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決算特別委員長報告

 

決算特別委員長報平成15年11月定例会

 

 決算特別委員長報告をいたします。

本年9月定例会で付託された企業会計並びに今定例会で付託された一般会計及び特別会計に係る平成14年度の決算の認定議案6件につきましては、本年9月、決算特別委員会を設置して以来、決算審査の結果を平成16年度の予算に反映させるべく精力的に審査等を行ってきたところでありますが、以下その経過及び結果について申し上げます。

平成14年度は、サッカーワールドカップが日韓共催によりアジアで初めて開催され、日本代表チームの大健闘は、今でも私たちの記憶に鮮明に残っております。しかしながら、その一方では、9月の小泉首相の北朝鮮訪問を契機として、北朝鮮による拉致被害の事実が明らかとなり、5人の被害者の方が20数年ぶりに帰国されるという、国民にとっては衝撃的な出来事もありました。
また、我が国の経済は、バブル崩壊後の長引くデフレ不況のもとで、企業の業績や消費の回復は見られず、完全失業率も高水準で推移するなど、厳しい状況が続いており、国民の間における不安感と閉塞感は、なお払拭されないまま今日に至っております。

こうした中で、日本経済の再生と新たな発展を目指して、聖域なき構造改革に取り組んでいる小泉内閣においては、平成13年6月の「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」、いわゆる「骨太の方針」に引き続き、昨年6月には、「骨太の方針第2弾」を決定され、国から地方への税源移譲、地方交付税制度の見直し及び国庫補助負担金の削減からなる三位一体の改革について検討を行い、地方に対する国の関与を縮小するとともに、地方の自己決定と自己責任の原則を徹底した地方分権改革を推進するという方針が示されました。
この三位一体の改革が、本県を含めて、税源に乏しく、財政力の弱い地方公共団体への十分な配慮のもとに、真に地方分権時代にふさわしい地方税財政基盤の確立を目指して推進されることを強く期待するものであります。

さて、平成14年度、本県においては、宍道湖・中海の淡水化事業が昭和38年の事業着手から40年目にして中止が決定されるという、歴史的な出来事がありました。また、平成17年3月末の合併特例法の期限切れをにらんで、7地域で法定合併協議会が設置されるなど、各地で新しい地域の将来像を描く作業が本格的に始まりました。さらには、「全県IP網」の完成という全国トップレベルの情報通信インフラの実現、全国で初めての中山間地域専門の総合研究機関である島根県中山間地域研究センターのオープン、「島根県男女共同参画推進条例」の制定・施行など、社会基盤の整備や各種施策への取り組みが積極的に推進されてきたところであります。

しかしながら、本県の財政状況は、引き続く景気の低迷による県税の減収や制度見直しによる交付税の減少、社会資本整備に伴う公債費の増加等により、非常に厳しい状況にあり、その厳しさは日に日に増大してきております。

平成14年度の歳入歳出決算においては、歳入面で、平成13年度に比較して、県税がマイナス12.2パーセント、地方交付税がマイナス3.4パーセント、国庫支出金がマイナス17.2パーセントになるなど、総額ではマイナス4.4パーセントの減少という厳しい結果となりました。また、NTT債を除いた地方債残高は対前年度比4.9パーセント増の9,838億円余となり、起債制限比率も15.5パーセントと警戒ラインである15パーセントを超えたところであります。

さらに、本年10月に示された、平成16年度から20年度までの間の「中期財政見通し」によれば、昨年12月に策定された「財政健全化指針」に基づく取り組みを行っても、平成19年度には、財政調整基金等が枯渇し、平成20年度以降も150億円程度の収支不足が発生するという極めて深刻な状況となっております。

このような本県行財政を取り巻く厳しい状況を受けて、執行部におかれては、地方分権時代にふさわしい簡素で効率的な行財政システムの構築を目的として、昨年10月に、県の政策企画力を高める改革、財政健全化に向けた改革、市町村との新たな関係への改革などを内容とし、今後取り組むべき改革の方向性とその実現に向けた道筋を示した「新行政システム推進計画」を策定されるとともに、同年12月には、「財政健全化指針」を策定され、歳出全般にわたる徹底した見直しなどにより、一層の効率的、効果的な事業実施を図り、産業振興や少子高齢化対策など、本県の将来を見据えた政策課題に集中的、重点的に取り組んでいくことを決定されました。さらには、平成16年度当初予算編成方針において、平成18年度までの3年間に、財政健全化指針に基づく取り組みを上回る100億円の歳出削減を行うこととされたところであります。

