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平成26年11月定例県議会知事提案理由説明要旨(平成26年11月19日)
定例議会開会にあたり、諸議案の説明に先立ちまして、最近の県行政の主な動きについてご説明し、併せて、私の所信の一端を申し述べたいと思います。
(1.最近の政治・経済情勢)
(1)昨夜、安倍総理は、7月から9月期のGDPが、前期に続き2期連続のマイナス成長になったことや、有識者会合の議論なども踏まえて、消費税率の10%への引上げを、平成29年4月まで1年半延期する方針を示されました。
そして、このような税制の大きな変更を行う場合には、国民に信を問う必要があるとされ、21日に衆議院を解散する考えを示されました。
(2)このため、来月には総選挙が予定されており、来年度の予算編成などに一定の影響が生じることが予想されますが、総理は、通常国会に経済対策のための補正予算を提出することを表明されました。
(3)国政におきましては、経済再生と財政再建、社会保障制度改革、人口問題など、重要な課題が山積しております。
こうした課題にどのように対応していくのか、選挙戦を通じて議論が深まることが期待されています。
(4)このような中、今後の国の人口対策や地方創生の先行きにつきましては、不透明な状況にありますが、これまでの政府の検討状況及び県の対応について大づかみにご説明申し上げたいと思います。
(2.人口問題)
(1)まず、人口問題に対する政府の動きとしましては、
(イ)この問題に取り組む指針として、「総合戦略」を年内に策定することとされ、先般、その骨子が示されました。
(ロ)それによりますと、国は、「長期ビジョン」で示す日本の人口の将来の姿を踏まえ、東京圏への人口集中の是正や、若い世代の就労・結婚・子育ての推進などを目指した「5か年計画」を策定するとされております。
(ハ)この国の計画を勘案し、都道府県及び市町村は、それぞれ、5か年の「地方版総合戦略」を遅くとも来年度中に策定するよう要請されています。
(2)他方、島根県では、これまで早くから、県と市町村が連携して、産業振興、企業誘致、農林水産業の振興、県産品の販路拡大などを進め、また、産業体験などを通じたUIターンなど、若者の定住を推進してきております。
(3)県内の中山間地域や離島などにおきましては、田舎ツーリズムや地産地消など、地域の特色を活かした、雇用創出のための様々な取組みが積極的に進められております。
(4)こうした様々な産業振興や定住促進の取組みをさらに強化・充実していくためには、国による新たな交付金制度の創設、地方交付税の増額、過疎債の充実など、総合的な財政支援が必要であります。
(5)また、国で検討されている地域連携の核となる拠点などへの支援につきましては、全国一律の人口規模等を基準とした支援ではなく、各地域の実情に応じた支援が行われることが重要であります。
例えば、
(イ)人口20万人以上などを要件とする「地方中枢拠点都市」については、中海・宍道湖圏域のように県境をまたぎ、各市が対等の関係で広域連携を行っている地域においては、複数の市を一括して指定することや、
(ロ)あるいは、島根県のように東西に長く、離島や中山間地域を抱える地方では、比較的小規模の市や町も、現実に地域の産業振興や医療・介護の拠点的な役割を担っており、こうした自治体も幅広く支援対象とすることなどの対応が必要であります。
(6)県としましては、こうした島根の実情を国によく伝え、国の政策に反映されるよう、市町村などの意見もお聞きして、「人口問題対策に関する提案」をまとめ、先週、国への重点要望に合わせ、県議会議長とともに、政府に対して提案と要望を伝えたところであります。
(7)全国知事会議において、また、続いて行われた知事会と政府との意見交換の場においても、こうした島根県の考えを伝えてまいりました。
(8)さらに、先週末には、全国過疎連盟総会におきまして、過疎連盟会長として、県内各地の地域振興の具体的事例も紹介しながら、過疎債の増額やその有効活用を政府に申し入れたところであります。
(9)次に、地方創生の目標と施策を定める「地方版総合戦略」の策定につきましては、今後、どのように進んでいくのかは、まだ判然としませんが、県の「総合戦略」としましては、各市町村それぞれの地域課題を反映させ、市町村の「総合戦略」と連携がとれたものとする必要があります。
(10)このため、県と市町村それぞれが、具体的な課題や役割分担、施策・事業について、アイデアや構想を持ち寄って、意見の交換を行いながら、県全体として地方創生が効果的かつ迅速に進むよう努めてまいります。
(11)そうした検討の中で、県全体や各市町村の「総合戦略」の前提となる人口等の将来展望も定めていく必要があると考えております。
(3.最近の産業振興の動き)
