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文教厚生委員長報告
文教厚生委員長報告 平成23年2月定例会(3月4日)
文教厚生委員長報告をいたします。
文教厚生委員会に付託されました議案の審査結果等について報告いたします。
今期定例会において文教厚生委員会に付託されました議案は、予算案9件、条例案6件及び議員提出議案2件であります。
これら議案について、知事提出議案の予算案及び条例案については執行部に説明を求め、慎重に審査いたしました結果、議員提出第2号議案及び議員提出第3号議案を除き、全会一致をもって、原案どおり可決すべきとの審査結果でありました。
全会一致とならなかった議案のうち、議員提出第2号議案については、採決の結果、賛成多数により、原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
また、議員提出第3号議案については、採決の結果、賛成少数により否決すべきものと決定いたしました。
次に、議案の審査過程において委員から出された質疑や意見等のうち、特に、23年度当初予算に関する主なものについて申し上げます。
まず、離島・中山間地域の高校の魅力化、活性化事業についてであります。
委員から、県外からの生徒も招き入れようとすると、その高校の特色等を全国的にアピールしていくことが必要であり、その仕掛け方が中山間地等の県立高校では難しい面もあると思うが、この事業のねらいは何かとの質問がありました。これに対し執行部からは、地元の市町村と学校が一緒になって、まず地域の子どもができるだけ地元の学校に進学し、支えていきたいという思いを持ってもらえるようにすること、あわせて、全国に情報発信ができればと考えている。具体的な事業については、隠岐島前高校で先駆的な取り組みが行われており、それらを参考にし取り組んでいくことが第一歩と考えているとの回答がありました。
本委員会としても、中山間地域等の県立学校により多くの生徒が集まるよう、市町村と一緒に大きな発想で本事業が展開されるよう期待するものであります。
次に、医師確保についてであります。
委員から、医療機関に限らず、医師の配置が必要な福祉施設等での将来的な見込み数も含め、必要な医師を確保していくよう地域医療再生計画の中で取り組んでほしいとの意見がありました。これに対し、執行部からは、現在、急性期医療を担う医療機関での医師不足、開業医の高齢化、福祉施設での需要等を含め、医師確保が厳しい状況の中、全体としていかに本県の医師を増やしていくかということが課題であり、今後、大学等と一体となって医師の県内定着を図っていきたいとの回答がありました。
次に、請願の審査について申し上げます。
新規に付託されました請願1件及び継続審査中の請願20件について、執行部から状況説明を受け慎重に審査しました結果を申し上げます。
まず、新規の請願第65号は、「性同一性障害のホルモン療法および性別適合手術に保険適用することを国に求める意見書の提出を求める」ものであります。
平成9年に日本精神神経学会による性同一性障害に関する診断と治療のガイドラインが定められて以降、身体的治療であるホルモン療法および性別適合手術等が国内の医療機関でも正当な医療行為として行われるようになりましたが、現段階では、精神科領域の治療のみが医療保険適用され、身体的治療には、医療保険適用がないのが現状であります。このため、これらの身体的治療には多額の費用がかかり、身体的治療を望んでいるのにもかかわらず、経済的な理由から必要な医療が受けられないとすれば、極めて不平等であることから「採択」とし、意見書を提出すべきとの審査結果でありました。
なお、この意見書については、後ほど角委員が提案理由を説明いたしますので、ご賛同いただきますようお願いいたします。
次に、継続審査中の請願について申し上げます。
請願第62号は、「今市分校の生徒募集停止に伴う在校生や教職員への人的、物的な保障、また学校の統廃合について、『2年前の1学期末までに』公表するという原則を守ること」を求めるものであります。
今市分校の在校生徒が卒業まで現在の教育水準を下げることなく、充実した高校生活を送ることができるよう、今後も学校と一体となって支えていくこと、また、今後の県立高校の再編成に当たっては、県立高等学校再編成基本計画に基づき実施することとしており、その際には、「原則的には、2年前の1学期末までに公表する」こととされていることから、「趣旨採択」とすべきとの審査結果でありました。
なお、その他の継続審査中の請願は、いずれも結論に至る状況になく、本定例会中に結論を出すことは困難であり、「審査未了」との結論になりました。
最後に、本委員会の調査テーマ「島根県の地域医療について」及び所管事項にかかる調査として「発達障がい者支援や不登校児童生徒等の自立支援、特別支援学校高等部の特色ある取り組みについて」並びに「高齢者福祉施設の今後のあり方について」調査を行いましたので、その結果を報告いたします。
まず、はじめに「島根県の地域医療について」であります。
本県の地域医療の状況は極めて深刻であり、医師数は増加しているものの、地域間格差が生じ、特定の診療科の医師不足が顕著であり、また、看護職員も就業看護職員の総数は増加していますが、その確保は依然として重要な課題であります。
昨年6月には、厚生労働省が初めて全国の医師数の実態調査を行い、本県の必要求人医師数は1.24倍で全国一、全国平均は1.11倍で、全国的な医師不足と島根県の厳しい状況があらためて浮き彫りにされたところであります。
一昨年9月に調査した福島県立医科大学では、家庭医あるいは総合医という形で医師を養成する課程が設けられて実績もあがっており、地域医療を支える医師の確保が重要と改めて認識したところであります。
