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新たな「農業・農村活性化プラン」策定に当たっての政策提言

 

新たな「農業・農村活性化プラン」策定に当たっての農林水産委員会が平成12年1月に行った政策提言は下記のとおりです。
また別にPDFファイルでも提供していますので、必要な方はダウンロードしてください。

 
新たな「農業・農村活性化プラン」策定に当たっての農林水産委員会の政策提言

急速な経済成長や国際化の著しい進展等により経済社会が大きな変化を遂げる中で、我が国の農業・農村をめぐる状況も大きく変化し、食料自給率の低下、農業生産活動の停滞等の多くの課題が山積している。そのような中、国においては、食料の安定供給の確保、農業・農村の多面的機能の発揮等の新たな基本理念を盛り込んだ「食料・農業・農村基本法」を制定し、新たな農政改革に取り組んでいるところである。
一方、本県農業も農村の過疎化・高齢化の中で、農業の担い手不足や農業生産の減少といった厳しい現状に直面していることから、県においても農業・農村の活性化をめざし、地域特性を生かした農業生産の拡大等を柱とする新たな「農業・農村活性化プラン」の策定に取り組んだところである。
また、今回作成するこのプランには真に県民・農家にとってその活動の指針となる実効性の高い計画となることが求められることから、農林水産委員会としては、県内7カ所で開催した「農林業活性化地域会議」等を通じて多くの地域住民の意見を聴取すると共に、こうした意見も参考にしながら全県的視座に立った課題、地域特有の課題など、様々な角度から議論を深め、プランに反映すべき施策のとりまとめに鋭意取り組んできたところである。
このたび、下記のとおり農林水産委員会の総意をもって「施策提言」としてとりまとめたので、これを真摯に受けとめプランへ適切に反映していただくよう強く要請する。
なお、プランの実行に当たっては、県における指導体制の充実強化はもとより、農協や農業生産法人組織など農業分野のみならず、これまで以上に農と商の連携を視野におき、商工関係団体も含めプランの推進体制を確立して、その実効性の確保に努めると共に、施策の効果測定などプランの適切な進行管理を行われたい。




1.農業の担い手育成・確保対策

[現状と課題]
本県農業は過疎・高齢化の進行に伴う担い手不足や、耕作放棄地の増加などにより、地域の農地保全など様々な課題を抱える中にあって、地域の農業を支え、個人の担い手育成に貢献する企業的経営体に対する担い手としての期待には大きなものがある。
一方、農業就業者の6割を占め、農業の担い手として大きな役割を果たしている女性が、農業経営や地域農業に積極的に参画できる社会づくりも求められている。
さらに、農業者の高齢化が進む中にあって、将来の担い手確保の点から、また、地域社会を維持発展させる定住促進の面からも、農業後継者及びU・Iターン等の様々な形態の新規就農者の確保・育成の強化が急務とされている。
このような現状を踏まえ、次の施策を推進されたい。

[実施すべき方策]
(1)農業公社、集落営農組織等が地域農業の維持・発展に効果を上げている実態を踏まえ、地域農業の組織化を促進すると共に活動の活性化を図る施策を講じること。
さらに、今後は他業種からの農業参入も視野に入れ、資本調達が容易な株式会社を、農業の担い手として積極的に機能させる施策を展開すること。

(2)本県では女性が農業の重要な担い手となっている。そのため、女性が農業経営に主体的に参画しやすい社会的環境をつくり、意志決定機関に積極的に参画することが極めて重要であることから、地域におけるきめめ細かな男女共同参画社会のあり方についての研修を実施すると共に、実質的参画が可能となる明確な指標、目標値を設定し、具体的な方策をもってその実施に努めること。

(3)地域農業の担い手に対しては、その活動の展開を支援するのために様々な機会をとらえ指導・研修を行う必要がある。若い就農希望者の教育機関としての県立農業大学校は指導技術・施設を有していることから、今後は農業者への生産技術の情報提供・研修等を通じて地域農業の担い手育成にも積極的に取り組むこと。

(4)農業後継者の育成を図るためには、農業と農林高校との産学間の連携が必要である。そこで、農業分野と教育分野がこれまでの枠組みを超え、様々な団体で構成した農業後継者育成のための連絡協議会を設置するなど、より一層の連携強化に努めること。

(5)集落営農等の先進的な事例の紹介・PRは、農業の担い手にとって今後の農業の進め方の参考となり、また、事例紹介された集落等にとっては活動を再評価できる有効な契機でもある。このような主旨にのっとった、先進事例の積極的かつわかりやすいPRに引き続き努めること。

2.農業生産の拡大対策

[現状と課題]
本県農業は、米価低迷の中で農業粗生産額が減少してきている。これを打開するためには、米主体の農業から地域の特色を生かした生産性の高い儲かる農業、園芸・畜産の生産拡大をめざしたいわゆるトライアングル型農業への農業構造の転換が急務とされている。
併せて、米の生産調整面積が拡大する中での転作割り当てに対しても、地域の実状に応じた適地適作を基本とした対応が求められている。
加えて、生産拡大のためには、生産者が市場のニーズ等を的確に把握し生産につなげるという、企業者意識に基づいた農業生産への転換も必要とされている。
このような現状を踏まえ、次の施策を推進されたい。