次に、最近の産業振興の動きについて申し上げますと、
(1)ものづくり産業につきましては、3Dプリンターが、生産工程の大幅な短縮などにより、受注拡大や新たな市場への進出が期待できる革新的技術として注目されております。
(2)県では、10月、県内企業に共同利用していただく鋳物産業の砂型に対応した高精度の3Dプリンターを導入いたしました。
(3)また、技術人材育成のため、東部高等技術校と県立高校7校に、樹脂材料を造形する3Dプリンターを導入しており、高校では、今月から、授業、課題研究などで本格的に利用することとしております。
(4.最近の観光振興の動き)
次に、最近の観光振興の動きについて申し上げます。
(1)まず、石見地域につきましては、JR山口線の復旧やSL「やまぐち号」の運転再開に合わせ、観光PRなどを行い、津和野周辺の賑わいの回復に努めております。
(2)県では、萩市などを舞台とする来年のNHK大河ドラマの放映に合わせ、山口県や沿線自治体、JRや航空会社などと連携し、PRや旅行商品づくりも進めております。
(3)萩・石見空港の東京便につきましては、8月以降、毎月の利用者数が1万人を超えており、この勢いが今後も続くよう、地元協議会などとも協調し、利用拡大に取り組んでおります。
(4)隠岐地域では、観光協会と民間事業者が連携して、地域の特色ある商品やサービスを掘り起し、観光素材として磨き直す取組みが進められております。
(5)また、先月には、県、隠岐4町村、民間団体とで「隠岐世界ジオパーク活用推進検討会議」を立ち上げ、ジオパークの魅力をわかりやすく実感できる仕掛けづくりや、観光振興を推進するための具体的施策について検討を開始しました。
(6)昨年から続く「ご縁の国しまね」キャンペーンでは、県内の宿泊施設にご協力いただき、特典付き宿泊プランを売り出しております。
また、大手菓子メーカーが、「ご縁」をテーマとしたチョコレートを販売するなど、県内外において民間事業者との連携も進めております。
(5.原発の安全・防災対策)
次に、原発の安全・防災対策について申し上げます。
(1)島根原発2号機の規制基準適合性審査につきましては、昨年12月の中国電力の申請に基づき、原子力規制委員会の審査が、現在、継続中であります。
(2)鹿児島県の川内原発につきましては、今月7日、鹿児島県知事が、再稼働については、やむを得ないとの考えを表明されました。
今後、原子力規制委員会により工事計画認可などの手続きが進められていくものと考えられます。
(3)引き続き、国による島根原発の審査状況、中国電力の対応、そして川内原発の動向をよく注視してまいります。
(4)次に、原発の防災対策につきましては、先月、島根・鳥取両県及び島根原発周辺6市が合同で、「原子力防災訓練」を実施しました。
県としましては、こうした訓練を繰り返し行い、防災対策の実効性を高めてまいります。
(6.社会基盤整備)
次に、社会インフラ整備につきましては、
(1)山陰道の未着手区間のうち「福光・浅利間」は、10月末に、国による地元説明会が開催され、具体的なルートが示されました。
県では、引き続き、都市計画決定の手続きを進めてまいります。
(2)大橋川改修につきましては、天神川水門の工事が年内に完了する見込みとなりました。
これにより、天神川周辺の浸水被害の軽減が期待されます。
(7.地域医療の充実)
次に、地域医療の充実につきましては、「医療・介護総合確保促進法」に基づき、今般、医療従事者の確保、在宅医療や医療連携の推進に必要な事業を盛り込んだ今年度の県計画を策定し、国に提出いたしました。
この計画に基づき、医療・介護サービスの提供体制の整備に要する経費を、今議会に提出した補正予算案に計上しております。
(8.防犯・交通安全対策)
次に、防犯・交通安全対策について申し上げます。
県内では、万引きなどが増加しているほか、高齢者を中心とする特殊詐欺被害が後を絶ちません。
また、年末に向け、路面の凍結や飲酒機会の増加などにより交通事故が多発する傾向にあります。
今後も、街頭での活動など広報活動を積極的に展開してまいります。
(9.核燃料税等)
次に、今年度末に課税期限を迎える「核燃料税」及び「水と緑の森づくり税」につきましては、いずれも課税期間を5年間延長する条例案を今議会に提出しております。
(1)まず、「核燃料税」につきましては、原発に係る防災対策の強化など、必要となる県などの財政需要に対処するため、
(イ)税率を、現行の13%から4%引き上げて、17%にした上で、
(ロ)安定的に税収を確保する新たな課税方式として、原子炉の熱出力に対して課税する「出力割課税」を導入することとしております。
(2)なお、島根原発が立地する松江市並びに周辺市である出雲市、安来市及び雲南市に対して、核燃料税収入の20%に相当する額を交付金として交付する考えであります。
