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文教厚生委員長報告
文教厚生委員長報告平成16年9月定例会
文教厚生委員長報告を行います。
文教厚生委員会に付託されました議案の審査経過並びに結果について御報告いたします。
まず、付託議案の審査結果について申し上げます。
今定例会において本委員会に付託されました議案は、予算案4件、条例案9件、一般事件案2件、報告承認案1件であります。
これら議案について、執行部に説明を求め慎重に審査しました結果、いずれも原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
付託された議案の審査過程における執行部からの説明、委員からの質疑、意見、要望事項のうち主なものについて申し上げます。
条例案9件のうち6件は、県立の体育館や総合福祉センターなどの維持管理、運営について、指定管理者制度を導入しようとする条例改正案であります。
民間事業者参入を可能とする指定管理者制度により、施設を利用する県民へのサービス内容や質の向上、施設の有効活用並びにコスト縮減などが期待されるところですが、委員の中から、管理者の選定にあたっては、これら施設を県が設置した趣旨や意義を踏まえた十分な議論のもと、公正・公平な選定基準を設けるようとの要望がありました。
また、従前の管理受託団体以外の事業者が管理団体となる場合、従前の管理受託団体職員の雇用の問題について、県として一定の責任を果たすべきとの意見があったところです。
次に、請願の審査結果について申しあげます。
今定例会で付託されました新規請願は、第42号の1件であります。これと合わせ継続中の請願10件について慎重に審査いたしました。審査の結果を申し上げます。
請願第42号は、「生活保護の国庫補助の削減と基準引き下げの中止を求める意見書提出」を求めるものであります。
3項目の具体的事項のうち、1点目の「現行の生活保護への国庫負担を削減しないこと」につきましては、地方6団体が政府に対し主張しているとおり、単なる負担率の引き下げに過ぎない見直しは行うべきでないとの観点から、趣旨採択すべきとの結果でありました。
2点目の「物価スライドによる生活扶助基準を中止すること」につきましては、生活扶助基準が、民間最終消費支出の伸びを基礎として、一般国民の消費水準との均衡を図る観点から改定されていることから、不採択との結論に至りました。
3点目の「老齢加算の削減・廃止は中止し、母子加算の廃止をしないこと」につきましては、これら生活扶助への加算等を含め生活保護制度全般のあり方について社会保障審議会の専門委員会で検討が行われている段階にあり、その結果を踏まえる意味から継続して審査することといたしました。
また、継続審査中の請願10件につきましては、結論に至る判断要素が生じていないことから、引き続き審査を行うことといたしました。
続きまして、所管事項調査に関連したものについて申し上げます。
先ず、健康福祉部に関する事項であります。
「PFI事業の進捗状況と今後のスケジュール」について報告がありました。
県立こころの医療センター(仮称)の整備並びに運営については、昨年6月議会においてPFI方式の導入が決定され、本年8月には一次募集応募者に係る一次審査が終了しております。
一次募集に応募した県内企業を中心とする1グループが、審査委員会での厳正な審査の結果、一次審査通過者と認定されたとのことでありました。
今後につきましては、11月下旬に二次募集を締め切り、来年1月までに二次審査を終え、事業者を選定し、今年度末を目途に契約締結するスケジュールとされております。
以上の説明について、委員から、一次募集への応募が1グループにとどまったことに関し、
・複数の応募が見込まれた中で1グループにとどまった要因は何か。
・期待された応募者間競争による発注者メリットは、1グループにとどまったことで、半減するのではないか。
・複数の比較検討ができないことから、1グループのみでは審査が甘くなる恐れはないか。
などの質問がありました。
これに対し、執行部から、応募が1グループにとどまったこと自体の理由は不明だが、PFIの適用範囲を限定していることや維持管理期間も比較的短めに設定していることなどから、取り組みやすい案件であり、地元からの応募があったことを考えても、決してハードルは高くなかったと考えられること。
また、応募が1グループでは、競争による価格の減は期待できないが、予定価格は民間による病院建設事例をベースに積算しており、応札額が予定価格の範囲内であれば、一定のコスト削減は達成できるものと考えていること。
今後の審査においても公平性・透明性をもって臨み、応募者による創意工夫の質が高ければ当初の目的は達成できることとなるが、審査の結果が基準に達しない場合は、再度入札公告からやり直すものとなること。
