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教育長メッセージ:平成28年を振り返って

 平成28年の仕事納めに当たり、ご挨拶申し上げます。

 私は、今年3月22日、教育長着任式を開いてもらった時のことを今も鮮明に覚えています。
私は、皆さんの前で、幾つかの話をしました。

 その一つは、地方教育行政にとっての教育委員会制度の意義。そして「レイマンコントロール」の意味についてでした。
二点目は、そもそも教育委員会は学校現場を支えるために存在しているという教育行政の原点。
そして三点目は、教育委員会事務局の中の議論を大切にしたい、大いに議論しようということでした。学校現場から学校を支える側に回ってもらっている教職員の皆さんと丁寧な議論を繰り返しながら、教育委員会事務局の中の認識の共有化を図りたい、現場を支える側にある我々自身のベクトルを合わせていくことが大切である、という話をしました。

 その時、私は、次のようなことを考えていました。
丁寧な議論を通じて我々自身のベクトルが揃ってくれば、島根県教育委員会の考える大きな方向性を、学校現場に対して、わかりやすく明確に伝えていくことができるようになる。
そうすれば、学校現場と教育委員会とが、お互いを信頼しながら、双方向のコミュニケーションを通じてベクトルを合わせやすくなり、島根の子どもたちのために共に働いていくことができる。
私は、そのような希望を抱いて、微力ながら教育長の職責を果たしていこうと決意しました。

 その日から仕事納めに至るまで、皆さんとの議論によって見えてきたものが幾つもあります。一年間を振り返る意味合いも込めて、代表的なものを挙げてみたいと思います。

 一点目は、学校の存在をどう考えるか。
学校の在り方は、学校教育のみに閉じた自己完結的な発想で考えるのではなく、地域の在り方や地域振興の方向性の中に位置付けて考えていく必要があると思います。

 二点目は、島根の子どもたちに身に付けてもらいたい学力とは何か。
それは、狭義の「受験学力」のようなものを指すわけではなく、これからの変化の激しい社会を生き抜いていく力のことです。すなわち、主体的に課題を見つけ、様々な他者と協働しながら、答えのない課題に粘り強く向かっていく力。具体的には、論理的思考力、コミュニケーション力や感性・情緒といった、「生きる力」を構成する重要な力を島根の子どもたちに身に付けてもらいたい。これが我々の考える学力観そのものだと思います。

 三点目は、島根の子どもたちにそうした力を身に付けてもらうために学校はどうあればよいのか。
全国学力・学習状況調査や島根県学力調査は、決して狭義の「受験学力」を競わせるようなことを煽るために行っているわけではありません。調査結果の分析に基づき、学校現場において、授業改善や児童生徒の個別指導に生かしてもらうために、そして、このPDCAサイクルを教員一人ひとりの個人プレーでなく、「チーム学校」としての組織的な取り組みとして進めてもらうために、我々は、学校現場に対して助言していく必要があると思います。

 四点目は、島根らしい教育の魅力とは何か。
それは、例えば、障がいがあったり困難を抱えていたりすることも含めて、多様な個性の広がりのある児童生徒一人ひとりと丁寧に向き合い、細やかな配慮のもとで大切に育てることではないでしょうか。そして、そのような子どもの育ちを学校だけで抱え込んでしまうのではなく、地域社会全体で教育理念を共有し、学校・家庭・地域の連携の中で実践することが、島根ならではの教育の魅力になるのではないかと思います。

 五点目は、「地方創生」を進める上での教育の役割は何か。
島根ならではの教育の魅力を明確にし、地域を挙げて、校種を越えて実践していけば、それは教育という領域にとどまらず、移住・定住対策を進める上での「地域の魅力」になるのではないでしょうか。すなわち「教育の魅力化」は、「地方創生」を進めるための重要な柱の一つになると思います。

 以上、代表的な論点を5つ掲げましたが、これまで曖昧だったり、人によって考え方が違っていた論点についても、議論の積み重ねを通じて、共通認識が生まれてきたように感じます。また、教育委員会の中で共有された認識や考え方は、例えば、県議会の答弁や、様々な会議でのメッセージというような形で、対外的に発信できるようになってきました。このことは、島根県教育委員会にとって、とても有意義な変化であったと思います。

 議論を重ねて共通認識を得ようとすることは、大きなエネルギーを要する、いわば「産みの苦しみ」に相当するような営みであると思います。皆さんには、この苦労から逃げることなく誠実に取り組んでもらいました。心から敬意と感謝の意を表したいと思います。

 このほかにも、この一年間を振り返るとき、忘れてはならないことが幾つもあります。
「出雲國たたら風土記」の日本遺産認定。
「情熱疾走中国総体」の開催。
スポーツや文化芸術活動における島根の児童生徒の大活躍。
「食の縁結び甲子園全国大会」の開催。
「しまね教育の日」に開催した「教育魅力化キックオフ・フォーラム」の興奮。
「学校魅力化プラットフォーム」の提案した地域創生プランが全国最優秀賞に。
などなど、多くの嬉しい出来事がありました。

 他方、県内の学校現場では、悲しく痛ましい事故や、教職員による不祥事もありました。二度と繰り返すことのないよう、深く反省し、胸に刻みつけなければなりません。

 平成28年は、私自身にとって大きな変化の年でした。島根県教育委員会にとっても転換期だったと振り返ってよいのかもしれません。
その年も、間もなく過ぎ去り、新たな年が来ようとしています。
さて、平成29年は、どんな年になるのでしょうか。

 その前に、皆さんには、この一年間のご苦労をゆっくり癒していただきたいと思います。そして、ご家族の皆様と素敵な年末年始をお過ごしください。
それでは、皆さん、佳いお年をお迎えください。


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