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若竹の伸びやかさ

 日本人にとって竹は好きな草木のトップグループに入ると思う。俚諺、格言をとってみても、「雨後のタケノコ、破竹の勢い、竹を割ったような性格、節目節目、松竹梅」など、「竹の子生活」を除けば好事に例をひかれている。竹馬や竹トンボなどの遊びにも使用されるし、茶道具や花器にも用いられてきた。建材や篭などの材料でもある。軽くてまっすぐで固い性質からは釣り竿や矢竹としても使用された。どの種類のタケノコも食べるとうまい。物語では、竹取物語の不朽の名作や、エジソンが電球のフィラメントに用いた最初のものが竹炭であったことも思い出される。

 そのタケの成長過程をみていくと実に興味深いことに気がついた。先ず、タケノコが地面を割って頭をもたげる時のエネルギーの大きさには目をみはるものがある。成長のスピードは最高一日に1メートル程にもなるという。頭をもたげてから一月もしないうちに5メートルにも達する。そしてその間は自らは光合成をせず、親からの栄養補給によるわけだ。皮がめくれていくのは、一定以上に竹筒の部分の強度が到達すれば自然にむいていく。逆にいえば固化するまでは皮が保護することで強度を確保するし、風にも折れないしなやかさを獲得している訳だ。

 これは人間の成長にも似ていると思いません?土から頭を出したばかりの頃は、まるでおくるみに包まれた赤子のようで、すくすくと伸び、図体は大きくなっても親からの、代償を求めない仕送りを受ける点、青春期には風雨に負けない強靱なしなやかさを求められる点、やがては自立して、独自の光合成をはじめ、次には自らが親の役割を果たすこと。

 そう思うと、より一層竹が親しく思えてくる。「教育しまねNo.39(平成18年7月10日)」より


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