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教育長メッセージ:教育庁仕事始め式教育長あいさつ

 新年、あけましておめでとうございます。

 皆さんには、心新たに清々しい思いで、仕事始めの日を迎えられたことと思います。本年も、なにとぞよろしくお願いします。

 

 新しい年の教育庁の特徴的な動きとしては、多くのプランの策定、そしてそれぞれのプランの実行に向けたスタートを切ることが挙げられると思います。「教職員の働き方改革プラン」や「部活動の在り方に関する方針」などの、いわば「課題解決型のプラン」、また、「県立高校魅力化ビジョン」や「特別支援教育の在り方」などの「望ましい姿へのプラン」、さらには、「本県教育のビジョン」や「島根県総合戦略」などの「オールしまねのプラン」に取り組みます。県教育委員会として、関係の方々と共に展望をしっかりと見定めて策定し、これを基に、我々の考えや思いを県民の皆様にしっかりとお伝えし、ご理解とご協力をいただきながら実践する、という姿勢で進めていく必要があるものと考えています。

 

 仕事始めにあたり、この「私たちが考えていること、目指すことを県民の皆様によく理解していただく」という点について、様々な計画の中でも重要な位置を占める「教育の魅力化」を例にして、お話したいと思います。

 現在、策定作業を進めている「県立高校魅力化ビジョン」の中でも、「教育の魅力化」について様々な説明を加えていますが、この方向性は、新しい学習指導要領が掲げる、たとえば「育成を目指す資質・能力の3つの柱」や「社会に開かれた教育課程」などと非常に重なる部分が多く、高い親和性を持ったものであると思います。言い換えるならば、島根で進める「教育の魅力化」は、「島根の強みを活かして実践する新学習指導要領」ということになるのだろうと思います。たとえば、島根の様々な資源を活用したり、社会教育との連携を図りながら、地域社会や働くことへの理解を深め、より良い社会を創る力と、自分の夢の実現に挑戦していく力を育成する、という教育が考えられます。

 

 皆さんは、「島根の教育の魅力化がよくわからない」という方がおられれば、どのように説明されるでしょうか。特に、教育の魅力化の重要な一面である「地域」「地域社会」と連携・協働することの意義、子どもたちの成長にとっての教育上の意味について、どう答えられるでしょうか。

 私は、この点は、非常に重要であると考えます。たとえば、「地方創生、人口減少対策と教育の魅力化は、どのような関係なのか」、「地域の将来を担う人材の育成なのか、世界を見据えて将来を担う人材の育成なのか」。こうした問いに、私たちは、わかりやすく丁寧に答えていくことが求められると思います。島根県教育委員会としての共通理解の上に、質問者の問いかけに合わせて、各自が自分なりの言葉や表現で答えていくことも重要であろうと思います。

 「地域社会」は、島根県であったり、子どもたちが住む市町村であったりするのでしょうが、島根の教育の魅力化で、この「地域」にこだわることがいかに重要であるか。私は、一例を挙げるとすれば、次のような説明方法があると考えています。

 

 「同心円を思い描いてください。子供たち一人一人が自分を中心点とし、木の年輪のような図形を描きながら、自分が経験したものや学習したものを蓄えていくことをイメージしてください。」

 小さな子どもが、親や身近な人から本の読み聞かせをしてもらっているとします。本を読んでもらっている、自分が大切にされていると感じる直接体験と、本の中のストーリーや絵から受け取る好ましい間接体験(追体験)の双方が、この子にとってどんなに大切なことだろうと思います。生まれて初めて描く、とても小さいけれど、とても大切な1つ目の円になるのかもしれません。

 また、ある子どもは、大人の仕事ぶりを見て魂が揺さぶられるような感銘を受け、自分もあのような仕事がしたいと思い、一生懸命に打ち込むものを見つけるかもしれません。

 重要なのは、こうした直接体験と望ましい間接体験ではないでしょうか。

 過日、優れた活動を行っている少年団体を表彰しました。石見神楽やボランティア活動などを行っている4つの団体の子どもたちは、自分たちの活動が人々に喜ばれていること、地域の役に立っていることを、うれしそうに、そして少し誇らしそうに生き生きと話してくれました。

 

 こうした貴重な直接体験は、遠隔の地にわざわざ出かけて得る、といったことは稀であり、やはり住んでいる地域の優れた資源で身近に触れることが、とても大事なのだと思います。

 こういうふうに考えると、新しい学習指導要領と地域連携の親和性も理解できるのではないでしょうか。世の中が激しく変化し、予測が困難な時代にあり、情報もあふれています。子どもたちの同心円の中では、インターネットやマスメディアからの刺激的な情報が多くのエリアを占めるようになるでしょう。しかし、こうした現実感を伴わない、子供自身が決して当事者にならない情報を出発点として発想を膨らませたり、主体的・対話的で深い学びにつなげていくことは至難のことではないでしょうか。

 「地域」というキーワードは、子どもたち一人一人が、当事者であり実践者であること、温かく見守られ大切にされる環境の中で、また、地域から多くの期待を寄せられる中で、自己肯定感を持ちながら、主体的・対話的で深い学びの「素」を豊富に身につけることを意味するのではないでしょうか。

 将来を担う子どもたちの同心円は、我々の世代の同心円よりもはるかに大きく重層的に広げなければならないでしょう。島根の子どもたちには、円の中心から少しずつ半径を広げながら、好ましい直接体験と好ましい間接体験でできた円をしっかりと重ねていってほしいと思います。

 

 こう考えると、子どもたちにとって、自分の住む地域は、世界中で唯一の特別な地域となるでしょう。読み聞かせをしてくれた幼児の頃の記憶と同じように、人生の中で忘れることのできない特別なものに「地域」が位置づけられるのだと思います。

 こうした教育は、島根に貢献したいと思う子どもたち、自分の意思で島根に残りたいと思う子どもたちを増やすことにつながるでしょう。島根との関係を持ち続けたいという子どもも増やすことにつながるでしょう。

 島根の子どもたちには、自分の同心円のできるだけたくさんの部分を、住んでいる島根という地域での好ましい体験で満たしてほしいと思います。島根の教育の魅力化は、何よりも子どもたちにとっての魅力化なのであり、そのことが、子どもたち一人一人の豊かで幸福な人生のためになる、ということだと思います。

 

 「子どもたちに、自らの人生と地域や社会の未来を切り拓く力を育むこと」と、「この地域で学びたい、住みたい、子どもを育てたい、と思えるような魅力ある地域づくりを推進すること」の好循環を生み出すよう、私たちは、県教育委員会の果たすべき役割を見据え、実行していくことが重要であると考えます。

 

 さて、島根の教育の魅力化のほかにも、県民の皆様によく理解していただきたいテーマがたくさんあります。是非、「このように説明したい・お伝えしたい」というものを「チーム教育庁」で考え、発信していきたいと思います。

 

 平成から次の時代に向けた新しい年の業務が始まります。健康に十分に留意いただき、志を一つにして、子どもたちのための島根らしい教育を推進していきましょう。


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