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文教厚生委員長報告
文教厚生委員長報告 平成24年11月定例会
文教厚生委員長報告をいたします。
文教厚生委員会に付託されました議案の審査結果等について報告いたします。
今定例会において文教厚生委員会に付託されました議案は、「平成24年度島根県一般会計補正予算(第4号)」など予算案4件、「知事の権限に属する事務の処理の特例に関する条例の一部を改正する条例」など条例案23件であります。
これらの議案について、執行部に説明を求め、慎重に審査いたしました結果、予算案4件、及び条例案のうち第144号議案、第186号議案、第187号議案については全会一致により、またその他の条例案については賛成多数により、原案どおり可決すべきとの審査結果でありました。
次に、請願の審査結果について報告いたします。
継続審査中の請願第8号「公的年金の改悪に反対する意見書提出を求める請願」は、公的年金の特例水準解消2.5%削減を行わないことについて、国に意見書の提出を求めるものであります。本請願については、これまで慎重に審査してきたところでありますが、さきの臨時国会において、年金の特例水準解消にかかる改正国民年金法が可決・成立したところであります。この状況を踏まえ審査いたしました結果、賛成多数により「不採択」とすべきとの審査結果でありました。
その他、継続審査中の2件の請願については、いずれも結論に至る状況にないことから、引き続き「継続審査」とすべきとの審査結果でありました。
次に、報告事項など所管事項調査における委員からの質疑、意見等のうち主なものについて報告いたします。
ドクターヘリの広域連携について、執行部から、今後締結することとなる中国地方5県及び4基地病院による基本協定について説明がありました。これに対し委員から、「今後、石見部は広島県・山口県へドクターヘリを要請することになると思われるが、受け入れ体制等の連携が危惧される」との意見がありました。執行部からは、「今後、要請元の消防本部や運航する基地病院、また地域の医療機関の要望も聞きながら詳細を協議し、混乱のないようにする」との回答がありましたが、さらに委員から「県内の医療機関や市町村等に周知を図り、十分に理解を得たうえで運航してほしい」との要望がありました。
さて、本委員会では昨年から「地域医療の支援について」及び「少子化対策について」の2つを調査テーマとし調査活動を行ってまいりました。その調査結果について報告いたします。
まず、「地域医療の支援について」であります。
これまで、県においては、国への要望はもとより、医療人材を「呼ぶ」、「助ける」、「育てる」の3本柱による医師確保対策や看護師養成のための奨学金制度など積極的な対策を講じてきました。その対策の充実度は全国的に見ても遜色はなく、むしろ全国をリードする取り組みがなされております。
また、昨年導入されたドクターヘリについては、当初の見通しを上回る運航実績を上げ、救急医療の迅速化、高次医療機関との連携の強化、転院搬送元の医療機関の負担軽減など、大きな成果を上げています。
今日までの努力を多とするものであり、引き続き、こうした対策の充実・強化を強く要望いたします。
しかしながら、本県の地域医療の状況は、今なお極めて深刻なものがあり、勤務医師数は増加しているものの、医師の地域偏在、診療科偏在の状況は顕著であり、また、看護師の確保も厳しい状況にあります。
ことに、県西部、隠岐、雲南地方を中心とする中山間地域では、救急医療の確保や産科、外科、眼科などの診療機能の確保、あるいは麻酔科、小児科などの特定の診療科医、看護師の確保に苦悩している実情であり、また、診療所の医師が減少し、かかりつけ医師の減少、それに伴う2次医療機関の負担増加が懸念されるなど極めて厳しい現実に直面しています。
こうした事態は、初期臨床研修制度や大学の独立行政法人化など国の施策による影響が大きく、また、課題解決に資するための医療従事者の処遇改善についても、国の施策によるところが極めて大きいものであります。
