感染症 年報
1.発生状況の解析と評価
|精度評価
8)島根県感染症発生動向調査の精度評価:表5〜9、16、図11〜14
サーベイランスの精度評価は本県では例年、総報告患者数、インフルエンザを除く患者数(インフルエンザは報告数が大きくかつ流行規模が大きいため)、および突発性発しん(年次と季節による変動の少ないことが立証されており、モニターとして適切であるとされている)の患者数を目安にし、さらに、出生数、幼児人口(毎年の出生数から計算した0〜5歳に属する児の数)を考慮に入れておこなってきた。
本年は、インフルエンザの報告数の年次報告数の変動に加え、感染性胃腸炎の流行が特に大きく、地区差も大きかったので突発性発しんの報告数に焦点を絞って検討する。本疾患の定点当りの報告数を年次変化や地域差をなくすることを理想とするか、定点当りの報告数が出生数と連動することを理想とすることを原則とするか明らかにされていないが、定点の変更がそう容易でなく、また好ましいとは言い難いことを考えると、後者に則るべきかもしれない。
島根県の出生数は近年、低下が鈍化し横這いに近くなった。2006(H18)年の出生数の2001(H13)年のそれに対する比は0.91、2006(H18)年の突発性発しんの患者数の2001(H13)年のそれに対する比は1.01、同様に東部のそれは0.89と1.92、中部は0.94と0.91、西部は0.90と0.46(2003(H15)年で比較すると0.88)であった。西部での乖離が2004(H16)年以降、漸次拡大している点が気懸りであり、原因の解析と対応が必要のように思われる(東部での変動については昨年論じた)。
圏域別にみた場合、次の圏域はこれまでほぼ同規模の報告であったが、本年、低下があり気懸りに思われた。出雲圏域(昨年比0.81)、大田圏域(同0.52)、浜田圏域(同0.69)。益田圏域は2003(H15)年以降漸減しておりやはり気懸りである。
本年の月(4週換算)毎の報告数は、全県では47〜90件、中央62件(昨年55〜99件、中央76件)でやや減少に傾いているかもしれない。東部は19〜43件、中央28件(昨年22〜41件、中央32.5件)、中部13〜37件、中央21.5件(昨年19〜34件、中央23.5件)、西部6〜16件、中央10件(昨年9〜29件、中央12.5件。2004年は8〜28件、中央16件)であった。報告数の幅に関しては特に顕著な変動はみられないが、西部はここでも報告数の減少が示唆される。
結論として、西部での報告体制に注意を払いたい。