新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、辞令交付式を中止いたしましたので、書面によりお届けします。

　市町村立小中学校および県立学校の管理職として、採用、昇任された皆様に心からお祝い申し上げます。

　さて、人口減少問題が日本全体の課題となる中、島根県では、「人口減少に打ち勝ち、笑顔で暮らせる島根」を目指す「島根創生計画」が、今年度から本格実施されます。その実現には、島根が好きで、島根に暮らす未来を考え、島根で将来の自分の役割に思いを馳せる子どもたちを増やすことが大切です。このような人材の育成には教育の果たすべき役割が非常に重要であり、寄せられる期待はとても大きなものとなっています。

　このような状況の中、管理職としてこれから学校経営に取り組んでいかれる皆様に、２つのことをお話ししたいと思います。

　まず、３月に策定された「しまね教育魅力化ビジョン」、特にその「基本理念」についてです。

　基本理念は、「ふるさと島根を学びの原点に未来にはばたく心豊かな人づくり」です。子どもたちが自身の生まれ育った地域との確かな絆を原点として主体的な学びを立ち上げようとする島根県の「教育の魅力化」の取組は、その教育上の意義や先進性を「ふるさと島根を学びの原点にもつ」という視点からとらえることが重要である、との考えから「原点」という言葉を用いました。「心の中にはいつも島根がある、島根での学びがある。そこが出発点だ。」という思いが「原点」という言葉に集約されていると考えます。

　ふるさと島根での学びを自らの原点にもつ人は、県内に留まり島根の未来を創る人や、どこにいても島根を想う人、あるいは世界を島根に呼び込もうとする心豊かな人に育ちます。

　子どもたちが、島根に育ち学んだ自信を胸に、自らの人生と未来を切り拓くことができるよう、子どもたちの夢や希望を実現させたいという思いを、各学校の教育に関わるすべての人が共有していただきたいと考えます。そして、これまで取り組んできた「ふるさと教育」「地域課題解決型学習」「キャリア教育」そして「教育の魅力化」の考え方、実践の方向性を整理、明確化した新しい「しまね教育魅力化ビジョン」をよく理解、消化され、魅力ある学校づくりにご尽力いただきたいと思います。

　次に、教職員の働き方改革についてです。学校が抱える課題が複雑化・多様化する中、教職員の長時間勤務は看過できない状況であり、解決すべき喫緊の課題となっています。そこで、島根県教育委員会では、「教職員の働き方改革プラン」を策定し、昨年度からこのプランの実現を目指し努力しているところです。各学校においては、子どもたちと向き合う時間を確保し、きめ細かな指導と授業の質の向上を目指し、長時間勤務の是正とワーク・ライフ・バランスの適正化に努めていただきたいと思います。そのためには、管理職が働き方改革を進めるための舵取り役になって、目指す方向に教職員のベクトルをそろえること、そして教職員一人一人が自らの働き方を見直し、できることから一つ一つ着実に進めていくことが重要となります。

　教職員一人一人の活力が、子どもたちに魅力のある教育を提供する力の源泉になります。「働き方改革」は、難しい課題ではありますが、取り組む意義は極めて大きいものです。

　保護者や地域のご理解とご協力を得ながら、「生き生きと働きやすい職場づくり」に取り組んでいただきたいと考えています。また、同時に、心に悩みを抱える教職員に寄り添うとともに、教職員の悩みや問題を相談できる校内体制づくりにも努めていただきたいと思います。県教育委員会といたしましても、このような取組に対しできる限りの支援を行ってまいります。

　全ての教職員一人一人が明るく活気にあふれ、教育者としての自覚を高め、決しておごることなく、高い志と高潔な行動により児童生徒・保護者・地域住民の方と向き合っていただきたいと強く願うものであります。

　皆様には、管理職として、保護者や地域の方々と連携しながら、学校の管理・運営、人材育成などの円滑な学校運営を託すことになります。すべての教職員との意思疎通に努めていただき、組織力・総合力が発揮される学校、また教職員が悩みを相談し合えるような温かい学校となるよう努めてください。また、今年度から新学習指導要領が小学校で全面実施となり、これまで以上に縦の連携が求められます。まずはここにおられる管理職の皆様からしっかり連携されることを期待します。

　おわりに、遠隔の地に赴任される方もおられますが、どうかご自身の健康には十分留意され、児童生徒や保護者、そして地域から信頼される学校づくりのために、大いに活躍されますよう祈念いたしまして、訓辞といたします。

　令和２年４月１日

　　島根県教育委員会教育長　新田英夫