そこで、地域医療の充実に資する政策の展開を、引き続き国に対して働きかけていくとともに、本県の地域医療確保について、次の5点を当委員会として求めるものであります。
一.島根大学医学部との一層の連携強化について
・法人化が予定されている「しまね地域医療支援センター」などを通じて島根大学医学部との連携を一層密にし、同学部がこれまで以上に島根の医療を担う人材を育成できるよう、支援・連携を強化すること。
・同学部の教育課程において、地域医療の重要性の理解や地域医療に求められる総合的な診察能力の養成など、地域実態に即した医育がなされるよう積極的な働きかけを行うこと。
二.医療従事者が誇りと自信を持てるキャリア形成の支援について
・認定医や専門医の資格取得志向が強い若手医師の定着のために、県内においても資格が取りやすい環境の整備、並びに症例数や指導医師の確保可能な体制のあり方を探求し、構築すること。
・認定看護師資格取得を容易にするための、医療機関及び島根県看護協会との連携による看護師のキャリア形成支援施策の充実と、代替看護師の派遣制度等の制度創設を検討すること。
三.自治医科大学卒業医師及び「地域枠出身医師」や「奨学金貸与を受けた医師・看護師」が県内に定着する施策の強化について
・自治医科大学卒業医師の義務年限終了後の県内定着率は、全国的にみても低位であることから、地域医療について強い使命感を有する、これら医師の定着率が低い原因を究明し、早急な対策を講じるとともに、自治医科大学入学枠の増加について尽力すること。
・今後増加する「地域枠出身医師」や「奨学金貸与を受けた医師・看護師」の県内・地域への定着をバックアップする体制の構築と、対応策を検討、実施すること。
四.医療従事者が働きやすい環境の整備について
・看護師など医療従事者に占める女性の割合が高いことに加え、医師養成課程における女子学生の急増(島根大学医学部の今年度入学者の42.2%が女性)の趨勢は、今後も継続が想定されることから、女性の医療従事者が働きやすい環境を一層整備すること。特に、各病院において、女性の医療従事者の意見を十分に聴き、ワークライフバランスの推進に向け一層積極的な対応ができるよう支援すること。
・看護師離職者が再就職しやすい環境整備として、看護師研修制度の改善策を検討し、病院に提示するとともに、必要な支援策を講じること。
・県民に対し、医療現場の状況の周知に努め、医療機関を適切に利用することの重要性を積極的に啓発すること。同時に、地域医療機関を守る住民活動が広がるよう積極的に支援すること。
五.ドクターヘリの運用について
・これまでの運航実績、各地域からの要望などを総括し、今後の効果的な活用方法を検討、実施すること。
・検討が進んでいる他県との共同運航について、東西に細長い本県の状況に鑑み、積極的な対応による早期実現を図ること。
以上、地域医療の確保は、そこに住む人の生命や暮らしに直結する問題であり、定住確保のための極めて重要な条件であることに鑑み、県の積極的かつ先進的な取り組みを求めるものであります。
続いて、「少子化対策について」であります。
本県は平成4年以降、死亡数が出生数を上回る自然減の状態になり、その後も出生数は依然として減少傾向が続いております。合計特殊出生率は、横ばいで全国上位に位置しているものの、婚姻率は過去最低の水準で、婚姻件数は年間3,000組を割りそうな状況であります。
これまで県においては、子どもを安心して産み育てることができるよう、子育て世代の負担軽減に向けた施策を講じてきましたが、親となる若い世代の減少に加え、未婚化・晩婚化も進む状況を踏まえ、当委員会では、少子化対策の中でも「結婚に至るまでの間」に焦点を当て、将来の親世代を育てるという視点での対策や、結婚を希望する人に対する具体的な結婚対策について、より効果的な事業が実施できないか調査してまいりました。
まず、他県の取り組みについて、秋田、山形、福井の3県を調査いたしました。いずれも結婚支援を少子化対策の大きな柱と位置づけ、組織見直しや全庁横断的な取り組みを展開し、市町村、民間団体と協働で会員登録制による個別マッチング等を行うなど、積極的な取り組みが行われておりました。
