感染症 年報
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2000(H12)年 年報
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(ア)全県的な感染症の流行状況(表1)
平成12年度の報告患者数は19,092件であった。平成9年度の報告数と同規模で、10年より漸増している。ただし、
この傾向には「インフルエンザ」に内科定点が加えられたことの影響も考慮する必要がある。この数字を平成2年
よりの過去10年間の年間平均患者数で除した流行指数も0.9とほぼ平年並みであった。
本年の特徴的な疾患として、手足口病が平成10年の大流行より1年おいてまたかなり大きな流行で、流行指数
1.46を示した。また例年報告数の多い疾患であるインフルエンザ(6,628件、指数1.15)、感染性胃腸炎(5,858件、
指数0.92)、水痘(1,915件、指数0.91)、流行性耳下腺炎(1,209件、指数1.09)がいずれもそこそこの流行を示した。
例年になく流行の小さかった疾患としては、ヘルパンギーナが上げられ、サーベイランス開始以来で平成10年に
次いで少なかった(460件、指数0.51)。また、流行性疾患ではないが突発性発疹は平成5年以降減少が続き、本年は
これまでで最少の681件、指数0.64であった。
麻疹は指数は0.26であったものの、平成10年、11年と1桁の報告数であったのが76件と増加した。また、百日咳も
平成9年より20件前後の報告数であったのが48件と増加し、指数も1.04であった。
患者数の多かった上位8疾患を図1に示した。第3位の水痘までは昨年と同順位であった。第1位のインフルエンザ
の報告数は全体の34.7%を占めた。
(イ)地区別にみた感染症発生状況(表2,3)
インフルエンザは昨年は西部、特に浜田地区で突出して多かったが、本年は東部(隠岐を含む)と中部でやや多め
(指数はそれぞれ1.35,1.31)、西部で例年並み(指数0.92)で全体として各地区ほぼ同規模の流行であった。
本年流行の大きかった手足口病は、西部(指数2.21,特に県央と益田保健所管内)と中部(指数1.45,特に雲南管内)
での流行が大きく、東部の指数は0.82であった。
流行性耳下腺炎が多かったのは西部での流行によるものであった(指数2.27,特に県央で多く、浜田でも多かった)。
東部と中部の指数はそれぞれ0.67と0.42であった。
他にA群溶連菌咽頭炎が浜田地区で多かった(西部での指数1.46)。また咽頭結膜熱が浜田地区と出雲地区で
やや多かった。
麻疹は各地区で報告されたが特に出雲地区で多く(46件)、県全体の60%を占めた。百日咳は各地区で同程度の
報告数であった。
東部(隠岐を含む)における報告数は5,590件(指数0.85)でここ11年では7位であった。指数はインフルエンザのみ
が1以上であった。
中部と西部は平成10年に区分に変更がなされたため指数での比較はまだ難しい。
中部での報告数は5,599件(指数0.81)で、平成10年より漸増している。指数はインフルエンザ、手足口病、
咽頭結膜熱が1以上であった。
西部での報告数は7,903件(指数1.05)で、平成10年よりほぼ同数の数である。指数は手足口病、流行性耳下腺炎、
水痘、A群溶連菌咽頭炎咽頭結膜熱、感染性胃腸炎が1以上であった。
(ウ)感染症流行状況の経年的変動(表1,2)
感染症サーベイランスでは昭和57年より19年間のデータが蓄積された。主要疾患についてその経年的変動を解析し
今後の流行予測、感染症対策に役立てたい。
麻疹は昭和57年、平成2年、5年に大流行がみられたが、全体としては減少傾向が認められる。置くに平成10年11年
と1桁の報告数であったが、本年は中部地区を中心に増加した。これは全国的な傾向でもある。前年度報告書でみると
麻疹の予防接種実施率は全県で70.8%となっており、1歳早期での予防接種の徹底が望まれる。
風疹は平成4年の得意な大流行の後は散発が続いている。予防接種は平成7年からは流行そのものを抑制すべく
年少児から男女の接種が行われている。先天性風疹症候群が根絶されることを期待したい。しかし、接種精度の
移行期で思春期の摂取率の低下が危惧されており、注意を払いたい。
水痘は年次変化が小さく、更に季節変動も小さく、例年特に冬に大きな山がある。
流行性耳下腺炎は昭和59,62年、平成3〜4年、9〜10年が流行の小さい年であった。平成11年より流行年になったが、
12年は西部のみ目立って多かった。流行年は数年続く傾向にあり、13年は全県的に注意をしたい。
百日咳は昭和59年以降著減し、さらに平成元年以降は3年にやや多かったのみで散発が続いている。特に平成9年
からは20件前後の報告数であったが、12年は48件に増えた。特に集団保育児にはできるだけ早期の予防接種を望みたい。
手足口病とヘルパンギーナはともにエンテロウイルスによる疾患であるが流行のパターンは大きく異なっている。
手足口病は流行年と非流行年の差が大きく、昭和58年、63年、平成7年に大きな流行があり、10年そして12年に流行した。
ヘルパンギーナは昭和59年に特異に大きな流行がみられた他は年次変化は少ない。しかし、平成5年頃より小児人口の
減少傾向以上の減少傾向がみられる。
インフルエンザは毎冬流行しているが、流行の規模は平成2年と7年(いずれもA香港型とB型が流行)が特に大きく、
3年と6年(いずれもA香港型単独の流行)が特に小さかった。平成10年は全国的には大流行したが本県は中規模の
流行にとどまった。また11年にと津出して多かった西部を除き12年は増したものの、定点が増えたこともあり判定は
難しい。より大きな流行や症状の強いウイルスの流行は十分ありうることであり、その場合に備えた対策が必要であろう。
平成11年4月からの感染症新法により眼科定点感染症としては、(59)急性出血性結膜炎と(60)流行性角結膜炎となり、
咽頭結膜熱は小児科定点感染症となった。
全県的な流行状況(表1,2,3,4,5,6,7,8)
(1)急性出血性結膜炎の平成12年の報告数は、全県で2件で、中・西部各1件のみであった。流行指数は、0.09と低値で
あるが、平成4,7,8年のいずれも県西部を中心とした流行の影響によるところが大きく、平成11,12年と散発的な発生状況
に落ち着いたものといえる。
(2)流行性角結膜炎は全県で112件と平成10年頃からほぼ横這い状態の発生状況にある。流行指数は0.51で、東部、中部で、
西部ともに、過去10年間の前半の発生数の約半数程度で推移している。
季節的には、大略4月から9月頃までの夏季に発生が増加する傾向がみられる。
年齢別では、流行性角結膜炎では、用事、学童の低学年に、やや多い傾向がみられるものの、咽頭結膜熱にみられたほどの
特徴は認められない。
無菌性髄膜炎は6件とここ11年で最も少なかった。
マイコプラズマ肺炎は5件(4件は出雲)と極端に少なかった。
平成11年3月まで異型肺炎として報告されていたのが、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎として報告されることに
なったが、病原の診断がついていないということで報告されないケースが多くなったことが予想される。
急性脳炎が12月に県央から1件、細菌性髄膜炎が出雲保健所管内から2件報告された。