教育長訓辞〜平成23年度新規採用教職員辞令交付式
ただいま、辞令を交付した179名の皆さんは、念願がかない、晴れて島根県教職員として教育の場に勤務されることになりました。心からお慶び申し上げます。
しかし、皆さんの目標は、教職員として採用されることではなく、実際に教育に携わり、島根の将来を担う子どもたちを育てることであります。それが今日から始まることになります。
子どもを学校に託す保護者の願いや地域の期待がこめられていることを十分に認識し、教職員としての使命感と、社会全体への広い視野と教育への熱い情熱を持ち、不断の自己研さんに努めていただきたいと思います。
また、皆さんは、教職員であると同時に、地域社会を担う一員であります。県民の方から時折、教職員はもっと地域にとけこんでほしい、地域をリードしてほしい、こうした意見をいただくことがあります。
皆さんには、これから様々な特徴を持ち、課題も抱える多くの児童・生徒と向き合う学校生活が待っていますが、その教育活動を地域や家庭と一体となって進めるためにも、是非、地域から信頼される教職員になっていただきたいと思います。そして、地域のリーダーとして、様々な分野で活躍していただくことを期待しています。
さて、子どもたちを取り巻く社会環境でありますが、携帯電話やインターネットの普及等により大変便利な時代になった反面、その弊害も指摘されており、また、効率優先で自分さえよければといった風潮が広がり、他人への思いやり、いたわりの気持ちなどが薄れてきたと感じています。
こうした環境は、子どもたちの心身の発達等にも影響を与え、いじめや不登校、学力低下など様々な教育問題につながっているのではないかと危惧しています。
また、児童・生徒の減少による学校の統廃合といった課題や、厳しい経済状況の中での就職難など、教育に携わる皆さん方を待ちうける環境は、必ずしも平穏なものではありません。
皆さん方には、こうした教育を巡る環境に十分に留意して、教育に当たってほしいと思います。
私は教育長に就任し一年が過ぎましたが、これまで、「確かな学力・豊かな心・健やかな体」いわゆる「知・徳・体」のバランスのとれた人格形成を目指し、
(1)一人一人に応じて、知る喜びや学ぶ意欲、運動への親しみを感じさせ、子どもたちが持っている力、可能性を引き出す教育
(2)子どもたちに集団の中で決まりを理解させ、役割と責任を自覚し、協調性や思いやりのある行動ができるようにする教育
(3)体験活動等を通して、ふるさと島根の歴史、文化、自然を実感できる教育
これらの実現を目標としてきました。
こうした考えのもとで、現在、力を入れて取り組んでいることを紹介し、また、皆さん方へのお願いをしたいと思います。
まず、学力の向上への取り組みです。小中学校では、単なる知識の詰め込みではなく、基礎・基本の習得の上で、何よりも自ら学ぶ意欲や力を育ててほしいと思います。そのことが、より高いレベルでの学力の向上をもたらし、理数教育の充実とも併せて、医師や研究技術者等島根を支える人材の育成につながることを期待しています。
次に、あいさつ、礼儀、規範意識や思いやりの心などを子どもだけでなく子育て世代も含めて身につけてもらうために、昨年度から「ふるまい向上プロジェクト」事業を進めています。皆さんもこの取り組みのロゴや標語を見る機会があったと思いますが、今後一層の浸透を図っていただきたいと願っています。
また、子どもの読書活動を推進するため、学校図書館の機能の充実や教育活動への活用に向けた取り組みを進めています。読書活動を通じて、子どもたちの知性や感性を高め、豊かな創造力や思考力、表現力を養っていきたいと考えています。
「ふるさと教育」では、地域の人々に積極的に学校教育に関わっていただき、その優れた知恵や技術、地域の自然、歴史、文化などを子どもたちに伝えたいと考えています。来年は、島根の神話が数多く取り上げられている「古事記」が編さんされてから1300年を迎えます。これを契機として、すばらしい歴史と文化を持つ島根に愛着と誇りを持てる人材の育成に努めてもらいたいと思います。
また、確かな学力や豊かな心を培う上で、何よりも大切なのは、健やかな体であります。この島根の豊かな自然など恵まれた環境を生かし、子どもたちがもっと運動やスポーツに親しむことができるよう、創意工夫をこらして積極的に取り組んでいきたいと考えています。
最近島根の子どもたちの活躍が目立っています。昨年度は、国民体育大会レスリングで隠岐養護学校の宇野信之君が優勝、全国中学校体育大会においては、剣道、柔道を始め史上最多となる20種目で入賞を果たし、文化面では、飯南高校の放送、三刀屋高校の演劇、出雲一中の吹奏楽、合唱などが全国で優秀な成績を収め、また、出雲商業高校では「ぜんざい」をテーマに大手コンビニと協働開発した商品を売り出し話題になっています。そのほかにも、日常の学習活動はもとより、様々な分野で頑張っている子どもは多数います。
「大器をつくるには、いそぐべからず」吉田松陰の言葉であります。皆さんを取り巻く教育環境は厳しいものがありますが、子どもたちの力、可能性をしっかりと、また、期待を持って見極め、厳しさの中にも優しい心で、島根の将来を担う人材を育ててほしいと思います。
最後になりましたが、このたびの東北地方太平洋沖地震により、お亡くなりになられた方々に対し、また、今なお避難生活を余儀なくされている方々に対し、心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。
筆舌に尽くしがたい災禍に遭われた方々が忍耐力と地域の仲間への思いやり等を持って災害に立ち向かわれる姿には、諸外国からも感嘆の声が上がっていますが、特に、避難所となった学校で、懸命に被災者の支援を行っている教職員の方々や中・高校生の献身的な行動は、我々の心を打ちます。教育の大切さ、教職員の使命感の尊さを改めて認識します。
私たちとしても子どもたちが一日も早く、元気で教育が受けられるよう、島根への転入学の積極的な受け入れなど、できる限りの支援を行ってまいります。皆さんとともに、被災地の早期の復興を祈りたいと思います。
皆さん方は、これからそれぞれ最初の赴任校に向かわれますが、長い教職員生活の始まりです。どうか健康には十分留意され、先輩・同僚や保護者、地域とのつながりを大切にし、今日の清新な気持ちをいつまでも持ち続けて御活躍されることを期待しまして、訓示といたします。
平成23年4月1日
島根県教育委員会教育長今井康雄
お問い合わせ先
島根県教育委員会
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