財政健全化に向けた改革を中心として、「新行政システム推進計画」に盛り込まれた各種の改革が、県民や市町村等への十分な配慮のもとに、全庁的な推進体制により、早期に実現されるよう強く要望するものであります。

本委員会におきましては、4つの分科会を設置し、平成14年度に係る予算執行が議会の議決の趣旨及び関係法令等の規定に従い、適正かつ効率的に行われたか、施策の効果が十分上がったか、また、今後改善を要する点は何か、などの諸点に視点を置いて、出納長及び関係各部局長から各種の資料の提出を求め、詳細な説明を聴取し、また、代表監査委員からは、決算審査の意見について説明を聴取したところであります。

その結果、平成14年度決算については、いずれも賛成多数により認定すべきものと決定いたしました。

なお、今後改善すべきものとして指摘した事項は、お手元に配布しております「平成14年度決算における指摘事項」のとおりであります。これらの事項を速やかに改善されるとともに、本委員会の設置の趣旨を踏まえ、審査の結果等を平成16年度の予算に反映されるよう要請し、決算特別委員長報告といたします。
 

 

(別紙)

平成14年度決算における指摘事項

(公営企業会計決算)

病院事業会計について
〔島根県立中央病院〕
県立中央病院は、県内全域をエリアとする基幹的病院として、県内唯一の救命救急センター指定をはじめ、集中治療室の増床や母体胎児集中治療室の設置など高度特殊医療の強化やへき地医療支援機能の充実などにより、質の高い医療の提供と患者サービスの向上が図られているところである。
平成14年度の経営状況を見ると、診療報酬のマイナス改定や患者数の減少にもかかわらず、収益的収支における償却前損益では前年度の2倍を上回る5億5,400万円の収益を計上しており、年度当初に見込まれた減収を押し返すとともに、2年後には内部留保資金の払底という危惧は一応回避された。
これは、職員に対する意識改革や部門毎の経営改善目標の設定など病院内部での経営健全化への取り組みの成果であり、その努力に対し高く評価するものである。
しかしながら、14年度決算に係る減価償却費、即ち現病院建設に係る企業債償還額は収益的収支総費用の13パーセントを占め、収益的収支における純損失は18億1,500万円を計上している。今後25五年間に及ぶ企業債償還の負担は依然として大きい。また、今後借り入れる企業債の償還に係る一般会計からの繰り入れ限度が3分の2から2分の1に変更されることや、当面する退職者の増加に係る退職手当への対応、さらには診療報酬の引き下げが予測されることなど、厳しい病院経営の環境が好転する要素は見いだしにくい。
こうした状況を踏まえ、当面の運転資金枯渇を回避し、安定的医療供給体制の確保を図ることを目的とした第1次経営健全化計画が策定されたところであるが、業務の外部委託の促進と人員配置の適正化、あるいは、高度・先進的医療、特殊医療、専門医療、僻地医療等公的病院に求められる政策的医療(不採算医療分野)に係る一般会計負担の在り方などの具体的方策について、病院と県本庁とが一体的に検討することが急がれる。さらに、圏域内病院の機能分担を踏まえた県立病院としての役割・機能の抜本的見直しをも内容とする第2次経営健全化計画を策定し、着実に実行されることを強く要望する。
 

宅地造成事業会計について
3事業の工業団地の分譲促進対策としては、平成12年度から13年度にかけ、割賦分譲制度やリース制度が設けられている。
また、平成14年度から江津地域拠点工業団地については、工業用水道料金に対する助成措置が、旭拠点工業団地については、分譲単価を1平方メートルあたり14,980円から9,100円へ大幅に引き下げを行っている。
これらの施策の取り組みや、知事部局、地元自治体との連携の成果として、景気の低迷が続く中、工業団地の分譲は困難な状況にある中で、初めて旭拠点工業団地の分譲が行われるなど、分譲促進活動の成果も見られる。
しかしながら、それぞれの団地の造成済用地に対する分譲率は、江島工業団地では80.7パーセント、江津地域拠点工業団地は平成14年度に1企業の分譲があったものの62.0パーセントと依然低く、旭拠点工業団地に至っては、初めて1企業の分譲があったものの、約23ヘクタールの用地に対する分譲率は2.2パーセントであり、極めて厳しい分譲状況である。
地域の定住促進を図るため、分譲促進は重要であり、今後とも、知事部局及び地元自治体との連携をより一層密接にし、積極的な企業誘致活動を行い、分譲促進に努められたい。