[実現すべき方策]
(1)プランの目標である農業粗生産額1000億円を達成するためには、米生産主体の農業から地域の特色を生かした農業構造への大胆な転換が必要であり、特に水田転作に当たっては適地適作を基本におき、転作あるいはさらに踏み込んだ本作も考慮の上、その指導等に取り組むこと。
そのためにも、各農林振興センターにおいては、市場動向や、生産者の生産実態、営農意欲を的確に捉え、重点的な振興作目を決定し、確実な生産目標を設定し、その実現に向けた取り組みを強化すること。

(2)本県農業をいわゆるトライアングル型農業に転換していくためには、専業農家等の担い手が生産技術の革新を図り、各部門で生産性の高い農業を構築していく必要がある。そのため、農業試験場等の試験研究機関は、豊富な試験研究で培われた高度な専門知識・技術の農業者への情報提供・研修などを積極的に実施し、農業生産の拡大につなげていくこと。

(3)農業生産の拡大のためには、農家への経営感覚の導入が必要である。また、市場原理に立脚した農業生産への政策転換も必要である。その具体的方策としては、マーケットリサーチや様々なビジネスチャンスについての情報提供、販路の確保のための物流の整備等がある。これらに対応するためには、市場と農家は直結していることが不可欠であり、そのためには、農と商との緊密な連携なくして成し得ないことから、行政内部の連携はもとより、民間も含めた仕組みづくりを早急に確立すること。

(4)プランの実効性を高めるためには、何よりも農協の果たす役割が重要である。そのため、農家に一番密着している農協が産地形成に向けて農家への緊密な営農指導を行うなど、自らプランの実現に向けて主体的に取り組むよう強力に指導すること。
 

3.快適な農村を創造する対策

[現状と課題]
現在の農村は、過疎化・高齢化・混住化といった厳しい社会環境の変化の中に置かれている。
そうした中で、住民が農村で快適な生活を過ごすためには、良好な集落環境の整備と安定した雇用の確保が不可欠の課題である。しかしながら、安定した雇用の確保の面では企業的経営体(農業法人等)での安定就労が課題であり、農村社会への定住を促進する集落の生活環境面でも課題は山積している。こうした現実が、農村社会での農業後継者の結婚問題をクローズアップさせる要因ともなっている。
また、将来の農村社会を考えた場合、今後の農村を担う次世代に対する農業への愛着を育む教育も重要となってきている。
このような状況を踏まえ、次の施策を推進されたい。

[実現すべき方策]
(1)農村地域への定住を促進するためには、その前提条件である雇用の確保と、住みやすい快適な農村集落の形成が必要である。そのため、農業の雇用の受け皿となる農業法人等の組織化・経営の安定を図ると共に、農業集落排水施設整備など集落環境の整備・改善を強力に進めること。

(2)農業後継者の育成には、農業後継者に農業を理解し、誇りを持ってもらうことが重要である。そのため、例えば小・中学生を中心に学校教育などを通して、農業を正しく理解する学習の実践や、体験学習などを積極的に取り入れ農業教育の充実を図ること。

4.消費者との連携による地域づくり対策

[現状と課題]
生産者と消費者の交流は、生産者にとっては消費者ニーズを直接把握し、その生産に結びつけることができ、消費者にとっては顔の見える生産者から安心して農産物を購入できるという相互理解につながっている。そうした意味から、各地で行われている産直市や農業祭等は、生産者と消費者が相対して交流できる絶好の機会であると共に、その消費者との交流自体が、生産の主体となっている女性・高齢者とっては生き甲斐ともなっている。
さらに、生産者と消費者の一層の相互理解を深めるためには、消費者に対して農業・農産物について正しく理解してもらうための機会を設けることも重要である。
このような現状を踏まえ、次の施策を推進されたい。

[実現すべき方策]
(1)各地の産直市を集めてのイベントは、消費者と生産者との交流の活発化や、産直市相互の連携が図れる共に、産直市の主体となっている女性・高齢者にとっては生き甲斐づくりの場ともなり、更には観光振興にもつながることからその推進を図ること。

(2)安全で安価な農産物を求める消費者に、農業・農産物に対する理解を深めてもらう必要があることから、あらゆる機会をとらえ消費者を対象とした有機農産物等の研修を行うなど消費者教育を実施すること。

5.中山間地域の農業農村活性化対策

[現状と課題]
県土の9割を占める中山間地域の農業は、急傾斜地や棚田といった厳しい自然条件の中で営まれている上、地域の過疎化・高齢化の急速な進展による担い手の減少、耕作放棄地の増大等といった厳しい状況に置かれている。
そのような中、これら中山間地域で生産される米は、平坦地の米に比べ市場において高い評価を得ており、中山間地域はいわば稲作の生産適地となっていることから、大きな地域課題として水田転作問題への適切な対応が求められている。
さらに、そうした中山間地域の農業の存続基盤をも脅かしているのが有害鳥獣被害であり、その被害防止・駆除対策に不退転の姿勢で取り組むことが急務とされている。
このような現状を踏まえ、次の施策を推進されたい。

[実現すべき方策]
(1)中山間地域の多くはその自然的条件から県下でも良質米生産地域となっており、地域においては水田転作が重要な問題と捉えられている。そこで、今後は適地適作を基本に、県全体の転作体系を見直し地域の実状を勘案した転作を進展させること。

(2)中山間地域での有害鳥獣被害は、農業従事者の生産意欲をも萎えさせてしまうことから全ての有害鳥獣への緊急かつ効果的な対策を講じること。


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