宍道湖・中海の湖底貧酸素化現象について
B.貧酸素水の移動(這い上がり)による魚介類のへい死
宍道湖・中海の貧酸素水による生物への影響は、通常はシジミの例のようにゆっくり静かに進行しているため人目に触れることはほとんどありません。また、移動能力のある魚類は貧酸素水から逃げることもできます。しかし、強風により湖底にある貧酸素水塊が浅場に押し寄せると、大量の魚介類が逃げ場を失って死亡し、新聞などをにぎわすことがあります。ここでは、平成14年度に起こった二つの事例を紹介します。どちらも、強い風によって湖下層の貧酸素水塊が浅場に「這い上がり」を起こしたことが原因と考えられるものです。
事例−1大橋川におけるヤマトシジミへい死
平成14年8月初旬に大橋川でヤマトシジミのへい死がありました。へい死は大橋川の中でも掘れて深くなっている窪地で特に多く、そこでは98%のシジミが死亡していまし
た。
図20大橋川におけるヤマトシジミへい死(2002年8月初旬)
当時の大橋川水質情報システムのデータから、中海から高塩分で溶存酸素濃度2mg/l以下の貧酸素水が数日間にわたって連続的に流入し、大橋川の下層部が3〜4日間連続して貧酸素状態になったことが分かり、へい死の原因は酸素欠乏と考えられました。
中海から長期間継続して底層の高塩分水が流入した原因ですが、当時強い西風が数日間連続して吹いており、この強い西風により中海の上層水が東側に移動し、それを補うように中海下層の貧酸素水塊が中海西岸方面に移動して浅所に「這い上がり」を起こし、大橋川に連続して流入したものと考えられます。
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