教育長訓辞:平成30年度新規採用教職員辞令交付式
ただいま辞令を交付した209名の皆さんは、本日、島根県の教職員として第一歩を踏み出されました。心からお喜び申し上げます。
これからは、島根の将来を担う子どもたちの教育という重要な使命に向けて、着実に歩みを進めていただきたいと思います。
さて、人口減少問題が日本全体の課題となる中、島根県は、豊かな自然、古き良き文化・歴史、特色ある地域資源、温かい地域社会、そして勤勉な県民性など、島根ならではの強みを生かして活力ある地域づくりに取り組んでいます。
魅力ある就業の機会を創出し、子育てに適した環境を生かして、若い世代の人たちの結婚・出産・子育ての希望が叶えられる社会をつくり、そして島根に定着、回帰・流入する人の流れを拡大すること。この目標の達成に向け、県民を挙げた取り組みを進めることによって、島根の将来を切り開こうとしています。
その中で、地域の将来を担う人材の育成が、島根県政の重要な政策課題となっており、教育に寄せる県民の期待はとても大きなものとなってきています。
島根の子どもたちにどうやって本物の「生きる力」を身につけてもらうのか。そして、学校の教育活動を地域社会の活力へとつなげていくためにはどうすればよいのか。今や教育には、子どもの成長という元来の目的に加えて、地域社会への貢献という役割も求められるようになっています。
このような、教育に求められる大きく二つの役割を積極的に担っていこうという考え方に立って、島根県教育委員会は、「教育の魅力化」という取り組みを進めています。
本日は、新しく教職員になられた皆さんへの激励の気持ちを込めて、「教育の魅力化」という考え方の要点を紹介してみたいと思います。
一点目は、学校の存在をどう考えるか、についてです。
学校は、もちろん教育の場であることが基本ですが、学校だけに閉じた自己完結的な存在であってはならないと思います。
地域社会に開かれ、地域社会との連携の中で子どもたちの力を伸ばしていこうとする存在へと進化していくことが求められます。まずこのことを皆さんの頭の片隅に置いてもらいたいと思います。
二点目は、島根の子どもたちに身に付けてもらいたい力とは何か、という「学力観」についてです。
それは、これからの変化の激しい社会の中で生き抜いていく力、すなわち「主体的に課題を見つけ、様々な他者と協働しながら、定まった答えのない課題にも粘り強く向かっていく力」のことであると考えます。
このような「学力観」に基づき、具体的には、論理的思考力、コミュニケーション力や感性・情緒といった「生きる力」を構成する資質・能力を、島根の子どもたちに身につけてもらいたいと考えています。
また、この「学力観」は、言語活動や体験活動の充実を柱とする現行の学習指導要領や、「主体的・対話的で深い学び」を目指す次期学習指導要領と同じ方向性を持つものです。
学校と県・市町村の教育委員会とが、このような「学力観」を共有した上で、日々の教育活動を実践することが大切であると考えます。
三点目は、島根の子どもたちにそうした力を身に付けてもらうために、学校はどう取り組めばよいか、についてです。
先ほど述べた「学力観」のもとで島根の子どもたちの力を育んでいくため、各学校では、「授業の質の向上」と「家庭学習の習慣づくり」に重点を置いた取り組みを進めています。
その際、この取り組みを教職員の個人的な力量という課題として位置付けるのではなく、学校全体の課題と位置付けた上で、「チーム学校」として組織的に取り組んでいくことが大切です。
そして、平素の教育活動の中で子どもたちの力を把握することに加え、客観的なデータに基づく分析・検証が重要であり、例えば学力調査を活用して組織的にPDCAサイクルを回していくことが大切であると考えています。
四点目は、島根らしい教育の魅力とは何か、についてです。
それは、例えば、障がいがあったり困難を抱えていたりすることも含めて、多様な個性のある児童生徒一人ひとりと丁寧に向き合い、細やかな配慮のもとで大切に育てることではないでしょうか。また、子どもたち一人ひとりの人生の進路選択に丁寧に立ち会い、それぞれの自己実現を精一杯支援していくことではないでしょうか。そして、そのような子どもを育む営みを学校だけで抱え込んでしまうのではなく、地域社会全体で理念を共有し、学校・家庭・地域の連携の中で実現することが、島根ならではの教育の魅力になるのではないかと考えています。
五点目は、教育と地域づくりとの関係についてです。
これまで述べてきたような「教育の魅力化」の考え方を教育に関係する人々が共有し、地域社会を挙げて、そして小学校、中学校、高校、特別支援学校を貫いて一体的・系統的な教育活動を心がけていけば、それは「教育の魅力」にとどまらず、若い世代の人たちに「ここで生きていきたい」と選択してもらえる「地域の魅力」にもつながっていくのではないかと考えます。
したがって、「教育の魅力化」を進めることは、島根ならではの強みを生かす地域づくりの、柱の一つとなるのではないかと考えています。
以上、島根県教育委員会が進めている「教育の魅力化」という考え方の要点を紹介しましたが、新しく教職員になられた皆さんは、まずは、目の前の子どものことに全力を傾注することで精一杯だと思います。
それでよいと思いますし、実は、目の前の子ども一人ひとりにとって魅力的な教育活動を地道に積み重ねていくことが、教育に求められる二つの大きな役割を果たしていくことにつながるのだと思います。
最後に、教職員となる皆さんの健康管理についてお話したいと思います。
私は、「教職員の皆さんのワーク・ライフ・バランスを図っていくことが、島根の子どもたちに質の高い教育を提供するための基盤である」と考えています。
島根県教育委員会は、この基本認識を市町村教育委員会や学校の管理職と共有しながら、すべての教職員の方々の健康管理に向けて精一杯努力していく考えです。
これから教育の現場に立たれる皆さんは、新しい職場で仕事と生活の調和を図りながら、心身ともに健康で、いきいきと子どもたちに正面から向き合ってもらいたいと思います。
皆さんは、これから県内の様々な地域へ赴任していかれますが、島根県全体をふるさとと捉え、ふるさと島根の教育を教職員全員のチーム力で担っていく、そのような気概を持ち続けていただきたいと願っています。
どうか健康にはくれぐれも留意され、自己研鑽に努めながら、これからの長い教職員生活で存分に力を発揮され、自己実現を図っていかれることを期待しまして、訓辞といたします。
平成30年4月2日
島根県教育委員会教育長
鴨木朗
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