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地方分権・行財政改革調査特別委員長報告

 

地方分権・行財政改革調査特別委員長報告  平成23年2月定例会

 

○はじめに

 地方分権・行財政改革調査特別委員会の調査結果についてご報告いたします。

 本委員会は、(1)第二期地方分権改革における国の動向を注視しながら、本県の実情に即した望ましい分権改革のあり方について議論を行うとともに、必要な対応策を検討すること、並びに(2)厳しい経済情勢を克服するため機動的な財政運営を行いながら、一方で行財政改革を着実に進めるために、本県の行財政改革の進捗状況、効果及び課題等について調査を行うこと、の2点を目的として、平成21年の5月臨時会において設置され、以来8回に渡り調査を行ってきました。

 この間、地方分権については、「地方分権改革推進委員会」の勧告や新政権による「地域主権戦略大綱」といった国の政策の大きな方向性の提示、県から市町村への権限移譲、他県との連携などの動きがありました。

 また、本県の行財政改革については、改革推進会議「施策点検部会」の設置や、外郭団体の見直しなどの動きがありました。

 本委員会は、これらの動きに関して適宜執行部から報告を求め調査して参りましたが、以下、その調査結果及び調査の際に委員から出された意見や要望等についてご報告いたします。

 

1.地方分権

  まず、地方分権についてであります。

 本委員会は、「国が地方に優越する上下の関係から、対等の立場で対話のできる新たなパートナーシップの関係へと根本的に転換し」、「住民に身近な行政は、地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担うようにする」ことを目指す地方分権・地域主権改革の方向性については同意するものの、個々の地方公共団体が真に主体的に行政運営を行うことができる地方分権社会を実現するには、権限と税財源の移譲が必要不可欠であり、その前提として住民の理解が何より必要であるとの基本的な認識にたっております。

 こうした認識のもと、以下、主な事項について個々にご報告します。

(ア)地方分権改革の動き

 はじめに、地方分権改革の動きについてであります。

 

 1)地方分権改革推進委員会による勧告等 

 第一に、地方分権改革推進法に基づく国の動きに関しては、地方分権改革推進委員会により「第3次勧告」及び「第4次勧告」がまとめられ、地方行財政における当面の課題と中長期の課題が整理されたこと等について説明を受けました。

 

 2)地域主権推進一括法案及び国と地方の協議の場に関する法案 

 第二に、民主党を中心とする連立政権によって国会に提出された「地域主権推進一括法案」及び「国と地方の協議の場に関する法案」に関しては、連立政権が立ち上げた「地域主権戦略会議」の位置づけや「国の法令による義務付け・枠付けの見直し」の内容、及び「国と地方の協議の場」の法制化について説明を受けました。

 これら2法案は、民主党を中心とする連立政権が「地域主権改革」を進めるうえで第一歩となる法案でしたが、国会に提出後およそ1年が経過した現在も、いまだ成立しておらず、連立政権が進めようとする「地域主権改革」の見通しは不透明と言わざるを得ません。

 また、「義務付け・枠付けの見直し」は、施設・公物設置管理の基準や手続関係の自由度を高める見直しを行うものですが、基準について、地方に裁量権が与えられても、適切に財源が措置されなければ、地方の自由度の向上にはつながりません。さらに、参酌すべき基準等は、法律が成立した後、政省令で定めていくこととなっており、明確でない状況にあり、引き続き動向を注視していく必要があります。

 

 3)国の出先機関の見直し 

 第三に、「国の出先機関の見直し」に関しては、地域主権戦略大綱の閣議決定、各省庁の「自己仕分け」等を経て、平成22年末に「アクションプラン」が閣議決定され、広域的実施体制の枠組みづくりのための法整備を行うことや、直轄道路・直轄河川・ハローワークについて積極的に移管を進めていくこと等の方針が示されたとの説明を受けました。

  国の出先機関の見直しにあたっては、地域の実情を十分踏まえた上で、国と地方の役割分担を吟味するとともに、地方移管を具体に検討する場合には、必要な人員と財源を確実に措置するよう、国に対して求めていく必要があります。  

 

 4)補助金の一括交付金化

 第四に、「補助金の一括交付金化」に関しては、地域主権戦略大綱の閣議決定、地域主権戦略会議における議論等を経て、地域の自由裁量を拡大するため、交付金を各府省の枠にとらわれずに使えるようにすることや、客観的指標に基づく恣意性のない配分を目指すこと、現行の条件不利地域等に配慮した仕組みを設けること等の方針が示されたとの説明を受けました。

 国は、来年度予算案に「地域自主戦略交付金」として計上しているにも関わらず、配分ルール等の詳細を未だ明らかにしておりません。一括交付金の制度構築にあたっては、財政力の弱い地域や社会資本整備が遅れている地域に配慮した仕組みを設けるよう、国に対して求めていく必要があります。

 

(イ)県から市町村への権限移譲

 次に、県から市町村への権限移譲についてであります。

 県の権限移譲計画に基づく市町村への権限移譲の実施状況について説明を受けましたが、権限移譲は、県の事務の効率化の観点や規模・体制などが異なる市町村の状況などを総合的に勘案して進められることを望みます。

 

(ウ)自立と分散で日本を変えるふるさと知事ネットワーク

 次に、「自立と分散で日本を変えるふるさと知事ネットワーク」についてであります。

 この知事ネットワークの活動について、都市と地方の格差が拡大する中、課題を共有する地方部の知事が、政策課題を持ち寄り、地方発の政策モデルの提案等を行っていくこととなり、昨年5月には、「自立と分散で豊かな日本を」と題する政策提言を公表し、以後、共同研究プロジェクトも進めているとの説明を受けました。

