ブドウ
果実腐敗症状
近年、島根県下でも赤色系品種‘赤嶺’やワイン用品種など‘デラウエア’以外の品種も栽培されるようになり、収穫期にいろいろな症状の果実腐敗がみられるようになりました。果実腐敗をおこす病原菌には多くのものがあり、その病徴が似ているところから誤認することもあります。そこで主なものについてその病徴を紹介します。
- 晩腐病
褐色の斑紋を生じ、後に果皮にしわがより、ミイラ果となります。中心部に鮭肉色の分生子塊を形成します。最近、従来の晩腐病菌(Colletotrichumgloeosporioides)とは異なるColletotrichumacutatumによる晩腐病症状が確認されています。症状からは見分けることは困難です。本菌は晩腐病に効果の高いベンレートなどの薬剤については防除効果が低く、発生が多くなると問題になりますが、その発生量は現在、島根県では少ないと考えています。(写真データ:1995.10.26、出雲市、赤嶺)
病害虫図鑑:晩腐病 - 灰色かび病
水浸状に軟化し、後に褐変して、果皮が裂皮すると灰色のかびが生じます。赤嶺では果色が白色となります。初期症状はホモプシス腐敗病、房枯病などと似ており見分けにくいです。(写真データ:初期病斑[1996.11.6、出雲市、赤嶺]後期病斑、[1996.10.1、横田町、甲斐路])
病害虫図鑑:灰色かび病
3.ホモプシス腐敗病
淡褐色の小斑点が生じ、拡大するにつれて水浸状に軟化腐敗する。病斑上には後に柄子殻が形成され、黒色の小粒点として認められます。苦腐病のように黒色のつやのある粘質物(分生子塊)を分泌しません。
(写真データ:1996.11.6、出雲市、赤嶺)
4.房枯病
果梗部付近から褐変し、円形、楕円形の斑点を生じてくぼみます。病斑上には後に柄子殻が形成され、黒色の小粒点として認められます。発病果房はミイラ状になり樹上に残ります。近年、房枯病菌と同じ属の枝枯病菌(房枯病菌と同一の菌と考えられている。)による枝枯れの症状も見られています。
(写真データ:被害果1995.11、出雲市、赤嶺)
(写真データ:被害果左[1995.9.1、大社町、カベルネ・ソービニヨン]、右[1999.9.20、益田市、甲州])
5.苦腐病
果実での発病は初め白腐れ症状で、病勢が進むと黒色の小粒点を果面全体に形成し、その後小粒点は破れ黒色でつやのある粘質物を分泌します。このように、本病は果実の病害ですが、最近、施設栽培で新梢基部が褐変し、枝が枯れる症状が本病菌によって発生しています。病原菌は結果母枝の粗皮に生存し、多湿条件下で新梢基部を侵します。新梢基部の病斑には小黒粒が多数形成されます。
防除するにはまず園内が多湿にならないように注意するとともに罹病枝の切除(前年枝にさかのぼって変色部のある枝は切除します)を徹底し、園外に持ち出し処分します。なお、罹病枝の剪定に利用したハサミでも菌は移るといわれていますので注意してください。
(写真データ:果実の病徴上段[1999.6.24、出雲市、デラウェア]、下段[1999.7.2、出雲市、デラウェア]、
枝枯症状上段[1999.6.25、出雲市、巨峰]下段[1999.7.2、出雲市、巨峰]、
苦腐病菌左:[培養菌そう:PDA培地]右[分生子])
6.その他
果実内に白色綿状の菌糸で覆われ、商品価値がなくなる症状が(病害?)発生したことがある。その病原菌、発生生態等は不明である。福島県、山梨県でも同様の症状が過去発生している。
○外部リンク日本植物病名データベース
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