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島根県水産技術センター研究報告第5号(2013年3月)

全文(PDF,13,924KB)

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島根県沖で漁獲されたサワラ若齢魚の成分特性と鮮度特性(PDF,895KB)

岡本満・内田浩・井岡久

(要旨)島根県で漁獲されるサワラ若齢魚(サゴシ)の成分特性と鮮度特性を調査した.秋期〜冬期にまき網で漁獲されるサゴシは鮮度に優れ,春期に沖合底びき網で漁獲されるサゴシはやや大型で粗脂肪含量が多い傾向だった.サゴシは成魚と同様に,粗脂肪含量と水分含量に明らかな逆相関が認められたが,粗脂肪含量は成魚よりも低い傾向だった.呈味成分では旨味系遊離アミノ酸が少なかったことから,IMPが旨味に占める割合が高いことが示唆された.貯蔵温度による鮮度変化を調査したところ,K値とIMPの経時変化から10℃以下の低温貯蔵の有効性が示唆された.

 

イワガキ種苗生産における餌料藻類の検討(PDF,1,064KB)

石原成嗣・常盤茂

(要旨)イワガキ種苗生産において,市販の珪藻餌料(Chaetoceroscalcitrans)に自家培養したハプト藻類を混合して給餌することで,生残率が改善されるかどうか検討した.ハプト藻類PavlovalutheriIsochrysisgalbanaを市販餌料に混合した場合と,市販餌料のみを単独で給餌した場合と,幼生の飼育状況に差が生じるか比較し,浮遊幼生の飼育期にハプト藻類を混合すると,大量斃死の発生率が低く抑えられることを確認した.この結果から,市販餌料に対して他の餌料を適切に混合することで,種苗の生産効率を向上させうることが示唆された.

 

沿岸漁業の複合的経営に関する研究-V(PDF,1,436KB)

-島根県沿岸海域におけるメダイ釣漁業の実態と漁況-

森脇晋平・寺門弘悦・安木茂・佐々木正

(要旨)島根県沿岸海域におけるメダイ漁の実態及び漁況を明らかにするため,聞き取り調査,漁獲統計資料及び中層トロール網による採集資料の解析を行った.島根県におけるメダイ漁は大部分が釣漁業によって行われ,その漁場は水深100m以深の人工・天然魚礁,沈船といった構造物周辺に形成される.年間の漁獲量は2000年代当初は100トン前後であったが,急激に増加してその後,増減はあるものの横ばい〜漸増傾向にある.本魚種の漁況は流れ藻によって補給される幼魚の来遊量に影響をうける可能性を指摘した.

 

日本海南西部陸棚斜面上部の底層部における海況特性と底魚類の出現との関係(PDF,1,072KB)

森脇晋平

(要旨)日本海南西部の陸棚斜面底層部の海況特性とそこに形成される底びき網漁場に出現する底魚類の出現特性とを対比検討した.水塊分析の結果,この底びき網漁場に出現する水塊は地理的に微妙に異なっていた.この差異を底魚類の生息環境の変動としてとらえると,水塊の違いに適応して分布生息しているとみられる魚種もあったが,複数の水塊に幅広く出現する魚種もみられた.この海域の底びき網漁場の漁場形成要因となる環境要素は魚種によって異なることが明らかになり,今後調査研究事例を蓄積していくことの重要性を指摘した.

 

資料

イワガキ種苗生産における換水及び底掃除作業軽減の検討(PDF,1,121KB)

‐予備的試験結果について‐

森脇和也・常盤茂

(要旨)島根県のイワガキ種苗生産について,品質を保持しつつ省力化及びコスト削減を図ることを目的として,毎日,1日おき,2日おきと異なる換水及び底掃除の間隔で飼育したイワガキ幼生の生残数や採苗器への稚貝付着数を比較する予備的試験を行った.その結果,生残数は各水槽で大きくばらついたが,稚貝付着数は間隔を開けた水槽で何らかの不調によるものと思われる付着数の偏りが出たものの,製品の基準となる規格を概ね達成した.この事から2日程度間隔を開けても種苗生産が可能であると推察された.

