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平成22年9月定例県議会 知事提案理由説明要旨(平成22年9月15日)
定例議会開会にあたり、提出議案の説明に先立ちまして、県行政の最近の動向についてご説明し、併せて、私の所信の一端を申し述べたいと思います。
(最近の経済情勢)
さて、日本経済の動向を見ますと、輸出の増加とこれまでの政府の景気対策による内需喚起などにより、ある程度回復してまいりましたが、最近、欧米経済の減速や円高の進行などにより、先行きに大きな懸念が生じております。
こうした中で、国においては、予備費を活用して雇用創出、投資促進、消費拡大など約9,200億円の経済対策を取りまとめられ、さらに今後、必要に応じて補正予算の編成も検討することとされております。
県経済につきましては、輸出関連の進出企業などの生産回復、国・県などによる景気対策の効果もあって、少し持ち直してまいりましたが、中小企業等には依然、厳しい状況が続いております。
県としましては、引き続き、国に対して地方にも十分配慮した経済・雇用対策を求めていくとともに、国の対策の実施に対応して、今後、県として必要となる措置を含め、機動的かつ適切な政策運営に努めてまいります。
(産業振興・雇用対策)
次に、産業振興と雇用対策について申し上げます。
観光振興につきましては、「ゲゲゲの女房」の放映や「レイルウェイズ」の全国上映に伴い、舞台となった安来市や出雲市周辺の主要観光地で観光客が増加しております。
また、高速道路料金の無料化につきましては、場所によりその影響には違いがありますが、県外遠隔地ナンバーの自動車を見かけることも多くなっており、こうした島根への関心の高まりが県内全体の誘客につながるよう努めてまいります。
「古事記1300年」の事業に関連しましては、この秋に、古代出雲歴史博物館や県芸術文化センター「グラントワ」などで神話をテーマとした企画展が開始されます。
さらに今後、古事記編纂1300年を迎える平成24年に向けて、11月には全体の事業の基本構想を策定し、市町村、観光関係事業者など県民一体となって、事業推進に取り組むこととしております。
さて、厳しい経済情勢の中で、県内企業は総じて新たな設備投資には慎重でありますが、新製品の開発・販売の強化、競争力向上のための投資を検討している企業も見られます。
こうした企業の前向きな取組みを支援するため、「収益体質強化資金」貸付制度を創設し、県内企業の収益力の強化を図ってまいります。
また、円高などに対処するため、中小企業に対する相談体制を強化するとともに、企業の実情に応じて「資金繰り円滑化資金」貸付制度などを効果的に活用していくこととしております。
企業誘致につきましては、日本全体で企業の設備投資が低調であることなどから伸び悩んでおりますが、IT関連企業などの立地が徐々に増えてきております。
今後も、島根県の良好な立地環境や優遇制度をアピールし、積極的な誘致を図ってまいります。
雇用確保につきましては、来春の高校卒業予定者に対する現時点の求人状況が昨年に引き続き厳しく、経済団体への求人要請や、1名でも多くの採用を目指した県内1千社への訪問活動を実施しているところであります。
また、障がいのある方々のために安定した雇用の場が確保されるよう、障がい者雇用のための特例子会社等の設立に対して、新たな支援制度を設けることとしております。
(農林水産業の振興)
次に、農業振興について申し上げます。
農業の振興を図る上で、担い手の育成は極めて重要な課題であります。このため島根県では、全国に先がけて集落営農組織の育成や企業の農業参入を促進するなど、各種施策を積極的に展開しているところであります。
こうした中、11月には、全国から多くの参加者を迎え、出雲市をメイン会場として、「第13回全国農業担い手サミット・インしまね」が開催されます。
「農で創る人の絆と地域の力」をテーマとするこの全国大会の開催をひとつの契機として、担い手の育成を一層推進してまいります。
次に、宮崎県で発生した口蹄疫につきましては、8月末に終息宣言が出され、九州南部の子牛市場が再開されてまいりました。
これに伴い、県内市場の子牛価格への影響も懸念されることから、購買者が県内市場で子牛を購入することにより価格の安定が図られるよう必要な対策を実施しております。
また、今後とも、口蹄疫の侵入防止や万一県内で発生した場合の対応につきまして万全を期してまいります。
