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中山間地域・離島振興特別委員長報告

中山間地域・離島振興特別委員長報告


平成29年2月定例会

 中山間地域・離島振興特別委員会の調査結果について、ご報告いたします。

 本委員会は、(1)「第3期中山間地域活性化計画」の取り組み状況及び実績の検証と、「第4期中山間地域活性化計画」など今後に向けての課題解決や更なる活性化策の検討について、(2)「離島振興計画」などの検証と更なる離島の維持活性化策の検討について、の2つのテーマを目的として、平成27年6月定例会で設置され、調査・検討を行ってきました。その調査結果及び本委員会からの意見や提案等についてご報告いたします。

 本委員会では、執行部からの報告を受けるとともに、県内、外における中山間地域で、地域運営のモデルとなるような取り組みや地域の特色を活かした活性化の取り組み事例、また、隠岐4町村の現状と課題、4月に施行される有人国境離島法に期待するもの等について調査してきました。

 

 先ずは、県内、外における中山間地域における取り組みについてです。
県内の大田市三瓶町の農事組合法人百姓天国では、米価下落や直接支払交付金の減額など、米を主力とする農業経営が厳しい中、特色ある米づくりと加工事業等の取り組みで、早期の法人経営の安定化を図り、法人設立8年目以降、営業利益が黒字に転換しました。また、一法人の事業展開では限界があることから、北三瓶地区の3地区の各種団体で構成される「北三瓶よろず会」の活動への参画や「集落ビジョン実践塾」への参加等を通じて、中山間地域における地域、法人間の連携や協働が可能となる新たな集落営農法人のモデルの構築に向けて取り組んでいました。

 江津市では、平成22年度から地域資源を活用して創業を目指す人材を誘致・発掘することを目的に、ビジネスプランコンテストを開催しており、このコンテストを契機に、平成23年4月に、企業経営者、小中学校の校長などが集まって、創業を目指す人材や若者の挑戦を支援する「NPO法人てごねっと石見」を設立しました。活動は、人材育成、創業支援、駅前の活性化と幅広く、移住と起業を組み合わせて支援する取り組みを実施していました。

 邑南町の出羽自治会では、平成20年に町の施策で出羽地域振興計画(出羽夢づくりプラン)を策定し、20年後の出羽の姿を計画しました。そのプランの構想に基づき、力を合わせて行う街づくりを目的として、LLC出羽を設立し、自治会と連携して、農業や空き家対策等、産業の振興を推進していました。

 

 県外の事例として、高知県土佐町の集落活動センターいしはらの里を調査しました。産業の衰退、若年人口の流出・減少、過疎高齢化、移動手段・防災拠点の確保、生活サービスの維持といった課題に対応するため、平成24年5月に地域団体である「いしはらの里協議会」を設立しました。立ち上げに際しては、地域内で20回以上にわたるワークショップを重ね、石原地区の将来、今後の地域活動について議論し、活動の基本コンセプトを作りあげていきました。そして平成24年7月に高知ふるさと応援隊を配置し、集落活動センター「いしはらの里」を開所しました。「働く・稼ぐ」、「支える」、「実現する」、「集い」の4部会の取り組みにより、旧石原小学校区4集落を活性化していくことを通して、10年、20年後の将来を考えた地域づくりを進めていました。

 高知県本山町にある「ばうむ合同会社」は、商工会青年部が立ち上げた組織で、地域資源を生かした商品の企画や販売によって、地域の活性化に取り組んでいました。家内工業、零細企業をたくさん作る「ちょっとビジネス」の町づくりを地域と連携しながら目指すとともに、地域や社会への貢献につながるような事業を展開できる人材を育成し、地域の振興につながる事業を持続できる体制作りに取り組まれていました。

 香川県高松市にある株式会社荒川農園は、社長が大学在学中に、県内の大規模農業法人でのアルバイトをきっかけにその農業法人に就職し、その後、独立し、30aの農地から順調に農地の集積を図ってきました。事業を拡大する中で、地域の雇用を創出してきたことも地域の信頼を得る要因となっていました。また、インターン生を受け入れることで、新規就農者の育成にも貢献し、これまで8名の独立就農者を創出していました。

 