 全国知事会のような場では、地域間格差の問題や地方の実情の声がかき消されてしまうので、こうした同じような条件にある県同士が連携して、地方の思いを国に伝えてもらうことを望みます。

 

2.行財政改革

 次に、行財政改革についてであります。

 本委員会では、今後の財政の見通しや民間委託等の推進などについて報告を受けました。

 以下、主な事項に関して個々にご報告します。

(ア)財政の見通し

 まず、今後の財政の見通しについてであります。

 「財政健全化基本方針」に沿って、現在まで実施した改革後の収支の見通しや平成29年度までの収支改善額など財政見直しの状況の説明を受けました。

 平成20年及び21年度の2年については、予算編成及び執行段階の経費節減によりほぼこの改革の方針に沿って収支不足の圧縮がなされていましたが、今後についても、相当程度の収支不足が見込まれることや経済状況による税収の落ち込みなどが懸念されることから、引き続き健全化の努力を着実に推進されることを望みます。

 

(イ)総人件費の抑制 

 次に、定員の管理についてであります。

 総人件費の抑制につながる定員管理の1000人削減計画の削減実績については、業務の見直し等の取り組みと並行させながら計画を推進しており、平成22年4月現在で当初の計画を82人上回る881人の削減となっているとの報告を受けました。

 財政改革を進める上で、総人件費の抑制は必要不可欠であり、「財政健全化基本方針」においては、さらに追加で500人程度の定員削減の目標が掲げられています。

 執行部におかれては引き続き業務の効率化に努めるとともに、経済対策など新たな行政課題への対応を求められる部署には必要な人員を配置するなど、職員の健康管理や人員削減が住民サービスの低下を招かないよう配慮されることを望みます。

 

(ウ)公会計に係る財務諸表作成等の取り組み状況 

 次に、公会計に係る財務諸表作成等の取り組み状況についてであります。

  公会計については、いわゆる「総務省方式改訂モデル」により普通会計財務4表(バランスシート、行政コスト計算書、純資産変動計算書、資金収支計算書)及びこれに外郭団体等を合わせた連結財務4表を作成していること、公の施設の主なものについてバランスシート及び行政コスト計算書を作成していること等の報告を受けました。

 作成した財務4表等については、県民にわかりやすく提示すること及び内容をきちんと分析し施設の効率的運営等に活用していくこと、また、固定資産の時価評価といった課題がありますので、執行部においては、これらの点について引き続き検討されることを望みます。

 

(エ)外郭団体・公の施設の見直し

 1)出資団体の経営評価について 

 次に、外郭団体・公の施設の見直しについてであります。

 「島根県が出資する法人の健全な運営に関する条例」に基づいて行われた外郭団体の施設の経営評価について執行部から報告を受けましたが、自己資本比率、借入金依存率、流動比率、人件費率、県への財政依存度のいずれの評価指標とも好ましい状況になってきているとのことでした。

 これまでの経営評価の取り組みにより、県の人的・財政的関与の状況も順次減少傾向となっており、各団体の経営改善の努力が見受けられる状況にありました。

  しかしながら、財務状況が改善した団体があったものの、依然として多額の借入金を抱えている団体や、基金を取り崩して運営されている団体がありました。

 今後とも、毎年度の経営評価を通じて団体の状況を点検するとともに、新たな法人形態への移行など引き続き適切な指導を行っていただく必要があります。また、課題のある団体については長期的な展望に立った方針を検討されることを望みます。

 

 2)指定管理者制度関係

 次に、指定管理者制度についてであります。

 指定管理者制度の導入施設について、実績報告を受けましたが、全体の状況としては概ね堅調であるとのことでした。

  執行部においては、引き続き運営状況の把握に努め、施設の設置目的に沿った事業となっているかを確認しつつ、指定管理者との連携を図りながらより一層の利用向上策が図られることを望みます。

  また、指定管理者制度の導入施設に対する県の管理・監督の状況についての説明を受けましたが、今後とも業務の再委託など施設の管理運営が適切になされるよう指導監督に努め、県としての責任を果たしていく必要があります。

 

○終わりに 

  以上、本委員会の調査テーマに関する調査結果及び要望について申し上げましたが、終わりに今後の地方分権・行財政改革に関して本委員会の考えを申し上げます。

 地方分権改革は、地域主権推進一括法案等の国会審議が停滞し、一括交付金化の内容が未だ明らかにならないなど、実現の可能性やその中身が依然として先行き不透明であります。しかし、その中でも、議会と執行部は、住民ニーズに沿った行政サービスを実施できるような地方分権改革が実現されるよう、連携して取り組んでいかなければなりません。執行部においては、引き続き、国の動向に注視し、議会及び県民に迅速かつ十分に情報を提供するとともに、国に対して、地方の意見・地域の思いをしっかりと受け止め、地方に配慮した政策を実現するよう、働きかけていく必要があると考えます。

 また、急激な円高による輸出の落ち込みと内需の低迷は、本県経済に大きな影響を及ぼしており、国の景気対策と連動して県においても必要な予算措置がなされているところであります。

 しかしながら、景気の先行き不透明感は根強く、今後急速な景気回復は期待しにくい状況にあり、当面、厳しい財政運営を行っていかざるを得ないと考えます。

 そのため、今後も不断の行財政改革の努力をしていく必要があり、様々な対策を着実に実行していくことが肝要と考えます。

 改革の推進に当たっては、県民生活に悪影響を及ぼすことがないよう県民の声の聴取に心がけ、配慮していくことを念頭において取り組んでいただきたいと思います。 

 執行部におかれては、真に県民のためになる地方分権・行財政改革を推進していただくことを切に要望し、本委員会の最終報告といたします。

 

 


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