教育長メッセージ:平成28年度第2回県立学校長・事務長会議
前回の県立学校長・事務長会議でお話しをしてから7か月が経過しました。
今、県教育委員会では、平成29年度の予算や教職員定数の獲得に向けて、関係部署との折衝を始めたところです。前回述べた「そもそも教育委員会は、学校現場を支えるために存在している」という原点に立ち返りながら、一歩でも二歩でも現場をより良く支えられるよう努力してまいります。
さて、本日は、以下の5点について県立学校の校長・事務長の皆様にお伝えしたいと思います。
1点目は、教職員の健康管理についてです。
前回もお話ししましたが、「教職員のワーク・ライフ・バランスを図っていくことが大切であり、それが、島根の子どもたちに質の高い教育を提供する基盤になる」という基本認識を、あらためて確認し、共有したいと思います。
今年3月、教員を対象とする勤務実態調査を実施しましたが、その回答を集計した結果、多忙感を感じている先生が全体の約84%に及び、県立学校では、部活動の指導や校務分掌に係る業務に負担感を感じている方が多いという実態が浮き彫りになりました。
多くの先生が、このような厳しい状況の中、目の前の子どもたちの成長する姿を励みにしながら日々の指導に当たっておられることに、頭が下がります。
県教育委員会は、こうした状況の改善に向けて、地道な取組を積み重ねていく必要があると考えており、学校における事務負担の軽減や部活動の在り方などについて、今後具体的に検討していく考えです。また、長時間勤務者に対する医師の面接指導をより受け易くするための制度運用についても、学校の意見をお聞きしながら検討したいと考えています。
一方、多忙・多忙感の原因は、それぞれの学校が抱える課題によって影響を受ける側面もあるため、実効性のある対策を進めるためには、各学校において実態分析に基づいた検討を行っていただくことも大切です。
勤務実態調査の集計結果については、県全体の状況とそれぞれの学校の状況を比較できる形にまとめ、各学校にフィードバックしています。
各学校においては、これまで示してきた「教育職員の時間外勤務の縮減に向けての指針」に基づく粘り強い取組に加えて、今年度から実施されるストレスチェックや、校内衛生委員会等による組織的対応、評価システムを通じて行われる教員との面談や支援など様々な手法を工夫しながら、教職員の健康管理と職場環境の改善に精一杯努力していただきたいと切に願うものであります。
冒頭述べた教職員のワーク・ライフ・バランスについての基本認識を、学校と教育委員会が共有しながら、教職員の健康管理を進めていきたいと思います。ご理解とご協力をお願いします。
2点目は、「教育の魅力化」についてです。
これまで離島・中山間地域の8つの高等学校において魅力化・活性化事業に取り組み、県外からの入学生増加、学校と地域との交流、学校・地域の活性化など様々な成果が得られています。
また、「地域の拠点としての学校を地域が協力して支えていく」という考え方が、これまで地域と距離感のあった高等学校に対しても定着しつつあります。
こうした成果を踏まえ、今後は、意欲のある市町村とともに、校種を超えた取組を広げながら、「教育の魅力化」を推進していきたいと考えています。
島根には、豊かな自然、歴史・伝統、文化があり、子どもたちを温かく支え育てようとする地域社会が今なお残されています。このような島根ならではの地域資源を活かし、子どもにとって魅力ある教育を実践することができれば、それは、若い世代が、移住・定住の地を選択する際の判断基準である「地域の魅力」になり得ると思います。
「教育の魅力化」は、移住・定住対策を進める上で、「地域の魅力」を構成する重要な要素になる。
こういう考え方を持つ市町村が増えてきています。県も、地方創生や中山間地域の活性化を推進する立場から、来年度の重点施策の一つに「教育の魅力化」を位置付けられないか検討を始めています。
このような「教育の魅力化」をめぐる県・市町村の動向に留意していただき、例えば地元市町村から相談や依頼等があれば、積極的に対応していただきたいと思います。
3点目は、学力の育成についてです。
島根の児童生徒の学力に関して、全国学力・学習状況調査の結果から見ると、小中学校での学習指導に幾つかの課題が浮かび上がっています。
県教育委員会では、高校入試や大学進学状況も含めて学力の状況を分析しましたが、小中学校から高等学校までを通じて、ひとりひとりの児童生徒が持つ能力を伸ばしきる指導や、家庭での学習習慣を身につけさせる指導において、基本的な課題があることがわかってきました。
