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秋きぬと…

 

 総合教育審議会の委員と懇談の機会を持った時、教育界にこの審議会の存在があまり知られていないので、広報してほしいとの申し入れがありました。

私はすぐに「両鏡相照」に原稿を載せることを約束しましたので、今日皆さんにお知らせするところです。(委員名簿はこちら

 


 

 総合教育審議会は島根県附属機関設置条例により「教育の総合的な施策の推進に関する重要事項を調査審議すること」をお願いするもので、今回別紙委員のとおり改選し、新委員による初めての審議会を開催いたしました。条例に基づく、難しい審議事項は別として、島根県が進めるべき教育のラディカル(根源的な)な部分、骨格となる部分についての意見、提案をお願いするものです。

 初回の会合の中では「読書・日本語教育」の大切さについて各委員からこぞって発言がありました。委員の構成メンバーからおおよそ予期したこととはいえ、私も常日頃からこうした読書や日本語についての重要性を意識していますので、大いに賛同するところです。

 今年のキャッチコピーである「感性を磨けば人生が楽しくなる知性を高めれば人生が豊かになる」についても、その根底にはコトバの力が必要だと申しております。それは「秋だな!」と感ずるその感じ方・感性は、それまでに学習した、読んだ体験、経験がもととなり、雲の形状とか山の稜線がはっきりしてきたとか、夜の虫の声を聞く時、脳内で感じたものの表現としてまとまってはじめて感ずるものであるからです。般若心経と同じ表現をすれば「感性即是知性、知性即是感性」です。(蛇足ながら「空即是色、色即是空」)

 そして知性の柱の中の小柱である、あるいは延長線にある学力についても国語も数学、算数も英語も社会やその他の教科もすべからく国語力がベースになるということです。

 これはよく言われることで、それがわかっているなら、後はそれをどう伸ばしていくか、育んでいくかということです。親子読書や読み聞かせ、朝読書、最近では「家(うち)読推進」という表現も生まれました。それぞれの現場で努力していることと思いますが、要は、実践をいかにするかということです。

 地球環境のCMで最近「わかっているだけでなく、今こそ実践が必要」というのがあります。まさしく、この読書も同じことが言えましょう。子どもが本を読むのは、楽しくなければ続きません。それが証拠にマンガであればあれ程読むのではないですか。「楽しい」は「楽しいから読む」、「読むから楽しい」の反復です。「読むこと、知ること、学ぶことは楽しい」ということを是非ひとり一人の子どもに習慣づけてやりたいものです。(ついでに申しますと、最近「〜してやる」と「〜してあげる」が絶望的に混用されています。野球放送のアナウンサーが「ここで相手に追加点をあげてはいけません」とか、料理番組で「ここで塩をひとつまみ入れてあげます」とかさえ言い出しました。そのうちケンカで「なぐってあげる!」と言うようになるでしょう。)

 

 国語で今ひとつ申したいことが童謡、唱歌の再認識です。

 皆さん、秋の歌では何が頭に浮かんできますか?小さな秋見つけた...、虫の声...、里の秋...もみじ...歌は全く苦手な分野ですが、五木寛之や前文化庁長官河合隼雄の意見に共鳴し、私も童謡、唱歌の持つ原体験としての情操的な面と言語的な面の意義を評価しています。こうした情緒が前述の感性のベースになるものと思うからであり、また、日本語の美しさ、リズムを伝えるものでもあると思うからです。

 

 


(1)ヒガンバナ

「みんな、ヒガンバナの赤い花が咲いてきたのを見たか?あの花はネ、もともと中国大陸から渡ってきたんだよ。稲作と一緒に伝わってきたらしい。球根は毒性が強く、畦に植えて、モグラやネズミが畦を掘らないようにしたとか、飢饉の時に備えて植えて、何回も水にさらしてアク抜きしてダンゴの粉をとったとか言われているけど、まだよくわかっていないらしいよ。名前は曼珠沙華ともいうよ。花の時に葉はなくて、花が終わってから葉が出るよ。白い花もあるけど、自然ではほとんど赤い花だよ。丁度、秋分の日(彼岸)の頃に咲くから彼岸花だよ。よく見てごらん。すごい幾何学的な形だろう?先生にはネ、子どもの頃に○○の思い出があるんだ。」

 

(2)

「先生はネ、今朝、今年初めてキンモクセイの花の匂いをかいだよ。皆はキンモクセイの花を知ってる?先生はね、秋の花と言えば一番先にこの花の匂いを思い出すよ。子どもの時、庭の奥にあってネ...知らない人は今度近所ででも見て匂いをかいでごらん。そうだ○○クン、明日の朝、小枝を一枝持って来てくれないかな?」

 

こうした話をしてやることが、原体験として心に残れば、やがては秋にアウトプットされ、秋を感ずる豊かな精神活動の礎となると思うものです。

 

秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる

 (藤原敏行古今集169首)


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