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平成20年6月定例県議会知事提案理由説明要旨(平成20年6月27日)
定例議会開会にあたり、諸議案の説明に先立ち、県行政の最近の動向についてご説明し、併せて、私の所信の一端を申し述べたいと思います。
説明に入る前にまず、先の岩手・宮城での地震で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。1日も早く災害復旧が図られ、平穏な生活が取り戻されることをお祈りしております。
(就任2年目にあたって)
さて、私が知事に就任して1年が過ぎました。
昨年は、財政の健全化を図りながら、産業の振興などにより「活力ある島根」を築くために、「総合発展計画」や「財政健全化基本方針」の策定など、政策の大きな枠組み作りに取り組んでまいりました。
今年はその枠組みに沿って必要な施策を実行する年であります。
県民の方々や議会の皆様のご理解とご協力を得ながら、島根の発展に全力を尽くしてまいりますので、宜しくお願い申し上げます。
(産業の振興)
「活力ある島根」を築くためには、産業の振興が何よりも重要であります。
まず、企業誘致につきましては、今年度から、県の東京事務所などにおける企業誘致専門員を4名から10名に増員して、体制強化を図りました。5月には誘致企業の約半数を占める大阪で企業立地セミナーを開催し、また私自身が企業訪問を行うなど、積極的に誘致活動を行ってまいります。
こうした中で、昨年度は誘致企業の総投資額は、約300億円、新規雇用計画数は600人弱となりました。今年度に入りましても、IT関連や自動車部品などの製造業・ソフト産業の事業拡張などにより、誘致企業の総投資額は約100億円、新規雇用計画数は300人弱と、比較的順調に推移しております。
産業の振興を図る上で不可欠な産業人材の確保・育成につきましては、依然、高校卒業就職者の約4割が県外へ流出するなど、特に若年者の県内での就職促進が必要であります。
このため、今年度から、産業人材育成コーディネーターを松江と浜田に配置することなどにより、産業界と教育現場との連携を推進することとしております。
IT産業の振興につきましては、東京など大都市で拡大するソフト開発需要を県内IT企業が獲得するよう支援するとともに、増員した企業誘致専門員のうち1名を東京にIT専門として配置し、関連企業の誘致に力を入れてまいります。また、島根発のプログラミング言語「Ruby」を自在に使いこなす技術者を県内で養成するための研修などを行ってまいります。
次に、農林水産業の振興について申し上げます。
この3月に策定した「新たな農林水産業・農山漁村活性化計画」につきましては、82のプロジェクトを掲げております。
その中で、県産品の安全・安心を県内外に広くPRするため、新たに認証・検査制度を導入することとし、6月初めに外部有識者からなる検討委員会を設置致しました。できるだけ早期の制度発足を目指してまいります。
また、他のプロジェクトにつきましても、その達成に向け、農林漁業者や関係団体等が連携して行う取組みに対し積極的に支援してまいります。
最近の原油価格の高騰は、生産コストの上昇分を小売価格に反映させることが難しい農林水産業の経営に深刻な影響を及ぼしております。このため、国に対して原油高騰対策の拡充・強化を強く求めるなど、必要な対応を図ってまいります。
県産品の販路拡大につきましては、昨年、提携協定を結んだ東京の高級スーパーをはじめ、大都市圏のスーパーマーケットなどで県産品を紹介する「しまねフェア」等を通じて、販売促進活動を積極的に行ってまいります。6月には県議会の方々と一緒に私自身が大阪、名古屋の卸売市場の現場に出かけて、島根のぶどうやメロンなどのPRを行いました。
国外では、6月に台湾で、県産品の販路拡大のためのフェアと観光宣伝を行いました。7月には、経済交流が進むロシア・ウラジオストクにおいて商談会を開催することとしておりますが、私自身も参加して島根のPRに努めたいと考えております。
次に観光振興について申し上げます。
昨年の県内への観光客入り込み延べ数は、一昨年と比べ約
160万人増加し、初めて2,800万人を上回りました。
観光客増加に大きく寄与している石見銀山は、ゴールデンウィーク中、大きな混乱もなく、約9万人の観光客でにぎわいました。現地の環境に配慮した来訪者受入れ対策が、理解されてきたものと考えております。
今後も、多くの人々に石見銀山の価値がお分かりいただけるよう、東京など全国4カ所で記念シンポジウムを実施することとしております。
最近の観光客の増加は、石見銀山効果だけでなく、出雲大社の遷宮、松江開府400年、古代出雲歴史博物館やアクアスのシロイルカ人気なども大きく寄与しております。
こうした観光資源を活用しながら、魅力ある旅行商品の企画・販売が進むよう、観光関連団体などに働きかけていく考えであります。