(一般会計・特別会計決算)

収入未済額の縮減について
平成14年度の収入未済額は、現年度分7億7,898万円弱、過年度分15億869万円余、総額22億8,767万円余となっている。その主なものは、県税及び県税付帯金(加算金)14億8,331万円余、中小企業近代化資金貸付金3億5,167万円余、県営住宅使用料9.315万円余などとなっており、平成13年度に比較して、2,667万円余、率にして1.2パーセント減少している。県税及び県税付帯金(加算金)の収入未済額は、平成13年度に比較して9,049万円余、率にして5.7パーセント減少したが、個人県民税については、平成13年度の5億3,802万円余から5億6,073万円余へと、2,271万円余、率にして4.2パーセント増加している。また、中小企業近代化資金貸付金の収入未済額は、平成13年度に比較して6,791万円余、率にして23.9パーセント増加している。
収入未済額については、所管部局において、債権回収の専任嘱託員の配置、債権者等の折衝に的確・迅速に対応するための電算システムの整備など体制強化を図るとともに、滞納の早い時期からの督促・催告状の送付、保証人又は連帯保証人に対する請求、職員による個別訪問、住宅明渡訴訟・強制執行等により債権の確保を行い、収納の促進について努力がなされているところである。
しかしながら、本県の厳しい財政状況の中、収入の確保はより重要となってきており、今後とも未収実態に応じたきめ細かな対策や徴収体制の強化等を図るととともに、市町村など関係機関との連携をより密接にし、収入未済額の縮減に一層努められたい。

県有建物の維持管理費の抑制について
県庁舎や合同庁舎などの維持管理費については、昨年の指摘により、光熱水費、清掃委託費、設備の維持管理費等について一定の削減が図られたところではあるが、なお一層の縮減を図っていく必要がある。また、委託業務については、複数年契約による経費削減について検討し、可能なものから速やかに実施すること。
なお、大規模プロジェクト等により建設した公の施設の維持管理については、「指定管理者制度」の導入により、経費削減が期待できることから、早期に導入の可否について検討すること。

県営工業団地分譲に向けた取り組みについて
企業誘致については、長引く景気の低迷、産業構造の変化や各県との誘致活動競争の激化等により厳しい状況である。
企業誘致の推進については、これまで、企業立地課の設置や企業誘致専門員の配置を行うなど企業誘致体制の強化を図るとともに、企業立地促進助成金制度や土地代補助制度の見直しを行う等企業誘致のための優遇制度の拡充が行われている。
工業団地別には、水道料金の補助制度、分譲単価の大幅な引き下げなど、それぞれの団地の特性に合わせた形での分譲促進策を図り積極的に取り組まれているが、平成15年9月1日現在の県営工業団地の分譲率は32.3パーセント、リースを含めても33.9パーセントにとどまっている。
また、一部工業団地については、分譲単価を大幅に引き下げたことにより金融機関からの借入金の利息を一般財源から補填しているが、県財政が逼迫するなかで早期の分譲が期待されている。
企業誘致については、地域産業振興や雇用の場を確保し本県の定住促進を図るためにも重要な施策である。今後とも、経済環境が変化するなかで企業ニーズの的確な把握に努めるとともに、団地周辺の環境整備等も積極的に進め、各工業団地の特色、魅力を高め、総合的、戦略的かつ効果的な企業誘致を行い県営工業団地分譲促進に一層努められたい。

公共工事における落札率等について
平成14年度農林水産部所管の公共事業工事契約状況における落札率については、概ね90パーセント後半で推移している。
公共工事の落札率は、県が積算に基づき設定した予定価格に対して、受注者が積算し必要な利潤を見込んで応札した結果であり、落札率が高いということをもって不適切な入札であるとは、一概には言えないが、近年の厳しい財政状況の中で、より低廉な価格で良質な社会資本を調達、提供することが求められているところであり、落札率の推移などを常に注視していく姿勢が必要である。
また、公共工事に係る入札制度について、より一層、透明性、公平性、公正性、競争性を高めるとともに、企業の経営努力や創意工夫が的確に反映されるよう、関係部局が連携して公共工事の執行に努められたい。

 


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