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教育長訓辞:令和3年度新規採用教職員辞令交付

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、辞令交付式を中止いたしましたので、書面によりお届けします。

 

 本日、島根県の教職員としての第一歩を踏み出されました皆様に心からお祝いを申し上げます。島根の将来を担う子どもたちの教育という重要な使命を担って、着実に歩みを進めていただきたいと思います。

 

 さて、昨年来、世界中で感染が続いている新型コロナウイルス感染症は、私たちの暮らしや経済に大きな影響を及ぼしています。2月には、我が国でもワクチン接種が始まりましたが、変異株の感染例が確認されるなど、未だ予断を許さない状況にあります。長期化するコロナ禍により、教育の世界においても、これまで当然のことと考えられていた認識や価値観を問い直すことが求められています。

 一方、超スマート社会・ Society5.0 の実現に向けた人工知能を始めとする急激な技術革新やグローバル化の一層の進展など、子どもを取り巻く環境の変化は複雑で予測困難となっています。また、国連の持続可能な開発目標・SDGsの地球規模における17の目標は、裏を返せばこれらが世界中で解決すべき大きな課題であることを意味しています。課題の解決に向けて、日本にも積極的な取組が求められているところです。

 

 これからの教育は、このような複雑で予測困難な時代が到来していることを念頭に考えなければなりません。島根県教育委員会では、これからの時代を生きる子どもたちが、自らの手で時代を切り拓き、将来に向けて幸福で主体的な生き方を実現できるよう、また、よりよい社会の担い手となっていけるよう、今後、推し進めるべき本県教育の基本理念や施策の方向性をまとめた「しまね教育魅力化ビジョン」を策定しました。

 皆さんの中には、「教育の魅力化」という言葉を初めて聞かれる方もいらっしゃるかもしれません。「教育の魅力化」とは、島根で育つ子どもたち一人一人に、自らの人生と地域や社会の未来を切り拓くために必要となる「生きる力」を育むため、学校・家庭・地域がその目標を共有し、協働を図りながら、島根の教育をより良いものに高めていくことです。このビジョンの基本理念には、「ふるさと島根を学びの原点にもつ」という視点を掲げました。ふるさととつながって生きること、関わりあって学ぶことの中にこそ真の主体的な学びがあり、そうした関わりやつながりを支援することの中にこそ真の教育の力がある、という思いがこめられています。

 

 子どもたちが、家族に愛され、地域の人々から大切にされて育つこと、また豊かな自然、歴史・伝統、文化、産業など地域の資源を直接経験することで、周囲の人々や生まれ育った地域を好きだと感じ、誇りに思う気持ちが育ってきます。これが自分の存在への感じ方に反映され、自分を肯定的にとらえようとする気持ちが育ち、そこから自分のできること、するべきことを発見し、地域や日本の将来、あるいは世界に向けてはばたこうとする心豊かな人が育っていくと考えます。

 本日、新たに教職員となった皆さんも、このような島根の人づくりの一翼を担うことになります。子どもたち一人一人にとって魅力的な教育活動とは何かを自分に問いかけながら、学校内はもとより、家庭や地域で教育を支えていただいている方々と連携しながら、教育活動を積み重ねていただきたいと思います。

 着任後しばらくは、目の前の子どもたちに全力を傾注することで精一杯だと思います。焦らず、じっくりと一人一人に向き合って、児童・生徒のよい面、よい成果にしっかりと目を向け、「いいね」「よかったね」という思いの共有を子どもたちと図っていただきたいと思います。児童・生徒が夢や志の実現に近づき、達成感を得ることを、子どもたちや子どもたちを支えている大人とともに喜びあえる教職員であってほしいと思います。

 皆さん自身も成長していくことを意識して下さい。常に探究心を持ち、新しいことにも積極的に挑戦し、学び続ける意欲をもつことが大切です。そのような教職員の姿勢は、学校全体に活力を与えるだけではなく、子どもたちに夢や志を叶えようとする力、伸びる意欲をもたらすものと思います。

 

 次に、教職員となる皆さんの健康管理についてです。

 あらゆる職場で「働き方改革」が重要な課題となっています。これまで、学校においては、教職員という職の崇高な使命感の下、「子どものためであればどんな長時間勤務も良しとする」という働き方が当たり前とされてきました。しかし、こうした働き方によって教職員が疲弊し、子どもの教育に悪影響を与えるのであれば、それは本末転倒です。これからは、教職員の業務負担の軽減を図り、新たに生まれた時間によって、児童生徒等に接する時間を十分確保することが重要です。同時に、業務負担の軽減が、教職員自身の人間性や創造性を高めることに繋がり、より効果的で充実した教育が展開されることが望まれます。

 このため、島根県教育委員会では、「教職員の働き方改革プラン」を策定し、具体的な取組を進めています。私は、「教職員の皆さんの心身の健康を守り、働きやすい環境を整えることが、子どもたちに質の高い教育を提供する基盤である」と考えています。これから教育の現場に立たれる皆さんには、新しい職場で仕事と生活の調和を図りながら、心身ともに健康で、いきいきと子どもたちに向き合っていけるよう日々心がけていただきたいと思います。

 

 皆さんは、これから県内の様々な地域で勤務を開始されることとなります。島根県全体をふるさとと捉え、ふるさと島根の教育を教職員全員のチーム力で担っていく、そのような気概を持ち続けていただきたいと願っています。

 どうか健康にはくれぐれも留意され、自己研鑽に努めながら、これからの教職員生活で存分に力を発揮されることを期待しまして、訓示といたします。

 

 

 令和3年4月1日

 島根県教育委員会教育長

 新田英夫


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