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A群溶連菌咽頭炎
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A群溶連菌咽頭炎

「A群溶血性レンサ球菌」ってなに?
 「A群溶連菌咽頭炎」の「溶連菌」とは「溶血性レンサ球菌」を略したものです。
 「レンサ球菌」は顕微鏡で観察したときの菌の形態を表したもので、球形の菌が鎖状につながって見えることから名付けられました。
 「溶血性」とは、レンサ球菌を培養するときに用いる「培地(ヒツジの赤血球を加えた寒天培地)」上で、菌の周囲に赤血球を破壊したことでできる、明確な境界のある透明な「溶血帯(β溶血)」を作ることから付いた名称です。(「溶血性」の種類にはほかにα溶血、γ溶血があります。)
 さらに、「溶連菌」の前に付いている「A群」とは、「溶血性」とは別のやり方で菌を分類してつけられた名前です。
 つまり、A群溶連菌とは、菌の分類を示したもので、病気の症状を表したものではありません。一般的には「溶連菌」というときには「A群β溶血性レンサ球菌」を指すことが多く、これはGASと省略されることもあります。A群溶連菌は、菌の侵入部位や組織によって多彩な臨床症状を引き起こします。日常よくみられる疾患として、学童期の子供の咽頭炎、皮膚の感染症(膿痂疹(とびひ)や蜂巣炎(皮膚の深いところの炎症))、心内膜炎(心臓の弁の感染症)など様々な病気の原因になります。

発生状況
A群溶連菌咽頭炎:過去10年の報告数の推移(島根県)
 従前は冬期に患者が多く報告される発生パターンでしたが、ここ数年全体の届出数の増加傾向とともに、春から梅雨にかけての流行が見られるようになっています。家族間(主に子ども)の感染や、学校・幼稚園・保育園等での感染が多い病気です。
 島根県では2012年、13年と患者数の少ない年があった後、2014年の11月以降は夏期(8月から10月)にいったん少なくなり、秋から初夏にかけて報告数が多くなる状態が続いています。患者は2歳から9歳までの(幼稚園から小学校低学年)年齢層が大半を占めています。
 全国的にも夏期を除いた通年で報告数が多い状況です。
感染経路
 患者の咳やくしゃみなどのしぶきに含まれる細菌を吸い込むことによる「飛沫感染」、あるいは、細菌が付着した手で口や鼻に触れることによる「接触感染」が主な感染経路です。

症状
 潜伏期間は2日から5日間です。
 突然の発熱(40度前後)と咽頭痛、頭痛や嚥下痛(飲み込むときの痛み)、倦怠感の訴えなどがあります。
 所見としては、前頚部に痛みを伴うリンパ節腫脹が見られます。また、咽頭扁桃の発赤、軟口蓋の点状出血、口蓋垂の腫脹などがあります。
 まれに重症化し、喉や舌、全身に発赤が拡がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」に移行することがあります。
 また、日本での発生はきわめてまれですが、溶連菌感染症の合併症として「リウマチ熱」があります。咽頭痛などの症状が治まった数週間後に、関節炎、心筋炎などを生じる病気です。  A群溶連菌とリウマチ熱発病に関連があることがわかっており、溶連菌を確実に治療することで予防できます。

診断方法
 咽頭から検体を採取しての分離培養と、迅速診断キットを用いた方法があります。

治療と予防
 ペニシリン系の抗菌薬が第一選択になります。合併症(リウマチ熱、扁桃周囲膿瘍、中耳炎・副鼻腔炎など)を予防するために10日間きちんと服薬する必要があります。治療(抗菌薬の種類、治療期間等)については医療機関で十分な説明を受け、指示された治療を最後まで続けることが大切です。
 飛沫感染する病気ですので、患者さんは咳エチケットを心がけましょう。接触感染対策としては手洗い、手指消毒、高頻度接触面の消毒などが有効です。

感染症法上の取扱い
 五類感染症小児科定点把握疾患です。指定届け出機関の医師は最寄りの保健所に一週間の患者数を報告していただきます。
 学校保健安全法では、「その他の感染症」とされており、原則的には出席停止の対象にはなりませんが、発生状況によっては学校長の判断で出席停止の措置をとる場合があります。
 なお、β溶血性レンサ球菌が原因で、急速に進行して多臓器不全、壊死性筋膜炎などをおこす病態を「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」と呼びます。こちらは感染症法上の5類全数把握疾患となっており、咽頭炎とは別に集計されています。
A群溶連菌咽頭炎

リンク
島根県感染症情報センター