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文教厚生委員長報告
文教厚生委員長報告平成16年2月定例会
文教厚生委員長報告を行います。
文教厚生委員会に付託されました議案の審査経過並びに結果について御報告いたします。
今定例会において本委員会に付託されました議案は、予算案七件、条例案六件であります。
これら議案について、執行部に説明を求め慎重に審査しました結果、予算案一件については採決によって、その他の十二件については全会一致をもって、いずれも原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
全会一致をみなかった議案は、知事提出第一号議案「平成十六年度島根県一般会計予算」であります。
教育費の社会教育費に計上された「歴史民俗博物館整備事業費二十四億千五百七十二万円」について、執行部から、十六年度の事業概要や建設を中止した場合に見込まれる費用が約五十三億円に及ぶこと、また、「歴博は単なる箱物ではなく、将来に渡り県民の自信と誇りにつながる本県の顔」であり、財政難の中での整備の意義など説明がありました。
これに対し、委員の一人から、「県財政健全化が急務である中、いわゆる地財ショックもあり情勢は大きく変わっている。今、歴博を整備し、後世に必ず評価されると判断する時代背景にはない。」との意見があり、採決を行ったところ、賛成多数をもって「原案のとおり可決すべき」との結果になったものであります。
次に、請願の審査について申しあげます。
新規に付託されました請願第三十号、第三十一号、第三十二号、第三十三号、第三十四号の計五件並びに継続中の九件について慎重に審査いたしました。審査の結果を申し上げます。
請願第三十号は、「臨時的任用女子教職員における産休代替者の確保と臨時的任用女子教育職員への体育実技代替制度適用」を求めるものであります。
願意は、教職員の代替として臨時的に任用された女子教職員が妊娠した場合に、さらなる代替者を任用することや、臨時的任用女子教育職員が妊娠した場合における体育実技を担当する非常勤職員派遣の制度化を求めるものでありますが、児童・生徒への影響防止と財政事情の両面から検討を深める必要があり、継続して審査を行うことといたしました。
請願第三十一号は、「基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引き上げと抜本改革の実現を求める意見書を国へ提出するよう」求めるものであります。
前段の「国庫負担割合の二分の一への引き上げ」につきましては、昨年の九月定例会において、同様の趣旨に基づく「持続可能で安定的な公的年金制度の構築を求める意見書」が国へ提出されたところであり、趣旨採択となりました。
後段の「年金制度の抜本改革」につきましては、財源のあり方が大きな課題であり、給付を削減せず負担も増やさず安定的な年金制度が構築できるのか、引き続き研究が必要との意見から、継続して審査することといたしました。
請願第三十二号は、「年金課税強化の撤回を求める意見書を国へ提出するよう」求めるものであります。
これにつきましては、年金制度と税制のあり方にかかわる問題で、拙速な判断を避け慎重に検討すべきとの意見から、継続して審査することといたしました。
請願第三十三号は、「母子家庭等入学就職支度金制度の存続」を求めるものであります。
予算案審議において、母子家庭等への福祉対策につきましては、給付を主体としたものから子育てや就労に主眼をおいた支援に見直す方向を是としたところであり、不採択との結論に達しました。
請願第三十四号は、「県立高等学校の授業料値上げ中止」を求めるものであります。
県立高校授業料は、国の地方財政計画、地方交付税の積算見直し、本県財政状況などの総合的見地から、十六年度以降の入学者について、全日制高校で月額三百円の増額となりますが、条例案審議において、県立高校授業料の増額改定を是としたところであり、この請願も不採択との結論に達しました。
ただし、執行部に対しては、経済的事情を抱える生徒への授業料減免や奨学金制度の周知並びに適切な運用について、一層の取り組みを求めたことを付言いたします。
審査を継続しておりました請願九件のうち、第二十四号「ゆきとどいた教育を進めるための請願」につきましては、一部の項目で結論に至りました。
一つは、「県の教育予算の拡充」を求めたものであります。
これにつきましては、「子どもの居場所づくり事業」や「中学校クラスサポート事業」の創設など、人件費を除けば前年度を上回る予算案が計上されており、趣旨採択といたしました。
もう一つは、「不登校とりわけ在宅の子どもたちの学習権保障の具体的施策を講じるよう」求めたものであります。
家に閉じこもりがちな児童・生徒に対する支援については、今年度まで三年間の研究事業が行われ、その成果が、新年度の予算の中で、そうした子どもたちの行動範囲を広げるきっかけとなる場を提供する「不登校児童生徒支援事業」につながっております。この事業が、学習権保障の第一歩と考えられることから趣旨採択としたところです。
その他の請願につきましては、さらに継続して審査を行うことといたしました。
続きまして、付託された議案の審査過程における執行部からの説明、委員からの質疑、意見、要望事項のうち主なものについて申し上げます。
一般会計当初予算案に関連して、重点プロジェクト事業のひとつに、健康福祉部、教育委員会、警察本部の三部局連携による「地域社会で子どもたちが健やかに育つ環境づくり事業」の創設があります。