水産業につきましては、燃油価格の高騰対策として、国と漁業者が資金を積み立て燃油高騰時に負担軽減措置を発動する「漁業経営セーフティーネット構築事業」が、今般、国により創設されました。
県としましても、この事業と連動して燃油高騰時に負担軽減を行う制度を設け、県内漁業者の経営の安定を図っていく考えであります。
(社会資本の整備)
次に、社会資本の整備について申し上げます。
国において地域主権改革が進められておりますが、それぞれの地域がその自主性を発揮するためには、産業発展により経済的な自立性が強化されることが必要であります。
そのためには、道路などの社会資本整備が遅れている地域において、整備がさらに進められることが必須であります。
私は、こうした観点から、地方を大事にする政策が国によって取られることが、日本が全体として豊かになることにつながるという考え方を小冊子に取りまとめ、そうした考え方について県内外に広く理解を求めてきているところであります。
特に、高速道路につきましては、地方の産業振興などを図る上で必須の基礎的な社会インフラであり、整備の促進を今後とも国に強く働きかけてまいります。
また、港湾整備につきましては、国の重点港湾に浜田港が選定されました。
浜田港は、高速道路ネットワークと直結する臨港道路が未整備でありますので、これを国の直轄事業で新規に着手するよう国に強く働きかけてまいります。
さて、内外の景気の後退は、日本航空や全日本空輸といった国内航空会社の経営にも大きな影響を与えております。このため、県内3空港の航空路線につきましては、運休、減便、機材の小型化などが実施されることとなりました。
しかし、航空路線は、島根県のように高速交通ネットワークの整備が遅れ、また離島を抱える地域では、地域振興に欠かせない重要な社会インフラであります。
こうしたことから、今年度6月補正予算で計上した緊急利用促進事業により、航空路線の利用拡大に努めておりまして、その成果も表れてきております。
こうした我々の努力と並行して、国に対して、地方航空路線の公共的な役割を踏まえ、路線維持に対する地方の努力を支援するよう働きかけてまいります。
さて、7月の集中豪雨では、県内各地で浸水害や土砂災害が発生し、松江市鹿島町では、住宅の裏山の岩石の崩落により、2名の方がお亡くなりになるといった大きな災害がありました。
お亡くなりになられました方のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。
県としましては、被災現場の早期の復旧を図るとともに、県内各地の急傾斜地崩壊危険区域等の緊急点検を行い、対策が必要な箇所について緊急に工事を進めているところであります。
また、このたびの岩石の崩落は、雨が降り止んだ後に起こっており、避難についての住民への注意喚起や日常の啓発活動などソフト面の対策も重要であります。このため、市町村と連携した取組みを強化してきているところであります。
さらに、土砂災害のおそれのある箇所への福祉関連施設等の立地を抑制するなど、県内で新たな危険箇所を増やさないための対策も行ってまいります。
次に、ダム事業につきましては、国土交通省において、ダム以外の方策も含めた治水対策を立案した上で、コストや環境への影響等を踏まえ、適切な整備手法を検証するという方針が示されております。
そして、国の補助を受けて整備するダムについても同様な検証を行うこととされております。
県内におきましては、波積ダムと矢原川ダムについて検証が必要とされていますが、流域住民の安全が確保されることを重点に対応する考えであります。
さて、斐伊川・神戸川治水事業につきましては、国から本年6月に示された斐伊川水系河川整備計画案について、島根・鳥取両県及び全ての流域市町が基本的に了承する旨を回答したところであります。
今後、国においてこの計画が正式に策定された後、大橋川改修事業に着手されることとなりますが、事業は相当長い期間にわたって実施されることとなります。
県としましては、国に対して、県、流域市町、関係団体、住民の方々などの意見をよく聞きながら、事業を着実かつ適切に進めるよう求めているところであります。
また、中海と宍道湖については、ラムサール条約湿地に登録されて、11月で5周年を迎えます。
これを記念して、島根・鳥取両県が連携し、今月末から松江市で記念展示、10月末に米子市で記念シンポジウムを開催することとしております。
