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平成21年6月定例県議会知事提案理由説明要旨(平成21年6月22日)

 

 定例議会開会にあたり、提出議案の説明に先立ち、県行政の最近の動向についてご説明し、併せて、私の所信の一端を申し述べたいと思います。

 

(新型インフルエンザ)

 さて、2月議会以降、県行政におきましては、新型インフルエンザ対策と経済対策の二つが当座の大きな政策課題でありました。

 新型インフルエンザにつきましては、メキシコ及び米国での発生と感染拡大を受け、県では直ちに危機管理対策本部を立ち上げ、必要な対策を講じてまいりました。

 まず、的確な情報の収集と県民への広報・周知に全力をあげ、また、発熱相談センターを設置し、県民の方々からの問い合わせや相談に応じてまいりました。

 そして、神戸、大阪など国内での感染が確認されて以降は、発熱外来の設置・運用を開始するなど、感染防止と医療体制の確保に全力をあげてまいりました。

 今回の新型インフルエンザは、毎年発生する季節性インフルエンザと類似する点が多く、毒性も強くないとされております。しかし、世界保健機関(WHO)は6月12日に世界的大流行を警戒する宣言を出しており、予断を許さない状況が続いております。

 県としましては、今後とも秋以降の対応を含め国や市町村、医療機関などと緊密に連携を取りながら、万全な対策を講じていく方針であります。今回の補正予算案には、そのための所要の予算も計上しております。

 

(経済対策と補正予算)

 次に、経済対策と県の補正予算について申し上げます。

世界的に景気後退が続く中、わが国でも生産・雇用の減退などから、今年の1月から3月期の実質GDPは年率でマイナス14%を超える大幅な減退となりました。

 他方、最近では製造業などで在庫調整が進み、生産の回復もあり、景気の底打ちは少し早くなるのではないかとの見方も出てきて、株価の持ち直しなど明るい兆しも見られます。

 先般、県内製造業の方々と意見交換をする機会がありました。多くの企業は、50%を超える生産の減少といったような最悪期は抜けたが、先行きがなお不透明だという見方をしておられました。

 

 このような厳しい状況下で、政府は4月に、15兆円を超える大規模な経済対策を打ち出し、そのための補正予算が5月末に成立しました。この国の対策を受け、県では補正予算を編成し、今議会に提出致しました。

 今回の国の補正予算では、地方からの要望に配慮し、地方に手厚い財源手当てが行われております。

 たとえば、追加される国の補助公共事業は、地方負担がほとんどなしに実施しうるように手当てされております。また、地方が雇用や福祉などの分野で事業を継続的に行いうるよう各種基金の造成に対し交付金が交付されております。さらに、地方の単独事業実施のため総額1兆円の交付金が計上されております。

 こうした国の財源措置により、県財政にほとんど負担をかけることなく、6月補正としては過去最大となる454億円の補正予算を編成することが可能となりました。

 歳出を主要分野別に見ますと、産業振興・雇用対策に100億円、社会基盤・生活基盤の整備に129億円、医療・介護・福祉の充実に164億円などを増額補正し、多くの政策課題に積極的に対応することとしております。

 こうした対策を実施することにより、県内で新規需要を創出し、景気・雇用の下支えを行っていく考えであります。

 

 次に分野毎に主要な事業について、ご説明申し上げます。

 

(産業振興・雇用対策)

<雇用対策>

 経済対策としては、雇用の創出が緊要な課題であります。

 国の助成によります「緊急雇用創出事業」では、既に3年間で約1,800人の臨時的な雇用の創出を目標として取り組んでおりますが、今回の補正予算で基金を36億円積み増し、今後3年間で約2,800人の雇用をさらに創出することとしております。

 また、継続的な雇用創出のための「ふるさと雇用再生事業」では、今年度から3年間で延べ約800人の雇用創出を目指して事業に取り組んでおります。既に83事業を決定しておりますが、さらに公募により民間企業などから約40件の事業企画案が提案されております。今後、速やかに対象事業を決定し、実施してまいります。

 また、雇用創出の受け皿として期待できる介護の分野などの職業訓練を拡充することとしております。さらに、国の雇用調整助成金制度を活用して雇用の継続に取り組んでいる県内企業を支援するため、四つの県立高等技術校に教育訓練支援員を配置してまいります。

 

<観光振興>

 次に産業振興による景気と雇用の拡大も大事な課題であります。

 このうち、観光振興につきましては、昨年は、NHKの「だんだん」の放映効果などもあり、観光入り込み客数はかなり増加しましたが、目下の景気後退による悪影響も懸念されますので、さらに積極的に観光客誘致を進めて行く必要があります。

