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農水商工委員長報告
農水商工委員長報告 平成22年11月定例会(12月17日)
農水商工委員長報告をいたします。
農水商工委員会に付託されました議案の審査結果等について報告いたします。
今定例会において本委員会に付託されました議案は、予算案2件、条例案1件、一般事件案1件及び議員提出議案2件であります。
これらの議案について、執行部に説明を求め、慎重に審査しました結果、議員提出第17号議案及び第18号議案を除き、全会一致をもって、原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
全会一致とならなかった議案のうち、第17号議案については、採決の結果、賛成多数により、原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
また、第18号議案については、採決の結果、賛成少数により、否決すべきものと決定いたしました。
次に、請願の審査結果について申し上げます。
まず、新規に付託された請願1件について報告いたします。
請願第57号「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の参加に反対する意見書提出の請願」につきましては、採決の結果、議員提出第17号議案の意見書と同趣旨であることから、「趣旨採択」とし、意見書の提出は行わないことといたしました。
次に、継続審査中の請願2件について報告いたします。
請願第33号「協同労働の協同組合法(仮称)の速やかな制定を求める意見書を政府等に提出することを求める請願」及び第51号「最低賃金法の抜本改正と安定雇用の創出、中小企業支援策の拡充・強化を求める請願」につきましては、いずれも、前回から状況に大きな変化はなく、判断に至る十分な材料がないことから、いま少し時間をかけて調査すべきとし、採決の結果、賛成多数により、「継続審査」といたしました。
続いて、所管事項の調査における委員からの質疑、意見等のうち、主なものについて報告いたします。
まず、高病原性鳥インフルエンザ発生への対応についてでありますが、委員から「インフルエンザ発生から今日までの一連の迅速な防疫措置等、関係者の尽力は評価したい。今後は、移動制限の解除に向けた清浄性の確認を確実に行うとともに、新たな発生を防止するための防鳥ネット等の調査や調査結果への対処及び農家への損失補償等に万全を期されたい」との意見がありました。
次に、平成23年産米の生産数量目標配分についてでありますが、委員から「これまで、国から県への配分数量を適地適作・売れる米づくりの観点で、島根県独自に中山間地と平野部で配分に工夫をこらし、米作りを行ってきているが、今回の配分の見直しでは、地域間の格差是正の観点から、これまでの島根方式を否定する方向で検討されているようだが、この点はいかがなものか」という意見があり、執行部からは、「長期的には、適地適作、市場原理に沿った米づくりの方向性は変わるものではないが、23年度の配分に当たっては、国の政策転換も踏まえながら、国からの配分量を基に、地域間格差等も考慮しつつ、地域別の配分量を決定する必要がある。今後、国の施策の動向を十分に注視しながら、23年度の結果を検証しつつ、24年度以降についても適地・適作の観点を踏まえ、適切な見直しを行うこととしたい」との答弁がありました。
さて、本委員会では、「新たな農林水産業・農山漁村活性化計画(島根県)」にある「消費者に買ってもらえる商品づくり」を踏まえ、「しまね県産品(農林水産品・加工品)の販路拡大から地域経済の活性化へ」をテーマとして調査活動を実施してまいりました。
近年、安全・安心をはじめとして消費者の商品へのニーズが変化、複雑化、多様化する中、農林水産品やその加工品に対する嗜好も例外ではありません。
本県農林水産業の振興を図る上で重要なポイントの一つは、生産者が、生産・供給する側の都合や事情・希望を考えるだけでなく、ビジネスや商売相手である消費者・実需者のニーズをどれだけしっかり取り込むことができるかにあります。
そのためには、生産者、関連団体、そして行政が、ともに様々な消費者・実需者のニーズを的確にリサーチし、分析し、共有することのできる体制の整備を行い、実践することで、県産品の販売・販路の拡大につなげて行くことが求められます。以下、調査等を通じて得られた成果も踏まえ何点か報告いたします。
先ず、生産者の市場調査活動のための支援が必要です。これまで生産者の先進地視察への支援は生産先進地視察が主流でした。
今後、生産者が意欲的に市場や消費地視察もできるよう支援を充実させることが求められます。
また、市場等での生産者や生産団体の販売促進活動にたいする応援を積極的に行うことも必要です。
またさらに、生産現場からの情報発信も必要です。そのための生産者の取り組みへの支援も県に求められています。
次に、マーケティング手法の積極的活用を図って頂きたいと思います。
通常、生産者は、できるだけ"よいもの"をつくることに多くを費やし、加工や流通、販売の戦略に時間を費やす余裕がありません。
