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高速交通網整備促進調査特別委員長報告

 

高速交通網整備促進調査特別委員長報告平成十五年二月定例会


高速交通網整備促進調査特別委員会の調査の経過並びに結果について御報告いたします。

本委員会は、平成12年2月定例会において設置され、「高速交通網の整備促進に関する調査」を付託されたのであります。
以来、今日まで3年間にわたり、本県の陸・海・空にわたる高速交通網の早期の整備に向けて、執行部から事業の進捗状況や今後の計画、課題等について、説明を求めるとともに、「高速交通網の整備促進を図るための調査・研修会」を毎年開催し、国土交通省の担当者や学識経験者と、交通基盤の整備方針、具体的な整備の進め方等について意見交換を行うなど各種の調査活動を実施してまいりました。
特に本委員会では、国、関係団体等に対する提言・要望活動を高速交通網の整備促進を図るための重要な活動として位置づけ、本県の実情を訴えながら、精力的に行ってまいりました。
また、本県の高速道路の整備促進については、その必要性を訴える意見書を国に対して提出することが重要と考え、3件の意見書を本委員会が発議し、本会議の議決をいただき提出したところであります。
 
それでは、調査の概要について御報告いたします。
まず、「高速道路網の整備について」であります。
山陰自動車道をはじめとする高速道路は県勢発展の基幹となる交通手段であり、社会経済活動の基礎ともなる基盤施設であります。また、全国的なネットワーク化が図られてこそ効果が現れるものであり、整備の立ち遅れた本県においては、早急な整備を図る必要があり、本委員会としても最重要課題として取り組んでまいりました。
本県の整備の状況でありますが、平成13年3月に山陰自動車道の安来-宍道間が開通し、県都松江市を含む宍道湖・中海圏域が全国の高速道路ネットワークと直接結ばれました。
さらに、今月の16日には中国横断自動車尾道松江線の三刀屋木次-宍道間が、また、秋には江津道路が開通する見通しであります。
全国的に整備が遅延している中で、このように整備が進められ、今後についても順調な整備を展望していたところですが、昨年6月、内閣府に道路関係四公団民営化推進委員会が設置され、12月に意見書が内閣総理大臣に提出されました。その主な内容は、道路関係四公団を五つの地域に分割して新会社を設立し、今後の道路建設に当たっては、新会社において、経営状況、投資採算性に基づき、新規建設を決定し、新会社の採算性を超える建設は国・地方公共団体等の費用負担を前提とした新たな制度により対応することなどとなっております。
これは、採算性の議論を全面に出し、新会社による今後の整備を極めて困難にするものです。この意見書を受けて、現在、国においては、国と都道府県の負担によって高速自動車国道を整備する新直轄方式を導入するための法案のほか、今後の高速道路整備の枠組みについて検討がなされておりますが、検討内容によっては本県高速道路の整備スピードが遅れることが懸念されます。
もとより、高速道路は、国土政策として整備されるべきものでありますが、今後一層、島根県における道路整備の必要性やその効果について広く説明し、国民の理解を得ながら整備促進を図る必要があります。そのためには、県民の暮らしに根ざした道路整備のあり方を再構築する必要があると考えます。
こうした時期に県において、計画的で効率的な道路整備を行うため、広く県民の意見を聴いて「しまねの新たな道づくりビジョン」が策定されたことは、意義あることであります。このビジョンのなかでも、高速道路の整備を最重点に進めて行くとされておりますが、具体的に整備を進めるに当たっては、今後とも県民の意見を聴きながら、きめ細かく効果的な整備を行う必要があると考えます。

次に、「鉄道網の整備について」であります。
初めに、JR山陰本線の高速化であります。
JR山陰本線の高速化事業が平成11年8月に着手され、平成13年7月に高速化が開業いたしました。本県の永年の懸案でありましたが、県のJR西日本に対する働きかけはもとより、県民、沿線市町村、地元経済界の事業費の募金等をはじめとする協力を得て、この高速化が実現いたしましたことは、誠に喜ばしいことであります。
これにより、松江-益田間が特急列車利用の場合、最短で1時間56分と高速化開業前に比べ39分短縮になるなど、大幅な時間短縮が図られ、利用者数も平均約4割増加したところであり、県内外の交流促進が大きく進展するものと考えております。
今後とも、ダイヤ改善などにより利便性を高め、この高速化を生かし、経済、文化、観光など地域の活性化につながることを期待いたします。

次に、JR伯備線へのフリーゲージトレインの導入促進であります。
平成9年度から本格的な技術開発が進められているフリーゲージトレインは、平成13年秋から九州での走行試験が行われているところでありますが、新幹線との直通化により、広域的な高速鉄道ネットワークと結ばれることからJR伯備線への導入が求められています。
JR伯備線への導入に当たっては、振り子型車両の製作や走行試験が必要であり、相当の期間を要するのでありますが、鉄道建設公団の試算によれば、出雲市-新大阪間の22分の短縮に概算で750億円の多額の建設事業費が必要とされており、費用対効果の評価、具体的な事業化方策を検討する一方、県民の合意及び国による新たな財政支援制度の創設を求めていく必要があると考えます。