以上のような説明があったのでありますが、「こころの医療」の中核的施設をこれまでにない方式により整備、運営を図るものであります。今後とも、公平・公正・透明性を維持しつつ、県民の期待に叶う病院づくりに取り組まれるよう要望いたしておきます。
次に、教育委員会に関する事項であります。
報告事項の一つに、「教職員の不祥事防止のための校内研修用事例集の作成」がありました。
この事例集は、相次いだ教職員の不祥事を防止し、資質向上を図る目的で、教職員資質向上検討会議において取りまとめられたもので、校内での研修計画の立案と実践事例、教育公務員としての服務のあり方、不祥事の問題点と防止のためのチェックポイント事例、研修の実施事例などで構成されております。
これについて委員から、「教職員が、社会人としての最低限のルールを内容とする事例集で研修受講する立場にあること自体に複雑な思いがする」との感想、「不祥事防止や資質向上もさることながら、本県の目指す教育などの教育理念についても研修の柱に据えるべき」との意見、「教育現場での事例集の活用等による研修の実効性を担保するための体制づくり」、あるいは「現場教職員が萎縮しないよう配慮すること」との要望などが述べられました。
これらについて教育委員会から、この事例集は、教育現場サイドからの要望もあって作成に至ったものだが、現場サイドは、敢えて当然の事柄を内容に盛り込んだ県教委の思いを真摯に受けとめるとともに、単に不祥事という事象の防止にとどまらず、教職員、生徒、保護者間の信頼関係構築の一助とするよう期待するもので、管理強化を目的とするものではないとの補足がありました。
不祥事が生じてはなりませんが、一方で、教育にあたる姿勢が「ことなかれ主義」に陥り、教育現場での活力が失われることのないよう、しまね教育ビジョン21の浸透にも配意した本県教育の着実な展開をお願いするものであります。
最後に、本委員会が所管事項調査を通じ取りまとめた「新しい定時制・通信制の教育の在り方」に関する意見を申し述べます。
本委員会は、このことを調査するため、7月に広島県立芦品まなび学園高校を訪問しました。
この高校は、平成12年4月開校した、午前部、午後部、夜間部の三部制をとる普通科の定時制独立校であります。
この高校では、生徒の入学動機や生活スタイル、学習履歴等の多様化に対応し、学年の枠がなく生徒が自分の興味関心に応じて授業を選択できる単位制を採用し、過去に在籍した他校の修得単位を認定したり、他の部の授業を履修することにより3年で卒業できる三修制を採り入れるなど、柔軟な単位認定を行っています。
また、二学期制を実施し、前・後期の半期ごとに単位認定を行い10月入学や9月卒業を可能としたり、生涯学習の拠点として地域の人々が授業を受講できる聴講生制度を導入するなど、特色ある新しい教育内容を有する高校であります。
大部分の生徒は、昼間の部に通い、できれば3年で卒業するという、全日制と変わらない学校生活を送っており、教科科目や授業時間の選択が全日制に比べ柔軟であるため、自分の生活スタイル、興味関心などに合わせて授業を受けているということであり、従来のイメージとしてある勤労青少年対象の定時制とは大きく異なるものでありました。
さて、本県におきましては、6月に策定された県立学校後期再編計画では、全日制高校については、生徒の減少等を受けての小規模校や分校の再編成、各学校の学級数予測などについて、具体的計画が示されたところでありますが、定時制・通信制高等学校については、引き続き検討を行うとされたところであります。
その理由として、従前の定時制・通信制の教育システムが、主として勤労青少年を対象とした旧来のシステムであるため、生徒の実態との間にミスマッチが生じ、十分な教育効果が期待できない状況にあり、改善の必要性は大きいが、現下の財政状況等から、具体的な計画を示すことは難しいとされています。
しかし、現在の定時制・通信制に入学する生徒は、勤労青少年のみならず、不登校や中途退学などで新しい学習の場を求める者、自分の生活スタイルに合わせて学びたい者など、多様化が進んでおります。
このため、厳しい財政状況であることは十分に承知しておりますが、これら多様な生徒を受け入れ、一人一人の学習機会を十分に保障するために、既存の施設を利用するなど工夫を凝らして、生徒の実態にあった新しい定時制・通信制の教育システムを、できるだけ早期に構築されることを要望いたします。その実現は、本県の次の時代と活力溢れる地域づくりを担う青少年の育成に大きく寄与すると確信するものであります。
以上、文教厚生委員会における審査等の概要並びに「新しい定時制・通信制の教育の在り方」に関する意見を申し述べ、委員長報告を終わります。
お問い合わせ先
島根県議会
住所 〒690-8501 島根県松江市殿町1番地 TEL 0852-22-5356 FAX 0852-22-5273 メール kengikai@pref.shimane.lg.jp