今、島根を舞台にした映画などが増えております。「うん、何?」や「砂時計」が公開されているほか、NHK連続テレビ・ドラマ「だんだん」や映画「ばた電」などが制作中であります。また、若い人に人気のあるアニメ映画「鷹の爪」の中心キャラクターである旧吉田村出身の「吉田君」をしまねSuper大使に任命し、島根のPRに使わせていただくことと致しました。今後とも、こうした映像なども活用しながら、多くの人に島根に興味と関心を持っていただくよう努めてまいります。
(道路特定財源問題について)
次に、道路特定財源問題について申し上げます。
ご承知のとおり道路特定財源に係わる改正法案は、期限切れの3月末までに成立致しませんでしたが、その後、いずれの法案も衆議院で再可決され成立しました。
これにより、今年度の道路財源が確保され、先般、国による直轄事業や補助・交付金事業の配分が行われましたが、島根県への配分には大きな影響はなく、当初の見込みを上回る形で事業が執行できることとなりました。これは、国会議員の方々や県議会の皆様、市町村等関係団体の皆様の積極的な働きかけや活動の賜であり、感謝申し上げます。
後で述べます通り、この関連で道路整備関係の予算の増額補正を今議会に提案しております。
他方、法案の成立に併せて来年度からの道路特定財源の一般財源化の方針が閣議決定されました。
今後、この方針の具体化に向けての議論が始まりますが、私どもとしましては大都市地域に比べ遅れている地方の道路整備の必要性を強く訴え、島根県の道路整備が着実に進むように働きかけてまいります。
(過疎・中山間地対策について)
次に、過疎・中山間地対策について申し上げます。
現行の過疎対策措置法は、期限切れまで2年を切る状況となり、国等においても新たな過疎対策についての動きが活発化しつつあります。
こうした中で県と致しましては、都市の生活や産業活動などに対して過疎・中山間地域が果たしている大きな役割を指摘しながら、従来の施設整備事業などに加え、集落機能維持のための新たな地域運営の仕組みづくりなど、ソフト事業の充実・強化を求める提言を、県内市町村と共同して5月に取りまとめたところであります。
今後、中四国地方9県による共同の提案活動を行うなど、県議会の皆様はもとより、関係県とも連携を深めながら、全国の先頭に立って取り組んでいく所存であります。
中山間地を多く抱える島根には、豊かな自然・文化・伝統が多く残されております。この豊かで美しい島根を次世代に引き継いでいくため「ふるさと島根寄附条例」を4月から施行しております。
これまでに、個人及び団体から総額150万円弱の寄附がありましたが、県のホームページ、県外事務所などでの広報や全国各地で開かれる県人会の場などで、多くの方々に呼びかけてまいります。
(安全・安心な医療・福祉の確保)
次に安全・安心な医療・福祉の確保について申し上げます。
最近生じた採血器具の不適切使用問題につきましては、国の通知の処理や県庁内の情報伝達、公表などにおいて、適切な対応を欠いた点があったことは誠に遺憾であります。
こうしたことが起こらないよう、医療分野をはじめ、県業務を点検する委員会を設置致しました。
今般の問題につきましては、現在、外部の方々の意見などもお聞きしながら点検作業を進めているところであります。今月中には改善策を取りまとめ、必要な措置を講じていく考えであります。
次に地域医療の確保について申し上げます。
隠岐地区における精神科医療の提供体制につきましては、当面、その確保が図られましたが、県内の他の地域においても医師の確保が危ぶまれる状況が続いております。
このため、「即戦力となる医師の確保」と「地域医療を担う医師の養成」を2つの柱として医師確保に全力を尽くしてまいります。
そして国に対しては、産科、小児科等の診療科における医師不足の解消や地方勤務に必要な総合医を養成する仕組みづくりなど、抜本的な対策を講ずるよう強く働きかけてまいります。
さらに、県内において限られた医療資源をできるだけ効率的に活用し地域医療が確保されるよう「医療機関相互の役割分担と連携」の強化などを推進してまいります。
次に今年4月から開始された後期高齢者医療制度につきましては、国民への周知不足や保険料負担増加などの諸問題により、全国的に混乱が生じてきたところであります。先般、政府与党において、低所得者の保険料負担の軽減などを内容とした改善策が決定されましたが、今後も国に対し、高齢者の方々の不安が解消されるよう、適切な制度の確立と制度の周知徹底を求めてまいります。
障害者自立支援制度につきましては、障害者自立支援法施行3年目を迎え、現在、国において見直しが進められていますが、負担軽減策の継続や報酬額の改善など、より良い制度となるよう国に働きかけております。
