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中山間地域活性化の提言

 

平成12年12月議会において中山間地域活性化調査特別委員会の委員長中間報告に基づき議会として知事へ中山間地域活性化の提言を行った。

その内容は下記のとおりです。
また別にPDFファイルでも提供していますので、必要な方はダウンロードしてください。


中山間地域活性化の提言

はじめに
県土の約85%、人口の約42%を占める本県の中山間地域は、地域住民の生活の場としてのみならず、土砂流出や洪水の防止、水源かん養等の国土保全機能や大気の浄化等の環境保全機能など、県民生活を営む上で多面的かつ重要な機能を担っており、その活性化と振興は「住みよい島根」「住みたい島根」を実現するためにも、また、21世紀の本県に明るい展望を切り拓く上ためにも積極的に推進すべき大きな課題である。
しかしながら、本県の中山間地域では、人口の急激な減少や高齢化の進行が続いており、近い将来集落の崩壊も懸念される地域が生じかねない程の厳しい状況が続いている。
中山間地域を維持するためには、自らの地域に「誇り」を持って暮らし続ける人の存在が何よりも先ず必要であり、「安心」して生活できる環境の確保と「安定」した生活を保障するための施策が求められている。
平成11年3月に制定した「島根県中山間地域活性化基本条例」では、このような現状認識のもと、県は市町村とともに、中山間地域の活性化を図るための施策を総合的、計画的に実施するとともに、広域的な観点から中山間地域の活性化に資する施策を樹立し、その事業に対して積極的な支援を行うことを規定したところである。
本条例を提案し、その後特別委員会を設置し、中山間地域の活性化に関する調査を行ってきた議会として、今後、本県の中山間地域対策に係る施策を展開する上で、特に必要な視点について次のとおり提示するものである。

財源の確保について
厳しい財政状況にあることは我々も十分認識しているが、このまま放置すれば今後5年から10年というごく短い期間の間に崩壊しかねない集落が数多くあることなど、中山間地域のおかれている切実で危機的な状況を考えると、この地域の活性化と振興を図るためには、特段の配慮を持って予算を確保することが必要である。
中山間地域は、国民に安全な食料を供給する他、国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化伝承など多岐にわたる公益的な機能を持ち、国民生活にゆとりと安全・安心を与える大きな役割を果たしている。
中山間地域を維持・活性化させることは、国民が等しく享受する公益的機能や環境保全機能を良好に保全することとなり、都市住民にも大きな利益をもたらすものである。
中山間地域の振興を図る施策を進めるための財源を考えるに当たっては、このことを強く訴え、都市住民を巻き込んだ国民全体で負担を負うことに理解を求めていくことが必要である。
都市と中山間地域は、近年、特に公共投資を巡って対立の構図がクローズアップされている。しかし、本来、都市と中山間地域は対立するものではなく、都市は、我が国の文化・経済の高度な発展を牽引し、一方、中山間地域は国民に「安らぎ」や「うるおい」さらには「安心」をもたらすなど、双方が車の両輪のようにうまくかみ合い、相互に作用しながら、不足するものを補うことにより、我が国の均衡ある発展を担うものと考える。
このような観点から、「連帯と共生」を図りながら、本県と同様な中山間地域の課題を抱えている他の道・県と連携し、国に対し、新たな財源の確保と施策の枠組みの構築に向けた強力な働きかけを行われたい。
 

集落ごとの実情、ニーズに立脚した施策の展開について
人が「安心」して生活し続けるためには、社会の基礎的単位である「集落」が維持され、その機能が効果的に作用することが必要である。
しかし今、集落の弱体化は急速に進んでいる。
中山間地域の3,422集落の内、3人に1人が65歳以上である高齢化率35%以上の集落は4割を超え、高齢化率50%以上の集落は1割を超えるという現状ではあるが、それぞれの集落を取り巻く状況は、地域によって大きく異なり、その活力にも自ずと違いが生じている。
近い将来「集落崩壊」も懸念されるほどの厳しい状況に直面する集落、集落崩壊の危機にはまだ直面していないが活力に乏しく地域の活性化のためには外部からの働きかけがどうしても必要な集落などがある一方、積極的な地域ぐるみの取り組みにより活力が戻りつつある集落もあるなど、それぞれの集落の実情や行政等に期待する支援方策は千差万別である。
今後の中山間地域対策を効果的に進めていくためには、高齢化し、崩壊の危険にさらされている集落の現状はどうなっているのか、集落を構成する人々が自らの集落の崩壊を防ぐために何が必要と考えているのか、行政にどんな支援を求めているのかを見極めておくことが必要である。
このような認識に立てば、市町村には、集落ごとにその人口、戸数の実態と集落を維持・向上するための施策に対しての集落住民の声を早急に調査することがまず求められる。その調査結果や市町村の基本的考え方を基礎として、専門家の指導・助言を集落に提供し、集落自らが考える集落対策を展開していくことが必要である。
県には、こうした集落や市町村の意向を把握しながら助成制度等を樹立するなど、市町村施策に対する積極的な支援が求められる。