 次に、隠岐4町村の調査についてです。現状と課題を踏まえ、4月に施行される有人国境離島法に期待する総括的意見としては、地方負担に係る財政支援への理解と協力をお願いしたい、観光も含めた交流人口の増加への支援となるよう、運賃値下げ対象者は、島民・島民外を問わず支援の対象者としてほしい、物資に係る輸送コストの低廉化を図ってほしいなどの意見を伺いました。

 

 以上、本委員会での検討内容と調査活動を踏まえ、魅力溢れる中山間地域を将来にわたり維持し、今後も安心して人々が住み続けたいと実感できる中山間地域づくりが着実に進展するよう、次の5項目を提案します。

 

(1)部局横断による推進体制の更なる強化と市町村との連携の強化について

 各分野にまたがる中山間地域の課題に総合的・一体的に対応するためには、部局横断で取り組みをすることが不可欠であり、住民が主体的に議論を進めるためには、市町村の関与が重要となることから、県は徹底して市町村と話し合い、政策の理解度を深めること。

 併せて、現計画は、県内225カ所の公民館を基本単位として取り組みを進めているが、地域ごとに課題は異なり、特に地域交通においては、広範囲での議論になることから、公民館単位にこだわらない、より広域の取り組みも必要であるので、地域の実態に応じた地域づくりに取り組んでいくこと。

 

(2)地域の要となる人材の確保、配置と中間支援組織との連携について

 地域の課題解決に取り組もうとする意欲を持った住民の輪を広げ地域の計画づくりや実践活動をコーディネートする、地域おこし協力隊や集落支援員等の確保や適正な人員配置、積極的な活用に取り組むこと。

 また、行政とは別に民間の力で地域をサポートする組織となる中間支援組織の育成を進め、その支援組織の人材が地域の動きに加わる現場支援を促進すること。

 

(3)次世代を担う人づくりと「教育の魅力化」の推進について

 子どもたちの地元への愛着を高めるために、ふるさと教育を就学前から始めることや、地元企業へ就職したいという意識を高めていくために、生徒や学生、保護者及び教員などに対して、地元企業の紹介や見学の機会を増やすなど、地元企業と連携した取り組みを促進するとともに、生徒や学生と地元企業とのマッチングの取り組みを強化すること。

 また、県内の人材育成・訓練機関の充実した教育内容や特長について、地域の学校や企業などに十分に周知し、利用の促進に取り組むこと。

 さらに、中山間地域への移住・定住を促進するためには、「教育の魅力化」が地域の魅力を構成する重要な要素であり、中山間・離島地域での高校魅力化プロジェクトなどの成果を踏まえて、県と市町村との連携を深めること。

 

(4)農林水産業・商工業の振興について

 中山間地域の維持・発展のため、小さな拠点づくりと連携しつつ、集落営農組織の法人化や広域連携などを一層進めること。

 あわせて、元気な高齢者世代が積極的に生産活動に関与できる仕組みづくりを進めるなどの担い手対策にも取り組むこと。

 また、県内企業の大半を占め、地元雇用の維持・発展に貢献し、県内経済の活性化や地域社会を支える地元中小企業に対し、競争力の強化や新分野進出、円滑な事業承継に向けた取り組みを支援すること。

 

(5)離島の振興について

 有人国境離島法の4月の施行に向け、隠岐地域の社会の維持に関する県計画の策定にあたっては、同法に盛り込まれた航路・航空路の運賃低廉化や地元産品や物資に係る輸送コストの支援など、地元4町村の意見を十分に聴いて、隠岐にとって必要な施策を盛り込むとともに、関係する7都道県と連携して国に所要の財源措置を求めること。

 

 以上5項目であります。

 最後に、中山間・離島地域の様々な課題に適切に対応するためには、県庁の部局の枠を超えオール県庁の体制で、現場主義を徹底して取り組んでいかなくてはなりません。

 このため、職員におかれては、平素から問題意識を持って現場に出かけ、地域の声をよくお聴きし、どうすればよいか、どうする方法があるかなどについて県民本位で考え、真に必要な施策を構築し、スピード感を持って取り組まれるよう、切にお願いし、本委員会の報告といたします。

 


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