秋の虫の声
夜が寝やすく秋の気温に変じてきたと感じられるようになり、虫たちが鳴き出してきた。
どこで冬を越し、どこで孵化し、夏の間はどこにいたのか。
スズムシもコオロギも庭ではついぞ見かけることがなかった。何を食べて育ったのか。もしかしたら、どこかよそから来たのかとも思わぬでもないが、かといって近くに畑がある訳でもない。やはり、この庭で育ったんだろう。
今、日本国中で虫の鳴き声が聴こえる生活をしている人々が一体何人いるのか、そう思うと貴重な虫の声に思えてくる。
「昆虫−驚異の微小脳」(水波誠:中公新書)という本がある。以前から不思議に思っていた昆虫の能力の驚異について詳しい。網戸の小さな穴から入り込んでくるほどの小さな昆虫がすべて生化学反応で全く音をたてることもなく動き、飛びかい、蚊の如きは人間様の体温か呼吸のCO2に反応する。
「飛ぶ」ということがいかに高度なことであるかは、鳥達の例を見ればわかることであり、人が作り出した飛行機やジェットの高度なテクノロジーの集積からも知られる。
どの本かは忘れたが、進化論についてであった。「鳥が空を飛ぶためには、ただ単に羽を獲得するだけにとどまらず、骨格から筋肉に至るまで、周到な準備が必要であった」との記述が非常に見事であり、明確な記憶として持っている。
先日の新聞はヒマラヤでグライダー飛行する蛙の新種が発見されたことを報じた。
鳥類、哺乳類(ムササビ、コウモリなど)、爬虫類(トビトカゲ)、魚類(トビウオ)に次いで、両生類でも飛ぶものが確認された訳であるが、飛ぶことにかけては昆虫が多様性や性能、適応性にかけて最も勝った進化を遂げており、その右に出るものはいないだろう。
飛びながら停止できるホバーリングやいとも簡単に急旋回する能力がなぜあの小さな殻(これもまた、骨格でなく外殻に進化を遂げたすごさである)に包まれた中での代謝で行われるのか。まさに神の造形の妙・神秘としかいいようがない。そして、それがDNAとして卵と精子で継承されていくのである。
秋の夜長に、晩酌は控え目にして寝床で本でも読みながら、ふと目を休めたときに、虫の声に意識を馳せてみるも興ある事である。
読書の格言を紹介して終わりにする。
「読書は寝床(ベッド)での3つの楽しみのひとつである。」
「3日間に一冊の本も読まなかった人間とは友人になるな。」
(後者は先日、高校生の進学ゼミでの数学者秋山仁氏が講義で紹介された。中国の格言だそうです。)
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