もあったことから,正しい使用法について再点検する必要がある.
イワガキの大腸菌浄化手法の確立(PDF,1,018KB)
堀玲子
(要旨)全国的に出荷量の多いマガキの浄化手法を基に作成された「イワガキの衛生管理マニュアル」に示された手法において,イワガキでも確実に大腸菌が浄化されることを検証するため浄化試験を実施した.室内実験の結果,マニュアルと同量またはそれ以上の換水を行った場合,大腸菌は確実に排出されるが,無換水条件では24時間後に生食用カキの基準値を超える大腸菌数が検出された.生産現場においても,適正な方法で浄化することにより,大腸菌は確実に排出されることが明らかとなった.マニュアルの遵守、養殖漁場及び浄化水槽の衛生状態を定期的に監視することで,危害リスクを抑えることが重要と考えられた.
沿岸漁業の複合経営に関する研究−III(PDF,1,883KB)
-島根県沿岸海域におけるヨコワ(クロマグロ幼魚)ひき縄釣の漁業実態-
森脇晋平・小谷孝治・寺門弘悦
(要旨)島根県沿岸海域のヨコワひき縄釣漁業の実態を明らかにするため乗船及び既往知見を整理し,漁況と海況の対応関係を検討した.島根県の各水揚げ漁港の間で相関があるが、浦郷で養殖種苗用の漁獲が本格化した2003年以降季節的漁獲量の変動パターンに変化がみられる.漁場に冷水域と暖水域との境界帯が南北に形成されている年は好漁であり,逆に漁場から遠く離れている年は不漁である.南下回遊が境界帯によって阻止されるという見かけの現象は餌生物が境界帯に集積されることが関連している可能性がある.
沿岸漁業の複合経営に関する研究-IV(PDF,4,371KB)
-島根半島沿岸海域におけるアカアマダイはえ縄漁業の実態-
森脇晋平・堀玲子・吉田太輔
(要旨)島根県東部海域のはえ縄漁業の操業実態やアカアマダイの生物特性,漁況について調査した.漁況の経年変動からは周期性が暗示された.季節変動は春以降上昇して7〜9月に高いレベルにある.11月には一時的に低下するが,底層水温が最高値に達することが要因であろう.盛漁期に底層水温が漁況に影響を与えている可能性は小さい.胃内容物は多毛類,貝類,エビ・カニ類で空胃個体は少なかった.産卵期は6月下旬〜10月下旬,盛期は8月下旬〜9月上旬である.
島根県沿岸域のマアジ漁況(PDF,1,962KB)
-春〜初夏季の漁獲量変動におよぼす水温変動の評価-
森脇晋平・寺門弘悦
(要旨)島根県のマアジ漁況に関する資料を整理し,漁況に及ぼす諸要因について検討した.当該海域の盛漁期である5〜7月の漁獲量は加入量指標値だけでは説明できず,魚群の来遊のしやすさ,漁場形成のされやすさなど海況条件が関連していることが示唆された.中型まき網漁業の漁獲量と適水温指標との関係をみたところ,5月〜7月の経年変動と適水温指標のそれとの間には有意な相関関係が認められる.島根県沿岸のマアジ漁況は魚群の補給機構に関わる海況条件に依存していると考えた.
日本海南西沿岸海域におけるマサバの摂餌生態(PDF,1,647KB)
森脇晋平・宮邉伸
(要旨)日本海南西沿岸海域でまき網漁業により漁獲されたマサバ35標本,1,936個体の胃内容物を調査した.魚類,甲殻類,イカ類及びサルパ類がマサバの主要な餌となっていた.食性は6〜8月の魚類を捕食する時期と11〜12月の主に甲殻類を捕食する時期とに分かれ,5月はイカ類を捕食する頻度が高くなった.サルパ類は魚類・甲殻類の出現頻度の低い時期に高くなる傾向が顕著に認められた.平均摂餌率は0.11%〜9.23%の範囲を変動した.食性の変化は第一義的には外部環境の変化を反映したものと考えられるが,マサバ自身に起因することによっても変化すると考えられた.
資料
島根県西部河川におけるアユ産卵場造成について−III(PDF,2,457KB)
高橋勇夫・寺門弘悦・村山達朗
(要旨)島根県西部の主要河川である,高津川と江の川では,近年の夏季から秋季の小雨傾向と,堰堤による砂利供給量の不足により,下流部のアユ産卵場の環境は年々悪化している.そこで,両河川におけるアユ産卵場の機能回復を「造成」によって行い,さらにそこでの産卵状態を検証した.高津川では3ヶ所5560m2を造成し,産卵面積の割合は57%であった.造成した産卵場のうちバイパス上の瀬以外は10cm以上の埋没深があり「効果あり」と判断できた.一方,江の川は親魚数が少ないことが予想され,自然産卵場の面積で十分収容できると判断し,造成は行わなかった.
江の川におけるアユの適正収容量の推定(PDF,3,047KB)
高橋勇夫・寺門弘悦・村山達朗
(要旨)江の川のアユ資源回復に向けた取り組みを進めるうえでの増殖目標となるアユ漁場の適正生息数を検討した.アユの再生産が確実な浜原ダムより下流域を踏査し,5つの河床型(早瀬,平瀬,淵,トロA,トロB)に区分した.それぞれの水面面積と,江の川の環境を考慮して決定した収容密度から適正生息数を検討した.その結果,標準的な適正生息数は239万尾(167t)と試算された.また,平均密度は0.66尾/m2であり,天然遡上主体の河川での平均的な密度1尾/m2と比較すると,やや少なめの密度と判断された.
シンポジウム報告
お問い合わせ先
水産技術センター
島根県水産技術センター(代表) 〒697-0051 浜田市瀬戸ヶ島町 25-1 TEL.0855-22-1720 FAX.0855-23-2079 E-Mail: suigi@pref.shimane.lg.jp