事業の概要は、悩みを抱える子どもたちがいつでも気軽に相談できる支援センターの設置、公共施設や空き店舗を利用した子どもたちの居場所づくり、そしてこれらが円滑に運営できるようマンパワーを養成するものであります。
このプロジェクト事業の成果に大きな期待を寄せるものですが、その他各般の施策・事業についても効果的展開の観点から、必要に応じ部局間の連携強化を図るよう委員の要望があったところです。
続きまして、所管事項調査に関連したものについて申し上げます。
先ず、健康福祉部に関する事項であります。
「高病原性鳥インフルエンザへの対応」について報告がありました。
二月二十八日、京都府内の養鶏場で死亡した鶏に鳥インフルエンザの感染が確認されましたが、この養鶏場から出荷された鶏が、兵庫県内の業者を経て県内の食鳥処理場に「と体」として搬入される事例がありました。
また、三月一日には、金城町内の養鶏農場において、念のため鳥インフルエンザウイルスの検査を行った鶏の死亡事例が発生しました。
いずれの事例も、農林水産部と健康福祉部との連携のもと、迅速な対応がとられたところであり、人への影響に関しては、従業員や接触者に異常は認められず、食肉として市場に流通することもなかったのでありますが、委員からは、部局をまたがる事象であることを念頭に、今後とも関係職員に対する初動対応マニュアルの周知徹底を図るなど、危機管理意識を保ち、迅速、正確な対応と県民への積極的な情報提供に十分配慮されるべきなどの意見・要望があったところであります。
次に、教育委員会に関する事項であります。
その一つは、「県立高校後期再編成計画(案)」についてであります。
この後期再編成計画案は、平成十一年度策定の県立学校再編成基本計画で示された趣旨を踏襲し、平成十六年度から二十年度における再編成事項を具体的に示したものであります。
本県の中学校卒業者数の減少は、過去五年間に約千百名であったものが、今後の五年間では約千四百名に及ぶと見込まれております。
案では、多様な学習ニーズに対応できる科目設定と教員の配置、部活動や学校行事の充実、集団の中で社会性とたくましさを培う教育環境の確保などの観点から、一学年四ないし八学級を適正規模と設定し、特に小規模専門校や普通科を設置する一学年二学級以下の高校及び分校においては、近隣校との統合や生徒募集停止が避けられない旨とその検討対象校が明示されております。
案の説明を受け、生徒にとって望ましい教育環境を提供すべき点において、委員からの異論はなかったものの、以下申し上げる意見・要望が出されました。
・関係する地域が納得のいくよう十分な説明が必要であること。
・中高一貫教育を実施する地域での取り組みに関し、県教委内でのさらなる連携を求めたいこと。
・適正規模はあるにしても、小規模校維持の視点による検討が必要であること。
・島根県だからこそ、小規模校存置の方策を知恵と工夫で打ち出す必要があること。
・現在、小規模校が受け容れている多様な生徒への対応に配慮すること。
・中山間地域振興の観点を踏まえ、当該地域における高校・分校のあり方を計画案に盛り込むべきであること。
これらの意見・要望に対し、執行部から、生徒にとって望ましい教育環境の提供という基本的な考え方については変更しないが、本日の委員会の意見を参考にするとともに、四月中旬まで計画案へのパブリックコメントを実施し、四月下旬を目処に計画を完成させたいとの方針が述べられました。
再編成に係る周知期間を考えれば、一部の高校については、早ければ今年の夏にも公表時期を迎えることとなり、計画完成へ向けスケジュールに余裕はありませんが、当委員会としましても、パブリックコメントが取りまとめられた時点で委員会を開会し、再編成計画案に対する委員会意見を取りまとめることといたしました。
最後に、「島根県教育振興ビジョン(案)」について申し述べたいと思います。
教育委員会では、次世代を担う子どもたちを「社会の宝」に育てていく指針として、昨年度から島根県教育振興ビジョンの策定に取り組まれたところであります。その策定過程では、「今後十年を見通した本県教育の在り方」を県総合教育審議会に諮問し、パブリックコメントを実施するなど、県民意見の反映に配意されたものであります。
当委員会におきましては、十月、一月、二月と定例会閉会中にも三度の委員会を開催し、審議会答申並びに答申を基にした教育振興ビジョン案について、集中的に議論を重ねてまいりました。
去る二月十三日開会の委員会で、ビジョンに盛り込まれるべき事項を取りまとめ、教育委員会へ提言いたしましたが、今定例会の委員会では、この提言を踏まえたビジョン案の報告を受けたところであります。
ビジョン案では、子どもたちが、知徳体の調和的発達をもとに、社会や人との関わりの中で、自らの生き方を考え、決定し、行動していく力や問題解決能力を身につけさせることが「島根の目指す教育」とし、これを達成する基本理念や基本目標、さらに、数値目標を盛り込んだ個々具体の施策が示され、各委員が高く評価するものとなっております。
このビジョンが県民による理解と支持を受け、学校・家庭・地域社会が一体となった教育と健全育成の推進に寄与するものとなるよう、期待するものであります。
以上、文教厚生委員会における審査等の概要を申し述べ、委員長報告を終わります。
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