中山間地域維持・活性化緊急対策について
中山間地域の社会資本の整備は立ち遅れ、特に「安心」して生活を営むための「生活基盤の整備」は、中山間地域の中でもとりわけ、過疎・高齢化が進む縁辺地域においては深刻な問題となっている。
この地域では、生活の場である集落と職場や学校、福祉・医療施設、商店とは遠く離れており、これら施設が立地する中心部とつなぐ道路網の整備は人々の生活を左右する極めて重要な課題であるが、生活関連道路については、平成11年度末整備率は25%と大幅に立ち遅れ、中山間地域対策の根幹を成す大きな課題としてクローズアップされているところである。
交通危険個所や通行障害箇所、更に積雪地帯では冬場の通行困難箇所を多く抱えているなど、中山間地域に多く残されている未整備の道路網を整備し、安全で通行に支障をきたさない道路環境を確保することは、地域に住む人々の切実な願いであり、定住条件を左右する大きな要因でもあることから、緊急に進めていく必要がある。
また、水は人が生活する上でなくてはならないものである。水を安定的に確保していくことは生活を維持する上で最低限必要なことであり、定住条件の最も基礎的な条件である。農村においても生活様式の都市化が進んでいることや高齢者が安心して生活できる環境を整えていくことを考えたとき、水道未普及地域の解消は重要な課題といえる。
しかしながら、中山間地域の上水道普及率は87,7%となっており、未だ未普及地域が各地に数多く残されている。
戸数が少なく工事費が割高となるため、上水道の整備が遅れているこれらの地域では概ね高齢化が進んでおり、自家用の飲用施設の維持管理は、大雨時や積雪時に大変な労力を要している場合もある。
生活基盤の整備を図る上では、特に、国庫補助事業を有効に活用しつつ生活関連道路の整備や水道未普及地域の解消など住民生活安定のための基礎的条件を整備する、中山間地域維持・活性化の緊急対策事業の実施が求められる。

県の支援体制の構築について
本県においては、平成8年度に副知事を本部長とする中山間地域対策実施本部を設置し、広範にわたる課題の解決に向けて取り組み、地方機関においても地域振興プロジェクトチームを設置し、地域の課題に総合的に対応するよう体制を整えているところである。
しかしながら、中山間地域が抱える様々な課題を認識した上で、維持・活性化に向けて着実な対応を進めていくためには、今まで以上に総合的、計画的、重点的な中山間地域対策の実施が求められるところであり、現在の体制を生かしながらさらに実効性の高い施策展開を図ることが必要である。
また、中山間地域を巡る環境は、この5〜10年の間に加速度的に悪化することが予測される中で、県は集落維持・活性化に向けた集落住民や市町村の取り組みを促すとともに、市町村と密接な連携のもとに必要な支援策を講じる必要がある。
そこで、地域振興プロジェクトチームの組織をさらに強化するなど、市町村、農業団体など民間団体、地域住民と密接な連携のもとに、地域における特定プロジェクトやモデル的な取り組みに積極的に対応できる体制を構築されたい。

おわりに
この提言をまとめるに当たって、委員会の審議の過程においては様々な議論がなされ、中山間地域の活性化を図るためには、解決すべき困難な課題が極めて幅広い分野にわたって山積していることを改めて認識したところである。
このたび取りまとめた提言は、条例に謳った県の責務を果たすために、今後求められる視点について議会の立場から包括的事項を述べたところである。
個別の課題については、別にまとめた「中山間地域の今後の展開について」により示しているところであり、島根県中山間地域活性化計画の策定や今後の施策展開に当たっては、ここに掲げている事項にも留意して取組を進められたい。


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