本来こうした役割はJA等の生産者団体などが担うところですが、それが進まない中、本県農林水産普及事業が大きなウエイトを占めるよう期待しているところです。
これについては、既に、県では「顧客との絆づくり事業」として取り組みが始まっており、是非、"これぞ島根の農林水産業マーケティング"といわれる手法の確立を図って頂きたいと思います。
いずれにせよ、生産者と市場あるいは実需者をつなぐ人材・コーディネーターの育成と確保が急がれます。
次に、生産から流通、販売、消費にいたる過程での農林水産業の他分野との連携、いわゆる農商工連携についてでありますが、本県でも産業技術センターにおいて機能性食品の開発が行われるなど前進しつつあります。
新たな国の「食料・農業・農村基本計画」では、農林水産業の6次産業化による振興と農山漁村全体の6次産業化による地域の活性化が明記されました。今後どのような具体的施策が展開されるかですが、本県の農商工連携や6次産業化について、それらを踏まえ改めて検討がなされるよう期待します。
次に、海外販路の拡大のための戦略とそのための体制整備が急がれます。例えば、議会派遣で視察した台湾における日本の農林水産品市場は、国内市場と全く同じ激しい競争と売り込みの厳しい世界でした。
現在、今後の貿易振興のあり方について、庁内関係部局及び外部の支援機関も交え検討が行われています。「しまね食品輸出コンソーシアム」など海外と商取引を行いたい人・企業、あるいは行っている人・企業の現実的な支援策に加え、本県産業政策の一環としての貿易振興戦略も必要です。両面備えた振興政策が展開されることを期待します。
次に、林業・木材産業について、例えば視察した高知県「嶺北材ブランド化協議会」のように、地域産材の規格化を進め、国産材を使ったことのない工務店でも国産材住宅が造れるキット商品をつくるなど、川上から川下を通じて一貫した商品を開発することが必要であると感じているところです。また徳島県の「那賀川すぎ共販協同組合」では、流域のスギ材を集め「徳島板倉の家」としてプレカット材を全国へ販売しています。
本県の場合も、流域林業圏ごとの振興が図られています。しかし、今後その林業圏内での生産流通に留まらず、隣接流域圏と連携するなど、広域的に市場に適った地域産材の規格化を進めながら、県内外での需要開拓・拡大を図ることが必要であるように考えます。
また、県産材の利用促進には、"顔の見える家づくり"を進めていくことが必要です。そのため、「しまねの木の家づくり」などにあたって、森林所有者から施工業者までの関係者と顧客とをしっかりつなぐシステムづくりが求められます。
例えば、秋田県の「秋田杉で街づくりネットワーク」では、従来の「施主-元請業者-下請業者」の施工体制を見直し、工事ごとに、発注者が設計士等のマネージャーの助言を得ながら、施工業者を選び、直接契約をして分離発注することで、仕様や資材を発注者が自由に選択することができるCM(コンストラクション・マネジメント)方式を導入しています。
その手法は様々あると考えますが、農林水産部だけでなく、関係部局、民間住宅関連事業者などとの連携の中で、"顔の見える家づくり"が進められることを期待します。
最後に、本委員会の調査テーマに加え、この度の県外、県内先進地視察を通じ、委員の多くが実感したのが循環型農業の重要性であります。
例えば、山形県高畠町の米沢郷牧場グループでは、畜産部門からでる糞尿を堆肥にして構成農家に配分し、農業内部の物質循環の基本である耕畜連携を構成農家と集団の巧みな組み合わせで実現し、この循環を基礎に、米、野菜、果樹の有機栽培技術を開発し、家畜の飼料もできるだけ地域の資源を生かすよう取り組み、成功しています。また、山形県の庄司製材所では、製材廃材を、キノコの菌床資材やボイラー燃料、家畜飼料などに無駄なく活用しています。さらに、山形県長井市では、家庭から出る生ゴミをすべて市の堆肥センターで完熟した堆肥にして、生ゴミを土づくりの資源としてとらえる地域循環型農業を実践しています。
近年、熱量ベース自給率、食料安全保障、石油資源のピーク、地球温暖化、世界の食料需給の不安定化等々が叫ばれる中、水田の汎用化や畑地の土壌管理技術の確立に加え、輸入飼料の増大に伴って切り離された畜産業と耕種農業の資源循環を再構築することで、家畜排泄物による環境負荷を解消し、省資源化を進める循環型農業システムの構築の必要性が強く認識されつつあります。また、循環型農業システムの一環として流通・加工部門においても省資源・省エネルギー、環境負荷の削減が求められています。
県下においても、こうした問題意識や消費者の食の安全・安心への関心の高まりから、循環型農業・環境保全型農業に取り組み、それが地域活性化に繋がっている事例も増えてきているのはご承知の通りです。この循環型農業の実践は、県産品の販売戦略を検討するに当たっても、重要な位置づけになるものと考えられることから、今後、その推進方を本県農林水産政策の大きな柱にすることが期待されます。
以上で、農水商工委員会における審査及び調査の概要を申し述べ、委員長報告といたします。
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島根県議会
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