 このため、テレビをはじめとした多様なメディアを活用して、県外に向けて古き良き歴史・文化、豊かな自然や食材など島根の魅力を積極的に伝えてまいります。

 また、県内主要観光地の観光案内表示板の整備や、航空機やマイカーなどを利用する観光客を対象とした特典旅行商品の企画促進などを進めてまいります。

 さらに、市町村などが地域の観光資源を活用して行う取組みへの支援を拡充するほか、旅館などが外国人観光客の受入体制づくりをするための研修を県内各地で実施してまいります。

 

<産業振興>

 ものづくり産業につきましては、県内製造業の競争力の強化をさらに進めることとしております。たとえば、産業振興財団などに先端機械設備などを導入し、機械金属加工業の技術力の強化や食品加工業の商品開発の支援を行ってまいります。

 また、新産業創出プロジェクトにおきましては、県外の企業がプラズマ技術を活用した生産と研究開発の拠点をソフトビジネスパーク内へ建設することを決定しておりますが、こうした事業化の取組みを一層進めてまいります。

 さらに、各都道府県に産学官の共同研究拠点施設を整備する措置が国の補正予算に盛り込まれておりますが、県としましては、この施設が県内企業への波及効果の高い研究や人材育成の拠点となるよう、産業界や大学などとともに検討を進めているところであります。

 また、島根発のプログラミング言語「Ruby」の利用拡大を図るため、国内外の専門家やエンジニア数百人が参加するコンファレンスを9月に松江で開催することとしております。

 さらに、県内企業が開発したソフトウェアの販路拡大の支援を行ってまいります。

企業誘致につきましては、今年に入り、県の企業立地促進助成金制度を拡充したところであり、個別企業への働きかけをさらに強化してまいります。

 そして、島根の立地環境の良さや県の支援制度などを県外の企業に積極的にアピールするため、9月に京都で、11月に広島で多くの企業を集めて説明会を開く予定であります。

 また、石州瓦や県産木材を活用した住宅づくりに対する支援を拡充するなど、県内の地域資源を活用した産業の振興をさらに進めてまいります。

 

<農林水産業対策>

農林水産業につきましては、競争力ある産地づくりを目指した有機野菜や島根和牛の生産拡大など、地域が主体的に取り組む活動への支援を大幅に拡充してまいります。

また、先般、「安全で美味しい島根の県産品認証制度」を発足させ、「鶏卵」と「しいたけ」で11品目を初めて認証致しました。引き続き認証品目を増やし、県産品の品質の向上とイメージアップを積極的に進めてまいります。

また、増加する耕作放棄地対策として、市町村などが行う用排水施設の整備や営農用機械の導入などを支援してまいります。

林業につきましては、伐採・搬出・利用までの一体的な取組みにより木材の安定供給などを進めるため、国の補助制度を活用して間伐や路網整備、高性能林業機械の導入などを支援してまいります。

水産業につきましては、県特産のシジミなどの資源回復を図るため、漁業者が行う宍道湖・中海の漁場環境の改善などの取組みを支援してまいります。また、漁業団体や流通業者が実施する月1回の「お魚の日」の取組みなど、「しまねの魚」の消費拡大の取組みを支援してまいります

農林水産業の担い手対策につきましては、UIターン希望者などへの就業相談を行うために就業プランナーを配置するほか、就農希望者への研修費助成や農業への参入企業などが行う施設整備への支援など、新たな担い手確保の取組みをさらに進めてまいります。

また、県産品の販路拡大のため、首都圏での商談会への出展支援やインターネットショッピングでの物産展の開催などを支援してまいります。

 

(社会基盤・生活基盤の整備)

次に社会基盤・生活基盤の整備につきましては、今回の補正予算において、公共事業全体で118億円を増額補正しております。

その主な事業としましては、山陰道の整備などに伴う直轄事業負担金の追加18億円、道路の改築・舗装、河川改修、アクアスの施設整備などのため、補助公共事業を87億円追加しております。

また、歩道や身近な生活道路の整備、河川改修、西郷港の施設改修など観光振興を進める整備などのため、県単独公共事業を13億円追加しております。

さらに、公共事業以外の整備として、老朽化した県立学校などの修繕・バリアフリー化、県立大学の施設の改修などのため11億円を追加しております。

 

(医療・介護・福祉の充実)

次に医療・介護・福祉の分野について申し上げます。

昨年来の国の経済対策におきましては、医療・介護・福祉分野の事業が数多く盛り込まれており、また、都道府県がこれらの事業を計画的・継続的に実施しうるよう、基金を造成するため相当額の財源措置がなされております。

島根県では、こうした国の財源手当てを活用し、介護・福祉などの分野において、今回の補正予算では総額119億円を基金に積み立て、今後、複数年にわたって継続的に事業を進めることとしております。