また、県においては今年4月から障害者の方を1名採用したり、県庁ロビーの一角に障害者福祉施設で作られた製品を販売する場を設けることなどを行っておりますが、今後とも障害者の方々の自立に向け全力をあげてまいります。
(社会貢献活動への支援)
県内各地を回りますと、福祉・医療など、行政が行う公的活動と民間で行われる経済活動との間の領域で、自治会、任意団体、NPOなど多くの方々により幅広い社会貢献活動が行われております。
私は、こうした社会貢献活動が活発化することも、活力ある島根の実現にとって非常に大事なことだと考えております。
3月には活発な社会貢献活動をする団体を表彰しましたが、そうした中には、例えば、24時間中、終末期の患者さんの看取り看護を行っている団体やDV被害者への支援活動を行っている団体など、女性が中心となって行われている活動も数多く見られます。
今後も、こうした女性の社会参加活動も含め、県民の方々の幅広い社会貢献活動を積極的に支援してまいります。
こうした活動についてさらに具体的に申し上げますと、そのひとつに子どもたちの読書を推進する運動があります。
次世代を担う島根の子どもたちが、思考力・表現力・想像力を養い、そしてまた、学力の向上を図るためには、小さい頃から読書の習慣をつけることが大切であります。
このため、地域や学校で行われる読書活動を県としてさらに支援し、県民全体の運動として子どもの読書を推進することを考えております。
次に環境保全活動の推進について申し上げますと、6月の環境月間の取組みの一つとして、鳥取県知事や、関係自治体、地元住民の方々とともに、中海・宍道湖一斉清掃を行いました。多くの子どもたちも参加しておりましたが、県下各地であらゆる世代が参加し、地域をあげた環境保全活動が一層拡大するよう努めてまいります。
次に、安全・安心なまちづくり活動について申し上げますと、
島根県における犯罪件数は、4年連続で減少しておりますが、一方、住居侵入による盗難や自転車などの盗難は依然として多く発生しております。特に鍵がかけられていないために被害に遭うケースが多くなっております。
こうしたことから、防犯ボランティア団体等と連携して、「鍵かけ」を中心とした県民の防犯意識の向上に取り組んでまいります。
次に食育推進活動について申し上げますと、「第4回食育推進全国大会」が、来年6月に松江市で開催されることが決定されました。
昨年、「島根県食育推進計画」を策定し、県民の主体的な参加による食育を進めておりますが、この全国大会に向け、さらに多くの方々に食育に取り組んでいただきたいと考えております。
また、社会貢献活動を推進するためには、県職員自身がNPO活動等に対する理解を深め、民間におけるアイディアや提案を広く汲み上げていくことが必要であります。そのため、職員のNPO法人への短期派遣研修や自主的な社会貢献活動への参加を促進してまいります。
(地方分権)
さて、国と地方との関係につきましては、5月末に、国の地方分権改革推進委員会が、国から地方への権限移譲を内容とする第1次勧告を出しました。
地方の権限を大きくすることは、地方自治にとって必要なことであり、我々も積極的に推進するよう働きかけてまいります。
しかし、「分権」自体により、島根が影響を受けております大都市部と地方部の格差がなくなるものではありません。「分権」に伴う財源の移譲の仕方によっては、格差がかえって拡がるということも起こりうるものであります。
私は、大都市部と地方部の格差是正に対しては、「分散」が必要だと考えております。つまり、大都市部に集中する経済活動、雇用、政府機関、学術研究機関、そして財源などの地方「分散」を進めないと、国全体としてのバランスのとれた発展は極めて困難であります。
これまでの大都市偏重の発展の結果が、若者の大都市集中であり、地方部での少子高齢化の進行、人口の減少であります。こうした大都市偏重の発展は、必ずしも自然にもたらされたものではありません。長年の国の政策に基づくものでもあります。
国全体が成熟した豊かな先進国になるためにも、「分権」とともに国の政策としての地方「分散」を進めることが必要であることを強く訴えてまいりたいと考えております。
(補正予算案について)
それでは最後に今回提案致しました一般会計補正予算案などについて、ご説明申し上げます。
今回の補正予算案は、道路整備財源特例法の成立などを受け、県民の安全・安心な生活基盤の維持・確保を図る交通安全対策など道路整備を早期に実施するため、道路整備事業費32億8千万円余を増額しております。
この結果、補正後の一般会計の予算規模は5,044億8,700万円余となります。
この補正予算案のほか、条例案9件、一般事件案8件の計18件を提案しております。
これらの詳細につきましては、この後、総務部長に説明させますが、何とぞ宜しくご審議のほど、お願い申し上げます。
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