また、ドクターヘリの導入について、診療応援医師の搬送など、多目的に利用することも念頭に置いて調査しました。ドクターヘリは、救急医療にとって格段の効果をもたらすものでありますが、導入に当たっては運航調整や搭乗医師の負担軽減を図るために、他の医療機関の専門医あるいは消防などの関係機関との連携が欠かせないなどの課題も聞いており、今後とも円滑な運航に向けて十分な準備が必要であります。
本県も運営に参加している自治医科大学では、毎年2、3名の県内出身者が卒業しておりますが、卒業生が義務年限終了後も引き続き県内で地域医療に力を発揮できる環境を整えていく必要があります。
本県においては、医療従事者確保にこれまでも力を入れてきており、地域枠入学生や奨学金貸与入学生の増加等、取り組みの効果が得られてきています。中長期的には、地域医療再生事業などを利用して、若手医師をはじめとする医療従事者の県内定着をはかり、加えて、県外からの医師招請、看護師養成施設の充実などを着実に実行していくことが必要であります。
また、昨年5月に行った県内病院の調査を通じて、当面の間は、医療従事者確保のために、次の3つの対応が必要であると考えます。
一つ目に、医療機関間の連携、近隣自治体との連携を推進すること。二つ目に、地域にある医療機関を守っていくために、地域住民による活動や広報の一層の推進を図ること。三つ目には、病院従事者の勤務環境を改善するため、院内保育所の開設支援や多様な勤務形態の導入の実施を働きかけていくこと、の三点であります。
本県においては、こうした地域医療機能の維持、地域医療従事者の確保に向けた対応は、県のみならず様々な関係機関が連携しながら今後も粘り強く取り組む必要がありますが、医療に係る制度設計は、基本部分は国の権限であり、国に対して改善を併せて要望していく必要があります。
次に、「発達障がい者支援や不登校児童生徒等の自立支援、特別支援学校高等部の特色ある取り組みについて」であります。
発達障がい者支援は、医療・保健・福祉・教育・労働等の様々な分野の関係者が、共通の視点に立ち連携して支援していくことが重要であります。
発達障がい者に対しては、ライフステージに応じた支援を行うため、市町村を中心とした地域支援体制を整備することが必要であります。東部・西部の発達障害者支援センターでは、県の拠点機関としての専門性を高め、市町村、学校や福祉事業所等関係先への助言や指導、人材育成並びに情報提供等を通じて地域支援体制づくりを積極的に支援していくことが望まれます。
また、学校教育段階で不登校になり、家に閉じこもるようになった子どもが卒業後ひきこもりとなった場合、社会的な自立が困難な状況にあり、今日、大きな社会的課題となっております。
こうした状況の下で、「教育」を担う部局と「福祉」を担う部局が密接な行動連携をとることは喫緊の課題である、と言えます。
県教育委員会が本年度より開始した「連絡調整員配置事業」は、教職経験者など地域の人材が連絡調整員となって、中学校卒業後や高校中途退学直後にひきこもりなどであった子どもを対象に、社会参加に向けての連絡調整を行うものであります。この施策をより実効性のあるものにするためには、健康福祉部や県警察本部、また商工労働部や教育機関等の行政とNPOをはじめとする支援団体などとが連携を一層強化し、多角的に支援をして行くことが必要であります。
また、知的障がい特別支援学校高等部では生徒数が急増しており、発達障がいを併せ有する生徒も在籍し、生徒の多様化が進んでいる中、本県の障がいのある生徒の一般企業への就労率は全国上位で推移していますが、実際の学校現場では生徒の多様化に応じた個々の職業教育の必要性が求められてきております。
今回、調査した静岡県では、県立高等学校の敷地内に知的障がい特別支援学校高等部の分校を設置して対応されており、地域企業との連携により企業内で実習を行ったり、隣接する農業高校の大規模な実習施設を活用して実習を行う等、地域や高等学校と連携した職業教育に積極的に取り組まれていました。
企業数が少なく、東西に長く離島もある本県と静岡県の状況は異なりますが、生徒の実態に即した職業教育の重要性は同じであり、本県の実情に即した職業教育の検討が求められる現在、教育分野のみならず企業への理解啓発等も含めた県をあげての取り組みが必要と考えます。
最後に、「高齢者福祉施設の今後のあり方について」であります。
以前より厚生労働省では特別養護老人ホームの個室ユニットケア化を推進してきており、この方針は今後も堅持されると聞いております。
個室ユニット型については、サービス提供者側並びに利用者側にとってそれぞれメリット、デメリットがありますが、一番の問題は費用負担の重さであります。
調査を行ったユニット型施設では、入居者個々のプライバシーが尊重されることで落ち着きが見られ、中には介護度が改善した事例がある一方で、多床室では入居者のプライバシーが守られない、感染症が発生した場合の対応の問題など、居室の構造の違いによる効果や問題点がありました。
入居者一人一人の個性や人権を尊重することは、今後の高齢者介護のあり方を考える上で非常に重要であることから、今後もユニット型施設の整備の推進を図るとともに、国に対しては低所得者が利用しやすい方策を早急に明らかにするよう要望していく必要があると考えます。同時に、今後も増加する高齢者を受け入れるためには、緊急避難的に多床室の整備の検討を行うことが重要であります。
終わりに、ケアマネジャーとの意見交換を通じて感じたことは、看護師資格所有のケアマネジャーが少ないこともあって、医療サービスを必要とする重度の要介護者に対して、適切なケアマネジメントを行うことが難しくなってきている実態があるとのことです。
今後、高齢者が住みなれた地域で介護サービスとそれ以外のサービスを切れ目なく受け続けることができるように、ケアマネジャーの資質の向上を図ることを要望します。
以上、文教厚生委員会における審査及び調査の概要等を申し述べ、委員長報告といたします。
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