家庭や地域との連携・協力といった観点も含めて幅広い対策を進める必要がありますが、学校においてまず求められることは、「第2期しまね教育ビジョン21」にもあるように、児童生徒が主体的に学習に取り組む意欲や態度といった「学ぶ力」を育成することだと考えます。
そのため、日常の授業においては、従来からの指導法にとらわれず、子どもたちの知的好奇心や学習意欲が高まるよう、主体的・能動的な学びという視点に立った授業改善が求められます。
文部科学省では、次期学習指導要領の改訂に向けた作業が進められており、その中で、子どもたちの学びの質を高めていくために「主体的・対話的で深い学び」いわゆるアクティブラーニングの視点を取り入れた授業改善が示されています。こうした新しい学びや指導法に対する理解を深め、日々の授業の質を高めていく取組を学校において着実に進めていただくことが重要になると考えます。
県教育委員会では、こうした学習指導要領改定の趣旨や考え方を先生が理解し、その実践に取り組んでいくことができるようにしていかなければならないと考えています。
各学校においては、校内研修をはじめとする様々な研修機会を活用しながら、改訂の趣旨や考え方についてのしっかりとした理解に基づく授業改善が進められるよう、組織的な取組をお願いします。
4点目は、特別支援教育の推進についてです。
特別支援学校においては、児童生徒数の増加や障がいの多様化・重度重複化により、各学校における専門性の向上に一層努めていく必要があります。
そのため、県教育委員会として、児童生徒の教育的ニーズにしっかりと対応できる体制づくりのための施策を実施したいと考えており。来年度に向けて、医療的ケアの必要な児童生徒への対応、特別支援学校の「センター的機能」の充実に向けた体制整備等について検討を進めています。
また、高等学校においても、特別な支援を必要とする生徒が増加しています。
文部科学省も制度化を検討していますが、県教育委員会としては、全国的にも先進的な取組として注目されている高等学校の通級指導について、その体制整備に向けた支援を進めたいと考えています。
5点目は、「今後の県立高校の在り方検討委員会」についてです。
昨年度、県の執行部と議会との間で、地方創生の「総合戦略」や「中山間地域活性化計画」をめぐって厳しい議論が交わされました。その議論を反映して策定された計画の課題意識や施策の方向性を踏まえると、今後の高校の在り方は、学校教育のみに閉じた自己完結的な発想による検討であっては、何も見えてこないと考えます。
人口減少問題に対処するため、県内のそれぞれの地域は、いわば生き残りをかけて地方創生の取組を進めようとしており、県は、市町村に対する積極的な提案を行いながら、市町村と連携してそれぞれの地域を支えていこうとしています。
そうした中にあって、県立高校の在り方の検討には、特に次のような観点が重要になります。
(1)中山間地域を支えるための重要戦略である「小さな拠点づくり」の一環として、中山間地域における教育機能をどのように確保していくのか。
(2)移住・定住対策を進めるための、地域の魅力づくりの重要な要素である「教育の魅力化」をどのように進めるのか。
(3)技術革新や国際環境の変化によって社会の先行きが見通しにくくなる中、島根の子どもたちにどうやって「生き抜いていく力」を身につけさせるのか。また、県内産業や医療・福祉等が求める人材ニーズにどう対応していくのか。
「今後の県立高校の在り方検討委員会」は、この3つの観点を重視しながら、時間をかけて丁寧に検討を進めており、例えば統廃合基準というような「器」の議論を先行させるのでなく、長期的視点に立って高校教育の大局的な方向性を見出そうという議論の進め方をしておられます。
県教育委員会としては、「検討委員会」の答申の時期がいつ頃になるのか、どういう内容になるのか、予断を持つことなく、今後本格化する議論の推移をじっくり見守りたいと考えています。
以上5点についてお話ししました。
島根の教育をめぐっては、この他にも、いじめや不登校の問題、今年度実施する高校入学者選抜制度の変更、教職員の服務規律の確保など、課題は数多くありますが、これらについては、後ほど所管課長から説明します。
今回も、お願いや期待ばかり申し上げましたが、学校と教育委員会が双方向のコミュニケーションを図りながら、知恵を出し合って、島根の子どもたちのために働いていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
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