(3)「水と緑の森づくり税」につきましては、パブリックコメントなどにおきまして、森林の保全と身近な緑を守る活動のため、この税を継続することについて、県民の皆様の一定のご理解が示されていると考えられ、現行税率を継続することとしております。
(10.補正予算など提出議案)
それでは、今回提出いたしました一般会計補正予算案などの概要について申し上げます。
今回の補正予算案では、国の交付金の内示に伴い補正を要するもの等について措置することとし、総額27億9,400万円余を増額しております。
この結果、補正後の一般会計予算の規模は、5,339億7,400万円余となります。
この補正予算案のほか、条例案6件、一般事件案25件の計32件を提出しております。
これら議案の詳細につきましては、この後、総務部長から説明させることと致します。
何とぞ宜しくご審議のほど、お願い申し上げます。
(11.今後の県政に臨む決意)
(1)さて、最後に、この場をお借りいたしまして、私の今後の県政に臨む決意について、申し述べさせていただきたいと存じます。
(2)私は、知事就任以来、これまで2期7年半にわたり、島根の発展のために、県財政の健全化を進めながら、産業振興、企業誘致、農林水産業振興、観光振興、社会インフラ整備、医療・福祉や教育の充実など、全力を挙げて取り組んでまいりました。
これまでの取組みは、県民の皆様、県議会の皆様のご理解とご協力の下、それぞれの分野で一定の成果が出てきているものと思いますが、まだ、少子高齢化、人口減少など多くの課題が山積しております。
(3)こうした中、政府は、人口減少問題が地方だけでなく、日本全体の大きな課題だと捉え、初めてこの問題に本格的に取り組もうとされております。
そのため、地方創生を図るべく、地方への支援を強化されようとしております。
(4)これまで、地方に対する支援は効果が小さいとする風潮が首都圏などに根強くありました。
それが今、変わろうとしているのであります。
私ども地方にとって一つの好機が到来しようとしているのであります。
(5)私は、県民の皆様のご支持が得られるのであれば、引き続き、県政を担わせていただき、島根にとってのこの好機をしっかりと捉え、豊かで住みやすい島根を築くため、全力を尽くしてまいりたいと考えております。
(6)これまでの島根の人口の減少は、特に高度成長期を中心に、雇用が急拡大した東京など大都市圏に向け、島根の若者たちが、有利な職場を求めて出て行き、県内で子どもを産み育てる若い世代が少なくなった結果、出生「率」は高いのでありますが、生まれる子どもの「数」が少なくなったことに大きな原因があります。
(7)従いまして、島根で産業を興し、若者たちが島根で働ける雇用の場を増やすことが、極めて大事であります。
(イ)そのために私は、ものづくり産業、IT産業、農林水産業、中小企業などにおける産業振興に力を注ぎ、
(ロ)企業誘致、県産品の販路拡大、地産地消の推進、農林水産業などにおける担い手育成、再生可能エネルギーの活用などをさらに推進してまいります。
(ハ)観光の分野では、出雲大社の平成の大遷宮などで多くの方々が島根を訪れるようになっています。
この勢いが県全体に及ぶようにしてまいります。
(ニ)また、産業振興を進めるためには、山陰高速道など道路の早期整備が不可欠であります。
さらに、鉄道、航空路、離島航路などの交通の利便性向上も必要であります。
この面もさらに推進してまいります。
(8)また、島根は東西に長く、離島・中山間地域があります。豊かで住みやすい島根を築くためには、地域の実情に合った発展を目指すことが必要であります。
(イ)中海・宍道湖圏域を抱える県東部は、山陰をリードする中核的な拠点としての役割を果たしていかなければなりません。
(ロ)県西部では、4つの市が産業振興や医療・介護などで拠点的な役割を強化していかなければなりません。
(ハ)人口減少の著しい中山間地域、離島におきましては、地域の特性を活かし、地域振興や産業振興を強力に進めていかなければなりません。
(ニ)国に対しましては、こうした島根の実情に合った支援を要請しておりますが、県自身も市町村との連携をさらに強化してまいります。
(9)こうして県内各地で雇用の場を確保しながら、若い人たちの結婚から子育てへの支援、子どもの教育の充実、女性が働きやすい社会環境の整備、障がいのある方も、ご高齢の方も安心して暮らせる島根を築いてまいります。
(10)私は、県が直面する多くの課題の解決に取り組み、住みやすい地方の先端を行く県、島根、すなわち、
「住みやすい地方の先端県しまね」を目指し、全力を挙げて取り組んでまいります。
以上、私の決意を表明させていただきました。
これをもちまして、私の発言を終わりと致します。
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