まず、介護や障害者福祉分野においては、職員の賃金引き上げなどに取り組む事業者を支援するなど、人材の確保・定着に向けた施策を一層推進してまいります。

また、介護施設や保育所などの整備を進めるとともに、福祉施設の耐震化やスプリンクラー整備など安全面の向上や居住環境の改善に対する支援を拡充してまいります。

地域医療の確保には依然、多くの問題があります。

国の補正予算におきまして、都道府県が行う医師等の確保対策や医療機関への施設整備支援などの取り組みを助成する事業が盛り込まれております。このため、県としましては、秋までには計画を策定し、医師確保対策を中心とした取組みをさらに進めてまいります。

がん対策を推進するために、「がん対策募金」事業に対して県としても助成してまいります。また、県内におけるがんの診断・治療に必要な高度医療機器の整備を支援してまいります。

さらに、9月には全国のがん患者や医療関係者などが参加する初めての「全国がんサロン交流会」が県内で開催される予定でありますが、県もこの開催を支援してまいります。

また、国は近年増加する自殺の予防対策として、県などが行う広報啓発や相談員の増員などに助成することとしております。県はこれを活用して自殺対策の強化を図ってまいります。

 

(教育文化・社会貢献活動の推進)

次に教育文化・社会貢献活動の推進について申し上げます。

県内の子どもたちが、県内全域の自然、歴史、文化を広く学び、相互に交流する取組みを新たに実施してまいります。

また、子どもたちの読書活動を推進するため市町村の学校司書配置を支援しておりますが、さらに、図書館を効果的に活用した優秀な取組みを広く紹介するなど、読書を行う環境づくりを進めてまいります。

近年、県内外に多くの文化施設が整備されてきておりますが、これらが所蔵する美術品を相互に展示することなどにより、芸術文化の交流を通じて地域をまたぐ連携強化に努めてまいります。

本年4月に「社会貢献活動促進基金」を設置し、NPO法人などの市民団体の活動を支援しておりますが、今般、小規模なボランティア活動がさらに活発になるよう新たな支援の枠組みを設けてまいります。

男女共同参画活動に大きな役割を果たしてきております男女共同参画センター「あすてらす」は、今年、創立10周年を迎えます。今後、「あすてらす」による啓発事業をさらに進めてまいります。

環境対策につきましては、「しまね環境基金」を大幅に積み増し、地球温暖化対策などの取組みを積極的に進めてまいります。

(過疎・中山間地域対策)

次に、過疎・中山間地域対策について申し上げます。

過疎地域では、集落の維持や医療、教育、生活交通の確保、農林水産業の衰退など様々な課題を抱えております。

来年3月末に期限切れとなる現行過疎法後の対策においては、こうした課題に中長期的な展望のもとに対応するため、担い手づくりや産業の振興、地域の生活条件の改善などのソフト事業を行うための基金を創設するなどの措置を講じる必要があると考えております。

過疎地域の実情に合った適切な新過疎法が制定されるよう、今後も全力をあげてまいります。

 

(活力ある島根を目指して)

私はこの4月に知事就任3年目を迎えました。これまで出来るだけ多く県内各地に出向き、現地の実情を自分の目で見、また各地の県民の方々のご意見などをよくお聞きしながら県政運営に当たってまいりました。

そうした中で、私が強く感じますことは、県内各地にいろいろな創意工夫の努力をしながら、厳しい現状を打開・改善しようと頑張っておられる方々、そしてそれを成しとげられた方々が数多くおられるということであります。

たとえば、農業経営の規模拡大に取り組む若者、新しいアイデアで魅力ある商品開発に取り組む企業経営者の方々、全国を舞台にスポーツや文化活動で活躍する中学生高校生、地域の町興しに活動される元気な高齢者の方々、福祉や環境保護のために働くNPOの方々、などに各地で数多くお会いするのであります。

また、県内各地に豊かな自然や古き良き文化・歴史などの地域資源が数多くあります。そして、それらを観光や事業に生かして独創的な経営をされておられる方々も沢山おられます。

こうした県民の方々の粘り強い活動や豊かな地域資源の存在は、島根の大きな力であり、強みであります。この島根の力と強みを効果的に活用することによって「活力ある島根」を築いていくことが可能だと私は考えております。このために県は先頭に立って働いていかなければなりません。

県は当面の景気後退に対処するため、2月補正、本年度当初予算、そして今回の6月補正と相当規模の経済対策を打ってまいりました。こうした経済対策は同時に「活力ある島根」の実現にも寄与するものであります。

いわば「苦境をばねにして飛躍する」ような努力をして行かなければならないと考えております。

このため、私は今後とも「活力ある元気な島根」の実現に向け全力を傾けてまいりますので、何とぞ宜しくお願い申し上げます。

 

補正予算案を含め提出議案の詳細につきましては、この後、総務部長から説明させることと致します。何とぞ宜しくご審議のほど、お願い申し上げまして、私の説明を終了致します。

 


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