教育長訓辞:平成30年度小・中学校長辞令交付式
ただいま、市町村立小中学校の校長として、採用、昇任された皆さんに辞令を交付いたしました。心からお祝い申し上げます。
さて、人口減少問題が日本全体の課題となる中、島根県は、豊かな自然、古き良き文化・歴史、特色ある地域資源、温かい地域社会、そして勤勉な県民性など、島根ならではの強みを生かして、活力ある地域づくりに取り組んでいます。
その中で、地域の将来を担う人材の育成が島根県政の重要な政策課題となっており、教育に寄せる県民の期待はとても大きなものとなっています。
島根の子どもたちにどうやって本物の「生きる力」を身に付けてもらうのか。そして、学校の教育活動を地域社会の活力へとつなげていくためにはどうすればよいのか。今や教育には、子どもの成長という元来の目的に加え、地域社会への貢献という役割も求められるようになっているのです。
このような、教育に求められる大きく二つの役割を積極的に担っていこうという考え方に立って、島根県教育委員会は、「教育の魅力化」という取り組みを進めています。
本日は、この「教育の魅力化」の考え方についてお話します。
最初に、島根の子どもたちに身に付けてもらいたい力とは何か、という学力観について述べます。
島根県教育委員会は、これを「主体的に課題を見つけ、様々な他者と協働しながら、定まった答のない課題にも粘り強く向かっていく力」と表現しています。改正学校教育法によって提起された、「学力の3要素」をバランスよく育むとする、新たな学力観に立脚した考え方です。
しかし、いまだに「知識・技能」の習得を重視する狭い学力観に捕らわれているかのような感覚、そして、狭い学力観のもとであたかも競争の中に置かれているかのような「煽られ感」が、一部の教育現場に残されているように感じられるのはとても残念なことです。皆さんには、正しい学力観を共有したうえで、「思考力・判断力・表現力」や学びに向かう「意欲・態度」を育成するための教育の方法論の具現化に向けて、果敢に挑戦していただきたいと思います。
次に、島根らしい教育の魅力とは何か、について述べます。
それは、例えば、障がいがあったり困難を抱えていたりすることも含めて、多様な個性のある児童生徒一人一人と丁寧に向き合い、細やかな配慮のもとで大切に育てることではないでしょうか。
また、子どもたち一人一人の人生の進路選択に丁寧に立ち会い、それぞれの自己実現を精一杯支援していくことではないでしょうか。
その際に大切なのは、理念を地域社会と共有し、学校・家庭・地域の連携の中で実現することです。皆さんの様々な取り組みにより、学校が、学校だけに閉じた自己完結的な存在から、地域社会との連携・協働の中で子どもたちの力を伸ばしていこうとする存在へと進化していくことを期待しています。
「より良い学校教育を通して、より良い地域社会を創る」
「より良い地域社会が、よりよい学校教育を創る」
これらのキーワードを念頭に、学校経営に邁進していただきたいと考えます。
最後に、教職員の健康管理について、お話しします。
現在、多くの先生方が、多忙感を感じながらも、目の前の児童生徒の成長を励みにしながら、日々の指導に当たっておられます。社会全体で「働き方改革」を進めようとする中、教職員の多忙・多忙感の解消を図ることは、きわめて重要な課題です。県教育委員会では、「働き方改革」と「教育の質の向上」という二つの課題を一体的に捉え、その両立を図るための施策の具現化を進めてまいります。各学校におかれましても、教職員の健康管理や職場環境改善のため、校内衛生委員会による組織的対応や、評価システムによる面接、日常的・継続的な支援など、様々な取り組みを積極的に進めていただきたいと切に願うものであります。
また、同時に、心に悩みを抱える教職員に寄り添うとともに、教職員の悩みや問題を相談できる校内体制づくりに努めていただきたいと思います。
全ての教職員一人一人が明るく活気にあふれ、教育者としての自覚を高め、決しておごることなく、高い志と高潔な行動により児童生徒・保護者・地域住民の方と向き合っていただきたいと強く願うものであります。
おわりに、遠隔の地に赴任される方もおられますが、どうか健康には十分留意され、大いに活躍されますよう祈念いたしまして、訓辞といたします。
平成30年4月2日
島根県教育委員会教育長
鴨木朗
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島根県教育委員会
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