 

続いて、「空港、航空路の整備について」であります。
平成12年2月に改正航空法が施行され、航空会社が航空路線の新設や改廃、運賃設定を自由にできるようになるなど、規制緩和による航空業界の競争激化は一段と増しており、人口集積が少ない地方の航空路線を取り巻く環境は厳しくなっております。
まず、出雲空港でありますが、東京、大阪路線など8路線が就航し、利用者数が順調に伸び続け、年間利用客数が75万人に達する山陰の拠点空港として発展しております。
県では、今後の利用者の増加や航空機の大型化に対応するため、出雲空港機能拡充整備検討委員会を平成13年6月に設置し、同年11月にその答申や県の財政事情を踏まえ、拡充整備についての方針決定が行われました。その主な内容は、滑走路について着陸帯幅を150メートルのまま西側に500メートル延長し、2500メートルとすることなどであります。
一方、国においては、今後の空港等の整備に関して、昨年の12月に国土交通政策審議会航空分科会の答申があったところであり、その内容は、国内空港の整備は大都市拠点空港に重点を置き、一般空港の滑走路延長事業の新規採択については、代替手段を含む必要性の十分な検証、費用対効果分析の徹底等を行い、真に必要かつ有用なものに限って事業化するとなっております。この答申を受けて、国においては、この3月末に空港整備指針が策定され、事業採択の条件等が示されることになっておりますが、今後、新規採択に向けて、地元の理解を得るとともに、実現に向けた諸活動を展開していく必要があります。
次に、出雲空港の国際定期路線の開設についてであります。
県では、今般、石川県の小松空港と連携し、中国上海との国際路線の開設が検討されているところでありますが、県民の利便、観光客の誘致、経済交流の拡大などに意義あるものであり、今後、中国政府及び航空会社との交渉はもとより、チャーター便の運航による需要の呼び起こしやCIQ体制の整備など、早期の開設に向けて積極的に取り組む必要があります。
なお、路線の開設に当たっては、鳥取県の利用客の確保が不可欠であり、ソウル便の誘致の際に鳥取県と競った経緯がありますが、今後は鳥取県と協調して取り組まれるよう要望しておきます。

次に、石見空港についてであります。
平成5年7月の開港以来、エアーニッポン株式会社による東京路線、大阪路線が運航しております。
東京路線は、1日2往復運航しておりましたが、昨年の12月から、羽田空港の発着枠を航空会社が収益性の高い他の路線に振り替えたため、1往復の減便となり、乗客数が大幅に減少しました。この代替措置として、大阪空港での乗り継ぎダイヤが設定されたものの利用者の利便性は大幅に低下し、当該圏域の経済活動や観光に支障を来すことが懸念されます。このため、航空会社に対して早期に複便化の復活を働きかける必要があります。また、国に対して、全国の同じような悩み持つ他空港と連携し、国の権限で地方に配慮した路線枠を確保するような支援制度の創設を要望する必要があります。
大阪路線は、開港以来利用率が低迷し、県においては、地元石見空港利用促進協議会とともに利用拡大に努めておりますが、平成15年度上期の運航については、航空会社が示した条件が達成できなかったため、経費の軽減、利用促進策の追加により運航が継続されることとなりましたが、下期については、運航継続の条件として平成14年度下期の利用率56.6%以上が示されたところであり路線存続の危機にたたせられております。小型機による複便化の実現など利用率を向上させ、路線を維持するための施策を強力に展開する必要があります。
次に、隠岐空港についてであります。
平成18年7月の開港を目指し、2000メートル滑走路を備えた新空港の整備が着々と進められております。
今後、新空港開港による利便性の向上に合わせ、観光の振興等、空港の利活用の促進に鋭意取り組む必要があります。

終わりに、「港湾の整備について」であります。
浜田港は、平成13年3月の国際定期コンテナ航路の開設を踏まえ、コンテナターミナルの整備など着実に整備が進められており、これを生かした地域振興が期待されるところであります。
河下港は、平成12年5月に特定地域振興重要港湾に指定されたところでありますが、出雲圏における物流の拠点としての整備が必要であります。

以上、調査の概要について申し上げましたが、本県の高速交通網の整備につきましては、陸・海・空が相互に補完し合う体系的な交通基盤の整備が必要であります。
国における構造改革、県の財政事情など厳しい状況ではありますが、本県は東西に細長く、また、離島を有しており、県民生活の利便性の向上、地域の活性化のため高速交通基盤の整備は欠かせないものであり、整備手法に工夫し効果的で着実な整備を進めていく必要があります。
執行部におかれましては、今後とも、本県の発展に欠かせない高速交通網の整備に積極的に取り組まれることをお願いして委員長報告といたします。

 


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