 

2011年の高津川におけるアユ産卵場造成について(PDF,2,528KB)

寺門弘悦・曽田一志・安木茂・村山達朗

(要旨)島根県西部の主要河川である高津川では,近年の夏季から秋季の小雨傾向と,河川構造物による砂利供給量の不足により,下流部のアユ産卵場の環境は年々悪化している.そこで,「造成」によってアユ産卵場としての機能回復を図り,さらにそこでの産卵状態を検証した.高津川では虫追の瀬および長田の瀬で造成を行い,造成面積は合わせて3,866m2であり,産卵場面積の割合は114%となった.また,産着卵の埋没深は虫追の瀬では10cmに達しなかったが,長田の瀬では10cm以上で造成の効果があったと判断できた.

 

2011年の江の川におけるアユ産卵場造成について(PDF,1,906KB)

高橋勇夫・寺門弘悦・曽田一志・安木茂

(要旨)島根県西部の主要河川である江の川では,近年の夏季から秋季の小雨傾向と,河川構造物による砂利供給量の不足により,下流部のアユ産卵場の環境は年々悪化している.そこで,本河川の谷住郷の瀬のアユ産卵場としての機能回復を「造成」によって図り,さらにそこでの産卵状態を検証した.造成面積は2,270m2であり,産卵面積の割合は83%であった.また,産着卵の埋没深は10cm以上であり,造成の効果があったと判断できた.

 

中海における小型定置網で漁獲された魚介類の出現特性(PDF,3,868KB)

道根淳・三浦常廣・佐々木正

(要旨)2006年4月から2012年3月にかけて,小型定置網による漁獲物を用い,最近年の中海における魚介類の出現動向をまとめた.中海全体では102種,本庄では84種,東出雲では82種の魚介類が確認された.出現種の季節変化は,中海全体では夏季に多くなり,冬季に少なくなる傾向が見られた.多様度指数は,調査点で傾向が異なり,本庄では秋季・冬季に低く,春季・夏季に高くなる傾向が,東出雲では春季に高く,秋季にかけて低くなる傾向が認められた.種多様性では,東出雲は比較的安定していたが,本庄では種組成の均等さで変化が見られた.

 

浅場用採泥器の作成とヤマトシジミの採集効率(PDF,968KB)

向井哲也

(要旨)浅場での採泥作業に使用するための採泥器を作成した.採泥器はスミス・マッキンタイヤ型採泥器と同サイズのバケットを人力で開閉する仕組みとした.この採泥器でヤマトシジミの採集効率を調査したところ,水温約23℃で約70%となり,過去のスミス・マッキンタイヤ型採泥器による同水温期の調査結果とほぼ同じであった.水温約6℃での低水温時の調査ではヤマトシジミの採集効率は40%程度まで低下し,これは低水温時にはシジミが深く潜砂していたためと考えられる.

 

島根県沿岸域に来遊する重要な4魚種(マアジ,トビウオ類,シイラ,ケンサキイカ)の簡便な漁況予測手法の再検討(PDF,1,392KB)

森脇晋平・寺門弘悦

(要旨)島根県沿岸海域に来遊する重要な水産資源生物4魚種(マアジ,トビウオ類,シイラ,ケンサキイカ)について新たな観測資料や簡便な手法を用いて漁況予測手法の再検討を行った.その結果,これらの手法は各魚種の盛漁期前にその年の平均的な漁況の動向を判断するのに有効であることが示唆された.

 


お問い合わせ先

水産技術センター

島根県水産技術センター(代表)
〒697-0051 浜田市瀬戸ヶ島町 25-1
TEL.0855-22-1720 FAX.0855-23-2079 E-Mail: suigi@pref.shimane.lg.jp