この2つの汽水湖の豊かな恵みを将来にわたり継承するため、国・県・関係市町村など行政が連携し、そしてNPO・住民・企業など県民の方々と力を合わせて、取り組んでまいります。
(原子力発電の安全確保)
次に、中国電力島根原子力発電所における保守管理不備の問題について申し上げます。
県におきましては、これまで中国電力や国に保守管理体制の確立を強く求めるとともに、その対応状況を把握し、地元住民の方々への説明など情報提供を行ってきております。
こうした中で、中国電力に対しましては、4月以降これまで3回にわたり松江市と合同で立入調査を実施し、再発防止対策の取組み状況等をチェックしてまいりました。
国においては、これまで2回、特別な保安検査を実施し、その結果に基づき、中国電力が再発防止のために提出していた保安規定の変更申請を9月6日に認可しました。
この認可に際し、国の原子力安全・保安院から、県と松江市に対しまして、島根原発2号機の運転再開については安全上の問題がないという説明がありました。
しかし、2号機の運転再開につきましては、県としてさらに立入調査を行い、また県の原子力安全顧問の意見もお聴きして国の方針をチェックする必要があります。
その上で県の安全対策協議会や住民の皆様に対し、国、中国電力と共に状況をよく説明し、また県議会の意見もお聴きし、県としての対応をまとめて国に伝える考えであります。
(その他の動き)
次に、地域医療の確保について申し上げます。
県におきましては、医療体制の確保につながる様々な取組みを積極的に行っておりますが、医療の高度化・専門化に伴い優れた看護人材の確保も重要な課題となっております。
看護職を目指す高校生の4年制大学への進学志向も年々高まっていることから、県立大学短期大学部看護学科の4年制への移行を進めることと致しました。
今後、4年制化に伴う専任教員の確保や、新たに必要となる施設の整備などの諸準備を、県立大学とともに進め、平成24年4月の開学を目指す考えであります。
次に、市町村合併の状況について申し上げます。
この度、松江市と東出雲町につきましては、来年8月1日に合併することが決定されました。
また、出雲市と斐川町につきましては、来年10月1日の合併について、斐川町での住民投票を経た後、両市町議会で審議されることとなっております。
県としましては、両地域の自主的な合併に対して必要な支援を行っていく考えであります。
さて、今年の夏も、若者のはつらつとした活躍がありました。
7月に開催されたNHK杯全国高校放送コンテストでは、飯南高校報道部がラジオドキュメント部門で全国優勝を果たしました。
また、8月に開催された全国高等学校総合文化祭では、三刀屋高校演劇部が全国第2位にあたる文化庁長官賞を受賞するなど、島根県の高校生たちがめざましい活躍をしました。
さらに、全国中学校体育大会では、剣道競技女子団体で県勢として初めての準優勝を果たしたのをはじめ20種目で入賞し、また全国高校総体においては、隠岐養護学校の生徒がレスリング120キロ級で準優勝するなど10種目で入賞を果たしました。
こうした島根の若者の活躍が今後、さらにいろいろな分野に拡がっていくことを期待しております。
(国政の動き)
さて、昨日、民主党代表の選挙が行われ、菅直人氏が代表に再選されました。
経済対策など喫緊の課題が山積しております。新体制の下で、その解決に向けて全力をあげ早急に対応されることを強く期待しております。
また、日本全体の発展には地方部の発展が不可欠であり、地方の声によく耳を傾けて政策運営にあたっていただきたいと思います。
(補正予算案など提出議案)
それでは終わりになりますが、今回提案致しました一般会計補正予算案などの概要について、ご説明申し上げます。
今回の補正予算案は、公共事業について国の補助金や直轄事業費の確定に伴い補正を必要とするもののほか、災害対策の推進、医療・社会福祉施設の耐震化等の促進、県立大学の看護学科の4年制移行への準備に要する経費など、早急に対応すべきものについて措置することとし、総額48億6,400万円余を増額しております。
この結果、補正後の一般会計の予算規模は5,421億5,500万円余となります。
この補正予算案のほか、予算案14件、条例案5件、一般事件案14件の計34件を提案しております。
これらの詳細につきましては、この後、総務部長に説明させることと致します。何とぞ宜しくご審議のほど、お願い申し上げまして、私からの説明を終了致します。
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