また、県内では、江津市、邑南町の取り組みも視察いたしました。その中で、児童・生徒と赤ちゃん、赤ちゃんの両親が触れ合う「赤ちゃん登校日」の様子を見、将来の親世代を育てるという視点で、子どもたちが赤ちゃんの大切さや命の尊さを肌で感じる機会を作ることは貴重であると感じたところであります。
本県における未婚・晩婚化対策としましては、「しまね縁結び応援事業」が実施されており、具体的には平成19年度から、「出会いの場」の情報をメールマガジンで配信する「恋みくじ」、「出会いの場」を提供するホテル・レストラン等のイベント情報の発信を支援する「しまね縁結び応援団」、縁結びをするボランティア(愛称:はぴこ)の情報交換や出会いの場づくりを支援する「はっぴぃこーでぃねーたー事業」をそれぞれ実施しております。さらに、平成23年度から、市町村が行う出会いイベント開催や結婚相談員の養成等を支援する「しまね縁結び市町村交付金事業」が実施され、今年度は独身の子を持つ親同士のお見合い「親からはじめる縁結び交流会」や、企業の従業員を対象とした婚活イベントなど、新たな事業も始まっております。
今後さらに、結婚対策を進めていくにあたって、先に述べた他県等の調査事例も踏まえ、当委員会として、次の4点を求めるものであります。
一.「しまね縁結び応援事業」におけるマッチング支援の強化について
・行政の施策は、「出会いの場の提供」が主体であり、交流会、パーティーなどの開催や、その情報提供を行っているが、出会った後のフォローや相談が十分行われていないといった課題が残る。今後さらなる「縁結び応援事業」の成果を高めるためには、「はぴこ」の増員充実に加え、秋田・山形両県が行っている会員登録制度なども積極的に取り入れ、「はぴこ」との連携等「イベント型」と「紹介型」を組み合わせた対応を検討すること。
・事業実施にあたっては、県民総ぐるみの視点が重要であり、行政、民間団体、ボランティア等が連携・協働できる仕組みを模索し、県全体として成果の上がる仕掛けを構築すること。
・他県にも共通する女性の紹介希望者が少ないといった課題に対応するため、女性の参加を促す視点を考慮すること。
二.独身男女の婚活力のアップについて
・平成22年の国勢調査によれば、25歳以上の5歳階級ごとの本県未婚者数は、男性が女性よりそれぞれ2,000人から3,000人程度上回る状況であることを踏まえ、男性の積極性を喚起するため、男性向け婚活力アップセミナーとパーティーを組み合わせたイベント等、単なる出会いの場の提供に終わらない企画を研究すること。
・人と上手に関わることが苦手な人が増えてきている状況も見られることから、独身男女を対象とした数回の講習によるスキルアップ支援を行う一方で、幼少期からのコミュニケーション力アップのために、どのような教育が必要か部局を越えて検討すること。
・先に述べた「赤ちゃん登校日」は、コミュニケーション力を育むことをねらいのひとつとしているものの、授業時数確保や専門講師の確保など、すべての学校が実施するのは困難な状況もある。このような、コミュニケーション力を育む具体的・実践的な手法や、指導する人材の育成について研究し、可能なものから取り組んでいくこと。
三.未婚男女に対する啓発について
・結婚を希望する人への結婚対策に加え、今後は、命の大切さや家庭の役割等、未婚男女の結婚に対する考え方が深まるよう、啓発等も含めた取り組みを検討すること。
四.少子化対策の推進体制について
・人口の年齢構成比を考えると少子高齢化の進行に歯止めがかからない危機的状況であることから、その状況に対応するために、全庁横断的な部局連携の推進体制と施策展開を一層進めるとともに、市町村や民間団体と連携した協力体制を構築すること。
以上、短期的な視点及び長期的な視点で見た結婚対策について提起いたしました。現在県が実施している事業について、これらの視点も踏まえながら、さらに充実したものとなるよう期待するものであります。
今定例会における審査の概要等、及び調査テーマにかかる調査結果を以上のとおり申し述べ、委員長報告といたします。
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